修哉は『もうひとつの仕事着』に着替え、急いで
人質になっている人が無事でいることを祈りながらも修哉は走り続けた。
ドガーーーーンッ!!!
すると、どこからともなく大きな爆発音とその振動が響いてきた。上を見ると黒い煙が昇っていて、それを見た修哉は爆発が起きた場所へ向かって行った。
黒い煙の近くまで来ると野次馬と見られる人達が集まっていた。
その中に大きくなっているMt.レディがいた。
「おい!先に行くとか言っといて何ぼーっとしてんだ!」
「仕方ないでしょ!2車線以上じゃないと無理なのよ!」
「もう少し小さくならないのか!?」
「出来たらやってるわよ!」
「よくそれでヒーローになれたな...、ちょっとどいてください。通りますから」
修哉は愚痴をこぼしつつ野次馬を掻き分けて進んでいくと商店街とは思えない光景が見えた。
辺りには炎が燃え広がっていて、バックドラフトは炎の消火で手が離せなくなっていた。そして奥に見えるのはヘドロ状の敵(ヴィラン)とヴィランに取り込まれそうになっている少年がいた。それなのにヒーロー達はその場で立ち止まっていた。
「デステゴロさん!現状の方はどうなんですか」
「あのヴィランを捕まえようとしたがドロドロとしていて掴めない、おまけに人質の個性で地雷原になっていて近づけない。あのヴィランに有利な個性を持つヒーローが来るまであの子にはもうしばらく待ってもらうしかない」
「その人質の個性はどうやって出していたんだ」
「一瞬だが、手のひらから出していたように見えた」
「そうか...」
修哉には心の中でこう思っていた。
(人を助けるのに待つことなんているか!)
修哉は足に力を込めるとヘドロ状のヴィランに突撃していった。
「バカ...何やってんだあいつ!戻ってこい!」
「うおおおおおおおおおっ!!」
「何だこいつは!?くるんじゃねぇ!!」
ヴィランは修哉を追い払おうと腕を降り下ろした。
だが、それを修哉は避けた。その瞬間、振り下ろした手から爆発が起きた。修哉は人質の個性を乗っ取ってると思った。
修哉はその攻撃を避けながらも前に進んでいき、ヴィランの目の前まで近づくことができた。
「へっ、流動体の俺に触れることが出来んのか?」
「俺は物理攻撃しかできない。けどな...」
修哉は躊躇いも無くヘドロの中に手を突っ込んだ。
ヴィランは予想外なことに驚きを隠せられなかった。
「実体がある人質を助けるのにわざわざテメーと戦う必要はねーよ!!」
手をズブズブと奥に入れ、人質らしき実体のあるものを掴み取った。
あとは力任せに引っ張るだけだ。
「や、やめろおおおオオ!!!」
ヴィランは修哉目掛けて腕を振り回した。
動けない修哉はヴィランにとって格好の的、攻撃は全て当たった。
それでも人質を引き摺り出そうした。
「バカヤロー!!止まれっ!!止まれーーーっ!!!」
「あのガキ」
すると急に後ろからヒーローの声が聞こえ、ヴィランの気がそれた。
ヴィランは腕を振りかぶったが修哉の目の前にリュックサックが現れ、それがヴィランの目に直撃した。
修哉は後ろに誰かがいることに気づいた。
その時、ヴィランのヘドロが少し緩み、すぐさま力一杯に引っ張った。
横を見るとリュックサックを投げたであろう緑の髪の少年がいて、必死にヘドロを取り除こうとしていた。
「なんで、テメーが」
口にへばりついていたヘドロが取れ、人質の少年が問いかけた。
修哉はその理由がわかっていた。
今までのトップヒーローはある逸話を残し、誰もがこう言った。
考えるより先に、体が動いていた。
この少年はなんでもないただの一般人なのに修哉を含めたヒーローより、ここにいる誰よりも、彼は
「君が、助けを求めてる顔してた」
ヒーローだった。
「邪魔するなあああぁ!!」
ヴィランは少年に攻撃を仕掛けてきた。
修哉は少年の前に立ち、庇おうとし爆発が起き、周りは黒煙に包まれた。
だが修哉には熱さや痛みが一切感じなかった。
前を見ると、
「本当に情けない。君に諭しておいて己が実戦しないなんて...」
大きく筋骨隆々な体、勝利のサインと思わせるV字の前髪、どんな時も笑顔でやって来る姿、修哉はそれを見て言った。
「オールマイトさん!?何であんたがここに!?」
オールマイトは人質の少年の手を掴み、もう片方の手を振り上げた。
「プロはいつだって命がけええええぇ!!!」
そして彼はこう叫ぶ。
「デトロイトスマッシュ!!!」
その拳はたったの一撃でヘドロのヴィランを、炎を、吹き飛ぶほどの強風が巻き起こり修哉は緑髪の少年が飛ばされないよう腕を掴んだ。
風が止み、ヴィランも炎も消え、皆が呆然となっていた。そんな時に雨が降ってきた。さっきのパンチで起きた風圧でできたものであろう。少し遅れた感じにオールマイトへの歓声が上がった。オールマイトもそれに答えるかのように腕を上げた。
ヴィランのヘドロを集めて無事に警察に引き取ってもらい、緑髪の少年はヒーローらに怒られてしまい人質の少年はヒーローらにサイドキックの勧誘を受けられた。修哉はどっちかっていうと勇気ある行動をした緑髪の少年を褒め称えたいが他のヒーローらになんて言われるかわからないから黙っていた。商店街の被害は修哉が直していきもう少しで終わるところだった。
「ねぇあなた、ヒーロー名は何なの?」
修哉が振り向くと元の大きさに戻ったMt.レディがいた。
「ヒーロー名は『修復ヒーロー エコロ・サイクル』だ。お前はもしかしてプロヒーローになったばかりか?」
「今日からデビューしましたの。それよりエコロさん大丈夫ですか?ヴィランの攻撃めっちゃくらっていましたけど」
「体は結構丈夫だぞ。お前が心配することじゃない。それに」
「?」
「すぐに助けないのは俺のルールに反する。俺のルールを破れば俺のヒーローの道が終わる」
「苦しんで困っている人を助ける、それがヒーローってもんだろ」
修哉はMt.レディを見て微笑んだ。
Mt.レディは微笑みを見て赤面し、トクンと心臓の音が聞こえたような気がした。Mt.レディは即座にそっぽを向き走り去っていった。
修哉はそんなことに気づかずに修理の続きを始めた。
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商店街の修復が終わり真斗と千代を迎えに行ったら、修哉の傷だらけの姿に二人はびっくりして何があったか聞いてきた。修哉は車の中で二人に昔話を話すみたいに聞かせたら、真斗は興奮して座席をバンバン叩いて、千代には心配の眼差しを向けられていた。
家に着いたら魔理華が待ち受けて、ニュースに流れていたヘドロ事件について、無茶をしないでくださいと怒られてしまった。今日の晩御飯は自分が作るから安静にしていてくださいと言って魔理華はキッチンに行った。
「修哉さん、ご飯ができましたので二人を連れて食堂に来てください」
「よしわかった。二人とも、ゲームは一旦中断だ。ご飯食うぞ」
「ちょっと待って、今セーブするから...」
修哉たちは食堂に行き、席に着くとみんなの前に豚の生姜焼きが置かれた。
「それでは、いただきます」
「「「いただきます」」」
合掌してご飯を食べ始めた修哉はあることを思い出した。
「そういえば魔理華、聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「はい、何でしょうか」
「お前も今日から中3だ。志望校は決まってるのか?」
魔理華はそれを聞くと、箸を置き、まっすぐ修哉の顔を見た。
「私、雄英高校に行きたいです」
次回予告
「それでは、雄英高校に行くために試験日まで猛特訓だ」
「はい!!」
「はいじゃない!イエッサーっだ!」
「い、イエッサー!!」
「姉ちゃ頑張れ!明日に向かって突き進め!」
「...頑張って、お姉ちゃん」
「ところで聞きたいことがある!」
「はい何でしょう!!」
「...お前の個性って、何だっけ?」
「「「ズコーーーーーッ!!」」」
次回 勉強 運動 猛特訓
「魔理華の個性には秘密があった!」
「それは一体何でしょうか!!」
「更に向こうへ!」
「「「