とある少女の救済神話 【完結】   作:カリーシュ

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裏ルート:第15話

sideキュゥべえ

 

さやかがまどかと離れ、メチャクチャな魔女狩りを始めてから、あと数時間で丸一日が経過する。

 

幾らソウルジェムを砕かれなければ死なないとはいえ、身体を動かすのは魔法少女も普通の少女も変わらず、摂取した栄養だ。 魔力で代用することも可能だけれど、通常よりも消耗が激しくなる。

彼女はあれから、ほぼ不眠不休で戦い続けている。 色々と限界だろう。

 

けれど、今彼女に声をかけることは出来ない。 出たら確実に切り刻まれる。

 

 

さやかは、今、かなり追い詰められている。

 

 

余裕なんて無いはずなのに、彼女が夢見た『正義の味方』である為に、使い魔すら全滅させている。

 

 

 

 

 

「――うぉああああああああッ!!」

 

現に今だって、はぐれた使い魔を真っ二つにしている。

 

「うぅ……」

 

がくりと膝をつくさやか。

 

……それにしても、昨晩斃した分以外は何故か魔女と邂逅せず、なぜか使い魔ばかりだ。 ソウルジェムの穢れが溜まって魔法が劣化しているのに問題無く勝てているとは言え、とても『幸い』とは言えない。

 

「くっ………次の魔女を、探しにいかないと………」

 

 

 

 

 

「――何時まで意地を張るつもりだ?」

 

ブワッと風が吹き、さやかの前に最強の少女が着地すると、黒い宝石が放られる。

 

「ほれ、グリーフシードだ。 そろそろ身体すら満足に動かせなくなるぞ」

 

 

『回収は頼むぞ、キュゥべえ』

 

『……今度から分かっているときは、先に声をかけてくれるかい?』

 

『善処はする』

 

あ、絶対やらないな。

 

 

 

 

 

「……あんた、何を考えてるのさ」

 

「? どういう意味だ?」

 

異常を感じて、出て行こうとした足を止める。

 

「……あんたってさ、嘘つきだよね」

 

「……………」

 

 

クトは、何も言わない。

 

「あんた、いつもどっか、遠くを見てる。 あたしたちを見てない。

本当はさ、今だって全然別のこと考えてるでしょ。 誤魔化しきれてないよ、それ」

 

「…………………………………………………………………そうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―残念だ。 この手は使いたくなかったよ」

 

「っ!?!」

 

気温が一気に低下し、息が詰まるような感覚が発生する。

 

グワッと、骨翼が広がり、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ギチッ!!

 

「っ!?」

 

その骨翼に鎖が巻きつき、動きを封じ込める。

 

「何やってる!? さっさと逃げろ!!」

 

「杏子?! テメッ……!?」

 

「……………っ!」

 

さやかが反対方向へ走り出す。

クトが追おうにも、翼だけでなく身体にも鎖が巻かれる。

 

「おのれぇ――っ?!」

 

「フン! マミのリボンは引き千切れたらしいけど、コイツならどうだ!」

 

その僅かな間にも、更に伸ばされた鎖がクトを拘束する。

 

「っ――この程度の小細工なんてェ……ッ」

 

「?! 本性表しやがったか! でももう動けねぇだろ!!」

 

二重、三重、四重と鎖が巻きついていき――

 

 

「――ッ!―――」

 

「―しゃっ! これでアタシたちの勝ちだ!!」

 

「……佐倉杏子。 その団子状の塊は何かしら?」

 

衝撃の光景で気がつかなかったけれど、いつの間にかほむら来ていた。

いや、時間停止かな?

 

「あのチビだ。 さやかの奴を襲おうとしてたからな! 不意打ちで全身グルグルにしてやったぜ!」

 

「……なにやってるのよ、あなた」

 

呆れた表情のほむら、でも何処か安堵している様子だ。

 

「……内側にダメージを与える方法は?」

 

「無い―けど、このまま固定して海に捨てちまえばいいだろ。 コイツ、元々海底にいたんだろ?」

 

「………発想が危ない人のそれよn」

 

 

 

―ギチィッッッ!!!

 

 

 

……もっとも、その表情はすぐに凍りついたけどね。

 

「!!」

 

「ウソだろ?! 指一本動かせないハズ――」

 

2人は繭を警戒してる、けど、多分あの2人は幸運だね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――地面にうつる影。

 

2人の影に対し、繭の影。

その影では、繭を何本もの触手が破り、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ゴグシャァァァァァッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついに、現実でも繭が破られる。

 

鎖の破片を散乱させながら、翼の生えた緑髪の少女が浮かぶ。

 

【………………】

 

俯いたその顔が僅かに上げられ――

ドゴンッッ!!!

 

「!? がっ――」

 

杏子が壁に叩きつけられる。

影を見れば、彼女に向かって触手が伸びていた。

 

「また不可視――うっ!?」

 

一瞬で距離が詰められ、魔法を使うことさえ出来ずに首を掴む。

 

【AAAaaaaaaaaaaaa――――】

 

「ぐ――あ――」

 

容赦無く締め上げられる。

杏子は触手で抑えられ、ボクも重圧で動けない。

 

 

「ぐ、く、とぉ……」

 

どれだけの握力なのか、ほむらの手が力なく垂れ――

 

 

【――aaaaaaaaぁaaぁぁぁぁ、あ、あああ、ぁ、あ?」

 

「――かはっ!! げほっ ごほっ!!」

 

首を絞める手が緩み、ほむらが倒れて咳き込む。

 

それがきっかけだったかのように影が戻り、杏子を押さえつけていた触手も消え、物理的な重さを持った空気も霧散する。

 

 

「……………っ、私は、また――」

 

ボクらは解放されたとはいえ、逃げるように飛び立つ彼女を追う人は、誰も、いなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――あの後、なんとか回復した彼女たちのあとを追う。

会話を拾った限りだと、マミがさやかの魔力痕を見つけたらしく、今辿っているとのことらしい。

 

そして、クトが完全に敵となったことも。

 

 

確かに、あの殺気はさやかの事を殺しにかかっていたし、直後の戦いとも言えない様な蹂躙も、魔法少女相手にしては加減が無かった。

 

 

 

……でも、最後に感じた、

 

アレは、一体……………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideマミ

 

「……予想より、遅くなっちゃったわね」

 

美樹さん、昨日からずっと休んで無いのよね……

 

私が魔法少女の真実を知った時は、絶望も何もかも全て吹き飛ばしてくれる、私より小さな女の子がいてくれた。

 

あの子がいなかったら、あの事実に耐え切れる自信が無い。 そもそも、知ることが出来たかすら怪しかったと思う。

 

 

「……私ったら、何も出来てないわね」

 

もし、ソウルジェムの秘密が明るみになった時、何か気の利いたことを言えていれば。

 

もし、美樹さんが契約するのを止めていたら。

 

もし、デパートで初めてあの子たちに会った時、魔法少女について隠していれば。

 

 

……今言っても仕方の無いことね。

 

 

 

 

 

魔力反応を追っていくと、暗い駅に着く。

 

ここで見つかるといいのだけれど……

 

 

 

 

 

 

 

改札を通り過ぎて、周りを見ながら走る。

 

人が不自然にいない気がするけど、だからこそ、思いっきり走れる。

 

これだけ反応が強ければ、近くにいるはず――

 

 

 

 

 

――いた!

 

「やっと見つけたわ!」

 

ホームに設置されている椅子に俯いて座る美樹さん。

 

『暁美さん! 佐倉さん! 美樹さんを見つけたわ!』

 

『場所は!?』

 

『○○駅よ!』

 

『そこなら5分とかからず行けるわ。 そこから動かないで』

 

『分かっているわ』

 

念話で暁美さんたちに声をかけてから、美樹さんの隣の席に座る。

 

 

「さぁ、帰りましょう? 皆心配しているわ」

 

「……すいません、手間かけさせちゃって」

 

「? らしくないわよ。 美樹さんはもっと元気じゃないと」

 

「……そうですか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――別にもう、どうでもよくなったから」

 

「――ッ?!?」

 

その眼には、只々、深い闇が、映っていた。

 

それをみた瞬間、殺気にも近い、とてつもない寒気が背筋にはしる。

 

「結局あたしは、一体何が大切で、何を守ろうとしていたのか。

なにもかも、わけ分かんなくなっちゃった」

 

淡々と、平坦に、言葉が紡がれる。

 

嫌な気配がして、美樹さんの手元を見ると、

 

 

 

 

 

 

 

――穢れに満ちた、ドス黒い、悲嘆の種(グリーフシード)

 

 

 

 

 

「み、美樹さんは、平和を守ろうと、頑張ったじゃない!」

 

「……確かにあたしは何人か救いもしたけど、その分心には恨みや妬みが溜まって、一番大切な友達さえ傷つけて……………」

 

 

――これは、もう、私じゃ、止められない。

 

 

でも、あの子(・・・)にはもう、頼れない。

 

 

「誰かの幸せを祈ったぶん、他の誰かを呪わずにはいられない。 あたしたち魔法少女って、そういう仕組みだった」

 

「っ、そんなこと――」

 

 

見ていられない。

 

お願い。 誰か――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―あたしって、

 

 

ほんとバカ」

 

 

 

 

 

――ピシッ

 

 

 

 

 

崩壊が、始まる。

 

 

「美樹さぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―誰か、助けて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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