まえがき
ひさしぶりの投稿です。でも粗品です。
〈 わずらい 〉
夕方の岩石砂漠。
フェネックが、大きな岩に座っていた。
フェネックのもとへ、アライグマがとぼとぼと歩いてきた。
フェネック 「どうしたのーアライさん。なーんか元気ないねー」
アライグマは、もじもじした様子だった。
アライグマ 「あうぅ……ふぇ……」
そして頬を顔を赤くして、しばらく口ごもったあと、意を決したように言った。
アライグマ 「フェネック! どうしてくれるのだっ!」
フェネック 「なにがー?」
アライグマ 「アライさん、へんになっちゃったのだ! フェネックのせいなのだ!」
フェネック 「わたしのせいー?」
アライグマ 「……その声、むねがつぶれそうになるのだ……」
アライグマは、涙ぐんでうつむいた。
フェネック 「え……」
フェネックは驚いて、いつものゆるい感じを崩した。
アライグマ 「うう……えと、えっと……」
アライグマが顔を上げた。
アライグマ 「フェネックが輝いて見えるのだ! フェネックがこんなにきれいだったなんて……知らなかったのだぁ!」
フェネック 「……ふ、ふーん……ありがと、う?」
フェネックがたじろいだ。
アライグマ 「きれいだけじゃないのだ……見とれちゃうくらいかわいくて、すっごくやさしくて……頭がいいしっかりもので、しびれるほどかっこよくて……」
フェネック 「ほめすぎだよー。でも……」
フェネックが目をそらし、少し暗い顔をした。
フェネック 「……いまさらなにを言うのさ……」
アライグマ 「なにしてても、こころにフェネックが浮かんできて……じゃまするのだ……どきどきして、ほわーんてなって、むねが痛くて……たのしいのに、なみだが……」
フェネック 「うわー重症だねぇ……こうやってわたしと話すの、つらくない?」
フェネックはいつもの調子に戻っていた。だがアライグマをまっすぐに見ておらず、少しだけ目が泳いでいた。
アライグマ 「つらいけど、うれしいのだ……」
アライグマは、フェネックの隣に座った。
フェネック 「んー……どうして突然そうなったのかなー?」
アライグマ 「まえから、あぶない感じがしてたのだ……それがこの前、フェネックが、アライさんの頭についた葉っぱ取ってくれて、かっこいい顔したとき……なにかが、ぱっかーんってなって、体じゅうにじゅわーっと広がったのだ……」
フェネック 「そんなことで? というか、かっこいい顔なんてしたかなー?」*1
アライグマ 「フェネックぅ! どうしたらいいのだぁ!」
フェネック 「……それ、わたしに相談されてもねぇ……」
フェネックは、あきれたような、ため息をつくような感じで言った。
アライグマ 「かばんさんとサーバルにも聞いたのだ。かばんさんは、『そのままでいいんですよ』って、笑ってて……そのままってなんなのだ……」
フェネック 「まー、そうだよねぇ」
アライグマ 「サーバルは『フェネックならなんとかできるかも』って言ってたのだ」
フェネック 「そうきたかー……酷なこと言うねぇ」
アライグマ 「苦しいのだ! どうにかしてほしいのだ!!」
フェネック 「……アライさん、それはね、だれにも、どうにもできないんだよ」
フェネックは、ていねいに、言い聞かせるように言った。どこか悲しげでもあった。
アライグマ 「ええー!」
フェネック 「わたしができるのはー……」
フェネックがアライグマによりかかり、ふんわりと抱きしめた。アライグマは、一瞬驚いて、指を迷わせてから、フェネックを抱きしめた。
フェネック 「このくらいかなー? なかよくするだけ。よしよーしって……」
フェネックが、アライグマの頭をやさしくなでた。
アライグマ 「……よけい苦しいのだ……」
アライグマはとても弱々しかったが、ぎゅっと目を閉じて、なにかを受け入れようとしていた。
少し間があった。
フェネック 「ん……アラーイさん、ごめんねー」
フェネックはアライグマの肩にあごを乗せて目を閉じ、腰を強く抱いた。
アライグマ 「ふぇぇ! やめっ……ドキドキが、痛い……」
フェネック 「んふふっ……」
フェネックは少しだけ笑った。
アライグマ 「……フェネック?」
アライグマが、何かに気づいた。
アライグマ 「……泣いてるのだ?」
フェネック 「なーに言ってるのさー」
フェネックの声は笑っているようで、とてもやさしかった。
フェネック 「フェネックまでへんになっちゃったのだ!」
おわり
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
例によって「思いついたから書いた」だけです。
長い長い付き合いの中で、こんな瞬間があってもいいじゃないか、と思います。
[ 初投稿日時 2020/04/24 20:40 ]