海上で、ジェット戦闘機の空中戦が行われていた。
2機対2機。複雑な旋回を繰り返すうちに、攻守が逆転した。
攻撃側についた1機(F-2A)を操縦していたのは、黄色い、けもの耳付きのヘルメットをかぶったキタキツネ。キタキツネ機 ※1 は敵機A(機種不明、MiG-29M?)を追っていた。
敵機Aは左右に旋回を繰り返して逃げるが、徐々に高度が下がっていった。キタキツネ機がやや上から降下して加速し、距離を詰めてロックオン……できなかった。敵機B(機種不明、MiG-29M?)がキタキツネ機の後方に迫っていた。
キタキツネ 「ちっ」
キタキツネは敵機Aを追うのをやめ、左に急旋回し、最大推力で加速して逃げた。そしてすぐに上昇した。
キタキツネ機の右、やや下で僚機(F-2A)が、キタキツネ機が逃がした敵機Aに追われていた。
キタキツネ機の無線からはノイズしか聞こえなかった。
敵機Aからミサイルが発射された。僚機は右に急旋回したが逃げきれなかった。ミサイルが僚機に命中した。僚機は一瞬炎をあげ、空中分解した。射出座席やパラシュートは見えなかった。
キタキツネ 「シルヴァー!」※2
キタキツネ機は降下しながらゆるく旋回し、僚機を撃墜した敵機Aの後方へ回り込んだ。キタキツネは険しい表情だった。敵機Aは降下、左旋回した。キタキツネ機は敵機Aよりやや距離をとり、機首を敵機Aの方へ向けた。ロックオン。キタキツネはミサイルを発射した。敵機Aの右の主翼が吹き飛んだ。敵機Aは回転しながら海へ落ちていった。
敵機Bが、右からキタキツネ機の後方へ回り込もうとしていた。キタキツネ機はフレアを放出しながら左に急旋回した。敵機からミサイルが発射され、キタキツネ機の右で爆発した。キタキツネ機にいくつか破片が当たったが、致命傷にはならなかった。コックピットのディスプレイに、ミサイルの異常を示す警告が表示された。キタキツネはミサイルを投棄した。キタキツネ機の残弾はゼロになった。
キタキツネ機は急降下した。敵機Bがそれを追った。海面が近づいてきた。敵機Bは上昇に転じた。キタキツネ機は海に突入する寸前で水平飛行に移り、そのまま低空飛行した。敵機Bが上から襲いかかるが、キタキツネ機が低すぎて、捕捉できなかった。※3
キタキツネ 「ついて、こい!」
キタキツネ機は低空飛行を続け、下が海から陸に変わった。キタキツネ機は森の木の上スレスレを飛び、敵機Bがそれを追った。その先にはサンドスターの出る山があった。
キタキツネ機のディスプレイに燃料切れの警告が表示され、警報音が鳴った。キタキツネ機は、超低空のまま、サンドスターの出る山の左側から、山に沿って右に旋回した。敵機Bはやや高い高度でそれを追った。
敵機Bをサンドスターのきらめきが包んだ。敵機Bの右のエンジンから黒煙が噴き出した。敵機Bはふらつき、※4 機首を山へ向け、そのまま山肌へ吸い寄せられるように墜落し、炎上した。
ギンギツネが源泉の点検を終え、温泉宿に帰ってきた。そこにあったものを見て、目を見開き、固まった。
ジェット戦闘機のコックピット部分を切り取ったようなものがあり、それは下から数本の棒で支えられていた。コックピットの前には大きな画面があった。画面には動く風景が表示され、その動きと連動して下の棒が動き、コックピット部分が揺れていた。筐体……とは呼べないものはあまりにも大きく、床と天井に穴を開けて無理やり設置されていた。
画面に、着陸する映像が表示され、装置の動きが止まって、キャノピーが開いた。中に座っていたキタキツネが立ち上がり、ヘルメットを脱いでコックピットわきの階段を降りてきた。キタキツネはうつむき加減で、怒っているようにも、悲しんでいるようにも見えた。
ギンギツネ 「なんなのよこれ? どこからどうやって持ち込んだの? ※5 天井に穴が……」
キタキツネの表情が急に明るくなった。
キタキツネ 「シルヴァー! 生きてたの!」
キタキツネはヘルメットを落とし、ギンギツネに駆け寄り、抱き着いた。
ギンギツネ 「な、なんなのよ? しるばー?」
ギンギツネは戸惑いながらも、キタキツネを抱きしめた。
ギンギツネ 「…………まあ、いっか……」
おわり
※1 「キタキツネ機」って読むとへんなかんじです。
※2 TACネームです。発音がBではなくVなのは「そのほうがかっこいい」というキタキツネのこだわりです。
キタキツネのTACネームは「ゲーマー」です。色でそろえるなら「レッド」なんですが、それだとアカギツネと重なるので。
※3 実際にこんなことが起きるのかは分かりません。
※4 エンジンがサンドスターを吸い込んで不調になっただけでなく、サンドスターの影響で発生した風が山にぶつかって乱気流を発生させていて、敵機Bはそれに巻き込まれました。
※5 気にする必要はないのですが、いろいろ疑問が出てしまいます。分解して運び込んだのか? 源泉の点検をして戻ってきたら、ってそんな短時間でどうやって設置したのか? 設置にかかわったのはキタキツネ以外にもいたのか? この温泉宿はたぶん平屋だけど、床と天井に穴をあけただけで収まるのか? 床下を掘り下げないと無理なのではないか? こんな高価なものをどうやって入手したのか? お金があったとしても一般人には購入できないのではないか?
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
これは私の趣味の世界なのですが、私は乗るほうではなく見るほうなので知識不足です。嘘だらけでもいいから、もっとかっこいいものが書きたかったのですが、力不足でした。
いい話っぽく終わらせましたが、キタキツネがちょっと怖いです。このあとキタキツネは我に返って、現実世界に戻ってきました。
発想の元は、「ジャパリ・フラグメンツ」とは別で投稿しているSS「ひこうじょう」シリーズですが、「ひこうじょう」シリーズに出てくるシミュレーターは、こんなに本格的なものではありません。
直接関係ないですが、映画「エネミーライン」の冒頭部分がかっこよくて好きです。ミサイルが戦闘機と同じスピードで延々と追いかけてくるなんてありえないのですが、作り手は嘘だと分かっていて作ったんだと思います。あの映画はそれでお腹いっぱいになってしまって、その先はよく覚えていません。 青ジャージ?
[ 投稿日時 2018/03/29 01:34 ]
※ 一回削除して再投稿したため、最初の投稿日時はこれよりも前です。正確な日時は不明です。