ジャパリ・フラグメンツ   作:くにむらせいじ

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 まえがき

 後編です。

 あとがきに設定が書いてあります。
 


〈 とある飼育員の恋 後編 〉

 

 ある春の日。

 

ギンギツネ 「頼めるのはあなただけなの。だから、おねがい!」

 

 大好きなギンギツネに、そんなふうにお願いされたら断れない。危険なことが待っているのは確実なんだけれど。

 

 あやしげな実験器具らしきものがたくさん置いてある部屋に、僕は招待された。

 

ギンギツネ 「……ん……んく……ごく……」

 ギンギツネが、三角フラスコに入った、いかにもヤバそうな紫色の液体を飲んだ。ぽこぽこ泡立っているのが、危険な香りを際立たせていた。

ギンギツネ 「……ごく……ごく……ぷはぁ……」

 自分で飲むなんて珍しい。てっきり、僕が飲まされると思っていたのに。

  僕   「なに飲んだの?」

ギンギツネ 「……これうぁ、けふっ!! けほっけほっ!」

 ギンギツネがむせた。

  僕   「わ! だいじょうぶ?」

ギンギツネ 「けほっ……だいじょうぶじゃないわぁ……ひどい味ねぇ…………」

 ギンギツネが顔をしかめた。

ギンギツネ 「く、ううう………」

 ギンギツネは、涙ぐんで、ぷるぷると細かくふるえていた。

  僕   「それ、すっごくあぶないやつでしょ!」

 ギンギツネが心配だ。この前みたいに、中和剤とかないのかな……。*1

 

ギンギツネ 「…………きた!」

 ギンギツネが目を見開いた。血走った、異常な目だった。

ギンギツネ 「急ぐわよ! 効果はすぐ切れちゃうから!」

  僕   「効果? ……うわあああ!!」

 ギンギツネがいきなりスカートをめくり上げた。心臓が止まるかと思った。

 

 ギンギツネの股間に、なにかが生えていた。僕のより大きい。

 しかも、下着を破らずに貫通している……。*2

 

 ギンギツネは、歯磨きみたいなチューブを持っていた。たぶん医療用のなにかだ。あれも自作だとしたら……僕、人生最大のピンチかも……。

 彼女は、僕の後ろにまわって、腕をつかんだ。ものすごい力だ。膝をつかされ、四つん這いにされた。僕は、抵抗せずに脱力した。緊急時対応マニュアルの『アニマルガールに襲われた場合』だ。 *3 下手に暴れると怪我をする。これでもギンギツネは加減しているのだろう。

 

 こういう時は……

  僕   「いたたっ!!」

ギンギツネ 「『大げさに痛がったり、けがをした()()をすると効果的』

       って、マニュアルにあったわね」

 ……ギンギツネの方が三枚くらい上手だった。どのみち、僕に演技力はない。

 

ギンギツネ 「口からより、おしりからの方が、早くて確実なのよ」

 ギンギツネは、おだやかな口調で言いながら、僕の作業服と下着をずり下げていった。

  僕   「な、なにを言っているのかな?」

 声がふるえた。

 

ギンギツネ 「ちょっとチクってするだけよ」

  僕   「ブスってするんでしょ!」

ギンギツネ 「なるべく痛くないようにするわ」

 つん、っと何かがおしりに当たった。

  僕   「く!」

 ひくっと反応してしまった。ねっとりとした、ギンギツネの指……。

ギンギツネ 「うふふ……ゆっくりいくから、力を抜いてね」

 

 

 ……ここから先は、思い出したくない。

 

 

ギンギツネ 「 わたしの “ いのち ” 、ちょっとだけ、あなたにあげる………… 」

 

 

 

 …………………………………………………

 

 

 

 目がさめた。実験室のベッドで寝ていたみたい。

 

 おしりに異物が入っているような感じが残っていた。……大切なものを失ってしまった……。

 全身が痛いけど気持ちよくて、体が軽い。 *4 音やにおいが、全方向からビリビリ電流みたいに流れこんでくる。違う世界にいるみたい。

 肌の感覚も鋭くて、さわると気持ちいい。なめらかで、不思議にやわらかい。おなかはぷにっとしてて……胸もふわふわ……ふわ……ふ…………

 

 ……ふくらんでるーー!!?

 

 がばっと起きて、体中をさわった。やっぱりだ……。頭には、大きなふわふわの “ けもの耳 ” がある。音がすっごく大きくて、くるくる動く。ぷりっとしたおしりからは、大きなふさふさのしっぽが生えていた。触るとくすぐったくて、自由に動かすことができる。しっぽを前にまわしてみた。茶色くてキツネっぽい。服のそではオレンジ色で、下は白いスカート。耳としっぽ以外は女の子になっていた。おなかの下の方に、きゅーっとした未知の感覚があった。恐る恐るスカートに手を入れて、股間をさわると……予想通り、男のものが無くなっていた。

 

 

ギンギツネ 「あらかわいい……」

 お部屋に、ギンギツネが入ってきた。なんだか疲れた様子だった。 *5

 

 ギンギツネには、僕がどんなふうに見えているのだろう?

 

 

 見えている?

 

 

 …………見られて…………

 

   …………見られ…………

 

     …………見ら……………

 

       ……………み……………

 

         …………見て……………

 

           …………見てよ…………

 

 意識がうすくなっていった。

 

 …………きおくが、とろとろとろけて、くるくるまざっていく…………

 

 うまく説明できないけど、ココロまで変わったのが分かった。目の奥がツーンっとして、頭の底がズレて、くすぐったい。これは、女の子のココロに慣れていないせいだと思う。

 ぼくは、ココロもカラダも、メスのけものになってしまったんだ。

 

 

 ギンギツネが、ぼくの後ろにまわって、しゃがんだ。

ギンギツネ「すんすん……」

 おしりのにおいかぐの、やめてよ……。

ギンギツネ 「やっぱりアカギツネになるのね……亜種かしら?」

 

 アシュ?

 

 ぼくの、ほんとうの名前が浮かんだ。サンドスターが教えてくれた。

 

ぼ く   「……ぼくは、キタキツネだよ……」

 

 自分でも驚くほど、かわいい声が出た。幼いけど、ぼそっと低めな声。内気な性格は変わっていないみたい。

 でも、間違いなくぼくはキタキツネだ。ギンギツネとおなじ、アカギツネの亜種。 *6

 ……やった……ギンギツネと、なかよくしていいんだ……。

 熱いものがこみ上げてきて、体がふるえた。

 

ギンギツネ 「え…………ごめんなさい! すぐに、すぐに戻してあげるわ!」

 ギンギツネがあわてた。なんでだろう?

 頬を熱いものが流れて、冷えていった。

 

キタキツネ 「やーだ! このままがいい!」

 ぼくは、子供のように、甘える声でわがままを言って、がしっとギンギツネに抱きついた。ギンギツネは、こういうのに弱いんだ。

 

キタキツネ 「……これからも、よろしく…………だいすきだよ……」

 

ギンギツネ 「ひっ!」

 なんでびっくりするの?

 

 すっごく近くで、がんばって笑ってみせた。無表情に見えるかもだけど、伝わるといいな。

 

 

 

 おわり

 

 

 

 

 

 

*1
 ギンギツネは、一応、中和や復元などの効果がある薬も作っているようです。

*2
 ポリゴン……じゃなくて毛皮なので。下手をするとスカートも貫通します。

*3
 飼育員の研修では、こういった訓練も行う……という設定です。

*4
 体が痛くて気持ちいいのは、細胞レベルで急激に変化したためです。体が軽いのは、筋力などが上がっているためです。

*5
 ギンギツネは、いのちのかけら(遺伝子)とサンドスターを飼育員くんに注入したので、体力を消耗していました。張り切って楽しみすぎたせいでもあります。

*6
 ギンギツネは毛色が違うだけで、亜種ではないような……。




 あとがき


 逮捕された男は、「TSFが書きたかった。飼育員なら誰でもよかった」などと供述しており、容疑を認めています。



 読んでいただきありがとうございます。

 この主人公(飼育員くん)うらやましいな! 
 ……と思ってしまうのは、筆者の頭が手遅れな証拠です。私には、「キツネのフレンズになりたい」という、常軌を逸した願望があるのです。
 私は『キタキツネは元飼育員』なんて言うつもりはありません。普通のヒトがフレンズになるおはなしを書いたら、なぜかこうなってしまったのです。

 前編だけで終わった方が良かったのでは……と思ったりしますが、本来は後編がメインなので、カットするわけにはいかなかったのです。

 『ジャパリ・フラグメンツ』に奈々さんの名前が出たのは、このおはなしが初です。これまでにも、それっぽい子がチラチラ出ていた気がしますが、たぶん気のせいです。




 ―――― 設 定 ――――


 【 飼育員くん 】

・ 一人称は、『僕』。本名は不明。
・ 年齢不詳。10代中頃~後半と思われる。
・ 年齢の割には、見た目も中身も子供っぽい。
・ 気弱でショタっぽいかわいい男の子。
・ 地味な作業服を着ていることが多い。
・ 周囲に流され振り回される。
・ 基本ですます調で、親しくなった相手(特に、担当するフレンズ)に対しては、くだけた話し方をする。(仮の設定)
・ マメな作業が苦手で、だらだらしたくなる癖がある(自覚はあるが直せない)。
・ 不器用だが仲間想いで、仕事に対する熱を秘めており、動物が大好き。
・ なりたい自分と今の自分のギャップに悩んでおり、自信がない。
 ※ ドラえもんののび太に近いタイプかも?
・ ダメ元でジャパリパークの飼育員に応募し、合格。短期のアルバイトと研修の後、正式に飼育員になった。
・ 寮生活をしている。ルームメイト(男性)がいる。
・ 就職するには若いが、学歴には興味がなかった。好きな仕事をして、知識は実務で得る、という考え方で、飼育員の世界に飛び込んだ。これは、彼にとっては、生まれて初めての大胆な決断と行動だった。
 ※ このあたりの感覚は、我々の住む世界とは異なる模様です。でも、就職の前に専門学校などで動物の飼育の勉強をした方が良い気もします。奈々さんも、そんな流れで就職したと思います。
・ 先輩飼育員の菜々さん(仮名)に憧れている。
・ 性格的に、ギンギツネのような世話焼きタイプとは相性が良い。厳格な人物や体育会系からは『ナヨッとしていて、だらしない奴』と誤解されやすく、相性が悪い。

 ※ 今回はキタキツネになってしまいましたが、飼育員くんは、役者(汎用キャラ)なのです。
 今後、別の作品に登場……しないかもしれません。



 【 ギンギツネ 】

・ アニメ1期のギンギツネに近いが、変な薬を作っているなどの要素が混ざっている。
・ アニメ1期その他のギンギツネと同一個体なのかは不明。
・ 大人かわいいお姉さん。大胆な所もある。
・ 努力家。
・ 少し文字の読み書きができる(発明のために勉強した)。
・ 服の概念を知っている(?)



 【 菜々さん(仮名) 】

・ そこそこ経験を積んだ飼育員(中堅以上。チーフ的なポジション)。『飼育員くん』の先輩。
・ 誰かに酷似している。おそらく同一人物。
・ 明るくて茶目っ気があり、ほんのちょっと天然。常識的な変人。
・ 仕事はきっちりこなす。
・ アニマルガールとは、 “ ともだち ”、“ 飼育員と飼育動物 ” として接する。
・ 後輩の目標になるような、格好よくて頼れる先輩……を目指している。
・ 幾多の問題児のお世話をしてきたためか、後輩に対しても面倒見が良い。だが、後輩とは適度に距離を置いている。
・ 雑誌などの取材を受けたことがある。記事では、『一般飼育員の代表』という扱いだった。
・ 過去に何か『悲しい出来事』があったらしいが、本人は話したがらない。



 【 ネコデレール β Max (ベータマックス)

・ マタタビとキャットニップの成分を濃縮して、サンドスターで変異させ、ネコ科動物のフェロモンに類似した物質を添加し、ついでに磁気テープの香りを加えた、凶悪なクスリ。
・ ネコ科フレンズの脳に侵入して、神経伝達物質のバランスを狂わせる。
・ 理性を麻痺させ、本能的欲求を引きずり出して増幅し、サイケデリックで、死ぬほどたのしい、歪んだ幻覚の世界へ誘う。
・ ツンデレなネコ科フレンズが、好意を持っている相手にデレまくる。
・ 半日~1日ほどで血中濃度が下がり、尿とともに排出されて効果が切れる。それゆえに、水分をたくさん摂取すると効果を抑えられる。
・ ほのかに甘くてさっぱりした味で、飲みやすい。
・ 後遺症や依存性はほとんどないが、素に戻った時に恥ずかしい思いをすることが多い。



 【 紫色の薬(無名) 】

・ 急造品のため名前が無い。
・ キツネのフレンズが飲むと、限定的だが体を変化(化ける)させることができる。
・ 化けるためには強い意志が必要。
・ ただの変化ではなく、『特別なひとに自分の遺伝子を分け与える』能力が得られる。
・ 効果は30分~1時間程度持続する。
・ 『ものが生える』薬は別にもある。そちらは、ただ生えるだけであり、どんなフレンズにも効果がある。紫色の薬とは性質が異なる。
・ 苦くて、シンナーのような刺激臭がする。喉に痛みを感じることもある。(急造品のため、『マイルドにする』ことができなかった)
・ ギンギツネが、お風呂で転んで頭を打った時に思いついた。



 [ 初投稿日時 2021/03/13 13:13 ](分割前)
 
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