とある少女の救済神話 【完結】   作:カリーシュ

12 / 40
表ルート:一章 最強の魔法少女
表ルート:第1話


―ミタキハラデパート

 

sideほむら

 

 

 

 

 

―少し前を白い生物が駆ける。

必死そう(・・)に、銃口から逃げて。

 

 

けれど、逃がさない。

 

 

手にしたベレッタM92Fから9ミリパラベラム弾が連続して吐き出され、その生物を追い詰める。

 

 

運が良いのか、それとも悪いのか、弾は標的を捉える事なく端々に当たるだけで、その逃亡を止めきる事が出来ない。

結果として痛ぶることになっているが、別に何とも思わない。

 

 

 

――ビシッッ

 

「あ!?」

 

1発が、その生物の前足の先を穿つ。

それによって走れなくなったのか、恐怖に怯えるような表情をする(・・・・・)

 

 

「あ、わ、た、助け、」

 

「………」

 

感情の無い言葉を無視し、正確に狙いをつける。

 

 

アレら(・・・)に心は無い。

 

アレら(・・・)にかける言葉も、慈悲も無い。

 

 

拳銃のトリガーに掛かった指に、銃口をブラさないよう、ゆっくりと力を込めて―

 

 

 

 

 

 

「――ほむらちゃん、ダメっ!!」

 

 

「!? まどか!?」

 

弾道上に、何よりも守りたい少女が割り込んでくる。

咄嗟にトリガーから指を離して――

 

「――まどか、今だっ!」

 

ブシュゥゥーーーー!!

 

「! チッ!」

 

更にその間に、消火剤がばら撒かれる。

 

数瞬、完全に視界を覆った粉塵が収まる頃には――

 

 

インキュベーターも、2人の少女も消え去っていた。

 

更に悪い事に、使い魔程度のものとはいえ、結界が張られ始める。

 

「クッ、相手している場合じゃないのに………っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――遠くに金髪の魔法少女を確認して、一先ず彼女たちの安全を確信すると、結界から脱出する。

 

インキュベーターによる情報の部分的開示によって、私の印象は最悪だろうし、この先どうすれば――

 

 

 

 

 

「――ぃぃぃぃぃぃぃ――」

 

 

 

 

 

「? この声って……」

 

間違えなく、インキュベーター。

結界の外側なのに聞こえてくるのは、連中の個体数の多さを考えれば不自然では無いけれど――

 

「――なんで悲鳴?」

 

直感的に、近くの剥き出しの鉄骨の陰に隠れる。

 

直後。

 

 

バキィッッッッ!!!

 

 

吹っ飛ばされたドアが反対側の壁に叩きつけられて粉になり、下手人が姿を表す。

 

 

肩まで伸ばしたクセのある深緑色の髪に、黒のワンピースを着た、白い肌の小学生位の少女。

 

そして、肩にはインキュベーター。

 

 

その少女は使い魔の結界を一瞥するやいなや垂直に跳ね、天井付近の鉄骨に着地した。

 

停止した事で、顔が確認出来るが―

 

 

 

これまでのループで、一度も見た事が無い。

 

けれど、インキュベーターと行動を共にしているという事は、そういう事だ(・・・・・・)

 

 

「……新しい魔法少女? でも、一体何故こんな時に――」

 

鉄骨の陰から再度様子を伺おうと、首を覗かせると――

 

 

――ヒュッ パァンッッ

 

 

「………ほむ?」

 

何かがすぐ横を通り過ぎ、砕け散った。

 

 

――居場所がバレてる!? どうして!?

 

 

正体不明相手に出し惜しみしている場合では無くなり、盾を操作して時間を止める。

 

灰色の世界を走り(途中、漂うビニールから、投げつけられた物体は冷凍シュウマイだったことが分かった)、投擲直後のポーズのまま硬直した少女の背後をとる。

 

脅しの意味も含めて、大口径のM29を後頭部に突き付けてから、時間停止を解除する。

 

 

「動かないで」

 

「………銃口突きつけられちゃ、動きたくても動けんがな」

 

…………!?

 

特に驚いた様な素振りも無く(・・・・・・・・・・・・・)、ノロノロと両手を挙げた少女に対する警戒を強める。

 

「暁美ほむら? こんな所で何をしているんだい?」

 

「―あぁ、あなたもいたわね」

 

そのインパクトで半分程忘れていたインキュベーターに対し、空いていた左手にM92Fを握り、狙いをつけ――

 

「ナイスじゃんキュゥべえ!」

 

「!? くっ」

 

集中が僅かに逸れた瞬間、少女が足払いを仕掛けてくる。

身体の一部が触れている以上、下手に時間停止するワケにもいかず、無理矢理2つの銃口を向けるも、少女が首を絞める様に正面から腕を伸ばして来るので、バックステップでの回避を余儀無くされる。

 

「チッ、引っ込んでなさい、この素人――っ?!」

 

「ハッ! どっちがトーシロジャン!!」

 

トリガーを引く、が――弾が出ない。

一体、どうして―

 

「―な、何で、」

 

「PvCばっかしていてPvPは能力頼みのゴリ押しってか?! ンなんじゃ勝てるモンも勝てないわなぁ!!」

 

一瞬で距離を詰められ、左手1本で両方の拳銃を弾き飛ばされると、そのまま右手で首を掴まれ、拘束される。

 

「!! グッ―」

 

「おおっと危ない」

 

咄嗟に蹴りを放つも、少し姿勢を変えられ、吊るされる。

 

「あんま抵抗しない方がいいぞ。 この高さからただ落ちただけなら兎も角、無理に逃げようとすれば叩き落とす。

ま、その前に、このまま握力全開にすりゃそれで片がつくな」

 

「……なにが、目的よ」

 

血管こそ避けられているが、気管を掴まれて、息が詰まる。

早く、外さないと……!

 

「なーに。 ただ質問に答えてくれりゃいいのさ。 別に嘘ついても構わんから何かしら反応プリーズ」

 

「……さっさと、聞けば」

 

「おぉーうツンツンしてますなー。

んじゃ質問。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―今、何回目(・・・)?」

 

 

 

 

 

 

 

?!?!?!?! ループに、気がついている………!?!?

 

「―――っっ?!?!?! 一体、何のこt」

 

「あ、おkおk察した。 じゃ、色々事情がメンドいモン同士、お茶でもいかが?

―向こうも手遅れ(・・・)っぽいし」

 

少女がチラリと見た先では――

 

 

 

憎きインキュベーターが、ワザとらしい笑みで、2人の少女にこう言った所だった。

 

 

 

「あのね、僕と契約して―

魔法少女になってほしいんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―………チッ」

 

少女の手によって足場(鉄骨)に自分の足で立つことが出来、悪い状況に舌打ちする程度の余裕は確保出来た。

 

「客観的に見て、どーよキュゥべえ?」

 

「…………あれで即決する子もいるんだよねぇ」

 

「ま、良くも悪くも中二っつーこったな。

で、デートの誘いの返事は? 暁美ほむらちゃん?」

 

インキュベーターその2と会話していた少女が、こちらに話を振ってくる。

 

………彼女は、何故か、こちらの事に詳しい。

ループについて口にした時点で、私の答えは決まっていた。

 

「…………………分かったわよ」

 

 

 

 

 

 

 

〜少女移動中〜

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、同デパートのファストフードコーナー。

 

私がよくあるセットを注文して、少女はフライドポテトばかり大量に注文して丸呑みしていた。

 

「―ポテトはのどごしっ!!」

 

………パフェなら聞いた事あるけど、ポテトで喉越しって………

 

「普通に食べなさい、意地汚いわよ」

 

ふぇひふぅ(出来ぬぅ)!!」

 

「………はぁ」

 

少女の名前すら聞いていないのに、気がついたら溜息が出ていた。

 

「……それで。 貴女一体何者よ? 私がこれまでやり直してきた時間軸に、貴女は影も形も無かったわ。 だと言うのに、貴女は私を知っている」

 

「神です」

「馬鹿にしてるのかしら?」

 

つい拳銃に手が伸びかける。

人の目もあるんだし、我慢我慢。

 

「ボクとしても、真面目に答えて欲しいな。 キミは余りにも異質過ぎる」

 

「異質?」

 

妙な事を言ったインキュベーターが、彼女の異常性を口にする。

 

 

 

曰く、宇宙から物理法則を無視して落下してきた。

 

曰く、失った記憶にあるらしい絶望を祓うために、奇跡を『先送り』にした、最弱の魔法少女である。

 

曰く、完全に人間の域を超えた身体能力に、出処が不明の情報を持っている。

 

 

 

「……さっぱり分からない、ということが分かったわ」

 

「それで、キミは一体何者なんだい?」

 

じっと、ポテトをジュース同然のペースで飲み続ける少女を見つめる。

 

「…………私が何者か、ねぇ。

――ンなもん、私の方が知りたい」

 

「「は?」」

 

予想外の答えに、目が点になる。

 

「いや、答えだけなら幾らでも用意出来るさ。

人間、神、出来損ないの魔法少女、宇宙人、タマ置いてけ、旧支配者―

ま、敢えて自己評価するなら、」

 

1つ、ここ数日恐れられている都市伝説の名前が混じっていたのを聞き流し、少女から紡ぎ出された答えは、

 

 

 

 

 

「―私は『クト』だ。 それ以上でもそれ以下でもない」

 

 

 

「………結局、答えになってないじゃない」

 

ただの自己紹介だった。

 

「なら話を超シンプルにしようか、『時間遡行者』(暁美ほむら)

 

身体が一瞬震える。

時間遡行者………これで、少女―クトが、ループについて知っているのは確定。

 

「…………貴女、何処まで、」

 

「メンドいから答えん。 先ずは目的をスッキリさせよぉか。

あんたは『鹿目まどかを助けたい』。

私は『記憶を取り戻したい』。

ここまではおk? おkなら思考パートに入るけど」

 

「…………続けて」

 

「現状、やり方が分かってんのは『鹿目まどかを助ける』方法だ。 連中につきまとうインキュベーターと魔女を皆殺しにすりゃいいんだからよ」

 

「ボクの目の前でそれを言うかい?」

 

「アンタは殺さねぇよ。 どうせグリーフシード回収の為の個体は残しておかないとだからな」

 

不穏な会話に横槍を入れてきたインキュベーターを無視し、問題点を指摘する。

 

「そのやり方には問題があるわ。 インキュベーターは無限に湧くし、魔女だって『ワルプルギスの夜』がいる」

 

一瞬、クトが考え込むような仕草をする。

 

「………ほむら。 命大事にで、巴マミと佐倉杏子、場合によっては美樹さやかも込みで、悪プリンのヨーグルト相手にどれ位保つ?」

 

「悪プリンのヨーグルトじゃなくて『ワルプルギスの夜』よ。

………そうね、ひたすら防御と回避に徹すれば――1時間弱は保つわね」

 

「上々。 それだけありゃ充分だ。

……あと、ダメ元で聞いておく。 ソウルジェムの方は?」

 

「……これまでの経験から言って、最後まで保った事は一度も無いわ」

 

「………………………、か」ボソッ

 

「? 何か言ったかい?」

 

………?

今何か、口走ったような―

 

「なんでも無い。 じゃあ次に考えるのは、味方の脱落防止だな。 魔女の出現ポイントって抑えてんの?」

 

「……いいえ。 絞り込む事は出来ても、具体的な場所までは」

 

「じゃあ『お菓子の魔女』を先制で潰すのは無理か………

まあそっちは、まどかに交代で張り付くなりなんなりするとして、問題は美樹さやかと佐倉杏子だな」

 

「……佐倉杏子は巴マミが死なないと、この町を訪れる意味が無くなる。 美樹さやかは、」

 

「何処ぞのヘタレ相手に奇跡を―

……あ、ええこと考えた」

 

ニヤァと、クトが歪んだ笑みを浮かべる。

 

「………嫌な予感がするのだけれど?」

 

「嫌な事思いついたからね。フフフ…………

―『鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス』」

 

「………?!?! ま、まさか貴女―」

 

戦国時代の第六天魔王・織田信長の遺した短歌―

直前まで人死にによる因果関係について話していただけに、最悪の予想が浮かぶ。

 

「佐倉杏子は巴マミが死なないと表れない。

美樹さやかはヘタレの怪我を治す為に奇跡を使う。

だったらよぉーぉー――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――2人ともブッ殺しちまえばよくね? マミとそのヘタレ」

 

 

そして、その予感は、的中した。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。