まえがき
“ジャパリまんを投げて、それを鳥のフレンズがキャッチする”、という遊びが、パークで流行していた。弾が速く、キャッチする方は姿が見えないほど速かった。*1
ショウジョウトキが、ふわふわとホバリングしながら、さびしそうにそれを見ていた。
ショウジョウトキ「あんなの、むりなんですけど……」
ト キ 「ショウジョウトキ」
トキがショウジョウトキに声をかけた。
ショウジョウトキ「え?」
ト キ 「わたしと踊ってみない?」
ショウジョウトキ「おどるって、ペパプみたいに?」
ト キ 「魅せるなら、猛禽の子には負けないわ」
高山近くの森の上空。ほんの少し雲がある快晴だった。
トキとショウジョウトキが、離れた編隊を組んで飛んでいた。*2
ふたりが、平行して飛びながら近づいていった。
そして高速で交差した。*3
ふたりともくるくると2回横転しながら、離れた。
上昇・下降・後方宙返り・ひねり・手をつなぐ……離す。ふたりは、パターンを変えながら、広い3次元空間で、近づく・離れる・交差する、を繰り返した。*4
ふたりが横に並んで飛びながら、ゆっくりと近づいていき、同時にくるりと一回横転したあと、手をつないだ。
そして少し降下して加速した。
ト キ 「サンドスターを!」
ショウジョウトキ「お絵かきですね!」
ふたりは、腕を左右に大きく広げて手をつないだまま、サンドスターの線を引きながら、急上昇した。そして大きく宙返りした。
空に、サンドスターの巨大な円が描かれた。
ふたりは、つないだ手を中心にして横転を始めた。それは風車のような回転になった。
動いてエネルギーを使った分、高度が下がっていった。
ト キ 「うふふ……目が……まわる……わね」
ふたりは、ぐるんぐるんと回転しながら降下を続けた。
ショウジョウトキ「いいかげんに……しないと……落ちるん……ですけど!」
ふたりは回転をやめて、手をつないだまま急降下した。
草原に落ちる寸前で水平飛行に移った。
そして、地形に沿って低空飛行を続けた。
森が近づいてきた。
トキがショウジョウトキの肩を抱いて、ぎゅっと抱き寄せた。ショウジョウトキも、トキに抱き着いた。
ふたりは抱き合ったまま森に突っ込んだ。
そして木をかわしながら、森の中を抜けていった。*5
真正面から大きな木が近づいてきた。
ふたりが、パッと体を離し、左右に分かれた。
木が、ふたりの間をすり抜けた。
ふたりは再び近づき、手をつないだ。
ふたりは急上昇して森を抜けた。
そしてすぐに、手をつないだままクイックに後方宙返りをして、水平飛行に戻った。
ショウジョウトキ「はぁ、はぁ……。むちゃしすぎなんですけど!」
ショウジョウトキは楽しそうだった。なぜかドヤ顔っぽかった。*6
ト キ 「言ったでしょ、猛禽の子には負けないって」
トキが、ショウジョウトキに笑顔を向けた。
山が近づいてきた。*7
ふたりが一瞬目を合わせてうなずき、手を離した。
そして体をひねって、急速に離れた。
トキが山の左側を、ショウジョウトキが山の右側を、山肌に沿うように飛んだ。
山を左右から回ったふたりが合流して……
がしっ! と、空中ブランコのように両手をつかんだ。
ショウジョウトキ「やった!」
ふたりは、つながった勢いで、ぐるんと一回転した。
ト キ 「息ぴったりね、わたしたち」
ふたりは再び、片手をつないで直線飛行した。
ト キ 「つぎは……こう……わたしのまねを」
トキがショウジョウトキに、手を動かして飛び方を説明した。
今度は、ふたりいっしょに急上昇した。
ある程度上昇した所で、サンドスターの線を描きながらふたりが離れ、それぞれが大きく宙返りした。
宙返りして降下したふたりが再び近づき、交差した。
ふたりは、ホバリングして空を眺めた。
ショウジョウトキ「なんですか、これ?」
ト キ 「ドキドキのかたち……愛のしるし」*8
空に、サンドスターの線で描かれた、巨大なハートマークが残っていた。*9
ト キ 「かばんさんに教えてもらったのよ」
ショウジョウトキ「なんか、はずかしいんですけど!」
ト キ 「歌もいいけど、こういうのも悪くないでしょ?」
ショウジョウトキ「そうですね……」
サンドスターのハートは、ゆっくりと空に溶けて消えていった。
ショウジョウトキが、自信ありげにトキを見て、手をのばした。
ショウジョウトキ「こんどはわたしがリードします!」
ト キ 「お相手するわ」
ふたりは、手をつないで回転しながら上昇していった。サンドスターの2重らせんが描かれた。
高山の頂上、ジャパリカフェの前に、抱き合ったトキとショウジョウトキが降りていった。
ト キ 「ふぅ……ちょっと……つかれたわね……」
ショウジョウトキ「ちょっとじゃ、ないんですけど……」
ふたりは、着地すると、ふらっと倒れそうになった。そしてお互いを支え合い、微笑み合った。
ショウジョウトキが、なぜかドヤ顔になった。
トキとショウジョウトキが、オープンテラスの席に向かい合って座っていた。
アルパカ・スリ 「はいどうぞ―! ふたりともつかれてるみたいだから、甘くしてみたゆぉ」
アルパカ・スリが、ふたりの前にコーヒーカップを置いた。
それを見たふたりは、一瞬驚いて、顔を見合わせた。少し頬を赤くしながら。
アルパカ・スリ 「いやぁー、いいもの見せてもらったゆぉ!」
ふたつのコーヒーには、ハート型のラテアートが描かれていた。
おわり
詳しく書くなら、シザース(シザーズ)機動をするとかっこいいかも。ローリングシザースとか……。コークスクリュー(ブルーインパルスのやつ)や、オポジットコンティニュアスロール(表記ゆれあり)、カリプソ(背中合わせで飛ぶやつ)なんかもいいですね。ただ、それだとダンスっぽくないので、手つなぎや、体操っぽい動作などを入れてアレンジしたいです。
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
レッドインパルス……
『ひこうじょう』シリーズ(別作品)で活躍してくれたふたりに思い入れがあったので、アクロバット的なものを書いてみました。こういうのは猛禽(ワシタカ系)のフレンズの方が似合いそうですけど。本当はもっと派手に踊らせてみたかったんですが、筆者の力不足でした。
クロトキにも参加してもらうべきだったかな? とも思ったのですが、『ジャパリ・フラグメンツ』は、アニメに登場するフレンズがメインなので、ふたりにしました。ふたりの方がダンスっぽいですし。
3人なら、デルタ編隊を組めるし、ファンブレイク(3機)、ラインアブレストロール、ローリングコンバットピッチ(3機)など、いろいろできるんですけど。それに、ハートに矢を刺すこと(バーティカルキューピッド)もできるんですけど。
BGMが欲しいです。ふたりに歌ってもらうという案もありましたが、ミュージカルみたいになって恥ずかしいですし、激しく動いて飛んでいる状態では、まともに歌えない気がするのでやめました。それに作詞も難しいです。既存曲を使う案で、選曲まで考えたんですけど。
ショウジョウトキに『ですけど』を、どれだけ言わせるか迷いました。無理に入れると不自然ですし、筆者は、アニメ1期準拠で、ショウジョウトキの普段のしゃべり方がどうなるのか分からないんです。初登場時の口調を守るのか、ですます調自体やめるべきなのか……。
ショウジョウトキには、無意味にドヤ顔をしてほしいです。
ショウジョウトキの英名、スカーレットアイビス(Scarlet Ibis)って、響きがおしゃれですね(?)。調べてみたら、想像以上に赤くてびっくりしました。
ショウジョウトキは、カニなどの甲殻類を食べて赤くなるらしいので、赤さは地域差や個体差があるかもしれません。“ショウジョウトキはカニが大好き”、“カニを食べすぎて赤くなる”、って、ネタとしておもしろいかも……。
〈 ふたり 〉のあとがきに、こっそりと追記しました。今さらネタバラシです。