ジャパリ・フラグメンツ   作:くにむらせいじ

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 まえがき

 フェネックが何か考えています。
 


〈 きょり 〉

 

 夜、わたしはひとりぼっちで、砂漠の岩穴の中で横になって、ぼんやりとしていた。

 こんなときは、へんなこと考えちゃって、とっても沈むことがある。たのしいことを考えよう。

 

 ぱっと、アライさんの無邪気な笑顔が浮かんだ。

アライグマ 「フェネックー!」

 

 アライさんとは、すっごく長い付き合いだけど、おぼえてないことのほうが多いんだよね。*1

 わたしたち、くっつきすぎていたんだよ。だから、ちょっと離れたのは、悪いことじゃない。

……悪いことじゃない。

 

 たのしいこと考えるんだってば。

 

 ……やわらかかったなあ……アライさんの……。 *2

 アライさん、子供みたいな性格ですっごくかわいいのに、カラダはえっちで……ずるいよね。

 してあげたときの顔がうかんできた。*3 真っ赤にしちゃって、かわいかったなあ……。

 メス……女の子同士でできるたのしいことは、やりつくしちゃったかも。

 サンドスターに強くおねがいすれば、オスになれるかもしれないね。*4

 アライさんはびっくりするだろうけど、今までどおり、なかよくしてくれるよ。*5

 

 どっちがオスになるとたのしいかな? どんなことしてみようか?

 

 わたしが、オスになったら……

 大きさはふつうがいいかな。あんまり大きいと、アライさんがつらいからね。 *6

 んー……ふつうってどんなだろ? わたし見たことないんだよねー。

 きっとアライさん、今まで以上にかわいいところを見せてくれるよ。メスらしさってうか、女の子っぽさだね。……いつもとのギャップがたまらないねー。押し倒しちゃうよー。

かるく、ちゅっちゅってして、じらしながら、服を……………………

 

 アライさんが、オスになったら……

 やんちゃで、かっこつけてるけど、純情で、ドジかわいい男の子。いい感じだねー。

 わたし、めちゃくちゃにされちゃうかなー? いやー、アライさんは、そんなことしないね。

 流れにまかせよう。はじめはふたりとも迷うけど、やさしくはげしくなっちゃうんだろうねぇ。

 わたしがリードしたほうがいいかな? そしたら、アライさんもドキドキして…………

 すごーくおっきくしちゃうかも……。まー、痛くても苦しくても、がんばって受け入れるよ。

 

 めでたく、ふたりのココロとカラダがつながったら……

 くらくらはずかしくて、なみだが出るほど痛くて、へんな声がうるさくて、とろけちゃうくらい熱くて、ぞくぞく気持ちよすぎて、びくびくわからなくなって…… *7

 

 ……わたしのぜんぶを、あなたにあげたら、あなたは、いのちのかけらを、わたしにくれる……

 

 ……うわぁ……赤ちゃんができちゃうよー。

 

 

 ふたりの間に子供ができて、たのしく暮らしていけたら……おっきなしあわせだよね。

 わたしがお母さんになりたいなー。

 でもアライさん、オスになるのいやかな?

 まー、両方メスでも、アライさんとわたしなら子供が作れるよ。 *8

 

 でも……

 

 アライグマとフェネックの間に子供ができるなんて、あってはいけないことだよ。できたとしても、あぶないね。アライグマとフェネックは、からだが違うから、混ざっちゃったら……

 

……産まれてすぐに、死んじゃうかも……。

 

 じわっ、てきた。

 さっと上を向いた。岩穴の天井は暗くて、ぼやけて見えた。

 ……こぼれなかった。あぶないあぶない。

 

 もう、どうしてそんなこと考えるかなー。せっかく、たのしくなってきたのに……。

 

 『オスになったら』とか『子供ができたら』とか、夢みたいなこと考えちゃうのは、ヒマすぎるからだね。

 子供がほしいなんてわがままだよ。今のままがいちばん。……いちばん、だよ。

 いちばんいちばん……いちばん…………いちばん……ひどい…………最悪。

 

 やっぱりだめだなー、わたし……。こんなとき、アライさんなら……。

 

「フェネックーー!!」

 アライさん!? 

 反射的に体を起こした。岩穴の外から、たしかにアライさんの声が聞こえた。

 這うようにして岩穴から出た。月明かりに照らされた、砂漠のオアシスが広がっていた。 *9

 

アライグマ 「げんきかーー!! いまー!! なにしてるのだー!?」

 北北東、丘をふたつ越えたくらい。十分すぎるくらい離れてる。また来てくれたんだね。

 

 わたし、大きい声出すの苦手なんだけど……

 立ち上がって、大きく息を吸い込んだ。

フェネック 「わたしはー! げんきだよーー!! もうちょっとー! がんばろうねーー!!」

 おねがい……届いて……。

 

 わかってる。だれも悪くない。……わかってるけど、いじわるだよこんなの。

 ふたりとも元気だし、けんかなんてしてない。ふたりの間には、川も崖もない。

 ……でも、『 離れて、がまんしなさい 』、って……。

 

アライグマ 「フェネックーーぅ!! あ、会いたいのだーぁぁっ!!」

 届いた!? ……アライさん、声が……泣いてる? まさか、こんなことで泣かないよね。

 

 大したことじゃない。もっともっと大変なこと、いっぱいいっぱいあったじゃないか。このくらい、大したことないよ。……また突っ走ってよアライさん。どんなに大変でも付き合うからさ。

 

 がんばって声を出そう。思いっきり、吸い込んで……

フェネック 「だいじょーぶっ!! すぐにーーっ!! 会えるからーーーぁあっっ!!!」

 

 しまった。

 

フェネック 「うぅっ! けほっけほっ! けほっけほっけほっ!」

 うわー……はずかしかっこわるーい……。

 

 ちからが抜けて、座りこんだ。上を向くと、お月様と星がにじんで見えた。

 星を見ると季節がわかる。……もう、そんなに経ったんだ……。

 『すぐに』って、嘘ついちゃったかなぁ……。

 

アライグマ 「フェーネーックッ!! だいじょっぶかーーっ!! ごほっ! ぁうぅ……」

 

フェネック 「わたしっ! …く……だっぁ……けほっけほっ!」

 のどやっちゃった……ごめんね……大きい声出ないかも……。

 

アライグマ 「すー……」

 息を吸う音?

 

アライグマ 「もーーぅ!! がんわらなくってっ!! いいのぅらーーぁぁっ!!」

 声が枯れてるよアライさん!  *10

アライグマ 「けふっけふっ! フェ…ェックーーッ!!」

 もうやめてよー、アライさんも、のど痛いでしょ?

 

アライグマ 「ぁっ、あいたいっ、のらぁーーー!!」

 やめてよ……こぼれちゃったじゃないか……。

 

 わたしのなみだは貴重なんだよアライさん。かんたんに流させないでほしいなー。

 まーいいや。今いっぱい泣いておけば、つぎに会ったとき泣かずにすむから。

 つぎのなみだは……めでたく、ふたりがつながったときに……

……いやー、赤ちゃんが産まれたときまで、とっておくよ。  *11

 

 

 

 おわり

 

 

 

 

 

 

*1
 これ、モヤさまのショウ君っぽい文だな……って思ったら、あの声で脳内再生されました。

*2
 何が柔らかかったのかは秘密です。

*3
 何をしてあげたのかは秘密です。

*4
 これは、「強い意思で自分の体を作り変え、性転換する」ということです。かりそめの体とはいえ、難しいと思います。

*5
 アラフェネは、性別に関係なくなかよしだと思います。

*6
 体(の一部)の大きさです。

*7
 ここでふたりがしているのは、ストレッチと筋トレとマッサージと……。

*8
 このふたりなら出来そうです。

*9
 狭い範囲に、少し草木が生えている場所です。井戸があります。

*10
 アライさんは、ずっと叫んでいました。

*11
 恋人と赤ちゃんは希望フラグです。




 あとがき

 泣かせないはずだったのに……。


 読んでいただきありがとうございます。

 私は、長いこと「ディスる」の「ディス」は、ディスタンスのことだと思っていましたが、それは間違いだったと1年くらい前に気付きました。(2020/05/20投稿)
 このおはなしは、現実の出来事とは関係ありません。影響は受けていますが。



 以前どこかで書いた、ものすごく今さらな話ですが。

 「フレンズ(アニマルガール)が女の子だけなのは、異種交配を防ぐため」、という説があります。フレンズの体はヒトと同じなので、男の子のフレンズがいたら、子供ができる可能性があります。でも父と母は全く別の動物です。
 フレンズ同士の間にできた子がどうなるのか考えてみます。
 その子は、ヒトの姿で産まれて、問題なく生きていける可能性もあります。おそらく、顔立ちや髪形などの見た目と、性格と能力は、親から半分ずつ受け継ぐのでしょう。毛皮(服)がどうなるのかは謎ですが、裸で産まれる可能性が高い気がします。
 その子も、サンドスターの力でヒトの姿を保っていると思われます。でもここで「その子は何の動物なのか?」という問題が生じます。例えば、アライさんとフェネックの子供は、「アライグマとフェネックが混ざった動物」ということになりますが、そんな動物はありえないです。骨格も内臓も筋肉も皮膚も神経も、何もかもが違います。フレンズ化が解けたら、体の構造に矛盾が生じて死んでしまうかもしれません。アライグマとフェネックくらいの差でも危険ですが、トキとアルパカが混ざるとか、想像がつかないです。
 こういったことが起きないように、不自然な子供が産まれないように、自然の防御反応で、フレンズは全て女の子になる、あるいは生殖能力が失われる、というのがこの説です。
 ヒトとフレンズの間にできた子はどうなるの? という疑問が残りますが……。

 ネコ科動物同士のハイブリッド(ライガー、タイゴン、レオポンなど)は実在します。サーバルとイエネコのハイブリッド、サバンナキャットもいます。ですが、これらの作出には倫理的な問題がありそうです。
 ヒトが「不自然なつがい」や「不自然な親子」を作っていいのか? ということです。
 倫理的な問題だけでなく、何らかの異常がある子(骨格の異常、生殖能力が失われる、短命になる、など)が産まれるリスクもあります。
 でも、狼犬(ウルフハイブリッド)みたいに、ほぼ同種の場合どう考えるのかは難しいところです。「品種改良(同種の掛け合わせ)は倫理的にNGなのか?」という問題もあります。
 ゾウにマンモスの子を産ませよう(代理出産?)という計画もありますが、倫理的には考えものです。自分の子が、あるいは自分の親が、自分と違う動物だったらいやですよね。それで仲睦まじい親子になれたら、いい話っぽくなりますが……。
 こういうのは、「ヒトが、強制的に(フレンズではない)チンパンジーと結婚させられる」ようなものです(子ができるかは別として)。「チンパンジーが好きだから結婚したい」ならいい(?)のですが、私はいやです。

 では、強制ではなく「自然にできた異種のカップル」は、神様に許されるのでしょうか?

 けものフレンズは、ゆるいファンタジーなんだし、生物学や倫理を多少無視してもいいじゃないか、と思います。ゆるく甘く考えるなら、アライさんとフェネックは大好き同士(強制ではない)ですし、ふたりの間にできた子は、とってもいい子になるはずです。「女の子同士のカップルの間に子供ができる」というのも、自由でいいじゃないかって思います。神様なんて知らないです。


 [ 初投稿日時 2020/05/20 20:05 ]
 
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