ジャパリ・フラグメンツ   作:くにむらせいじ

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 まえがき

 百合っぽくてえっちな、恥ずかしいおはなしです。



〈 だれか 〉

 

 わたしが目覚めると、となりに誰だかわからないフレンズが寝ていた。向かい合わせだ。

 

 ふたりとも、うすいおふとんの中だった。ここは、サバンナとジャングルの境い目にある、ヒトがつくったぼろ小屋。外は赤っぽくて暗い。もう夕方は過ぎたね。*1

 

 ぼんやりした頭で、きょうの朝なにがあったのか思いだした。この子の、とろけた顔と甘い声が頭をよぎって、顔が熱くなった。おなかの下に、この子がしてくれた気持ちよさがよみがえってきて、むねがきゅーってなった。はずかしい、しあわせ、だいすきがいっぱいで、苦しいよ……。

 なのに、なんで誰だかわからないんだろう。この子にすっごく失礼だよ、わたし。

 寝顔をながめてみた。かわいい見慣れた顔。目に特徴があるけど、閉じているとまた違った魅力がある。頭の上のみみに軽くさわると、ぴくぴくっと動いた。

 からだは……ふとんをめくって、チラッと見て、すぐに戻した。

 今さらはずかしがる必要ないのに、なにやってるんだろわたし……。

 暗かったけど見えちゃった。思ったとおり、この子もわたしも毛皮がなかった。しっぽはよく見えなかった。ぷにっとした体。手足はほっそり、胸はふんわり。これも見慣れたものだった。

 この子の腰のあたりをさわってみた。体温が高い。この子をおもいっきりなでたい。でも起こしたくない……。この子、すっごく疲れてるから。

 ゆっくりと、そーっと指でこの子のカラダをなぞった。起きるか起きないか、ぎりぎりのところをなぞっていった。

 ふにょん、と、やわらかい感触。ぴくっと反応があった。やっぱりふわふわだよぅ……。

 まずいまずい。敏感なところはさわっちゃだめだよ。ぐにぐにすると気持ちいいんだけど……。

 ……この子の気持ちいいところをいじったら、朝みたいな声が聴ける……。

 …………そーっと……かるーく…………ぽちっとしたところを、ちょんっとさわった。*2

 「んふっ……うぅん……」この子が身をよじって、えっちな声をもらした。

 んー…いい声ぇ……って、そんなとこさわっちゃだめだよ! ここはがまんだよ、わたし。

 

 うれしいにおいがする……この子の胸元に顔を近づけて、においをかいだ。ふたりのにおいがまざっていた。近くでかぐと強くて、くらくらっとしたけど、つつまれれば落ちつくにおいだった。

 こんどは自分の腕のにおいをかいでみた。ここもふたりのにおいがした。

 ……わたし、からだじゅうにマーキングされちゃった。この子にマーキングしちゃった。

 ヒトは、自分のものに名前を書いたらしい。それと同じだね。

 でも、このままだとほかの子に会ったときはずかしいから、川で水浴びして流してしまおう。*3 もったいないけど、ふたりしか知らないところに、においが残っていればいいよ。

 水浴びもたのしいよね。きょうは月が明るい日だし、こっそりとふたりで、はだかのままで……。そんなことしたら、またマーキングしちゃいそうだけど……。

 

 もうちょっと、この顔をながめていたい。においにつつまれて…………。

 …………わぁー、かわいい……ぁうぅー……。

 ……がまんしなきゃだよ。この子疲れてるんだから…………だめ! ……だめだってば!

 

 たまらなくなって、やさしく抱いた。熱くてやわらかい。やわらかい中に、すこしかたい筋肉や、こりこりした骨の感触もある。むね同士が押し付けられて、ふくらみが、ふにょん、と、つぶれた。先っぽがこすれて気持ちいい。この子のどきどきを感じた。

 足をからませて、ぎゅーっと……「ぅぷっ!」声でちゃった!

 ……へんなとこ当たって、びくってしちゃった。

 

 …………なんで起きないの? この子。……寝たふりしてるね。

 

 体がかたいよ。緊張してるの? もしかして笑ってる?

 やさしく髪をなでた。髪のにおいがふわりと香った。

 

 ちょっとおどろかせてみよう。

 わたしは、この子の顔に顔を近づけていった。なるべく息が当たらないように気をつけた。

ちょっと苦しい。

 どこまでがまんできるかな?

 

 …………もう鼻がくっつきそう。

 

 ゆっくりと、目が開いた。お互いの目しか見えないような近さで。

 

「……んう……わっ! ……は……」

 おどろいたこの子が、なにかを言おうとした。

 とっさに、わたしはこの子の口を唇でふさいだ。

「んむぅっ!」

 この子は、わたしが聞きたくないことを言おうとしたんだ。

 

 一瞬聞こえた声は、もわっとしていた。起きたばかりだからだろう。でも、わたしの心の奥をくすぐる音は、いつものままだ。

 唇のやわらかさも、ちょっとなめちゃった味も、いつもとおなじ。深く味わいたい気持ちをがまんして、唇を離した。

 目の前に、放心した顔があった。やっぱりこの子……。

 

 わたしがなにかを言おうとしたら……

「んっ!」

……この子が吸いついてきて、口をふさがれた。

 あぶなかった……この子の名前が出るところだった……。

 

 3回目……とろとろがまざった。がまんできないよ、お互いに。

 4回目……舌同士が当たった。もっと深く、からませたい……。だめ! このままだと……。

 この子の頭をおさえて離した。とろとろがこぼれた。

 目を合わせて、じっと見つめた。“このくらいにしようね”って。また止まらなくなっちゃうから。あっという間に夜がおわってしまうから。

 この子の驚いた目が、切ない、悲しげな目に変わり、横にそれた。胸がずきっとした。

 

 やっとわかった。この子はわたしだ。だから誰だかわからないんだ。

 

 わたしは、自分が誰なのかわからない。知りたくない。でも、それはみんなおなじだよね。自分が誰なのか、なんて、誰にもわからないよね。

 

 この子はわたしだけど、ちょっと違う。この子はわたしより幼い。でも、この子のほうがちょっとだけ……たぶん100歳くらい年上だ。*4 それに、わたしよりかわいくて、きれい。

 ふたりとも、だいじなものが欠けている。だからそこを埋めるように、ひとつになったんだ。

 

 

 

 おわり

 

 

 

 

 

 

*1
 この子は夜行性のような、違うような……。

*2
 暗くて、カメラにはどこを触ったのか映りませんでした。

*3
 ここは温暖なちほーのようです。

*4
 謎設定です。気にしないでください。




 あとがき

 読んでいただきありがとうございます。

 なんだこれ……。またえっちなやつだし……。

 このふたりは、元々は、特定の「誰か」に限定しないで書いていましたが、書いているうちに、どこかで見たようなふたりになりました。
 でも……
 このふたりが誰なのかは、読まれた方の自由です。好きなフレンズをあてはめてください。

 最近、一人称のおはなしが増えてきました。このおはなしは、三人称では意味がないんです。
 一人称で書くと「ジャパリ・フラグメンツ」のルール(基本三人称で書く)を破ることになります。でも、もう気にする必要ないかな、って思っています。自己満足で書いているものですし。


 次の話で、このおはなしをベースにした実験的なものを投稿する予定です。


 [ 初投稿日時 2020/03/14 15:16 ]
 
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