まえがき
この話は実験的なテキストです。
前の話〈 だれか 〉を書き直したものです。えっちなおはなしです。
「これは受けつけない」と感じたら、すぐに読むのをやめてください。気分を悪くされたらごめんなさい。
これ、書くのがすごく恥ずかしかったです。多分読むのも恥ずかしいです。前の話以上に。
横書き、一行全角44文字とします。
余計な情報が目に入らないように、PCで
※ この文章は催眠術ではありません。お遊びです。
静かで快適な環境で読んでください。この文章以外の情報、絵や音やにおいなどは、なるべく無くしてください。ひとりきりで読んでください。
リラックスしましょう。深呼吸してください。
鼻からゆーっくりと吸って……口からながーーく吐きます。
吐くほうに意識を向けてください。嫌なものを吐き出すように……。
数回繰り返してください。
ぼんやりと文章に意識を向けてください。
あなたは今、自由な世界にいます。全てあなたの思い通りです。
無理に強く想像しないでください。文章をなぞるだけでいいのです。
あなたは今、自由な世界にいます。ここでは、あなたはなんでもできます。
あなたが欲しいものは、想像すれば現れます。すでにあなたの前にあります。
あなたは何にでもなれます。大人でも、子供でも、男でも、女でも、ヒト以外でも……。
あなたは過去へも未来へも行けます。何回でもやり直しができます。
ここから先に書かれていることは、この世界で遊ぶためのヒントです。
気軽にいきましょう。書かれていることは無視してもかまいません。
ただ、一つだけ守ってください。
決して無理に想像しないでください。たのしくなくなってしまうので。
あなたがいちばん好きな……好きで好きでたまらないフレンズを思い浮かべてください。
あなたが考えたフレンズでもかまいません。あなた好みにアレンジしてもかまいません。
その子は、どんな「姿」で、どんな「性格」で、どんな「声」で、どんな「触り心地」ですか?
あなたはよーく知っているはずです。思い出してください。
その子の「におい」「体温」「味」まで思い出せるはずです。
その子のカラダのことは、あなたがいちばん詳しいはずです。
あなたが大好きな子を、思い浮かべてください。
その子も、あなたのことが大好きです。その子は、あなたに無邪気な笑顔を向けてくるかもしれませんし、ひかえめな表情で抱きついてくるかもしれません。ひょっとしたら、あなたにきびしいことを言うかもしれません。
ここからは、その子を「彼女」と書きます。その子は女の子とは限りませんが、仮にです。
ですがあなたは、彼女の本当の名前を知っていますよね。その名で呼んであげてください。
あなたは、今から彼女に会いに行きます。
“ 彼女に会うのにちょうどいい姿 ” になった自分を思い浮かべましょう。
………あなたの名前は何ですか?
あなたと彼女の両方が、ちょうどいい姿になったら……準備完了です。
あなたの意識が、ゆーっくりと薄れていきます………………
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あなたは目覚めました。
今は、おふとんの中です。
あなたはぐったりと疲れています。でも、ほわーんといい気分です。体がだるくて、ほんの少し痛いのが気持ちいいです。
同じふとんの中で、誰かが寝ています。寝顔をこちらに向けています。
あなたが見慣れている、かわいい顔です。
その子は、さっき思い浮かべた「彼女」です。あなたの大好きなフレンズです。
あなたのことが大好きなフレンズです。
彼女は目に特徴がありますが、目を閉じた顔も魅力的ですよね?
ベッドの上で、あなたと彼女がいっしょに寝ています。
他に欲しいものがあったら思い浮かべてください。壁や天井とか、雰囲気のいい明かりとか、やわらかいクッションとか。なにも無くてもかまいません。
おふとんの中はあたたかくて、彼女の体温が伝わってきます。でも、肌に空気が触れている感覚があります。そして、少し見えている彼女の肩は、裸です。
おふとんの中が気になりますよね。めくって、ちょっとだけ中を見てみましょう……。
あなたの予想通りです。彼女もあなたも裸です。あなたが見慣れている、美しいカラダです。
毛皮がなくて残念ですが、あなたが脱がしたんですよ?
あなたのお好みで、靴下やアクセサリーなどをつけてあげてもいいでしょう。
かわいく、美しく、えっちになるように……。
きのう何があったのでしょう? ふたりは何をしていたのでしょう?
思い出してください。
でも、この世界の中で思い出にひたると、あなたは心の深いところに入ってしまいます。
ちゃんと戻ってきてくださいね……。
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あなたの名を呼ぶ、彼女の甘い声が浮かんできます。彼女のとろけた顔が浮かんできます。
よーく思い出してください。
快感に耐える彼女の顔や、えっちで苦しげな声も浮かんできます。彼女のやわらかさ、くらくらするにおい、唾液の味 舌の感触まで浮かんできます。くちゅくちゅと音が響いています。
あなたが彼女にしたこと、彼女があなたにしてくれたこと、ふたりでいっしょにしたこと……。
自分の体の感覚を味わってください。じわーっとした感じがあります。
熱い。胸がきゅーってする。どきどきする。背中がぞくぞくする。とっても気持ちいい。
あのときの、すっごーく気持ちいい感覚が、あなたの恥ずかしいところに戻ってきます。
ふたりのリズムで上ってくる快感。ふるえてしまうくらい、体の芯から気持ちいい。
彼女は、うなされるように何度もあなたの名を呼んでくれます。
すっごくたのしくて、涙が出るくらいうれしかったですよね。
思い出すだけではなく、過去へ戻って、きのうの思い出を楽しむこともできます。何回でも好きなだけ楽しんでください。彼女といっしょに。
彼女が積極的な子だったら、あなたが受け身になるのもいいでしょう。彼女はとっても楽しんでくれるはずです。あなたが彼女の感覚を味わうこともできます。ふたり分の快感を同時に味わう、なんて贅沢もできます。
普通にいちゃいちゃするだけでは物足りないなら、もっと刺激的なことをしてみましょう。あなたの趣味で好き勝手していいのです。決まりごとは破ってかまいません。普通なら許されないことも、ここでは許されます。恥ずかしすぎることも、痛いことも。
彼女はあなたの期待通りの反応をしてくれます。怒るかもしれませんが、心の奥ではよろこんでいるはずです。
ひとつ、大事なことを書いていませんでしたね。
もう手遅れですが、彼女のにおいや汗や唾液、そしてえっちな蜜には、麻薬のようなものが含まれているのです。
それはあなたの体に入ると、血にとけて全身をめぐり、脳に侵入します。そしてあなたを、すっごく楽しくて、とーってもしあわせな気分にさせます。そして脳の奥にちくちく刺さって、本能を暴れさせるのです。あなたは今、理性の糸がちぎれる寸前でしょう?
これらは触れただけでも危険なのです。なのに体がべとべとです。全身がぞくぞくぴりぴりして気持ちいいでしょう? それにあなたは、吸い込んで、舐めて、味わってしまいましたね?
この作用は足し算ではなく掛け算です。彼女のことが大好きなあなたにとっては麻薬のようなもの。あなたは彼女のことが大好きだから大好きが大好きでだーいすきになり、えっちな気分も快感も、何倍にもふくれ上がってしまうのです。
血の中のものが足りなくなったら、また求めるようになります。欲しくてたまらなくなります。
あなたは、彼女なしでは生きられなくなってしまいました。
それでは、たーっぷりと楽しんでください………………
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…………なんとか戻ってこられたようですね。
あなたのすぐ目の前に、彼女の顔があります。ぐっすりと眠っています。おだやかな寝顔です。
貪欲に、わがままに、欲望のままに。そんなあなたを、彼女は全て受け止めてくれました。彼女は、自分の全てをあなたにくれました。
それは、あなたが彼女に優しくしてあげたからです。
『自分は優しくなかった』って思いますか?
彼女はあなたの優しさを知っています。
彼女は、あなたのことが大好きだから。
あなたも、そんな彼女のことが愛おしくてたまらないですよね。
もう一度、自分の体の感覚を味わってください。どんな感じがして、どんな気分ですか?
彼女を、思いっきりなでてあげたいですか?
彼女をさわってみましょう。でも、起こさないようにそっとですよ?
きのう、あんなことがあったから、すっごく疲れているはずです。
指の感覚に意識を向けてください。彼女の肌をそーっとなぞっていきます。どこをさわるかはお好みで。でも敏感なところは避けてください。
彼女の肌はさらっとしていますか? しっとりしていますか? それとも、ぬれていますか?
あたたかいでしょうか? 冷えているでしょうか? それとも熱いでしょうか?
あなたの指は、彼女が起きるか起きないか、ぎりぎりの線をなぞっていきます。
ふにょん、と、やわらかい感触。
彼女がぴくっと反応しました。
その小さな突起は、さわっちゃだめですよ。
いけないところに、ごく軽くふれた感触。
「んふ……うぅん……」
彼女が身をよじって、えっちな声をもらしました。あなたが大好きな声です。
このくらいにしておきましょう。
あたりに魅惑的なにおいが広がっています。
彼女の胸元のにおいを嗅いでみましょう。
あなたがよく知っている、彼女のにおいがします。じーんときて、くらくらしちゃうにおいです。あなたの心の奥をくすぐってきます。
あなたは、もともと彼女のことが大好きなのに、きのうあんなに好きになったのに、もっともっと好きになります。でも、きのうとは違って、ちょっと甘い感じです。胸が苦しくなりませんか?
気づきましたか? ふたりのにおいが混ざっていることに。
自分の腕のにおいを嗅いでみましょう。
さっきと同じ、彼女のにおいがします。
思い出しましたか? ふたりがきのう、においを付け合ったことを。マーキングです。自分のものに名前を書くのと同じです。彼女はあなたのもので、あなたは彼女のものなのです。
このままでもいいのですが、ほかの子に会ったとき恥ずかしいなら、お風呂で洗い流してしまいましょう。
安心してください。このにおいはふたりの秘密のところに残ります。それも消えてしまったら、また付け合えばいいのです。
それに、楽しみが増えました。彼女といっしょにお風呂に入るという。
あなたは、魅惑的なにおいにつつまれて、苦しいほど大好きな彼女の寝顔をながめています。
ずーっとながめていたいですか?
…………このまま、がまんしますか?
あなたは彼女を抱きしめてしまいました。
体がくっついて、やわらかくてあったかい。あなたは全身で彼女を感じます。
彼女の肩にあごを乗せて、体を密着させましょう。ふわり、と髪のにおいがします。やわらかい中に、すこしかたい筋肉や、こりこりした骨の感触もあります。ふたりのむね同士が押し当てられ、ふしぎな感触がします。先っぽがこすれて気持ちいいでしょう?
あなたの手は、彼女の背中を下へ滑っていきます。おしりに触れました。しっぽの感触はどんなでしょう?
おなかの下の方では、恥ずかしいところが当たっています。
もっとくっつきたければ、足をからませてください。あなたは腕に力を入れて、彼女を、ぎゅーっと強く抱きます。さらに体がぴったりと密着して気持ちいい。しあわせで心が満たされていきますよね。
……彼女は眠ったままです。
彼女の体が、ほんの少しかたくなっています。密着している彼女の胸から、かすかにどきどきが伝わってきます。
寝たふりをしているようです。
彼女がぴくぴくしているのがわかりますか? 笑いをこらえているのかもしれません。
どうして寝たふりをしているのでしょう?
ちょっと驚かせてみましょう。彼女の顔に顔を近づけてください。真正面からです。
ゆっくりと、顔を近づけていきます。息が当たらないように気をつけて。
どこまでがまんできるでしょう? お互いに。
…………もう鼻が当たりそうです。
ゆっくりと、彼女の目が開きました。彼女の目しか見えません。
「……んう……わっ! ……は……」
彼女が何か言おうとしました。寝起きの声ですが、あなたの心をくすぐる響きです。
「んむぅっ!」
すぐに、あなたの唇にやわらかい感触がします。
あなたは衝動的に、自分の唇で彼女の口をふさいでしまったのです。
すぐに唇を離しちゃうんですか?
ちょっとなめちゃいましたね。彼女の味がしましたか?
彼女はぽかーんと放心しています。どんな声をかけますか?
あなたは、彼女になにか言おうと……。
「んっ!」
突然、彼女があなたの口に吸い付いてきました。
また軽いキスでした。もう一回しますか? 彼女も、とろんとした顔を近づけてきました。言葉なんていらないですよね。
3回目のキス……ふたりのとろとろの唾液が混ざりました。
4回目のキス……舌同士がふれました。もっと深くからませたい……
止まらなくなっちゃいますよ? きのうみたいに。
あなたは、彼女の頭をおさえて離しました。そうです。今は休ませてあげましょう。
彼女の驚いた目が、切ない、悲しげな目に変わり、横にそれました。
胸がずきっと痛かったですか?
あなたの力が抜けて、眠気がきます。彼女を優しく抱いてください。彼女も、あなたをつつみ込むように抱いてくれるはずです。
…………ここちよい…………あたたかい…………うれしい…………大好き…………
ふたりは溶け合うように、ほんわりと心地よい気持ちになります。
…………やわらかい…………大好き…………きもちいい…………いいにおい…………
……きもちいい…………大好き…………大好き…………くすぐったい声…………大好き…………
……はずかしい…………大好き…………だいすき…………なみだが…………だいすき…………
……だいすき………かわいい………だいすき……おいしい……だいすき……だいすき…………
落ちついて。深呼吸してください。
……だいすき……だいすき……だいすき……だいすき……だいすき…………
きのうとは違って、ふわふわと優しくて、とろとろに甘い『だいすき』です。
……だいすき…………だいすき…………だいすき…………だいすき…………だいすき…………
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…………種明かしをしましょう。
彼女のにおいや味は、麻薬とは違います。たしかに快感を増したりする効果はありますが、ちょっと気分を盛り上げる程度です。先ほどは大げさに書きました。
あなたはさっき、彼女とつながりたいのをがまんして、休ませてあげましたよね? 胸がずきっとしましたよね? それはあなたが優しいからです。その裏には“大好き”があります。強大な本能や衝動をねじ伏せるほどの“だいすき”です。
実は、あなたのにおいや唾液などにも、同じ作用があります。ですが、これも効果は弱いです。彼女は、そんな作用なんてなくても、あなたなしでは生きられないのです。
つぎへ進みましょう。
“ 大好きな彼女といっしょにこの世界を楽しむためのヒント ” です。
・ あなたと彼女の出会い。馴れ初めはどんなでしたか?
・ おしゃべりしましょう。彼女は優しく受け止めてくれます。あるいは怒ってくれます。
・ ふたりの共同生活。食べるもののギャップにお互いびっくりします。
・ いっしょにお出かけ。彼女が迷子になってしまいます。
・ 延々と優しくじゃれ合うふたり。けだるくて、しあわせな時間です。
・ くすぐり合うふたり。あなたの期待通り、行きすぎてしまいます。
・ ひたすらキスだけの日。彼女、またはあなたは、とっても舌が長いです。
・ 甘い言葉責め。恥ずかしすぎてへんなテンションになっちゃいます。
・ お互いのしっぽをいじる、からませる。ちょっと痛いけど、ぞくぞくして気持ちいいです。
・ ふたりの性別が変わってしまいました。でもそれも楽しんじゃいましょう。
・ 彼女にかわいい恰好をさせて、褒めまくってみましょう。その逆もありです。
・ 毛づくろいごっこ。カラダの隅々までぺろぺろと……。
・ お部屋に“もうひとりの彼女”が入ってきました。修羅場になると見せかけて、なかよしになってしまいます。
・ 彼女がふたり、彼女が3人、彼女が4人……。
・ ふたりは唐突にカードゲームを始めます。なぜか裸です。彼女はルールが理解できません。どうやったらうまく教えられるでしょう?
・ 彼女がセルリアンに食べられて、元の動物に戻ってしまいました。彼女は再フレンズ化できましたが、あなたのことを忘れています。あなたはどうしますか?
・ ふたりの間にかわいい子供が産まれました。どんな子が何人産まれたのか、どちらが母親になるかはお好みで。彼女かあなたが鳥や爬虫類の子だったら、卵で産まれるかもしれません。
・ お互いに、知らないことはないほど相手のことに詳しいふたり。ふたりは、秘密を打ち明け合い、言えなくなったら負け、というゲームを始めました。ですが、知っていることばかりでした。唯一知らなかったのは……。
・ どちらかが病気になってしまいました。「よくある軽い病気だから、すぐ治るよ」と、笑顔で言ったのは嘘で……。
・ あなたと彼女の別れは、いつか必ずやってきます。それがどんな形になるかは、誰にもわかりません。たのしい時間は、1000年続くのか、1週間で終わってしまうのか……。
・ ふたりは、別れてもまた出会えます。何度も生まれ変わって。
……いいえ、本当は離れてさえいないのです。彼女はあなたの一部ですから。
この文章はここで終わりです。ですが、あなたと彼女のつながりは永遠のものです。ここから先は、ふたりで物語を作ってください。それがしあわせな物語になることを願っています。
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
私は、テキスト(文章)と受け手の想像力だけで、VR(仮想現実)的なものを作れないか? という、無茶なことを考えています。
このおはなしは、それの実験みたいなものです。〈 たのしみ 〉の後半部分でも同じことをやりましたが、このおはなしの方が自由度が高いです。
でも失敗だったと思います。というかこれ、成功なのか失敗なのかは、読者にしか分からないんですよ。もっといい書き方があるはずなんですが、私には難しいです。
同じようなことを考えて書いた方もたくさんいらっしゃると思います。
それがエロVRになっちゃうのは、筆者の欲望丸出しです。でもこういう時の行動は単純で決まり切っているので、「自由なおしゃべり」よりは書きやすいですし、想像しやすいと思います(言いわけです)。
オリジナル作品として投稿しようか迷ったのですが、二次創作の方が想像しやすいかな? と思い、けものフレンズの設定をお借りして書きました。「においや汗や唾液」とか、ちょっと生々しくて汚い感じもしますが、そこがけものっぽいかな、と。
「VR(仮想現実)的なテキスト」について、私が考えたことを書いておきます。
当たり前なことばかりですが。
私は、“読者(受け手)視点のテキスト”が書けないか? と考えています。
かばん 「それってすっごく難しくない?」
三人称の文章は、作者視点・神視点・語り手視点です。これは読者視点にはなりません。読者の行動を外から見たような文章にはできそうですが。
一人称の文章は主人公目線ですが、主人公は読者とは別の存在です。これも読者視点にはなりません。感情移入はできますが。
主人公を記憶喪失にしたり、設定を曖昧にする(素性が謎とか、中性的なキャラにするとか)のは、受け手が感情移入しやすくなる効果があると思います。空っぽなら入りやすいはずです。でもやはり、主人公は受け手とは別人です。それに空っぽではなく個性があります。かばんやキュルルのように。
では二人称ならどうでしょう? 「あなたは○○しました」「想像してください」などと、読者に語り掛ける文章です。これが一番読者視点っぽくできるかもしれません。「語りのひと」が邪魔ですが。
二人称で読者視点にするなら、催眠術みたいな文章(テキスト)になると思います。読者が深く考えなくても、頭にスッと入ってくる文章が良いですね。読者に暗示をかけて、文章の中の世界に入ってもらうのが理想です。
フェネック 「そんなことできるのかなー?」
二人称の場合、“読者(主人公)の言動をどこまで書くのか?” という問題が生じます。
私は、書き手が用意するものは最小限にして、読者の自由度はなるべく高くしたいです。自由度が低いと、読者の行動を「語りのひと」に決められてしまうので、真の読者視点にはなりません。
「没入への誘導」「ヒント」「取っ掛かり」「最小限の設定」「物語のベース」などを書いて、あとは読者の想像にまかせれば、読者視点的なものになるかもしれません。
二次創作なら、映像や音声のベースがすでに頭の中にあるので、想像しやすいはずです。
助 手 「極限まで読者の自由度を上げたら……」
読者は、好きな世界で、好きなキャラクターと、好きなようにに遊べます。脳内だけのものなので、想像できることは全てできるし、なにをしても良いのです。自分の容姿や性別、能力などの設定も自由です。
アライグマ 「じゆう?……はっ! なんでもできるのだ!」
鳥のフレンズみたいに飛べるし、イルカのフレンズみたいに泳げます。セルリアンと戦うこともできて、ジャパリカフェでお茶することもできます。大好きなフレンズと一緒に温泉に入れます。いちゃいちゃできます。もちろん、えっちなこともできます。
五感を使って体験できます。触覚は全身で感じられます。想像力があれば第六感も使えるかもしれません。この点は、現在のVRより優れています。
ただ、「痛み」は、想像だけで再生するのは難しいかもしれません。「あの時痛かった」というのは記憶できるが、痛みの感覚そのものは記憶できない……らしいので。
時間を巻き戻して、好きな出来事を繰り返し体験できます。過去を書き変えることもできます。未来へ飛ぶこともできます。さらに想像力があれば、スローモーションなどもできます。
つまり、“自分好みの物語を作って、甘くておいしい所だけを、好きなだけ食べられる”、ということです。苦い、悲しい物語も食べられます。思いっきり泣くのもいいものです。
はかせ 「……それはただの空想なのです」
テキストで読者の自由度を上げる究極の方法は、「何も書かない」ことです。
自由度を上げようとすると、“読者が疑似体験するには五感で感じるものの描写が必要なのに、それを書けない”、という矛盾が生じます。これでは文章を書く意味がないです。
〈 だれかと 〉では、「彼女」がどんな子なのかを読者が自由に想像できるようにしました。ですがそうすると「彼女」の性格やしゃべり方が筆者にはわからないため、セリフがほとんど書けません。外見も自由なので、しっぽの感触のような具体的な描写もできません。
五感で感じるものを描きつつ、全部読者の自由、というのは不可能です。それを実現するには、読者の思考や行動によってテキストがフレキシブルに変化する必要があるので無理です。
既存のゲームもそこまでの自由度はなく、結局プレイヤーと主人公は別人になってしまいます。ゲーム内のキャラクターがプレイヤーに話しかけてくる作品もありますが、会話の自由度は低いです。用意された会話なので、プレイヤーとキャラクターの間に、見えない主人公がいるようです。
でもAIなら対話も可能です。VRでは感触まで再現できます。これは近い将来、人間相手のコミュニケーションと大差ないものになるでしょう。
AIを活用したVRや、明晰夢なら体験者の視点になりそうですが「テキスト+想像力」では無理でしょう。
カラカル 「やっぱりできないじゃない」
仮に可能だったとしても、これには大きな欠点があります。
まず危険ですね。想像の世界から戻って来られなくなるかもしれません。……というのは極端ですが、抜けたあと“体験を引きずる”かもしれませんし、めまいなどが起きるかもしれません。
それに、読者の想像の範疇内のことしかできないです。予想外の出来事が起きません。
読者が「予想外だったという設定にする」(知らなかったつもりになる)、書き手が「文章の中に、予想外の出来事を含ませておく」のは可能ですが。
加えて、これはとんでもない手抜きになりかねないです。読者に作ってもらうのですから。
「真の読者視点」まで行かなくても、二人称のテキストで読者の想像力を刺激して、読者が想像をふくらませて楽しむことはできると思います。自由度は低くして、ちょっと空白を作って。
テキストが読者の空想を助ける。読者が、テキストの足りないところを補完する。書き手と読者が協力して物語を作るんです。
でも、それだとゲームと同じで“読者と主人公は別人”なので、うまくバランスをとり、工夫をこらして、読者に、“自分視点で書かれている”と錯覚させるんです。
サーバル 「よくわかんないよ!」
それを書くには筆者の技術や知識が足りません。相当勉強しないと難しいですね。
今回書いたおはなしは失敗だったと思います。
あと、「語り」の存在が邪魔です。語りはなるべく無個性・無感情にして、上から目線にならないように気をつけましたが……うざいかな?
あと、これは書くのも読むのも恥ずかしいです。それに書いている側はあんまり楽しめません。
私は、結局“自分視点の空想”が最高のVRなんじゃないか、って思っています。