「はあ……」
放課後、ようやく長い1日を終えて大きく息をはいた。
これまで時間が長く感じた初めてかもしれないな……。
俺が学食を移動する時に後をぞろぞろと着いて来たりして正直嫌な感じを受けたし、それにモーゼの海割り状態にあまりにヒドかったのか千冬姉の一喝で蜘蛛の子散るかの如く解散していった
「ああ、織斑くん。まだ教室にいたんですね。よかったです」
「はい?」
呼ばれて顔を上げると、副担任の山田先生が書類を片手に立っていた。
「何か用ですか?」
「えっとですね、寮の部屋が決まりました」
山田先生はそう言って部屋番号の書かれた紙とキーを手渡された。
「俺の部屋決まってなかったはずではないんですか?確か1週間は自宅から通学してもらう話だったはずですが……」
「そうなんですけど、事情が事情なので一時期な処置として部屋割りを無理矢理変更したんです……織斑くんは何か政府から聞いてますか?」
最後の部分は俺に耳打ちをして来た。
はあ、なるほどな……俺が男のIS操縦者となってしまったので保護と監視の両方をつけたいんだろうな……。
正直、嫌な感じは拭いきれないな………。
「そう言う訳で、政府特命もあって、とにかく寮に入れるのを最優先したみたいです。1ヶ月もすれば個室の方が用意出来ますから、しばらくは相部屋で我慢してください」
「わかりました。それなら一度家に帰っていいですか纏めておいた荷物を取りにいきたいんですが」
「あ、いえ、荷物なら―」
「私が手配しておいた。ありがたく思えよ」
山田先生の言葉を遮るように千冬姉が現れた。
「昨日私が伝えておいたかいがあったな玄関に纏めてたのを運ぶだけで手間がかからなかったぞ」
そう言って笑み浮かべる千冬姉。
そう、入学式の前日に千冬姉から何かあるかわからんから最低1週間分泊まれるくらいの荷物をまとめておけと連絡して来たのだった。
まあ、伝えてきたのは朝だったのでそれほど苦労はしなかったがまさかこんなに早く必要になるとは思わなかったな………。
「じゃあ、時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は6時から7時、寮の一年生用食堂で取ってください。ちなみに各部屋にはシャワーがありますけど、大浴場もあります。学年ごとに使える時間が違いますけど……えっと、その、織斑くんは今のところ使えません」
「わかりました。使用のメドがついたら教えてください」
「えっと、それじゃあ私たちは会議があるのでこれで。織斑くん、ちゃんと寮に帰るんですよ。道草くっちゃダメですよ」
と、山田先生から心配から注意の言葉を頂いたがまあ、大した距離ではないが今日の状態からして無事にたどり着けるか疑問だけどな……。
俺は2人がいなくなるのを見送ってから教室を後にする事にした。
――――――――――――
「えーと、ここか。1025室だな」
俺は部屋番号を確認して、ドアに鍵を差し込む。あれ?開いてるじゃん。
部屋に入る、まず目に入ったのは大きめのベッド。それが2つ並んでいる。そこいらのビジネスホテルより遥かにいい代物なのは間違いない。こう、見ているだけでふわふわ感が醸し出されている。これが格の違いというやつだろうか。
とりあえず荷物を確認して、俺は早速ベッドに飛び込む。ふかふかのベッドと羽毛布団に高級感を確信した。
「誰かいるのか?」
突然、奥の方から声が聞こえた。ドア越しなんだろうか?
そういえば女子と同室と言う事を山田先生から聞かされていたのを部屋の高級感ですっかり忘れてしまっていた。
「ああ、同室になった者か。これから一年よろしく頼むぞ」
―声を聞いて何か物凄い嫌な予感、ぞわぞわと背後からくる感じだ……。
「こんな格好ですまないな。シャワーを使っていた。私は篠ノ之―」
「―箒」
そうシャワー室から出てきたのは今日再会した幼なじみだ。
今し方までシャワーを使っていた。そしてシャワー室から出てきた。
部屋の同室相手が女子だと思ってそのままの格好で出てきたので箒はバスタオルを纏った姿なのでなので体のラインがまるわかりだ。
シャワーを浴びていたので髪を下ろしており、それから鍛えられているのか十二分に引き締まった体をしていて、それでいて女性的なラインを主張してる。
タオルで押さえている手の下では、かなり大きな胸の膨らみが見て取れた。何せ箒の最後を見たのは小四の頃までだ。あの頃の面影なんか微塵もない。
「……………」
俺の姿を見て、きょとんとした顔をしている箒。しかし対象的に俺は背中から冷や汗だらだらの状態だ。
これから起こるであろう出来事に身構えるしかない……。
覚悟は出来た。さあ、どんとこい!
「ん?一夏?何でお前がここにいるんだ?」
「へ?」
予想していた展開と違っていた俺は思わず間抜けな声をあげた。
「な、何かないのか?ほら悲鳴をあげるとか怒ったりするとかさ……」
箒の落ち着いた様子に恐る恐る聞いてみた。
「何を言っているんだ?私と一夏は婚約者同士なんだぞ。これくらいの事などに動じたりしない」
「そ、そうか……」
箒の言葉に少し、ほっとしている俺がいる。
「ふふっ、この姿に欲情したなら襲ってもいいんだぞ」
そう言って、前屈みなり、胸元を腕で締めて強調させてきた。
まるでグラビアアイドルがやりそうなポーズだ。
「か、からかうなよ!」
箒の誘いに慌てて顔を背けるしか出来ない俺はすでに顔が赤くなっているがわかる。
「私は本気だがな」
箒は俺の態度を見ながらクスクスと笑っていた。
俺は箒に完全に振り回されてしまっていた………。
――――――――――――
「それでお前が私の同居人なのか?」
「あ、ああそうだ」
あのハプニングから少しの時間が立ち、箒は浴衣に着替えて聞いてきた。
「まさか私と同じ部屋にするように希望したのか?そうだったら嬉しいが……」
「いや、残念ながら急の事だから俺の意見はないよ」
「そうか……」
俺の答えに箒は少しばかり残念そうな顔をしていた。
「と、とりあえず一緒の部屋に暮らすのだから、ルールを決めようぜ」
箒の表情に少しだけ罪悪感を感じながらも強引に話題をそらした。
でないと正直俺の精神がもたない。
ただでさえ、6年ぶりに再会した幼なじみはすっかり大人の女性として成長しており、先ほどの行動や湯上がり姿を見てしまって心臓バクバクだ。
一応、言っておくが病気じゃないぞ……。
「ああ、そうだな……」
そうして俺達は部屋のルールを決める事にした。
簡単な決まり事やシャワー室を使用する時間など話し合った。
シャワー室を一緒に使うかと言う箒の意見に慌てて時間をずらす妥協案を出して回避するので必死だった。
「よし、大体は決まったな。後は聞きたい事があるんだがいいか?」
「ん?何だ?」
「その……俺と箒が婚約者になったっていうのは本当なのか?」
そう、俺が今一番の疑問に思っている事を箒に聞いてみる事にした。
「ああ、本当だ」
「い、いつから?」
「1年ぐらい前に千冬さんに会ってな、それから直接一夏と婚約者になる事を言われたんだ」
「そうなのか……」
この件は千冬姉が関わっているのか………しかし、箒の意見ぐらいは聞いて欲しかったな……。
「す、すまん。千冬姉が勝手な事して迷惑だったろ」
「いや、迷惑じゃなかった。むしろ私は嬉しかったんだ」
「嬉しかった?」
「お前は気付いてなかったかも知れないが6年前からずっと私は一夏の事が好きだ」
「えっ?ええ―――っ!?」
俺は箒の突然の告白に思わず大声を出してしまう。
「まあ、気付かないのは仕方ないな。あの頃は素直に私の気持ちを伝える事が出来なかったからな……その後急に転校が決まったから想いを伝える事すら出来ずに離ればなれになって私は悲しみと憎しみでいっぱいだったからな……」
そう表情が暗くなる箒を見て俺はどう言葉をかけていいかわからない……。
確かに束さんからしたらISを認識してもらう為とはいえ、あんな事をしてしまえばその代償を受けるのは篠ノ之家の人達だ。
世界の手から逃れる為束さんは行方不明となったので当然政府としては保護を名目に警護しやすい場所に移動しなければならない。
ただ束さんは両親であるおじさん達との仲はあんまりよくはなかったが妹の箒は溺愛していたからな………。
箒からしてみれば理不尽に引き剥がされた俺と千冬姉や友達と離ればなれになり、政府からの協力という名の取り調べを受けていたから正直に言えば恨まれても仕方ないのは確かだな……。
「あのさ……箒、その束さんの事は今でも恨んでいるのか?」
重たい空気の中絞り出された言葉はこれだった。
「いや、恨んではいない。ちゃんと姉さんと話し合った」
「そうか……」
箒の言葉を聞いて正直ホッとした。
「姉さんも私の事情に心を痛めていたらしく泣きながら謝ってくれたからもう憎しみはなくなった」
「良かったな仲直りできて」
「それにこんな形とはいえ、私の想いが叶ったんだ。こんなに嬉しい事はない!一夏と会えるのを楽しみにしてたんだ!」
嬉しげに語りながら俺に向かって抱きついてくる。浴衣なのでダイレクトに箒の柔らかさが伝わる。
特に体温やら胸の柔らかさが俺の心拍数が上がっていく。
「ちょ、ちょっと待て―」
「一夏はこうされるのは嫌なのか?」
「い、いやじゃないです……」
抱き着いて来た箒を引き剥がそうとしたが潤んだ瞳での上目遣いに手が止まる。
「なら良かった」
そう嬉しそうに言い俺の胸に顔を埋めていく箒。
これほどまでに俺の再会したのが嬉しかったのかなかなか離してくれなかった。
まあ、喜んでいるからいいかな………俺の理性が持てばいいけど………。
この日、眠りにつくまで俺の心臓が休まる日がなかった………。
どうでしたか?