まえがき
すきなこと。
アニメ2期の設定で、最終話より後のおはなしです。
赤い岩石砂漠。
チーター 「はっ、はっ、はあ、はあ、はっ……」
チーターが、砂漠の道を走っていた。普段よりは遅いが、景色が高速で流れていた。
チーター 「ぐっ! はっ……」
チーターがふらついて、前のめりに倒れかけた。
彼女はすぐに体の重心を後ろにずらし、急ブレーキをかけた。ふんばった両足がすべり、地面が砕けて砂煙があがった。
そして、しりもちをつき、ぺたんと座り込んだ。
チーター 「うぅっ……はっ、はあぁ……ひぅっ……はぁ……」
チーターは息があがっていて、苦しそうだった。
「ぅおーい! なにやってんだー!」
少しあわてた様子で、G・ロードランナー(オオミチバシリ。以下ロードランナー)が下りてきた。
チーター 「ぁわっ! くはっ!」
チーターは一瞬あわてて、無理に呼吸を整えようとした。
チーター 「はっ……はぁっ……くふっ……」
ロードランナーが、ストンと着地した。
ロードランナー「地上最速が、トレーニングでクタクタとはなー」*1
ロードランナーは、からかうように言った。
チーター 「はぁ……と……トレーニングなんてしてなっ……わよっ! ……ふぁ……」
ロードランナー「全速力で2周はむちゃだろ」 *2
チーター 「見てたの!?」 *3
ロードランナー「……左足、痛いのか?」
ロードランナーの言葉は、からかう感じのままだったが、少し真剣さを含んでいた。
チーター 「……大したことないわ」
チーターは、自分の左足のすねをさわりながら、そっけなく言った。
ロードランナー「おまえは自分を知らねーんだ。からだ壊して走れなくなるぞ」
チーター 「ぐ、むぅ……」
ロードランナー「プロングホーンさまは違うぜ? からだをいじめたら、しっかり休む!」
ロードランナーは自慢げだった。
チーター 「だから速くなってるのよっ!! プロングホーン!!」
チーターが叫んだ。
チーター 「……抜かれちゃう……追いつけないわ……」
そして、強いあせりを見せた。泣き出しそうな目をしていた。
ロードランナー「これだからなー……」
ロードランナーは、ため息をつくように言った。
ロードランナー「わたしは……」 *4
チーター 「なによ」
ロードランナー「 生まれつき誰よりも速いふたりが、競い合って、もっともーっと速くなっていったら、わたしはどうなる? 」
ロードランナーは、チーターの目を見て、真面目な顔で言った。
チーター 「え……」
ロードランナー「 死ぬほどがんばって走っても、追いつけないだろ? 」
ロードランナーは、チーターから目をそらして、少し寂しそうに、はにかんだ。
チーター 「そんなこと! ……言われても……」
チーターがうつむいた。
ロードランナー「飛ぶのも遅いしなー」
ロードランナーは、自嘲気味に言った。
チーター 「あなたには……あなたの得意なことが…………」
チーターの声は小さく、絞り出すようだった。
少し間があった。
ロードランナー「 なーんてなっ! 」
ロードランナーが、ぱあっと笑顔になり、まっすぐにチーターを見た。
ロードランナー「 すきなことの勝負は、負けても楽しいんだぜっ! 」
そして、鳥っぽい動作で前かがみになり、素早くチーターに顔を近づけた。
チーター 「な……」
ロードランナー「ちゅっ!」
ロードランナーは、チーターの鼻にキスをして、すぐにうしろへ飛び上がった。 *5
チーター 「へ? えぇ?」
チーターは、理解が追いついていない様子で、鼻に手をあてた。
ロードランナー「にへへっ……」
ロードランナーは、いたずらっぽく笑った。頬が赤く、子供のような笑顔だった。
ロードランナー「じゃーなー! ま、テキトーにがんばりなー」
そしてゆっくりと上昇していった。
チーター 「ちょっと! なによ今の!」
ロードランナーはチーターに背を向け、離れて行った。
チーター 「まちなさい!! ……うぁ……」
チーターが立ち上がったが、すぐにふらっとよろけた。
ロードランナーは、チーターから離れながら、さらに上昇していった。
ロードランナー「 みっ!みっ! (Beep! Beep!) 」
ロードランナーは空中停止して、クラクションのような『鳴きまね』をした。
そして、パラパラとサンドスターを飛ばし、ジェットコースターのように急降下して加速した。
超低空を高速飛行して、砂煙を上げながら、『地面に触れずに走って』行った。 *6
少し腕を広げた前傾姿勢 *7 で、足が、古い漫画のように、高速回転する輪っかに見えた。
チーター 「はやぁっ!」
チーターは目を見張った。
一瞬遅れて、コォンッ!!! という衝撃音が、空気を揺さぶって響き渡った。 *8
チーターは、ヒトの耳を両手でふさぎ、目をつむった。同時に、けものの耳が倒れた。 *9
砂煙は、あっという間に遠ざかり、地平線に近い、岩山の陰へ消えた。
チーターが、耳をふさぐのをやめて、呆然と、ロードランナーが消えた方を見つめた。
チーター 「自分を知らないのは、あなたのほうじゃない……」
チーターは、あきれたような、微笑みのような、複雑な表情でつぶやいた。
おわり
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
G・ロードランナー(オオミチバシリ)は、作品によって性格などが違いますが、この作品のロードランナは『2』のつもりで書きました。でもこんなことを言う子じゃない気がします。
ロードランナーには才能があり、走るのも好きそうです。なので、天才すぎるチーターとプロングホーンは、ロードランナーにはまぶしすぎる存在かもしれません。でもふたりへの憧れが強くて、嫉妬などはあまり無さそうです。嫉妬心があっても表には出さない、あるいは自分でも気づかないと思います。
――― 速い子たち ―――
最速については異説があり、最高速度も不確定です。『瞬間的に出せる速度』、『記録に残る中では……』など、条件もバラバラです。
・ チーター : 地上最速のけもの。ただし短距離選手。 MAX 105km/h
・ プロングホーン : 地上で2番目に速いけもの。持久力はチーターを凌ぐ。 MAX 88km/h
・ ハヤブサ : 最速の鳥。ただし急降下時。MAX 390km/h
・ ハリオアマツバメ : 水平飛行で最速の鳥。 MAX 170km/h
・ ダチョウ : 地上走行で最速の鳥。 MAX 70km/h
・ シャチ : 最も速く泳げる哺乳類。 MAX 82km/h
・ ジェンツーペンギン: 最も速く泳げるペンギン。 MAX 35km/h
・ オオミチバシリ(G・ロードランナー):
走るのは速いが、飛ぶのは苦手。持久力があるっぽい。 MAX 32km/h以上
・ キ ジ : オオミチバシリに匹敵する速さで走れる。 MAX 32km/h
(ハヤブサの数字が異常……。ジェーンが地味にすごい)
ロードランナーには才能があるのに、天才たちには届かない……。
この子の得意なことは何でしょう?
ごますりと挑発(これも才能ですが)……ではなく、狩りの能力が高いようです。
そして、チーターとプロングホーンにできないのは、空を飛ぶことです。
元の鳥は飛ぶのが苦手ですが、2期のロードランナーは、そこそこの飛行能力があります。
アメリカの某アニメ(ルーニーなんとか)のキャラも、この子のデザインの元になっています。こちらのロードランナーは『弾よりも早いスピードで走る(Wikipediaより)』らしいです。
筆者は、この子には可能性があると思うのです。無理やりですが、考えてみました。
・ なんとかテューンズのロードランナーは、走るのが異常に速い(弾丸以上ということは、音速を超えている可能性がある)。
・ アニメ2期のロードランナーには、実在のオオミチバシリだけでなく、ルーニーなんとかのロードランナーの能力が混ざっているかもしれない。さらに、それがサンドスターの作用によって増幅されている可能性もある。
・ アニメ2期のロードランナーは結構飛べる。
・ 飛ぶのが苦手でも、サンドスターの浮力+低空飛行の地面効果で揚力を増せるかも。
・ 地面から浮いていれば、普通に走るより抵抗が少ないので、スピードが出せるはず。
・ 最初だけ急降下して加速して、あとはサンドスターの力を使えば、大きな運動エネルギーが得られそう。
これらを踏まえた上で、ロードランナーが陰で努力していたとしたら……
地上と空の間の領域で、最速になれるかもしれません。
以下は妄想です。
・ プロングホーン(けものフレンズアニメ2期アフター): MAX 1088km/h(地上走行)
・ チーター(けものフレンズアニメ2期アフター): MAX 1105km/h(地上走行)
・ G・ロードランナー(けものフレンズアニメ2期アフター): MAX 1632km/h(超低空飛行)
・ ハヤブサ(けものフレンズ): MAX 2490km/h(高度12kmからの急降下)
[ 初投稿日時 2020/08/08 08:08 ]