まえがき
カラカルを「Big Floppaちゃん」って呼んで、「ふろっぱ言うなぁ!!」と、怒られたい。
秋の雑木林。
カラカル 「こーらーっ!! その子をはなせーーっ!!」
5本の触手がある中型のセルリアンが上昇して逃げた。
その直後、爪攻撃を空振りしたカラカルが、枯葉が積もった地面に着地した。
サーバル&カラカルのコンビと、中型セルリアンの戦いだった。
――― どうして、ボクたちを消そうとするの? ―――
少し離れた場所で、別の小さな丸いセルリアンが、戦闘を見ていた。
サーバル 「みゃ!」
サーバルがジャンプして、触手をかわした。
サーバル 「うーみゃみゃみゃーっ!!」
ジャンプしたサーバルが、宙返りをしながらセルリアンを飛びこえた。
空中で逆立ちになったサーバルの爪で、中型セルリアンの触手が2本切断され、消滅した。
カラカル 「うやぁーーーーっ!!!」
カラカルが走った。急加速。踏み込んだ足が枯葉にめり込み、後方に枯葉が舞った。
パッカーン!! と、中型セルリアンが消えた。
飛び散っていく破片の中を、カラカルが走り抜けた。
カラカル 「……くはぁっ……はあ……はぁ…………」
カラカルが止まって、荒い息をしながら、ゆっくりと振り返った。
セルリアンがいたあたりから、茶色い小鳥が、ピピピッと鳴き、飛び去って行った。
カラカル 「……は…………」
カラカルは、呆然と見上げて、すぐに目をそらし、うつむいて歯を食いしばった。
――― ボクも去ろう ―――
ふわりふわりと、小型セルリアンが飛んで、林へ逃げ込んだ。カサ……と草の音がした。
サーバルとカラカルは、草の音がした方をちらっと見たが、確認には行かなかった。
ふたりは、小鳥が飛び去った方を見つめた。
遠くの空に、茶色い点々が飛んでいた。
サーバル 「カラカ……」
カラカル 「ふー……よかったわぁ。あの子、群れに戻れたみたいね」
白々しく、わざとらしい言葉だった。
サーバル 「つぎは、もっとうまくやろうね! カラカル!」
サーバルは、カラカルに笑顔を向けた。
カラカル 「なによ。励ましてるつもり?」
サーバル 「ううん。またあの子と狩りごっこしたいなーって、思っただけ」
カラカル 「もう一度フレンズになって会えるなんて、どんな奇跡よ!」
カラカルは涙ぐんでいた。
サーバル 「…………最後まで、つかまえられなかったね……」
カラカル 「……うぅ……」
カラカルのけもの耳が、へにゃっと力なく倒れた。
小さなセルリアンが、木の枝の隙間から、ふたりを見つめていた。
―――
カラカル 「ん?」
カラカルが、林の木々を見た。セルリアンの姿は見えなかった。
しばらく、じーっと見つめていた。
――― 見ないで。カラダの流れが縦に変わって、ビリビリする ―――
サーバル 「どうしたの? カラカル」
カラカル 「……なんでもない」
カラカルは、林から目をそらした。
――― ごめんね。こんなモノしかなかった ―――
饅頭ほどの大きさの、緑色の立方体の石が落ちてきて、ぽこん、とカラカルの けもの耳に当たった。 *1
カラカル 「いたっ!」
カラカルの耳が、一瞬、パタパタっと動いた。
彼女は、石を、ぱしっ! とキャッチして、怪訝そうに見つめた。
カラカル 「……なによ、これ」
石には、四角く削ったような奇妙な跡が付いていた。
―――
数日後。
サーバル 「……おなかすいたぁ……」
枯葉が積もった坂道を、サーバルとカラカルが上っていた。
カラカル 「ん……あたしも……」
ふたりとも疲れた様子だった。
カラカル 「あんた、ジャパリまん持ってたでしょ? 全部食べちゃったの?」
サーバル 「……えっと……その、いつの間にか消えてたー! というか……」
カラカル 「はあ……」
カラカルはため息をついた。
唐突に、小ぶりの青リンゴが落ちてきて、枯葉の上に転がった。
それを、カラカルが拾い上げた。
サーバル 「またもらったの? いーなー」 *2
サーバルは、うらやましそうだった。
カラカル 「……もらったんじゃなくて、ひろったのよ」
カラカルは、青リンゴを興味深げに見た。それには、四角く削ったような跡があった。 *3
サーバル 「カラカルのファンがいるのかも!」
カラカル 「ボスでしょ? たまにおやつ配ってるわよ」
サーバル 「でも、こっそりくれるなんて……」
カラカル 「きもち悪いわぁ……」
サーバル 「恥ずかしがり屋さんなんだよ。その子」
カラカル 「ふんふん……」
カラカルは、青リンゴのにおいをかいだ。
カラカル 「……ん…あむ……」
そして、しゃくっと音を立ててかじった。つやのある薄い赤の、ぷるんとした唇が、青リンゴの傷口にキスをしているようで、妙に色っぽかった。
サーバル 「食べてるじゃない!」
――― “痛み” は、あげるモノなの? もらうコトなの? ―――
カラカル 「……んく……すっぱい……あむ……」 *4
カラカルは、少し眉をひそめて、もう少し食べて、
カラカル 「……ん……半分あげるわ」
食べかけの青リンゴを、サーバルに差し出した。 *5
別の日。
カラカルが、ねじれた奇怪なポーズで、うたた寝していた。
サーバル 「やっぱりカラカルのファンだよ!」
カラカル 「ほぇ!」
カラカルが、ぱちっと目を開けた。
サーバルが、カラカルの顔のぞき込んでいた……かに見えたが、その目は、カラカルの顔より少し上を見ていた。
小さな花飾りが、カラカルの右の けもの耳に付いていた。
それは、草の輪っかに鮮やかな黄色い花が付いたもので、輪っかは、カクカクと奇妙に折れ曲がっていた。
カラカル 「なによこれ!」
カラカルが、がばっと起きて、あわてて花飾りを取った。
サーバル 「わたしも寝てたからわかんないんだ。だれかが……」
カラカル 「あたしとサーバルが気付かないって……」 *6
カラカルは引いていた。
サーバル 「取っちゃだめだよ。すっごくかわいいのに」 *7
カラカル 「……やだわぁ……すとーかー じゃないの?」
カラカルはため息をついて…………花飾りを左耳に着けた。
サーバル 「つけてるじゃない!」
――― サンドスターが痛い。もっと教えてよ、
夕方。
サーバル 「これなんか、おいしそうだよ?」
サーバルの手が、ぷちん、と、果物をもぎ取った。凸凹した黄緑色のレモンのような、得体の知れない果実だった。 *8
カラカル 「また苦いやつじゃないの?」
サーバル 「かぷっ………」
サーバルは、躊躇なく果物をかじった。
カラカル 「あ!」
サーバル 「ぅみゃー! すっぱーい! なにこれぇ!」
カラカル 「考えなしに食べるから……」
サーバルが、果物をカラカルに渡した。
サーバル 「おいしいよ! すっぱいけど!」
カラカル 「……………すんすん……」
カラカルは、果物のにおいをかいで……
カラカル 「……んく……」
……少しかじった。やはり、妙に妖艶な横顔だった。
カラカル 「くぅー! しゅっぱい!」
カラカルは、妖艶さを吹き飛ばすように、表情を崩した。
カラカル 「……でも、悪くないわね」
サーバル 「これなら、よろこんでくれるよ!」
カラカルは、すっぱい果物を、もう一つもぎ取った。
カラカル 「はい! おかえし、よっ!!」
カラカルは、果物を投げた。それは放物線を描き、深く茂った草むらに入った。
小さなセルリアンに、つぷっ、と、果物が当たって、スライム状の体内へ取り込まれた。
――― ……すっぱい…………痛いおいしさ…… ―――
さらに数日後。
サーバル 「しっぽのお花、しおれちゃったね……」
サーバルが、カラカルのしっぽを見た。
カラカル 「……そういうものよ。こんなの長持ちしないわ」
カラカルは、しっぽに巻き付けていた、枯れて端が変色した青い花飾りを取って、胸ポケットに突っ込んだ。 *9
カラカルのポケットは、不自然にふくらんでいた。
カラカル 「あいつ……いい加減出てきなさいよ……」
カラカルは、あきれたように言った。
サーバル 「もう、おともだちなのにね」
――― 最後のお花がつぶれたら、最期の痛み ―――
カラカル 「っ!」
突然、サーバルとカラカルがハッとして、同じ方……岩陰を見た。
サーバル 「なにか、くる!!」
岩陰から、小さな丸いセルリアンが飛び出してきた。
それは、ふわりふわり、と、カラカルに近づいてきた。
カラカル 「ふっ!!」
カラカルが跳んだ。
――― さようなら、カラカル ―――
セルリアンが目を閉じた。
パッカーンと、セルリアンが消えた。
傷んだたくさんの花びらと、緑色の立方体が、カラカルの胸ポケットから飛び出した。
カラカルが、ストンと着地した。
カラカル 「……うそ…………」
カラカルは、自分の手を見つめて、放心した。
カラカル 「……いまのセルリアン、攻撃する気、なかった……」
カラカルが苦い顔をした。
サーバル 「えぇ!?」
カラカルが振り返って、空中に溶けていくセルリアンの破片に向かって叫んだ。
カラカル 「なんでよっ!! なんで、わざとやられたのっ!!」
ぽてっと、赤い玉が落ちた。カラカルの足元に。
カラカルは下を見て、目を見開いた。
そして、ふらっと崩れ落ち、膝をついた。
カラカル 「…………く……うぅ……ばかじゃないの…………」
のどに言葉が詰まったような、かすれた声だった。
カラカルが拾い上げたのは、四角く削ったような跡が付いた、赤いリンゴだった。
おわり
あと、肉食のふたりが果物を食べるのか? という疑問もあります。でも、サーバルちゃんは、アニメ2期で野イチゴ(?)を食べていましたし、リアルサーバルも果実を食べることがあるらしいので、リンゴとかも食べると思います。カラカル(フレンズ)も、普通にヒトの食べものを食べていますね。
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
セルリアンくん(?)の考えていることを書くのは、おもしろいけど難しいです。この子は、『けものの心に相似しているけれど全く別の何か』を持っているのです。でも、私はそれを上手く書き表すことが出来ませんでした。
『四角く削ったような跡』は、セルリアンくんが食べた跡です。自分の食べかけを、好きな娘にプレゼントするなんて、ストーカーと言われても仕方ない行為です。
最後のリンゴは甘いでしょうか。それとも、すっぱいでしょうか。
―― Big Floppa のこと ――
“Big Floppa(ビッグフロッパ?)”というネットミームがあります(2019~2020年頃に流行した模様)。Googleで画像検索すると、カラカルの画像が大量に出てきます。動画もたくさんありました。リアルカラカルが想像以上に耳をパタパタ動かしていました。曲も作られています。
“Small floppa(Lil' Floppa)”は恐ろしくかわいいです。
正直、私は何が面白いのか分かりませんが、ミームってそういうものですよね。
これは日本では流行らないかな……。個人的には流行ってほしいのですが。
“floppa”は、“flop”と“Poppa”を合わせた造語のようです。これ、カタカナでどう表記したら良いのか分かりません。私は、仮に『フロッパ』と書いています。
日本語に訳すなら、『パタパタおやじ』という感じでしょうか。
“floopa”という表記も見かけました(フルーパ?)。
“Big Poppa”(洋楽の曲名)のもじりかもしれません。
カラカルの耳が好きなヒトは、世界中にいるんですね(?)
サーバルは“Sogga”と呼ばれています(おそらくBig Floppaから派生したネタ)。
『floppa sogga』で画像検索したら、サーバルとカラカルがなかよくしている写真が出てきて、ニヤニヤしてしまいました。
美しい生き物ですよね。カラカル。
あとは、動画を見て、カラカルの鳴き声が、細い高音のかわいい声だと知ってしまい……。
……こんなの見てたら、 カラカリスト( Caracalist ……カラカルを崇拝する者)になってしまう……。
[ 初投稿日時 2021/05/15 15:15 ]