オーナーと蘭に絡まれた次の日の昼休み。
「頼むよ篝!!」
昨日たまたま『SPACE』にいた、クラスメイトの結城海斗(ゆうき かいと)にバンドに入ってくれ。と頼まれていた。
「えー、やだよ。俺忙しいし。」
嘘は言っていない。愛華や仕事のことで手一杯だし。
「たのむよー。一回だけでいいから。」
「やるとしても、どこでライブすんだよ?」
(確かこの辺にはライブハウスは『SPACE』以外なかったはずだ。)
「『SPACE』だ。」
「え?あそこガールズバンド専用だろ?」
「2週間後に『SPACE』のイベントで男のバンドも出れるんだよ。」
「じゃあ他にメンバーいるのか?」
俺がそう言うと、結城が苦虫をかみつぶしたような顔をする。
「ま、まだいねぇけど。」
(やっぱりか)
「しかも2週間後だろ?集まったとしても間に合わねぇよ。」
その言葉に結城は絶望した顔をして
「わかったよ。」
諦めて自分の席に帰っていった。
「わー、かわいそー。」
後ろから力の抜けた声が聞こえた。
「何だよ冬華?」
声を掛けてきたのは一年の時からのクラスメイト、橋本 冬華(はしもと とうか)。一年の時たまたまゲーセンで趣味が合って
たまにゲーセンやうちで遊ぶ中だ。いつもだるそうにしている。黒髪ロングに黒目の一応美少女の部類に入るが...
(いや美幼女か?)
「いま失礼なこと思ったよね?思ったよね?晩飯おごれや。」
「えー、別にいいけど。どこ?」
「焼肉。」
「はいはい。それでさっきのどういうこと?」
「もうちょっとオブラートに包んだら?」
(意外だ。こいつがこういうこと言うなんて。)
「今のどう?ポイント高くない?」
(前言撤回だ。クソ野郎だ。)
「高くねーよ。余計な希望与えるよりましだろ。俺よりもっといいやついるだろ」
「いやー、春人結構話題になってるみたいだよ。」
そういってTwitterの動画を見せてくる。そこにはギターを弾いてる俺が写っていた。
「これ昨日のやつか?撮られてたのかー。」
(全然、気づかなかった。)
「2000リツイートだって。天才ギタリストここに現る。」
「やめろー。やめてください、恥ずかしいです。」
「まぁ、どうでもいいけど。」
そのあとも冬華と話しながら、昼飯を食って放課後になった。
「じゃあ、後でメールするわ。」
「おーけー。じゃあな。」
冬華と別れて、教室を出る。冬華は美術部があるので、部室に向かった。そして校門に向かっていると、見覚えのある人が
(なんで蘭が?知り合いでもいるのかな?)
声を掛けようか迷ったがやめておいた。蘭をスルーして校門を抜けると
「ちょっと、春人。なんで無視するの?」
蘭に声を掛けられた。
「あれ、俺になんか用?」
一応聞いてみる。
「春人、このあと暇?」
いつもならこれから愛華に会いに行くのだが、ちょっと愛華に聞いてみよう。
「ちょっと待って、聞いてみる?」
『もしもし愛華?』
愛華の病院に電話して、愛華に代わってもらった。
『何?パパ~』
『今日ちょっと用事があるから、お見舞い行けなくても大丈夫か?』
『大丈夫だよ~。もうすぐ退院したら一緒に住めるもん!!』
(なんていい娘だ。あれ?なんか涙腺が)
『ごめんな。じゃあまた明日な。』
『うん。パパ、ばいばーい。』
電話を切って蘭に話しかける。
「6時まででいいか?」
「いいけど...さっきの誰?」
(なんか睨まれてる。)
「むs...親戚の娘だよ。」
「ホント?」
(なんで、機嫌悪いの?)
「ふ~ん、まぁいいけど。」
「で?どこいくんだ?」
とりあえず話題を変えたいので蘭に話を振る。
「『SPACE』の練習スタジオ。」
「なんで?」
「みんなが楽器を教えてもらいたいって。」
(なんで、バンドメンバーに知られてんの?)
「じゃあ、家にギター取りに行くから先に行ってて。」
そう言って家に向かっていると
「何でついてきてるの?『SPACE』は逆だろ?」
蘭がついてきたので、理由を聞いてみる。
「だって春人、逃げそうだし。」
「逃げねぇよ!!はぁ~、ほい。」
lineのQRコードを見せる。蘭は読み取ってメッセージを送ってくる。
「これでいいだろ?」
「うん。」
また家に向かって歩きだすと、蘭がついてきた。
(結局、来るんかい!!)
春人は諦めて何も言わないことにした。