まえがき
筆者は、あまりの暑さでへんたいになってしまいました(元からです)。
一応、いつの出来事かの設定があるのですが、原作から遠く離れており、ぼんやりしています。
昼前。岩石と砂の砂漠。
景色を白くする強烈な太陽光が、岩と砂を焼き、
ガスバーナーであぶるような熱風が吹いていた。 *1
アライグマ 「……にじの橋が……見えるのら……」
アライグマが、ぼーっと、焦点の会わない目で空を見ていた。
フェネック 「微妙に間違ってるよアライさん」 *2
砂を掘って作られたくぼみに、わずかな日陰ができていた。 アライグマは、その日陰に、あおむけにぐったりと横になっていた。そばにはフェネックがしゃがんでいて、アライグマの顔を見下ろしていた。 *3
アライグマ 「……アライさ……ぱりっぱりに乾いちゃうのだ……」 *4
フェネック 「しょうがないなー。わたしのお水をあげるよー」
フェネックが立ち上がった。
アライグマ 「……そんなこと言って……お水はもうないのだ……」
アライグマが、フェネックにやさしく微笑んだ。
アライグマ 「フェネック……長いあいだ、ありがとなのだ……さきに、むこうへ逝くのだ……」
フェネック 「急いじゃだめだよ、アライさん……」
フェネックは、自分のスカートを少しめくって、『何か』を、するするとずり下げた。 *5
フェネック 「お水はここにあるよー」
フェネックは、『何か』を、ぽいっと投げ捨てた。
アライグマ 「なんで脱ぐのだ!?」
フェネック 「んふ……わたしまで熱でおかしくなっちゃったかもー」
フェネックは、熱っぽい目でアライグマを見たが、セリフは棒読みっぽかった。
フェネックが、アライグマの頭をまたいで、顔の真上に立った。 *6
アライグマ 「ななな、なにする気なのだぁ!」
アライグマは、上を直視して、顔を赤くしていった。 *7
フェネック 「お口をあけてねー」
フェネックは、片手でスカートをつまみ上げ、
アライグマの顔に向かって、ゆっくりとしゃがんで…………
アライグマ 「フェネックやめっ! むぐぅ!」
フェネック 「ふぃー……」
フェネックが、スッキリした顔で立ち上がり、スカートを整えた。 *9
アライグマは、赤い顔のまま放心していた。
フェネック 「おいしかったー? わたしのお水」
フェネックは再びアライグマのそばにしゃがんで、アライグマの顔をのぞき込んだ。フェネックも頬が赤かった。
アライグマ 「すっごくおいしかったのだ……はじめは、鼻にぬける香りが強くてびっくりしたけど、お口いっぱいに、濃厚なうまみと、ほどよい苦みが広がって……においは、ドキドキをもり上げてくれるのだ。濃いぃのに、のどごしがいいから、ごくごくいけちゃうのだ。ほんのり甘酸っぱい、さわやかな後味で、もっと飲みたくなるのだ……」 *10
フェネック 「だからって、ちゅーちゅーしちゃだめだよっ☆」
フェネックは子供に注意するみたいに言って、アライグマの唇を、人差し指で、ちょんっと突っついた。
アライグマ 「うぅ……ちゅ……してないのぁ……」
アライグマは、ヒトの耳まで赤くして、目をぎゅっと閉じた。
フェネック 「お水、しばらく出ないからさぁ……」
フェネックが、アライグマの耳に顔を近づけ……
フェネック 「夜までがまんしてね、へんたいアライさん☆」 *11
……やさしく耳をくすぐるような声でささやいた。
アライグマ 「くっはぁー……」
アライグマは両手で顔を覆って、そっぽを向いた。
2時間ほど経って。
太陽が動き、日陰が小さくなって、アライグマの足を光が熱し始めていた。
アライグマは、再び空をぼんやりと見ていた。
アライグマ 「フェネック……ごめんなさいなのだ……やっぱり、さきに逝くのだ……」 *12
フェネックが、アライグマの顔をのぞき込んだ。
フェネック 「逝っちゃだめだってば」
間があった。
フェネック 「……アライさん、まだお水が足りないみたいだねぇ」
フェネックが、自分の右の手袋を、シュルっと取った。
アライグマ 「フェネックぅ?」
フェネック 「アライさん知ってるよね? けもののカラダは、お水がたーっぷりだって」 *13
アライグマ 「からだ?」
フェネック 「かぷっ」
フェネックが、右の手首に噛みついた。
フェネック 「むぅ、むぐむぐぅ……」
フェネックが少し顔をしかめた。
アライグマがハッとして、血相を変えた。
アライグマ 「なにやってるのだフェネック!! やめるのだっ!!」
フェネック 「ぷぁ……」
フェネックが、手首を噛むのをやめて、噛んだところを左手でおさえた。
フェネック 「これ飲めば塩分とれるし、わたしが、ぐーって力をいれて、アライさんがちゅーちゅーすれば、いっぱい出ると思うよー」
アライグマ 「そんなことしたらフェネックが死んじゃうのだ!! ぜったいだめなのだぁ!!」
フェネック 「……ごめんごめん、ちょっとした冗談さー」
フェネックがアライグマに手首を見せた。歯形が付いて赤くなっていたが、出血は無かった。 *14
少し間があった。
アライグマ 「フェネック! 冗談でもやっていいことと悪いことがあるのだ! フェネックを死なせるなんて、アライさんがゆるさないのだ!」
フェネック 「わー、ほんとにごめん! そんな怒るとは思わなかったよー」
アライグマ 「逆だったら……アライさんがフェネックを助けて死んじゃったら、フェネックはどうするのだ!」
フェネック 「ん……」
フェネックは、ほんの少しぴくっとして、目を閉じた。
フェネック 「……痛いとこ突くねぇ…………」
フェネック 「でも……」
フェネックが目を開け、いつも通りの表情に戻った。
フェネック 「ふつうに生きていくんじゃないかなー?」
アライグマ 「ふつうに?」
アライグマは、きょとんとした。
フェネック 「わたしのココロが、だれかさんに引き裂かれてさ、わたしダメな子だなーって、自分のココロを、グサグサ穴だらけにしちゃってさ、あたまが押しつぶされるみたいに痛くなるよ。苦しくて、苦しくて、苦しくて……けど、助けてもらった命だから、死ねない……」
アライグマ 「そういうときは、思いーっきり泣き叫ぶのだ! ちょっと楽になるのだ」
アライグマは明るく言った。
フェネック 「それができたらいいんだけどねぇ」
フェネックが苦笑いした。
アライグマ 「フェネックは、そういうの苦手なのだ」
アライグマが微笑んだ。
フェネック 「悲しいのは、しばらくすれば忘れるからさ。深すぎる傷は、一生……いやー、もっと長ーく残るかもだけど、わたしは、がんばって生きていくよ。 …………生きてきたよ」
アライグマ 「フェネックはつよい子なのだ……」
フェネック 「たまーに、うっかり傷にさわっちゃって、目からお水がこぼれるけどねー」
フェネック 「……アライさんみたいに、さ……」
フェネックは、少し悲しげな顔をした。
アライグマ 「ふぇぇ?」
フェネック 「ごめんねぇ。思い出させちゃったかなー?」
アライグマの目から、水滴がいくつもぽろぽろとこぼれた。
アライグマ 「あれれぇ? なんで、なんでアライさん……」 *15
フェネック 「お水がもったいないよアライさん。 ん……」
フェネックが、アライグマの涙をぺろぺろとなめ取った。
アライグマ 「ふあぁっ、んぁうぅ……フェネッ……フェ……」
アライグマは、くすぐったそうな顔をして、何かを言おうとした。
フェネック 「んちゅっ」
アライグマ 「むっ!」
フェネックが、唇でアライグマの言葉をふさいだ。
ふたりとも目を閉じた。
フェネックが唇の角度を少し変えて、密着させた。 *16
アライグマ 「んんっ」
アライグマが、ぴくぴくっと反応した。
ふたりの唇が離れた。唇の間に飛んだ水滴が、キラッと光った。 *17
アライグマ 「はぁ……」
アライグマは、色っぽいため息をついて、ゆっくりと目を開けた。
フェネックは、ぱちっと目を開け、笑顔を抑えつつ、ほんの少し、ぺろっと舌なめずりした。
フェネック 「ところでアライさん、風にお水がまじってるの、気づいてるかな?」
フェネックが立ち上がった。
アライグマ 「へ?」 *18
フェネックが遠くを指差した。指し示す先に、赤い岩山があった。
フェネック 「あのむこうに、川かなにかがー」
アライグマ 「ええーー!!」
アライグマ 「フェネックのお水飲む必要なかったのだ! フェネックもへんたいさんなのだ!」
おわり
撮影時は、フェネックは下着を穿いていたはずですし、飲ませるのは演技でした……たぶん。でも、撮影後、ふたりは顔を赤くして、気まずい雰囲気になっていました。
(助手) ……いい声が出ちゃう……なんて、想像してはいけないのです。
フェネック 「やー、お水を飲まないと、アライさん、川にたどり着く前に死んじゃってたかもしれないよ? 緊急事態だし、しかたなかったのさー」(まさか、ぺろぺろちゅーちゅーされちゃうなんてねー。きもちよかったなー)
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
なんかもう、いろいろと開き直って書いています。似たものばかり……。
涙をなめてキスしちゃうのは、台本には無く、撮影前にフェネックが提案してくれたものに、アドリブを加えた結果です。というか、フェネックがキスしたかっただけなんじゃないかと……。
このおはなし、元は、フェネックが手首を食いやぶって、アライさんに無理やり血を飲ませて、失血により倒れて、おわり、というものでした。それではあんまりなので、今の形にしました。
砂漠に生息する肉食動物は、獲物の肉から水分を得ているようです。また、少ない水分で生きるため、おしっこが濃いらしいです。
暑すぎるからって、私は、フェネックのお水が飲みたいなんて思ってないですよ。
時代から取り残されている感がありますが、まだ、くだらないネタのストックがあります。でも本当に断片の状態で、公開できるものではありません。そのうちちゃんと書いて投稿したいな……と思っています。
『ごーすとたうん』の、イエネコとごしゅじんの過去とか、プロングホーンとロードランナーの出会いとか、昔話のパロディとか、壊れたモノレールとか、グロいサイボーグとか……。
けもフレ3、アニメ化しませんかね……無理かな。
アニメ化すると、ゲームとは別物になりそうですし。
いや、別物でも良い作品になれば良いんですけど、原作と別物にして高評価を得るには、原作を超えるものを作らないといけないんですよね。大抵、原作のファンから大ブーイングが起きて黒歴史になります(アニメ・漫画・ゲームの実写化は特に危険)。
「明確な原作が無く、自由度が高い」(原作は動物)というのは、けものフレンズの強みかもしれません。だから二次創作が作りやすいんですよね。私は、好き勝手しすぎですが。
[ 初投稿日時 2020/08/28 18:38 ]