まえがき
へんな話です。ほのぼのを書こうとして失敗しました。
いつもなら前後編に分割する長さですが、切らない方が良さそうな(だらだら長い)内容なので、1話で投稿しました。
木造の廃屋。
サーバル 「なんで? 急にそんなこと」
建物は傷みが激しく、ガラスが失われた大きな窓から光が差し込んでいた。朽ちかけた事務机や書類棚、受付カウンターらしきものがあった。
か ば ん 「ここ、どうなってるのか、前から気になってて……」
ホコリが漂う斜光の中、かばんがサーバルの後ろにしゃがんで、そのおしりを見つめていた。大きく広がったハイウエストスカートの中から、黄色と茶色のしましまのしっぽがのびていた。
サーバル 「はい。どーぞ」
サーバルが、スカートの後ろを少しめくり上げた。 *1
か ば ん 「ちょっと さわらせてね」
サーバル 「かばんちゃん、ほんとしっぽ好きだよね」
かばんは、左手でサーバルのしっぽを押さえ、右手で、しっぽとおしりの境界線をいじった。
サーバル 「……あぅっ……んみゃあ……みぅぅっ……くふっ……」
サーバルは、恍惚とした表情で、甘い声をもらした。
か ば ん 「やっぱり、からだに入り込んでるみたいだね……」
サーバル 「……くすぐった かゆひぃ……みゃはぁ……ふみゃぁぁんぅ……」
か ば ん 「おしりの骨にくっついてるのかな?」
アライグマ 「なにしてるのだ?」
唐突にアライグマが現れた。
か ば ん 「うわあっ!」
かばんは驚いてしりもちをついた。倒れると同時にサーバルのしっぽを引っ張った。
スルッと、しっぽが外れた。
か ば ん 「とれちゃったぁ!!」
かばんは、しっぽとサーバルのおしりを交互に見た。
か ば ん 「ごめんサーバルちゃん! だいじょうぶ?」
サーバルは、自分のおしり……しっぽが付いていた部分をさわった。 *2
サーバル 「なんともないよ? 前にもとれたことあったでしょ?」
か ば ん 「……あったかな?」 *3
フェネック 「ごめんねー、おじゃましちゃったかなー?」
フェネックも部屋に入ってきた。
か ば ん 「いえ、だいじょうぶです」
アライグマ 「はーとまーく? が出てなかったから、ふつうに入ってしまったのだ……」
サーバル 「なにそれ?」
フェネック 「物陰からふたりの声がして、ハートマークがいーっぱい浮かんでるときは、
“うみゃうみゃ” してるから近づいちゃだめだよーって、言ってあったのさー」 *4
アライグマ 「意味はわからないけど、フェネックが言うなら守るのだ!」
サーバル 「 “うみゃうみゃ” なんてしてないよっ!」
か ば ん 「そうですよ! ぼくたち、 “みゃんみゃん” しないです!」
サーバル 「 “うみゃみゃん” してるんだよっ!」
フェネック 「お耳がとけちゃうくらい、あまーい声が聞こえたんだけどー……
いつもの “うみゃみゃん” とは違うねぇ。なにをしていたのかなー?」
アライグマ 「かばんさん、いつもおもしろいこと思いつくけど、今回はふしぎすぎるのだ」
か ば ん 「ちがう生き物の からだが、どうやって つながっているのかな……って……」
ラッキービースト(腕時計型)「フレンズノ体ハ、シッポノ有リ無シにカカワラズ、ヒトとホトンド同じダヨ。フレンズの耳ヤシッポハ、けものプラズムと呼バレル 質量ヲ持ッタまぼろしノようナものデ出来テイテ、元ノ動物ニ近イつくりニなってイルヨ。フレンズノシッポハ、なかば宙ニ浮いてイテ、尾てい骨ヲゆるく包むヨウニ付いてイルンダ。骨ヤ筋肉、神経ナドハ、シッポだけデ自立シテイテ、本体ノ中枢神経系ト微弱な電気刺激で双方向にリンクしてイルという説ガ有力ダネ。シッポノ根本ガ本体ト干渉シテいるヨウニ見エルノハ、5次元空間デ原子トけものプラズムノ粒子ガ存在スル時間ガごくワズカニ違ウ、アルイハ観測される光ノ位相ガずれテイルため、ナドト言ワレテいるヨ」 *5
アライグマ 「よ、よーくわかったのだぁ……」
アライグマは頭を抱えていた。
フェネック 「アライさん、むりしちゃだめだよー」
か ば ん 「まだ研究中、ってことですね。もっともっと知りたいです!」
サーバル 「ボスのおはなしは難しいけど、しっぽとココロがつながってるのはわかるよ」
フェネック 「しっぽをー “わしゃわしゃ” されると、すっごーく感じるからねー」
アライグマ 「アライさんは、わしゃわしゃの達人なのだ!」
アライグマが、かばんが持っていたサーバルのしっぽを、わしゃわしゃなでた。
サーバル 「あははっ! やめてやめて!」
か ば ん 「あれ? からだ から離れても、つながってるの?」
サーバル 「……ってことは……」
突然、サーバルのしっぽが、ボフッと毛を逆立たせ、ピーンとのびた。
か ば ん 「うわあぁ!!」
かばんがサーバルのしっぽを落とした。
サーバル 「うごけー!!」
サーバルのしっぽが、鮮魚のようにビチビチ暴れた。
か ば ん 「なにこれ……しっぽが生きてる?」
ラッキー 「トカゲの一部ノ種ハ、しっぽヲ切リ離シテおとりニするヨ。
しっぽハ、切リ離シテモしばらくノ間動クンダ」 *6
か ば ん 「サーバルちゃんは、トカゲの子じゃないですよ?」
サーバル 「わたし、これの動かしかた、わかってきたよ!」
しっぽが、ヘビのようにうねりながら進んだ。独立した生き物のようだった。
フェネック 「へー……こうなるわけかー」
か ば ん 「かぁーわいいねぇー」
かばんがデレデレな顔になった。
アライグマ 「どちらかと言えば、不気味なのだ……」
フェネック 「まー、見方によってはかわいいかもねー」
アライグマ 「アライさんもやってみるのだ!」
アライグマ 「ふぬっ!」
アライグマが、自分のしっぽを引き抜いた。スルッと簡単に外れた。
アライグマのしっぽが、もぞもぞ動き始めた。毛虫のような、体を波打たせる歩き方だった。
サーバル 「おもしろい動きだね!」
フェネック 「
かばん 「この子もかわいいですねっ!」
アライグマ 「ちょうしんち旋回なのだー!」
しっぽの毛が、もじゃもじゃ動いて、しっぽがその場でゆっくりと回転した。
フェネック 「しょーじき言うとー、ちょびーっと気持ち悪いかなー」
サーバルのしっぽは、4人の会話の間も、勝手気ままに動き回っていた。曲がって伸びて……シャクトリムシのような歩き方だった。
フェネック 「ほいっ」
フェネックもしっぽを外し、両手で持ち上げた。
アライグマ 「あらためて見ると、すっごく、おっきくて太いのだ……」
か ば ん 「先っぽがとがってて、整ったしっぽですね!」
フェネック 「やー、てれるなー」
フェネックのしっぽの先っぽが、ふりふりと揺れた。
アライグマ 「つかまえたのだっ!!」
気ままに動き回っていたサーバルのしっぽを、アライグマがつかみ上げた。
しっぽはうねうね暴れた。ウナギのつかみ取りのようだった。
アライグマが、ほんの少し顔をしかめた。
アライグマ 「……サーバルのしっぽ、ケモノらしい においなのだ」
サーバル 「でも、ちょっと甘いでしょ?」
アライグマ 「アライさんのしっぽも、いいにおいなのだ! くんくん……けほっ」
アライグマは顔をしかめた。
フェネック 「わたしのしっぽはー……すんすん……ほんのーり、すっぱいかもー」
かばんが、もじもじしていた。
か ば ん 「……あの、えっと……」
サーバル 「どうしたの? かばんちゃん」
か ば ん 「……しっぽのにおい……嗅ぎたい……」
フェネック 「わぁ……ほんものだねー……この子……」
かばんは、3人のしっぽを抱きしめて、においを吸った。
か ば ん 「……すんすん……ほあー……んふふふ……」
アライグマ 「かばんさん、至福の表情なのだ……」
か ば ん 「ふへ、ふへへぇ……」
かばんは、酔ったような目をしていた。
フェネック 「なんかー、あぶなくなーい? これ」
サーバル 「あぶないから、 “しっぽ吸いは1日3回まで!” って、決めてるんだよ」 *7
か ば ん 「……やっぱり、ぼく、サーバルちゃんのにおいが、いちばんすき……」
サーバル 「かばんちゃん……」
サーバルの雰囲気が変わった。ごく稀に見せる、儚げで美しい横顔だった。
か ば ん 「いつもの……いいかな?」
かばんも、サーバルに合わせて美形になった。
サーバル 「ふふっ……好きだねー」
アライグマ 「白いお花と、ももいろの はーとが見えるのだ……」 *8
フェネックが、アライグマの後ろに立って、アライグマの目を覆った。
アライグマ 「フェネックぅ?」
サーバル 「みゃははっ! かばんちゃ、くすぐったいよっ!」
フェネック 「……んー……これはー “うみゃみゃん” じゃーないねー」
フェネックが、アライグマを目隠ししていた手を離した。
か ば ん 「すーー……はぁ………すぅーーー…ほぁー……」
かばんが、サーバルのうなじから後ろ髪に顔を突っ込み、ネコ分を吸入していた。 *9
アライグマ 「みんなのしっぽ、洗ってあげるのだ!」
アライグマは、大きな木のたらいを取り出した。
フェネック 「そんなのどこからー……って言うのは、ヤボかなー」
か ば ん 「……あ……洗わないでください……」
フェネック 「うわーぉ」
フェネックが、薄い表情で引いた。
アライグマ 「心配無用なのだ! 洗ったあとのにおいも最高なのだ!」
4人は廃屋の外に出た。さわやかな快晴だった。
アライグマは、3人のしっぽにシャンプーを付けて泡立て、わしゃわしゃ洗った。 *10
サーバル 「みゃああああ……これ、すっごーい、きもちぃー……」
指を細かく動かして毛の汚れを落とし、絶妙な力加減で芯を揉みほぐす……神がかった指使いだった。
汚れが浮いたら、たらいに水を張って、しっぽを放り込み、じゃぶじゃぶすすいだ。
フェネック 「おおぅ……やめふっ……んぅぅ……ぅく……声でちゃうぅ……」
仕上げに、ぎゅっぎゅっと毛を絞って、水分を落とした。
木の枝に、3本のしっぽが引っかけてあった。
アライグマ 「お昼過ぎには乾くのだ」
廃屋に戻り、しっぽの乾燥待ち。
アライグマ 「おしりがさっぱりして、ふしぎなのだ」
アライグマは、自分のおしりをぽんぽんと叩いた。
サーバル 「しっぽふりふり できないから、ちょっと歩きにくいかも」
フェネック 「しっぽって結構重いから、とれるとバランスが変わるのさー」
か ば ん 「ぼくにはわからない感覚だね……ちょっとうらやましいな……」
サーバル 「しっぽがないと、うしろが見えちゃうんだよね」
サーバルは、スカートの後ろをめくった。
か ば ん 「わ! めくっちゃだめだよ!」
フェネック 「かばんさんは、毎日見てるんじゃないのー?」
か ば ん 「毎日じゃないですよ。ときどき、です」
か ば ん 「すっごくきれいですよね。サーバルちゃんのおしり。
なめらかライン、って言うのかな……」
フェネック 「さすが、よく見てるねー」
か ば ん 「うわあぁ! なに言ってるのぼく!」
サーバル 「かばんちゃんのおしりは、ぷりっとおっきくてかわいいよ! カラダ細いのに」
アライグマ 「かばんさんのチャームポイントなのだ!」
か ば ん 「……はずかしいよ……」
フェネック 「アライさんのおしりは、むっちりで、えっちぃ……いやー、色っぽいんだよー。
アライさんはー、案外、オトナっぽくて、うらやましいカラダしてるのさー」
か ば ん 「わかります!」
サーバル 「うんうん! 意外だよねー!」
アライグマ 「案外とか意外とかなんなのだっ!」
か ば ん 「そのギャップも、アライさんの魅力ですよ」
アライグマ 「フェネックのおしりは、きゅって締まってて、ちょいぷにでかっこいいのだ!」
か ば ん 「ちょいぷに?」
サーバル 「小さいおしりもかわいいよね!」
フェネック 「そうかなー? なんか、目指してるものとちがうかもー」
アライグマ 「アライさんは、そんなフェネックのおしりが……だいすきなのだ!」
フェネック 「……ぉわぁ……なにを言うのさ……」
フェネックは、顔に手を当てて、クラクラっときた仕草をした。
か ば ん 「みんな、しっかり見てるんですね……」 *11
フェネック 「こういうとき、ヒトは、『きゃー…みないでー…えっちー…』とか言うのさー」
のんびりゆるくて、棒読みっぽいセリフだった。
サーバル 「きゃーーっ!! みないでよっ! かばんちゃんのえっちー!!」
サーバルは、とても楽しそうだった。
か ば ん 「……ちょ、ちょっとサーバルちゃ……」
アライグマ 「きゃー!! みないでー!! えっちなのだぁっ!!」
アライグマもノリノリだった。
フェネック 「いーねー」
………………。
じーっと、かばんを見つめる3人。期待がこもった、やさしい目をしていた。
か ば ん 「……ぼくも、やらなきゃだめ?」
アライグマ 「嫌なら、むりにやらなくていいのだ」
フェネック 「かばんさんは、ひらひらじゃぁないしねー」
サーバル 「でも……見たかったなー……」
か ば ん 「……ぁう……」
フェネック 「だいすきな誰かさんに、いけないとこ見られちゃったよー……
……って思えば、いけるんじゃないかなー?」
サーバル 「……みぃたかったなー……」
サーバルの残念そうな横顔。
か ば ん 「…………」
かばんが、意を決して顔を上げた。
かばんは、ばっ! と、おしりを押さえた。
“ショートパンツがずり落ちてしまったふり” だった。
か ば ん 「きゃァァーー!!! みみみっ、みぃないでくださーーいっ!!!」
目を回して、声が裏返ってかすれてしまう、迫真の演技だった。
彼女は急にしおらしくなって、うつむき、真っ赤になった顔を両手で覆った。
か ば ん 「……ぃやぁ……えっちぃー……ですよぅ……」
そして、手の隙間から、うるんだ目でサーバルを見た。たっぷりの愛らしさと、一握りのいじらしさと、一滴の色気を含んだ、流し目だった。
………………。
かばんが顔を上げ、スーッと素に戻り、照れながら皆を見た。
か ば ん 「えっと……どうだった……かな?」
フェネック 「さっすがー、演技力エグいねー、かばんさん」
アライグマ 「おそろしい子なのだ……」
視線に撃ち抜かれたサーバルは、頬を赤くして、ぽかーんと放心していた。
サーバル 「……ごめ……見ちゃった……」
フェネック 「やー、演技じゃなかったのかなー?」
か ば ん 「ぅえぇ!? お芝居ですよ!」
アライグマ 「ところで、なんで、ひらひらの中見られたくないのだ?」
アライグマは、自分のスカートをひらひらさせた。
サーバル 「これは毛皮なんだから、見られてもいいよね。全部脱いだとこ、
じっくり見られたらはずかしいけど……」
フェネック 「これも、ヒトのふしぎだよねー」
か ば ん 「言われてみれば、ふしぎかも……でも、恥ずかしいものは恥ずかしいよ……」
乾いてふわふわ感を増した、サーバルのしっぽを、かばんが抱きしめた。
か ば ん 「すんすんすん……はぁ……んぅーー……」
顔をうずめて、においを吸い込んだ。
か ば ん 「……あぁ……しっぽがお日様のにおい……すてき……」 *12
ふわふわになったアライグマとフェネックのしっぽが、くるりと抱き合った。
サーバル 「アライグマとフェネックは、しっぽもなかよしなんだね!」
ふたりのしっぽは、うねうね、もぞもぞと、絡み合うように動いた。
か ば ん 「ふたりのしっぽからハートが出てるよ?」
フェネック 「こうやって、しっぽが交わるとー、赤ちゃんができちゃうかもねー」
アライグマ 「えーー!!」
サーバル 「あたらしいしっぽが産まれるんだね!」
か ば ん 「それって……もう、しっぽだけの動物だよね……」
サーバル 「みゃ?」
サーバルが何かに気づいて、おしりをさわった。
サーバル 「……なんか、おしりがムズムズする……」
サーバルのおしりから、シュルシュルっと、しっぽが生えてきた。
フェネック 「おー、しっぽが戻ったねー」
か ば ん 「ぅええ!」
アライグマ 「こっちから産まれたのだ!」
ラッキー 「トカゲのシッポは、切リ離シテモまた生えてクルヨ」 *13
か ば ん 「サーバルちゃんはネコなんですけど……」
サーバル 「これ、余ったからかばんちゃんにあげるよ」
か ば ん 「え?」
サーバルは、分離したしっぽの端を、かばんのおしりの上……尾てい骨に押し付けた。しっぽの端が、つぷっと体内に入った。
か ば ん 「ふああぁ……だめぇ……」
しっぽが少し細くなり、黄色と茶色のしましまから、かばんの髪に似た濃いグレーに変わった。
フェネック 「おお?」
しっぽの先っぽが白くなり、小さな赤いリボンが付いた。
サーバル 「わー!! かーわいいー!!」
頭に、ぽこっと猫耳が現れた。これも濃いグレーだった。
手には、大きくてもふもふの “猫の手グローブ” が現れた。
変身したかばんが、 “にゃーんポーズ” をとると、キラキラの小さな星と、細かなハートマークが飛び散った。かわいらしい効果音付きで。
アライグマ 「なんなのだ……この、愛くるしい生き物は……」
サーバル 「この子は “かばんにゃん” だよ! ひさしぶりだねっ!」 *14
か ば ん 「うん! ひさしぶりだねサーバルにゃん! ……ひさしぶり?」
フェネック 「くりくりのお目目に、もちもちふわふわな、にゃんこのお耳、おっきな手に、
ぷにぷに肉球、しっぽには、おしゃれアクセまで付けちゃって……
……えげつないねー」
か ば ん 「はわわぁ……はずかしいですぅ……」
かばんから、ぽわっ、と小さなハートが飛んだ。
フェネック 「この子、ずーっとハートマーク浮かべてるねぇ……」
かばんの頭の斜め上に、ピンク色のハートが一つ、ドキドキしながら浮いていた。
アライグマ 「あざとかわいいが過ぎるのだ……」
サーバル 「かわいすぎるものを見ると、なみだが出るんだね……」 *15
サーバルは、ぐーの手で涙をぬぐった。
か ば ん 「サーバルにゃんの方が、かわいいよ!」
サーバルとかばんが見つめ合った。
サーバル 「だいすきな子は、かわいく見えるんだよ!」
ふたりは、少し照れながら、にっこりと笑い合った。
そして、自然に顔を近づけて行き……。
ふたりの周りに、大小様々なハートが、ぽわぽわぽわ……
……ではなく、ぶわわわわー!!! と大量に浮かんだ。
アライグマ 「出しすぎなのっ、どわぁーー!!!」
フェネック 「らーぶらーぶ……」
ハートの洪水に飲まれるアライグマとフェネック。
フェネック 「……ハートマークはー、ほどほどに、たのしく使いましょーー…………」
再び、快晴の屋外。
フェネック 「ほいほいーっと」
フェネックのしっぽから、毛玉が、ぽんぽんぽん! っと、いくつも飛び出した。それは、シャボン玉のようにふわふわと宙を漂った。
サーバル 「わぁー! 綿毛みたい!」
アライグマ 「怪奇現象なのだ!」
フェネック 「秘技! けせらんぱさらーん! ……なーんてねー」 *16
フェネックが、無表情なドヤ顔をした。
サーバル 「けせら…せらん?」
フェネック 「わたしは、ハートマークとは違う方向で、がんばってみたよー」
再び、フェネックのしっぽから、毛玉がぽこぽこ飛んだ。
アライグマ 「フェネックやめるのだ!! そんなことしたらしっぽが減っちゃうのだぁ!!」
フェネック 「再生するからだいじょうぶだよー」
たくさんのしっぽの毛玉が変形して、鳥のような形になった。
そして、パタパタ羽ばたいて、はるか彼方へ飛び去って行った。 *17
元の姿に戻ったかばんが、分離したサーバルのしっぽを持って、ぶつぶつ言っていた。
か ば ん 「……落ちた所で根を張って……しっぽの赤ちゃんが生えて……大きく育って……」
おわり
あとがき
読んでいただきありがとうございます。
フレンズのしっぽは、血が通っていて、暖かくて、においもする。そしてとても敏感。そうであってほしいと、筆者は思います。
けものプラズムが幻影や立体映像のようなものだったら触れられないですが、ちゃんと触れますね。でも、ヒトの体とけもののしっぽの、骨格、筋肉、血管などがつながっているのも無理があります。ヒト側の骨格を変形させないと骨がつながりません。ヒトの血液をネコのしっぽに流して循環させたら、血液の成分が違うので正常に機能せず、最悪、しっぽが壊死してしまうと思います。体のつくりが違うので、つなぐのは非常に難しいのです。
でも、独立した生き物のように動くのは、もっとありえないですね。
けもの耳はさらに厄介で、内耳(中耳)と脳が干渉するという大問題があります。
今回は……
けものプラズムで出来ているパーツは、ヒトの体と干渉しているように見えて、重なっておらず、観測できないほどわずかにズレた場所(時間?)にある。
これらは、半分宙に浮いた状態になっており、ふわっと体にくっ付いている。生体的には、ヒトの体と分離している(骨・筋肉・神経・血管などは、つながっていない)。
しっぽだけで自立して生きている。エネルギー源はサンドスター。
本体の脳からの命令が、電気信号でしっぽに伝わる。しっぽの感覚はその逆。しっぽが体から分離しても、なぜかこの双方向通信は切れない(無線接続によるリモートコントロール)。
……という、無茶な設定にしました。それゆえに、引っ張ると簡単に取れてしまうのです。
しかし、この設定だと、けもの耳を引っ張ると中耳・内耳が一緒に抜けてしまうので、グロいことになりますね……。
フレンズの けもの耳に中耳・内耳は存在せず、耳介が、集音板あるいはブースターの役割をしているだけ。実際に音を聞いているのはヒトの耳である……そんな設定が良さそうです。
『3Dモデルで別パーツだから』というメタっぽい理由もあります。
これは筆者のお遊びです。けものフレンズはこういうことを考える作品ではないと思います。ヒトの姿に徹底的にこだわって けものを描き、けものを通してヒトを描くのが、けものフレンズだと思います。動物がテーマの作品ですが、実は人間を描いているんですよね。
登場人物にハートマークが見えてしまう謎の現象は、当初全く無かったものです。書いているうちに、キャラが勝手にハートマークをネタにし始めたのです。本文の中に『♡』を使わないのがこだわりです。いや、♡書きまくった方が良かったのかな……。
気づけば、『ジャパリ・フラグメンツ』の初投稿から4年以上経っていました。
[ 初投稿日時 2022/02/22 22:22 ]