ダークブリングマスターの憂鬱  【完結】   作:闘牙王

32 / 110
第三十一話 「壁」

夜の闇に包まれている巨大な街、エクスペリメント。その中にある人気のない大きな広場。そこから光の柱が生まれていた。まるでそこだけが時間から外れ昼間になってしまっているかのような光に包まれている。太陽が生まれていくかような圧倒的な光が、力がその中心から発せられていく。その力によって台風のような暴風が辺りを荒れ狂い、地震のような大地の揺れが地面を砕いて行く。そしてその中心には一人の少女がいた。少女の名はエリー。だが意識を失ってしまっているのかエリーは目を閉じ眠ってしまっているかのように横になってしまったまま。その身体を宙に浮かべながら。それはこの事態を引き起こしているのが他ならぬエリーであったからこそ。

 

『魔導精霊力エーテリオン』

 

この世に存在する全ての魔法の頂点にある魔法。かつてリーシャ・バレンタインだけが持ち、レイヴを生み出した創造と破壊の魔法。それは文字通り世界を破壊して余りある力を持つもの。唯一エンドレスを倒すことができる可能性を持つ希望。それが今、覚醒しようとしている。その制御ができないまま。それは世界の崩壊を意味するもの。かつて世界を襲った五十年前の王国戦争を終わらせた大破壊オーバードライブ。それを遥かに上回る終焉の時が今まさに訪れようとしていた。

 

 

「エリ――――!!」

 

 

魔導精霊力エーテリオンによる力の暴走に包まれた広場の中にいる三人のうちの一人、ハルはその光景を前にしながらも混乱することしかできない。ハルには今、自分の目の前で何が起こっているのかすら理解することができない。だがそのきっかけが自分のせいだということは分かっていた。

 

それは先の出来事。レイナのことをムジカに任せた後、ハルはただ必死にこの場にやってきた。エリーを救う。ただそれだけのために。だがこの場に辿り着いた時、ハルが目にしたのは全く想像もしていなかった光景。一つはボロボロになってしまっているエリー。それに驚きながらもハルはすぐに我を取り戻す。恐らくエリーが敵の襲撃を受けてしまったのだと悟ったから。もう一つがエリーから離れた場所に蹲っている蒼い髪の男。その姿はエリーに負けず劣らずの満身創痍。もしかしたらそれ以上かもしれない程の重傷。だがその男のことをハルは知っていた。雷の男。かつてエリーに見せてもらった写真と同じ姿。ハルはその男が恐らくは先程レイナが言っていたジークという男なのだと気づく。同時にハルは疑問に襲われる。何故エリーはともかくジークまでがそんな姿になっているのか。もしかしてエリーの仕業なのだろうか。だがそんな疑問はもう一人の男を見た瞬間、ハルの中から吹き飛んでしまった。そこには全身黒づくめの少年がいた。その手には巨大な黒い大剣が握られている。本来なら新たな敵だと警戒しなければならないところ。しかしハルにはそんな考えは全くなかった。何故ならその少年、そして大剣にハルが見覚えがあったから。

 

四年前、自分の前から突然姿を消してしまった金髪の少年。兄弟同然に育ってきた存在。目の前にいる少年がアキだとハルは見抜く。成長し、髪の色が違っているが間違いない。それを見間違えることなどあり得ない。

 

ハルはそのまま混乱しながらもひとまずはエリーの元へと向かって行く。まずはその安否を確認しなければ。同時にその近くにいるアキにしゃべりかけようとした瞬間、それは起こった。

 

それはアキの胸元。そこにあるアクセサリから生まれたもの。だがそれがアクセサリではないことにハルは気づいた。それはDB。いつもアキが身に着けていたそれがやはりDBだったのだと今のハルには分かった。そこから生まれた力。それが何なのか理解できないもののハルは本能で感じ取っていた。受ければ間違いなく自分は命を失ってしまうと悟る程の絶望を孕んだ圧倒的な力。それを前にしてハルは身動きをとることができない。レイナの戦闘による怪我とエリーの安否を確認できた安堵、そしてとうとうアキを見つけることができたという喜び。それがハルに致命的な隙を生む。だがそれは庇われた。他でもないエリーによって。

 

その瞬間、あり得ないことが起こる。光。太陽のような光が、魔力がエリーから突如生まれて行く。その力によってハルを襲おうとしていた力は吹き飛ばされて霧散してしまう。だがそれだけでは終わらなかった。エリーから生まれてくる力によってハルはもちろんアキまで吹き飛ばされてしまう。そして、今それがハルの前にある光景。ハルには何も分からない。何故アキが自分を攻撃してきたのかも。何故エリーにあんな力があるのかも。だがたった一つだけ分かることがあった。それはエリーの身に危険が迫っているということ。

 

 

その光景をハルと同じく驚愕のまま見つめている少年がいた。それはアキ。だがハルとは大きく違う点があった。それはアキには今何が起こっているのか、起ころうとしているのか分かっているということ。

 

 

(ちくしょう……!!)

 

 

アキはただ目の前の光景に戦慄することしかできない。魔導精霊力エーテリオン。究極の力。世界を崩壊させる程の大魔力。それをアキは知っていた。いや、知った気になっていた。実際にそれを目の前にするまでは。圧倒的な力。自分が今持っているシンクレア、マザーの力すらその前には霞んでしまうほどの絶望的な力の差。アキは圧倒されながらも己を叱責する。ジークを倒したことで安心しきってしまっていた自分に。ハルがこの場にやってくる可能性に気づかなかった自分に。そしてそれによって何が起こってしまうのか思い至らなかった自分に。

 

 

「っ!! マザー!! てめえ何やってやがる!?」

 

 

アキは鬼気迫った表情を見せながら自分の胸元にあるこの事態を引き起こした元凶に向かって叫びを上げる。混乱している、激昂していることによって実際に声を出してしまいながら。だがそんなことなどアキの頭には全くなかった。あるのはただ勝手に動いたマザーへの怒り。あまりに唐突な、そしてアキにとって最悪の行動に対しての。

 

 

『――――っ!? な、何故だ? 何故そんなに怒る? 我はただレイヴマスターを攻撃しただけだ……』

 

 

マザーはアキの凄まじい剣幕に圧倒され、しどろもどろになりながらも混乱するしかない。何故アキが怒っているのかマザーには分からない。確かに勝手に動いたことはまずかったかもしれない。だがそれは戦闘によって疲労してしまっているアキのことを思ってのもの。その代わりに力を貸してやろうという純粋な厚意。それなのに何故アキが怒っているのかマザーには分からない。

 

 

「……! てめえ、分かってねえのか!? あれはハルだぞ!? ガラージュ島で一緒に暮らしてたハルだ! なのに何の断りもなくやりやがって……どうする気だ!? このままじゃあ世界が崩壊しちまうじゃねえか!?」

 

 

アキはただひたすらに言葉を投げかける。それは一歩間違えば己の裏切りが明るみに出てしまうほどに危険な言葉。だが今のアキにはそれが分からない程に頭に血が昇ってしまっていた。ハルの、エリーの危機、そして世界の危機。それを直近にすることによって。

 

 

『そ、それは……だが仕方あるまい。レイヴマスターは我らの敵だ。エリーのことは……確かに悪かったがどうしようもない……それにある意味好都合だ。これで我らの目的は果たされる。我らの手で直接下せなかったのは残念だがこれでこの並行世界は消滅する』

 

 

「―――――」

 

 

その言葉にアキは絶句する。マザーの言葉に。その意味に。間違いなくマザーがそれを本気言っているのだという事実に。アキはそれを知っていた。マザーがどんな存在であるかを。母なる闇の使者マザーダークブリング。時を操作したことによって生まれた偽りの世界である平行世界を破壊せんとする世界の意志、エンドレスの一部。だがそれでもアキは驚きを隠せない。ハルのことはまだ分かる。レイヴマスターという間違いなくマザーにとっての敵。だがエリーに関してはその限りではなかった。

 

二年間とはいえずっと一緒に暮らしてきた相手。会話ができることによってマザーとエリーはまるで友人のように接していた。それに振り回されながらもアキはその関係をどこか楽しみに見ていた。例えDBであっても交流していく中でもしかしたら分かりあえるのではないか。そんな期待。だがそれは甘いものだったのだとアキは悟る。エンドレス。その意志がある限りやはりDBと人間は相容れないのだと。自分とマザー、人とDB。その間にある超えることができない壁。それを目の当たりにしたことでアキは知らず顔を伏せる。

 

 

「……もういい。ここは俺が何とかする。てめえはアジトに戻ってろ……」

『な、何だと? 一体何を言っている? それに何でそんなに怒っているのだ? 我は何も悪いことは』

 

 

アキが何に憤っているのか分からないマザーは必死に声を上げるもそれを遮るかのようにアキはその力を振るう。ワープロード。その力によってマザーは強制的にアジトへと送られ姿を消してしまう。自らの母と主の言い争いに他のDBたちは動揺するもどうしたらいいのか分からずそのまま成り行きを見守るしかない。

 

アキはそんな自らが持つDBたちの動揺を感じながらもその手に再びデカログスを構える。同時にその形態が変わる。

 

『封印の剣ルーン・セイブ』

 

あらゆる魔法を切り裂く魔法剣。この状況を打破し得る唯一の剣。そして封印の剣ルーン・セイブにはもう一つ力があった。それは使った相手の力をその名の通り封印すること。原作ではその力によってハルは暴走しかけた魔導精霊力エーテリオンを封印した。ならばその役目を自分が果たすしかない。この事態を引き起こしてしまった者として。

 

 

「はああああっ!!」

 

 

アキは叫び、駆けながらもその手にある剣を振るう。瞬間、エリーを守るかのように発せられている魔導精霊力エーテリオンの魔力が切り裂かれ道ができていく。魔導精霊力エーテリオンすら切り裂く封印の剣ルーン・セイブの力に驚愕しながらもアキはただ全力で駆ける。既にルナール、ジークとの戦闘によってほとんどの力を消費してしまっているアキに余裕は無い。なによりも切り裂いただけでは何の意味もない。エリーに近づき、そして封印の剣ルーン・セイブによってエリーの中にある魔導精霊力エーテリオンを封印しなければ。だがそんなアキの狙いは

 

 

「――――なっ!?」

 

 

凄まじい魔力の力と暴風によって阻まれる。その光景に、事態にアキは驚愕しながらも為す術がない。切り裂いたはずの魔導精霊力エーテリオンがまるで元に戻ろうとするかのように再びアキに向かって襲いかかって来る。まるでエリーを守ろうとするかのように。それはエリーの本能。魔導精霊力エーテリオンの覚醒もハルを守ろうとしたことによる自らの身の危険を回避するためのもの。DBの、エンドレスの力を持つアキを遠ざけようとする魔導精霊力エーテリオンの本能。切り裂いたはずの魔力が再びアキを押し出すかのように動き出す。その力の前にアキは為す術がなくそのまま吹き飛ばされてしまう。

 

 

「くっ……! くそ……!」

 

 

アキは何とかその場に立ち上がりながらも絶望していた。何故なら先の出来事によってもうどうしようもないことを悟ったからこそ。確かに魔導精霊力エーテリオンを一時的に切り裂くことはできた。だがそこから先に踏み入ることができない。自らの命の危機に瀕したことにより覚醒した魔導精霊力エーテリオンの力は原作よりも遥かにその力を増して覚醒しようとしている。その証拠に辺りの地面が、建物が崩壊し始めている。まさに世界の終わりのような光景。アキは模索する。自分に残された手を。

 

一つはマザーを使うこと。その力によって魔導精霊力エーテリオンに対抗すること。だがそれが無駄なことは先の出来事によって証明されている。いかなマザーの力といえども覚醒した魔導精霊力エーテリオンの前では通用しない。全てのシンクレアを合わせた次元崩壊のDBエンドレスならば対抗できるかもしれないがそれはここにはなく、そんなことをすればどちらにせよ世界は崩壊してしまう。

 

二つ目はジェロを召喚すること。だがすぐにそれも無駄なことだと気づく。確かにジェロは凄まじい力を持っている。それは四天魔王の名に相応しいもの。しかしそれも魔導精霊力エーテリオンの前には通用しない。

 

そのどれも今の状況を打破することはできない。唯一の対抗手段であった封印の剣ルーン・セイブが通用しなかった。その時点でアキにはもう打つ手は無い。アキはそのままただ膝を地面に着き、首を垂れることしかできない。胸にあるのはあきらめと罪悪感。自らの無力さと自分の愚かさのせいで起こしてしまった事態への。世界を、エリーを救うことができないことへの。

 

それはジークも同じだった。ジークはアキよりも離れた場所でそれを目の当たりにしていた。時を暴走させる程の想像を絶する魔力。世界が終わる最後の時が目の前に迫っている光景を。ジークもまたその場に座り込んだままあきらめていた。それを防ぐために、時を守るために動いていたにもかかわらずそれを防ぐことができなかった。それどころかそれを引き起こすきっかけを起こしてしまったに等しい自分の浅はかさ。何もできない自分。もし全快の状態だったとしてもあれほどの魔力の前には自分の力など塵同然。ジークはただ世界が終わるのを眺め続けるしかない。

 

アキとジーク。二人は奇しくも同じくその光景を前に心をくじかれていた。もうどうしようもないのだと。逃れようのない絶望が全てを包み込もうとしたその時。それは起こった。

 

 

「ああああああっ!!」

 

 

叫びがその場に響き渡る。凄まじい衝撃と轟音の中でもその声は確かに二人の耳に届いてきた。そこには一人の少年がいた。その手に剣を持った銀髪の少年、ハル。ハルはその手に剣を持ちながらただまっすぐにエリーに向かって行く。その前に立ちはだかっている魔導精霊力エーテリオンをまるで恐れることなく。だが

 

 

「うわあああっ!!」

 

 

ハルはその力によって吹き飛ばされる。それは当然の結果。ハルが持っているのは封印の剣ルーン・セイブではなくただの鉄の剣。いや、封印の剣ルーン・セイブであったとしても結果は変わらない。それは先のアキが証明している。だからハルの行動は無意味。どれだけ挑んだとしても無駄なこと。それは誰の目にも明らかだった。だが

 

 

「まだだ! まだ……!!」

 

 

ハルは再び立ち上がりながら立ち向かって行く。その超えることができない壁に向かって。あきらめることなく。何度も何度も。だがその度にその体には無数の傷が生まれて行く。既に立っているのも不思議なほどの状態。レイナとの戦いによってハルは既に満身創痍。それ以上傷を受ければ間違いなく死んでしまいかねない重傷。だがそんなことなど知らない、どうでもいいとばかりにハルは何度も何度もその壁に挑んでいく。絶対にあきらめない。そう誓うように。ハルの中には何もなかった。魔導精霊力エーテリオンのことも。世界のことも。今のハルにあるのはたった一つ。

 

 

『エリーを助ける』

 

 

ただそれだけ。ちっぽけな、それでも絶対に譲れないもののために少年は戦っていた――――

 

 

「―――――」

 

 

その姿を前にアキはただ立ち尽くすことしかできない。いや、ただ見惚れていた。その姿に。ただひたすらに、それでもあきらめずに挑み続けるハルの姿に。力で言えば今の自分よりも遥かに劣るはずのハルが、あの自分の後を付いてくるだけだったハルが傷つきながらも立ち向かっている。

 

知らず自分が拳を握っていることに気づく。その全力を以て。同時に得も言えない感覚が、感情が生まれてくる。それはまるで先のジークとの戦いで感じたような感覚。もしかしたらそれを超えるかもしれない感情。

 

それに後押しされるようにアキは気づく。確かに今の自分には打つ手は無い。エリーを救う手は残されてはいない。だが違う。そう、自分一人だけではどうにもできない。だがもしそれが―――――

 

 

「ハアッ……ハアッ……!!」

 

 

ハルは剣を杖代わりにしながらも立ち上がる。もう何度吹き飛ばされたか分からない。もう何度立ち上がったか分からない。足は震え、意識は朦朧としている。いつ倒れてもおかしくない。だがそれでもまだ倒れるわけにはいかない。エリーを助けるまでは絶対にあきらめるわけにはいかない。そう誓いながらも為す術がない状況にハルがとうとうあきらめかけてしまいかけた時

 

 

「…………え?」

 

 

それは現れた。まるで初めからそこにいたのではないかと思えるほど当たり前に。黒いマントと黒い甲冑を身に纏った少年がハルの前に立っていた。まるでハルを庇うかのように。

 

 

「アキ…………?」

 

 

ハルはその名を呼ぶもアキは答えることは無い。振り返りながら見つめる瞳には確かに自分を捉えているはずなのに。アキは言葉を発することは無い。何も話すことは無い、そう告げるように。だがそれに代わるように、言葉以上の意味をもったものがハルの前に晒される。

 

それは剣だった。アキが持つ剣。それが差し出される。まるでハルにその姿を見せつけるかのように。だが瞬間、ハルは悟る。アキの行動。それが何を意味しているかを。

 

『封印の剣ルーン・セイブ』

 

その名がハルの頭に生まれてくる。まるで最初から知っていたかのように。それは知識のレイヴの力。レイヴに関する知識を一瞬で呼び覚ます力。だがそれにはきっかけが必要だった。そしてそれは今成し遂げられた。エリーを守りたいという想い。そして同じ剣を持つアキがその剣を見せてくれたことによって。同時にハルは悟る。アキが何故それを自分に見せたのか、そして何を自分に求めているのかを――――

 

 

アキはそのままハルから視線を逸らし正面を向いてしまう。ハルはそんなアキに呆気にとられながらも立ち上がる。不思議と痛みは無かった。さっきまで鉛に様に重かった体はもう既にない。あるのはあり得ないような高揚感だけ。ハルはその光景に目を奪われる。それは黒いマントとアキの背中。四年前に目にした、いやずっとアキと一緒にいた時から目にしてきた背中。自分を守ってくれてきた背中。それが自分の前にある。でも今はそうではない。今の自分はその隣にいける。その力が今、自分にはある。

 

 

「…………行くぞ、ハル」

「…………ああ!」

 

 

それがアキとハルの四年ぶりの会話。とても会話とは思えないような短いやり取り。だがそれだけで十分だった。

 

先に動いたのはアキだった。アキは自分に残された全力によってそれを繰り出す。

 

 

「印・空・連携……ルーン・フォース――――!!」

 

 

デカログスから見えない力が放たれる。それは封印の剣ルーン・セイブと真空の剣メル・フォースを組み合わせた連携技。その力によって魔導精霊力エーテリオンは切り裂かれ道ができる。エリーまでの確かな道が。

 

 

「ぐっ……!!」

 

 

だがそこまで。道はできたもののそれはすぐに押しつぶされようとする。圧倒的な魔力の力によって。しかしそれをアキは歯を食いしばりながら、身体に鞭打ちながらも耐え続ける。その力にデカログスが悲鳴を上げる。限界を超えた力の行使によって。だがデカログスはそれに応える。自らの主の心に応えるように。

 

だがここまで。確かにエリーまでの道はできた。だがアキにできるのはそれを維持することだけ。その場から動くことなどできない。しかしアキの目にはあきらめは見られない。それどころかその表情にはどこか笑みすら見えた。何故ならそれこそがアキの為すべきことだったから。

 

刹那、まるで弾けるようにハルは走り出す。アキの隣を掛け抜けながら。その顔を合わせることもなく一直線に。それは信頼。もはや言葉を交わすこともないほどにハルはアキの意図を、言葉を受け取っていた。

 

ハルは駆ける。その道を。アキの力によって出来た細い、だが確かな道を。その手には剣が握られていた。

 

『封印の剣ルーン・セイブ』

 

先程までは知らなかった、使えなかったTCM第四の剣。アキに見せられたことによって目覚めた剣。まるでかつての爆発の剣エクスプロージョン、音速の剣シルファリオンと同じように。だがそれは決して同じではなかった。先の二つのような偶然ではない。それはアキ自らの意志によるもの。それを手にしながらハルは走る。エリーの元へ、アキの作った道を駆けながら。

 

それがアキの狙い。自分一人では為し得ないこと。だが二人なら、ハルとなら為し得る策。

 

ダークブリングマスターとレイヴマスター。対極に位置する存在。その超えることができない壁を超えることでできる奇跡だった。

 

 

「エリ――――――!!」

 

 

叫びと共にハルがその手にある剣をエリーに向かって振り下ろす。残された力の全てを込めて。アキから託された想いを込めながら。瞬間、まばゆい光が全てを包み込んでいく。

 

 

それがこの長きに渡る夜の終わり、そして新たな始まりだった―――――

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。