ジャパリ・フラグメンツ   作:くにむらせいじ

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 まえがき


 細長い虫(ワーム系)が苦手な方はご注意ください。





 


〈 MMZ 〉

 

 

 

 図書館の屋外炊事場。

 

 

かばん 「みんな、おっきくて、元気だね……」

 かばんが苦笑いして引いていた。

 

 籐を編んだ ざるの上に、モザイクがかかっていた。モザイクの向こうで、薄い赤茶色の、うどんのような細長いものが、何本もうねうね動いていた。

 

ハカセ 「この森は土がいいので、掘るといっぱい出てくるです」 *1

 

かばん 「わ! 逃げちゃいますよ!」

 ざるから、細長いモザイクが数本、伸び縮みしながら這い出した。

助 手 「養分たっぷりなので、太くて活きがいいのです」

 

ハカセ 「食べる前に……」

 ハカセは、逃げ出した細長いモザイクを左手でつまんで、ぷらーんとぶら下げた。モザイクがよじれるように暴れた。

 

ハカセ 「こうやって……」

 ハカセは、右手をチョキにして、モザイクの上の方を挟んだ。*2

 

ハカセ 「中身を、しぼり出すのです」

 右手を上から下へぎゅーっと動かして、細長いものをしごいた。モザイクから、ぶちゅぶちゅっと、こげ茶色のものが出て、ぽたっと落ちた。

 

助 手 「土が入っているとおいしくないので」 *3

 

 

 かばんが青ざめていった。

 

 

 はかせは、だらーんとなったモザイクを口に運び、ぷちっと噛みちぎった。

ハカセ 「んー……もぐもぐ……」

助 手 「クリーミィで、あまいのです……んく……」

 助手も、ざるから逃げ出したモザイクをつまんで、食べ始めた。

 

ハカセ 「とってもおいしいのです。かばんも食べるです」

 ハカセは、ちぎれた細長いモザイクを、かばんの顔に近づけた。

かばん 「うわぁっ! え、遠慮しときますぅ……」

 かばんはモザイクから顔をそむけて、遠ざけるジェスチャーをした。

 

助 手 「……あむ……ヒトは、生では食べないのでは? ハカセ……もぐもぐ……」

 助手のつまみ食いが止まらなくなった。

かばん 「そうですよ! おなかこわすから、やめましょう」

ハカセ 「生食が苦手なら、りょうりすればいいのです」

助 手 「……んくっ……火で熱すれば……菌や寄生虫も死ぬのです……ちゅるるっ……」 *4

かばん 「いや……それでもあぶないですし……」

 

 

ハカセ 「……サーバルはよろこんでくれるです」

 ハカセが、ぽつりと言った。

 

かばん 「!」

 かばんが固まった。表情が消えた。

 

かばん 「………………」

 

 

助 手 「あの子、好奇心旺盛で、なんでも食べますし」 *5

ハカセ 「サーバイバルには、こういった知識も必要なのです」

助 手 「ジャパリまんがなくなっても、栄養たっぷりの食料が手に入るのです」

 

 

 少し間があった。

 

 

 かばんは、明るい表情を作った。

かばん 「……みじかく切って、野菜といっしょに炒める、とか、どうでしょう?

     中華風の味付けで……(それなら見た目も良くなるはず)」 *6

 

ハカセ 「いいかんじなのです。じゅるり……」

助 手 「まちがいないのです。じゅるり……」

 

 

 ………………………………………………………………

 

 

 

かばん 「まず、よーくもみ洗いして、ドロを吐かせましょ……うぅ……」

 かばんは、モザイクのかたまりをボールに入れて、水洗いした。うねうねが激しくなった。

かばん 「わわわ! あばれないで!」

 モザイクの向こうで、かばんの指にからみ付いているようだった。

かばん 「……うう……ぬるぬるきもちわるいぃ……」

 かばんは半泣きになっていた。

 

かばん 「次は、これを……」

 かばんは、まな板の上のモザイクを左手で押さえて、右手で包丁をにぎった。

かばん 「ぶつ切りにしま………」

 手が止まった。

かばん 「……あうぅ…………ごめんね……」 *7

 かばんは、ぴくぴくと最後の抵抗をするモザイクに、包丁を下ろした。

 

 

かばん 「……ぐす……皮がぐにゃぐにゃして、うまく切れないよぅ……」

 

 

かばん 「ぃやぁ……なんか、どろって出てきた……」

 

 

 

 

かばん 「ぅわあぁ!! まだうごいてる!!」

 

 

 

 

 おわり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
 「土が良いからいっぱいいる」のではなく、「いっぱいいるから土が良い」と言った方が正しいような……。いや、両方正しいですね。

*2
 手のひらを下にして、少し指を曲げるのがポイントです。

*3
 モグラは、MMZの消化管内の土(要はフン)を絞り出してから食べる習性があったような……(うろ覚え)。

*4
 うどんを一本すする感じです。

*5
 元の動物のサーバルは肉食動物ですが、意外といろいろなものを食べるようです。フレンズ化したら、もっと何でも食べるようになって、肉食という枠からも外れてしまった気がします。

*6
 水分が飛んで縮んで、黒くて硬いものになりそうです。

*7
 ここで『ごめんね』と言っちゃうあたりが、かばんちゃんらしいのではないかと。




 あとがき

 読んでいただきありがとうございます。

 モザイクをかけたら、余計に気持ち悪くなった気がします。
 筆者は、細長い系の虫が苦手です。特に足がいっぱいあるやつがダメです。
 ワーム的なものを食べるけものは多いですね。小型~中型の肉食獣とか、肉食の鳥とか。雑食の子もよく食べます。栄養価が高くて、割と手軽に手に入る食べものなのでしょう。
 さらに、枯葉を食べて土を作って……生態系を底から支える存在と言えます。

 かばんちゃんは、案外こういうの平気なんじゃないか? とも思います。


 昔、『世界ゲテモノ食い』的なTV特番がありました。タレントが世界中に行って、珍品料理を食レポする(食わされる)、スペシャル番組でした。シリーズ化もされていました(放送局が違う、模倣企画もあった気がします)。
 今でも、似たようなことをやっている人はたくさんいますが、あれは地上波、夜8時くらい(ゴールデン)の枠でした。現地の人もほとんど食べない、やらせ一歩手前の物もあったようですし……。今では、いろんな意味で無理な企画かもしれません。

(Google検索したら詳細が出てきました。番組タイトルは伏せます。打ち切りの理由が……)


 [ 初投稿日時 2021/06/07 20:09 ]
 
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