まえがき
設定も内容もめちゃくちゃです。
機種依存文字を使用しています。
―― 砂漠の地下のトンネル ―― *1
そこは完全な闇だった。
突然、ドサッ! と何かが落ちる音がした。
真っ黒な中に光る目が現れて、ぱちぱちとまばたきした。
「……どうしましょう?」
おっとりしたかわいらしい声が響いた。
しばらく経って。
コンコン! と音がした。
「はいってますかー?」
トンネルの壁の向こうから、のんびりした声が、かすかに聞こえた。
「はいってますよー」
かわいらしい声が答えた。
ボゴッ!! という音と共に壁に穴が開き、トンネル内が、ほんのり明るくなった。
壁に開いた穴は直径1メートル弱で、そこから、光る手が飛び出していた。トンネルの内径は、2メートルほどだった。
フェネック 「すっごい硬いねーこれ」 *2
壁に開いた穴から、フェネックがトンネル内を覗き込んできた。 *3
スナネコ 「フェネック!」
かわいらしい声の主は、スナネコだった。
フェネックが、壁に開けた穴からトンネルに入った。
フェネック 「ずいぶん深いところまできた……というか落ちたねぇ」
フェネックが見上げると、高い縦穴があった。 *4
フェネック 「けが、してない?」
スナネコ 「だいじょうぶです。軽くてじょうぶなので」
スナネコは、フェネックが通ってきた穴を興味深げに見た。
スナネコ 「フェネックも穴掘り得意なんですね」
フェネック 「スナネコには負けるけどねー」
突然、ドサドサドサッ! と、岩石や泥が崩れて、フェネックが掘ってきた穴がふさがった。
フェネック 「ほらねー、つぶれちゃった」 *5
スナネコ 「フェネックがいちばん掘ったのは、どのくらいですか?」
フェネック 「いちばん掘ったのはー …………」
フェネックは少し考えて……
フェネック 「アライさんの穴だねぇ」
……ぽつりと言った。
スナネコ 「アライグマのおうちですか?」
フェネック 「やー……あんまり深掘りしないでくれると助かるよー」 *6
スナネコ 「アライグマは、いっしょじゃないのですか?」
フェネック 「アライさんは……」
―― 同時刻、図書館 ――
アライグマとかばんが、となり合って机に向かって、本を読んでいた。
アライグマ 「せん?」
本には、『千歳』という文字があった。
かばん 「これは『ちとせ』って読むんです」
アライグマ 「こ……しょう?」
『小美玉』
かばん 「えっと、『おみたま』って読むみたいです」
アライグマ 「これも読めないのだ!」
『各務原』
かばん 「博物館の名前で『かかみがはら』ていう、ひらがながありました」
―― 砂漠の地下トンネル ――
フェネック 「やー、あっついねー」
フェネックは、あまり暑そうには見えなかった。
ふたりは細いトンネル内を歩いていた。照明が消えていて暗闇だったが、フェネックが前にかざした右手の光で、うっすらと、壁・床・天井が見えた。 *8
スナネコ 「フェネックでもつらいですか?」
フェネック 「熱がにげないんだよー」
スナネコ 「お? またわかれてますね」
ふたりの行く先は分かれ道だった。左へカーブする太いトンネルと、右に折れる細いトンネルがあった。
フェネック 「また地図と違うじゃないかー」
フェネックは、ボロボロの地図を見た。そこには縦横に何10本もの線が引かれていて、所々に手書きの線が描き足されていた。*9
フェネック 「これは、上の迷宮どころじゃないねぇ……」 *10
スナネコ 「くんくん……」
スナネコが、右側のトンネルのにおいを嗅いだ。
スナネコ 「こっちは土のにおいがします」
フェネック 「こっちは、なんかうるさいねー。がががががーって」 *11
フェネックは、左へカーブしたトンネルを見つめた。
スナネコ 「どっちにいきますか?」
フェネック 「んー……右かな」
―― 同じころ、サバンナ ――
まぶしいほどの快晴だった。
カラカル 「こんなの反則じゃない?」
サーバルとカラカルが、となり合って立っていた。
サーバル 「たくさんいたほうがたのしいよ!」
ふたりに向き合って、4人のリカオン(フレンズ)がいた。
リカオンA 「思いーっきり逃げてくださいね」
リカオンのひとり(A)が、ふたりに笑顔を向けた。
サーバル 「わかったよ!」
カラカル 「ふふ、ついてこれるかしら?」
カラカルは挑発的だった。
リカオンAが真剣な顔になった。
リカオンA 「……手加減なしでいくよ、みんな」
リカオンズ 「「「オーダー、了解!」」」
―― 砂漠の地下トンネル ――
トンネルの行き止まりに、大きな墓石のような碑があった。
碑のわきに案内板があり、消えかけた文章が書かれていた。
『……第8層D区画、42番トンネルで浸水……崩落……作業員7名、掘削ロボット3体が……隔壁を閉鎖……救出を断念……』
フェネック 「ここであったこと、忘れないために作ったのかも」
スナネコ 「フェネックはなんて書いてあるかわかるんですか?」
フェネック 「読めないけど、なんとなくわかるのさー」
フェネックは、もの思う表情になった。
フェネック 「どうしてこんなにがんばって、穴を掘ったんだろうねぇ……」
―― 図書館 ――
アライグマ 「ちく……じょう?」
『築城』
かばん 「そう読むときもありますが、ここは『ついき』って読むらしいです」
アライグマ 「……しん……た……はら?」
『新田原』
かばん 「…………にゅうたばる?」
―― 砂漠の地下 ――
スナネコ 「お? おもしろそうなのありますよ」
スナネコが、たたたっと駆け出した。
ふたりの行く先は、少し広い奥行きのある部屋になっていた。大小様々な、天井まで届く水槽のようなものが、10基以上並んでいた。だが、ガラスが白く曇っていたり、割れたりしていて、中には何も無かった。
フェネック 「生っぽいにおいがするねー」
ふたりは奥へ進んで行った。
茶色く汚れたタイル張りの床に、長さ1.5メートルほどの、ピンク色のイモムシ形のものがあった。それにはモザイクがかかっていた。
スナネコ 「おいしそうですね」
スナネコが明るい表情で、ピンク色のモザイクを見た。
フェネック 「たべないほうがいいよー。やっばーいカタチしてるし、においが……」
スナネコ 「やっばーいですね」
スナネコが、ピンク色のモザイクに、ずぶずぶと深く手を突っ込んだ。
フェネック 「わー、へんな汁出てるよ」
スナネコ 「ひんやりぷるぷるで、きもちいいですぅ」
フェネック 「なんで腐らないんだろうねぇ」
―― サバンナ ――
カラカル 「増えてるじゃなーい!!」
サーバルとカラカルは、チラチラと後方を確認しつつ、10人ほどのリカオンの群れに追われていた。
サーバル 「わあー! リカオンっていっぱいいるんだね!」
サーバルは楽しそうだった。
ふたりは、リカオンの群れに囲い込まれていった。
―― 砂漠の地下深く ――
倉庫のような空間に、大量のドラム缶が積んであった。
割れた壁から、草のつるのようなものが飛び出していた
スナネコ 「こんなところに、どうして草があるのでしょう?」
スナネコが、草のつるのようなものを、ぐいーっと引っ張った。
フェネック 「へんなのさわっちゃだめだってば」
一瞬静かになった。
ゴボゴボという水音と共に、床が傾いていった。ひび割れた天井から細かい破片が落ちてきた。
スナネコ 「わー、おもしろい」
フェネック 「あーあ……やっちゃったー」
ドラム缶がガラガラと倒れ、缶の上の部分が外れて、中身がドバっと広がった。
暗い緑色の液体と一緒に、ジャパリまん程の大きさの黒い球体がいくつも転がった。 *13
スナネコ 「おいしくなさそうですね」
フェネック 「ほっ」
突然、フェネックが素早く後ろを向き、ビュン! っと、右手で水平に空を切った。
ぱっかーんと、丸くて黒い小型のセルリアンが消えた。
フェネック 「あぶないあぶない」
フェネックは、のんびりと言った。
スナネコ 「さすがですー」
―― 図書館 ――
アライグマ 「きん……えと……」
本には、『金属疲労』とあった。
かばん 「それは、『きんぞくひろう』って読みます。金属を曲げたり戻したり……とかを、何回もくり返すと、もろくなっていくんです」
かばんは、木の枝をぐにゃぐにゃと何回も曲げて、ぽきっと折って見せた。 *14
アライグマ 「この、ざくつ? ってなんなのだ?」
本には、『座屈』とあった。 *15
かばん 「ものに、ちょっとずつ力を加えていって……えっと、これがいいかな?」
かばんは、細くて柔らかい木の枝を選んで、机に立てるように持ち、上から押した。
かばん 「あるところで、急に、ぐにゃっ、て大きく変形することを言います」
木の枝が、ぐにゃっと曲がった。
アライグマ 「おうりょく、しゅうちゅう?」
かばん 「『応力集中』というのは、材料の形や厚みなどが変わっているところに、応力が集まる……急に曲がったところとか、かどには大きな力がかるので、壊れやすいんです」
かばんは、2本に分かれた枝の片方を折って見せた。枝の又の部分が折れた。 *16
アライグマ 「こっちの『レイノルズすう』、は……」
かばん 「あれ? それは分野が違うのに……」
―― 砂漠の地下迷宮、最下層 ――
フェネックとスナネコが、ドアが外れた入り口を通って、崩れた分厚いコンクリートの壁を乗り越えて、円形の部屋に入った。
赤い明かりが点灯し、周囲の物が赤く浮かび上がった。
スナネコ 「おー、すごい」
フェネック 「ここって、入っちゃだめなんじゃないかなー」
部屋の天井に、パイプが何本もつながった、巨大な『鉛の心臓』があった。それは、ぐつぐつと、何かを鍋で煮込むような音を立てていた。
フェネック 「あー……ほんとにやばいかも……あついのに寒気がする……」
フェネックは、半開きの目で、ぼーっとしていた。
スナネコ 「うぅっ……」
スナネコが両手で口をおさえて、ふらついた。
フェネック 「スナネコ!」
スナネコ 「からだが……痛いです……」
入り口の、壊れた分厚いドアには、放射能標識 ☢ があり、その下に、『RADIATION HAZARD』と書かれていた。その隣には、ぎょろっとした目玉のようなマーク ◉ があり、『SANDSTAR HAZARD』と書かれていた。目玉マークは、後から貼ったシールだった。
―― サバンナ ――
カラカル 「どーすんのよ!! これぇー!!」
サーバルとカラカルは、高い木の上にいた。
サーバル 「どうしよ……」
サーバルも若干おびえていて、苦笑いした。
木の下には20人程のリカオンがいて、サーバルとカラカルを、『ハンターの目』で見ていた。
カラカル 「……ふ……しかたないわね……」
カラカルは、かすかに笑って、リカオンたちを見つめた。
そして小さめの声で言った。
カラカル 「……あたしが先にとんで、あいつらを引きつけるわ」
サーバル 「え?」
カラカル 「サーバルは反対へ逃げなさい」
カラカルは、真剣な目でサーバルを見た。
サーバル 「そんな!」
カラカル 「ふり返らずに、思いっきり走るのよ」
サーバル 「あぶないよ! わたしもいっしょに!」
カラカル 「あんたには、大切なひとがいるでしょっ!!」
カラカルは、サーバルを怒鳴りつけた。
サーバル 「っ!」
サーバル 「……ち、ちがう方法かんがえよう!」
サーバルは、明るく言ったが、無理をしていた。
カラカル 「だいじょうぶよ。……また、サーバルと狩りごっこしたいから」
カラカルは、やさしく笑った。
リカオンF 「これって『狩りごっこ』だよね?」 *17
リカオンB 「くしゅん!」
ひとりのリカオンが、くしゃみをした。
カラカル 「びっぐ・ふろーーっぷぁー!!」 *18
カラカルが大きくジャンプした。
サーバル 「カラカルッ!!」
リカオンの群れを飛び越えるように。
―― 地底 ――
ごく弱い明かりがついた、巨大な円筒形の空間。
6角形の大きなタイルを敷き詰めた床に、金属製の丸い扉が、円形に13個並んでいた。扉は直径2メートルほどで、金庫の扉のように重厚なつくりだった。
フェネックは扉に歩み寄った。
扉には円形のガラス窓があり、中には薄い青色の液体がつまっていて、明るかった。フェネックが、かがんで窓に触れようとして、手を止めた。そして、少しだけ悲しげな目で、中を見つめた。窓から漏れる青い光が、フェネックの顔を照らした。
フェネック 「これ開けたら、ふたりとも死んじゃうねー。いやー、それだけじゃすまないよー」
フェネック 「 “パークの危機” だねー……ほんとのさ……」
フェネックは、皮肉っぽく笑うのに失敗して、少し顔をしかめた。
スナネコも、窓の中を見た。
しばらく、見つめていた。
そして、窓から目をそらした。
スナネコ 「ひどいですぅ」
スナネコは、いつも通りの、のんびりした感じだったが、足が震えていた。
フェネック 「 “ ほしいものを掘りだして、怖いものをうめた ”……ってところかなー」
スナネコ 「おもしろく……ないです」
スナネコの表情が暗くなった。
フェネック 「んー……おもしろくないから、はやく帰ろうね」
フェネックがスナネコを見て、やわらかい表情になった。
フェネック 「なにも見なかったことにしよう」
フェネックが人差し指を立てた。
スナネコ 「いいのですか? それで」
フェネック 「やっかいすぎて、わたしたちでは手におえないよ」
カツン、カツン、と、金属の上を歩く足音が近づいてきた。足音は、広い空間によく響いた。
フェネックとスナネコが顔を上げて、同じ方を見た。
リカオンHB「『だいかくまめ』ではなく、『ささぎ』って読むんですよ!」 *19
壁の高い所にある足場で、リカオンがにっこりと笑って、ふたりを見下ろしていた。
スナネコ 「ちょっと、しっぱいしましたね」
スナネコは、リカオンを見たまま、のんびりと言った。
フェネック 「ふふ……いまさらだねぇ」
フェネックは、スナネコの横に立ち、少し、にやりと笑った。
コツン、コツン、と、再び足音が近づいてきた。今度は石の上を歩くような音だった。
フェネックとスナネコが振り返ると……
リカオンB 「空気抵抗は速度の2乗に比例する……というのは、厳密には違います」
……もうひとりのリカオンがいて、明るく語り始めた。
スナネコ 「生きて帰りましょ?」
スナネコは、フェネックに笑顔を向けた。
フェネック 「まー、やれるだけがんばってみるよ」
フェネックは軽い感じで答えて、スナネコの手に触れた。
ふたりは、ぎゅっと手をつないで、リカオンを見つめた。
リカオン2H「航空機の与圧式の胴体は、風船のようなものです。高度1万メートルなら……」
おわり
範囲は6×10キロメートル以上、最深部の深さは3キロメートル以上あります。
電源系統の7~8割が、送電を停止したり断線したりしていて、真っ暗な場所が多いです。空調が止まっている個所は、深くなるほど気温が上がります。酸素も薄いです。
ふたりは地上へ上ろうとしていましたが、歩き回るほどに、迷うほどに、地下深くへ潜っていきました。
“ Big Floppa ”(ビッグフロッパ? ビッグフロップ?) という海外の謎ミーム(2019~2020年頃流行?)があります。“Floppa”は辞書に載っていない単語で、読みが分からない(カナ表記が不明)のですが、“flop”と“Big Poppa(洋ヒップホップの曲)”を引っかけたようです。『耳がぱたぱたする』みたいな意味のようです。あと、サーバルは“Sogga”らしいです。
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
なんだこれ……。
例によって、思いつくままに書いたら、ぐちゃぐちゃになってしまいました。“それじゃ、いっそのこと、支離滅裂な悪夢みたいにしたらどうだろう?”、と思って書きました。でも支離滅裂というほどカオスではなく、あんまり怖くなりませんでした。
数式をたくさん書くとシュールかも、と思いましたが、私はそういうのが苦手です。
『金属疲労』、『応力集中』、『与圧』で、ピンと来た方もいるかもしれません。
フェネックとスナネコには共通点があり、ふたりの組み合わせはおもしろそうです。異常にのんびりした感じになりそうです。でも私の力では、いまいちなものしか書けませんでした。
[ 初投稿日時 2020/07/07 07:07 ]