ジャパリ・フラグメンツ   作:くにむらせいじ

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 まえがき

 きれいなカラカルは好きですか。

 PC版(横書き全角44文字)を基準に書きました。スマホでは筆者の意図と違う表示になる可能性が高いです。横に倒すと良いかもしれません。
 


〈 カラかる・からカル 〉

 

 カラカルが眠っていた。

 

 そこは太い木の枝の上で、フレンズの手が届かない場所だった。彼女は、手足としっぽを器用に使って、滑り落ちないように体を支えていた。腰が不自然に曲がっていたが、子猫のような穏やかな寝顔だった。 *1

 

 

……………………………………………………

 

 

 カラカルが目を覚ました。

 

 覚ましてないわ。ここも『 ほわほわした場所 』だもの。

 

 彼女は、四つん這いになって、ぐーっと背中を反らせて おしりを後方へ上げる、 “猫の伸び” をした。気持ちよく、足や手指までしっかりと筋肉を伸ばす。 *2

「んーーー…………」   

 次は逆方向、頭を前へ突き出す。

「……ほぁー……」    

 ストレッチ運動完了。 *3

……よく寝たぁ……じゃなくて、よく寝てる。

 

 木の枝に、琥珀色のリンゴがいくつもぶら下がっていた。カラカルの頭上の枝にも。

 

  あたしは知っている。

 あたしは何人もいる……何人もいたってことを。 *4

 

 カラカルは、目の前に浮かんでいるリンゴに触れた。

 

長く生きてると、いろんなこと、あるのよね。

 

 

……………………………………………………

 

 

バスの中に、たくさんのフレンズがいた。これは旅の思い出ね。

 

  あたしの隣にいるのは、サーバル。いつもニコニコ能天気。ドジっ子でかわいい。

 

でも、すっごーく芯が強いのよね。  

 

 あたしとサーバルは腐れ縁……じゃなくて、長年つれそった相方、ってところかしら。

すき

……つがい じゃないわよ?      
  

 

 それにしても、ヤバすぎる非常事態だったのに、ゆるい旅してたわねぇ……。

 

 

 

急に視界が変わって、クラクラっとなる。 

 

 

 

 白と黒の世界……だけど、ほんのり色が分かる。遠くの山がぼやけている。

 これは、カラカル本来の見え方だ。

あたしはヒトよりも目が悪い。  

 

 でも、耳の先の毛で、風の色を感じる。遠くの鳥がどこに何羽にいるか、音で見える。

 濃い血のにおいがする。毛皮と土と草のにおいもする。鼻を刺すみたいな。

 

……でも嫌じゃない。   

 

 目の前に、血まみれの毛皮が落ちている。おいしそうなお肉と、黒っぽい骨がある。

 死ぬ思いで手に入れた獲物だ。

 ……サーバルから奪ったごはんだ。  

 

 あたしは、がぶがぶがぶ って、無心で食べた。飲みこむと、ひさしぶりの食べ物で、つぶれた おなかが びっくりした。あぶら身がちょっぴり生臭くて、やわらかい内臓は苦かった。

 

こころが とろける くらい、おいしい。

 涙が流せればよかったのに……。

 

 

 

ザーっと灰色の砂嵐に埋め尽くされて、世界が変わる。

 

 

 

 つぎは、かめら? の前でおしゃべりして、歌を歌っているあたし。

 

 まるでペンギンの子みたいね。アイドルって、ひとりでもいいのかしら?

 

 おどりもいい感じね。なんだか楽しそう。こんなあたしもいたんだ。 *5

 

でもあたしは、アイドルなんてガラじゃないわ。

 

 はりきって、ぎたー? を振り回して おどったら、足に黒い線がからまって、びったーん!! 

って転んだ。

 

  ……これじゃサーバルよりドジっ子じゃない……。

 

慣れないことやるから カラ回りするのよ……。

 

 

 

世間知らずでドジなあたしもいれば、物知りでオトナっぽいあたしもいる。

 

 あたしは、サーバルからちょっと離れたところにいて、危なっかしい時に助けるの。でも そのぶん、あたしは普通の子になって、影が薄くなっちゃう……

 

クールなつもりが、いつの間にか はしゃいでるんでしょ?

 ……それも悪くないわ。

さみしすぎて暗黒面に堕ちて、ダークカラカル……とか言い出すよりはマシね。

 

 

 

 突然ポコッと浮かんだ言葉、『 ママ 』。

 

ママ?

 

 そう呼ばれたこともあったわねぇ……。

 

 これは、照れくさくて楽しい思い出。のはずなんだけど……どうしてか、胸にチクって刺さる。

 ほんとうのお母さんになるって甘くない。実際にやってみて、痛いくらい分かった。

 

 熱風がよどむサバンナ。

   あたしは、ぐったりした赤ちゃんをくわえて、うしろ足を引きずって歩いていた。

水場は、気絶するほど遠かった。

 

  ……あれ? そんなことあったかしら?

 とぼけても過去は変わらないわよ。 

 

 かわいくて、かわいくて、かわいい赤ちゃんが……冷たく眠って、動かなくなったら……

 

……赤ちゃんが、おいしいお肉に見えた。  

 

 野生のカラカルなら、死んだ子を食べて、残った兄弟を育てて、次の子を産むのが正解ね。けものはお墓なんて作らないもの。放っておけば腐るか、だれかが食べる。だれかの、いのちになる。

  *6

 でも、あたしは……どうしても食べられなかった。 

 

……『ママ』って言葉、おぼえてたから……

 

 カラカル失格ね。    

 

  ………………………っぅ………。

 

 むかしのこと思い出して涙が出るって、ヒトらしいわ。野生のカラカルには分からないことね。

 

 

 

大きめの、虹色の玉に触れた。新鮮な泡ね。

 

 

 

 このキオクの中には、ヒトがふたりいるわ。

 ひとりは、出会うたびに名前が変わる、かわいい男の子。女の子のときもあったかしら?

 ケンカしたのも、いい思い出ね……。

 

どーでもいいよ、あんなやつ……。  

 

……んふふっ。   

   思い出し笑い。

熱くて、ドキドキ気持ちいい。

    まぁ、手のかかる弟みたいなものだわ。

 

 もうひとりの、ぼんやり見えるヒトは誰だろ? なじみがあるけど、思い出せない……。

 園長? 隊長? かばんさん? においが似てるけど、ちがう……。

 

 

あのヒト、こっち見てる?

 

 

  “カメラ目線” になるカラカル。怪訝そうに “あなた” と目を合わせ、はっとしました。

 

 

「あぁっ!! あんたキオクじゃないじゃない!! そこに いるのね!!」

 

 

 やだ、こころの中 のぞかれてる……  

 カーっと頬を赤くするカラカル。

 

 「なによ! 見ないで! えっちぃ!」

 

 彼女は、視線をずらし、目を泳がせます。

 

 そうだ。何度も何度も会った、謎のヒトだ!

 

 少し眉をひそめて、考えて……

 

 

 再び “カメラ目線” になるカラカル。

 

       “おねえさん気取り” で……

 

  「あなたも、こころの中を見せなさい!」

 

 ……ドキッとさせる、無邪気な笑み。  

 

「それで おあいこ よ!」

 

 

 

 彼女は、あなた を見て、ぐいーっと顔を近づけて、興味津々な感じで尋ねます。

 

 

 

「ねぇ、あなたは、どのカラカルが いちばん あたし らしく見えた?」

 

 

 

 ほんの少し首をかしげて、一瞬視線を揺らし……。

 

 

 

「あなたのカラカル……あなたの中にいる あたしは、どんな子なの?」

 

 

 

 

 もう一度、あなた の目を、まっすぐに見て。

 

 

 

 

「おしえて?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
 カラカルの赤ちゃんは、まるふわ(?)で、かわいいです。

*2
 ネコが おしりを上げて伸びる時は、指を開いて、爪を出すことが多いようです。全身のストレッチです。ただ、木の枝の上で猫の伸びをするのは無理があります。

*3
 猫の伸びは、大抵、前後方向が1セットになっています。この後、背中をアーチにして上に伸びる場合もあります(これはレアかも?)。

*4
 これは公式設定から大きく外れます。『ほわほわした場所』は謎です。

 覚めているのに夢の中……。

*5
 このアイドルっぽいカラカルは、“別の世代” 、“平行世界の話”、“別個体の記憶の混入” など、どう解釈しても良いです。 “現実世界(我々のいる世界)でキャラソンを歌う、カラカルのコスプレをしたヒト” というメタっぽい解釈もできます。

*6
 イエネコは、自分の子供を食べることがあります(理由はいくつか考えられます)。カラカルがそういう行動をするのか、筆者は知りませんが、自然界では、自分の子供を食べる行動は珍しくないようです。




 あとがき

 読んでいただきありがとうございます。

 作品が完成する場所は、作者の手の中ではなく、見る人の脳内なんですよね。

『元の動物のカラカル』
『けものフレンズのカラカル(ゲーム・アニメ・マンガ・けもV……)』
『けものフレンズを見た筆者の中に形作られたカラカル』
『筆者がこのおはなしで描こうとしたカラカル』
『このおはなしを読んだ方の中に形作られたカラカル』
 みんな違うカラカルです。

 三人称、一人称、二人称を切り替える、無茶な書き方をしました。
 “こうしたい” っていうぼんやりしたイメージはあるのですが、技量も知識も足りない……。

 テキストが左右に揺れているのは、カラカルの気まぐれです。人称切り替えとは無関係です。
 心の中のチャットで、(自分に対して)横槍やツッコミ・ヤジを入れるイメージです。アウトプットする気が無い、とりとめのない思考です。それを見られたら恥ずかしいですよね。


 そういえば、ここ、table タグが使えますね。でもシンプルな文章にしたいですし、あんまり複雑にすると、文章(SS)じゃなくなるのでは? とも思うので、使いませんでした。

本音は、めんどくさいからです。 



 [ 初投稿日時 2022/07/07 07:07 ]
 
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