とある少女の救済神話 【完結】   作:カリーシュ

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(グロ注意)







裏ルート:第16話

sideキュゥべえ

 

マミからの念話を終えると、時間停止を駆使してあっと言う間に行ってしまうもんだから、置いて行かれたボクは懸命に足を動かす。

 

「はぁ。 インキュベーターの個体数と情報伝達能力を活用したシステムから切り離された弊害が、ここまでキツイとはね。 ま、面倒臭さを感じられるって事は、いいことだと思っておこう」

 

 

……インキュベーターで思い出したけれど、本当に一匹も見かけないな。

 

さっきのエネルギー波、アレは間違いなく魔女化した時に発生するものだ。

普通ならあのエネルギーは回収されるものだけど、ある種の衝撃波として広範囲にばら撒かれるなんて、どう考えてもおかしい。

 

エネルギーを回収しなかった?

効率房のインキュベーターが?

 

あり得ない。 何らかの事情で回収しなかったと考えるのが妥当か?

 

 

……情報が少な過ぎる。 もう直ぐ着く頃だし、目の前の事態に――

 

 

 

 

 

『――いあ くとぅるー ふたぐん!』

 

『いあ いあ くとぅるー ふたぐん!』

 

 

虚ろな眼、意味不明な唄、手には凶器の群衆――

 

成る程、これがほむらたちが言っていた『狂人』か。

 

幸い、特に四肢を欠損している訳でもないし、生理的嫌悪感もそれ程では無い。

映画とかのゾンビよろしく、入り口付近でたむろってるだけだから、駅構内への侵入は容易そうだね。

 

さてと、ダクトは何処だったかなっと――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……それにしても、延々といあいあうるさいなぁ。

 

やっぱりと言うべきか、駅の内部も狂人だらけだ。 それしか出来ないのか、唄を呟きながら、ひたすら下り線ホームに向かって歩いていくだけ。

 

問題があるとすれば、

 

 

 

 

 

―ドグギギギギギギギギギッ!!

 

 

 

 

 

重量のある金属塊を擦りながら振り回すような音。 それに混じって、発砲音なども聞こえる。

 

また戦っているのかい!?

 

しかも、狂人が歩いていってるもんだから、押し返され、血塗れで倒れている。

 

「あそこは通れない、というか通りたく無いね」

 

仕方なく、汚れるのを我慢して端の排水溝を歩く。

ホームまで登って、覗k―

 

 

グシャァッ!!

 

「キュッぷ!?」

 

直ぐ上にコンクリートの塊が激突して木っ端微塵になる。

 

見れば、ランスと引き千切ったのか断面が歪んでいる看板を二刀流で振り回すクトを杏子が何時もの十字槍で捌き、ほむらとマミがそこに銃撃を加えていた。

 

「っ!」

 

銃弾を鬱陶しく思ったのか、看板をマミに向かって投げとばす。

 

即座に迎撃され、僅かに生じた隙を狙って槍が突き出されるのを頭部で受け血が吹き出し、さらに散弾銃の連射でランスを持っていた右腕が吹き飛ぶ。

 

「―ぅるぁぁぁぁぁ!!」

 

ソウルジェムが入ったポーチを狙った追撃を、コンクリートの地面を踏み抜いて蹴り上げ、強引に盾代わりにして防ぐ。

 

視線が途切れ、その間に僅かに浮遊。

右腕を一瞬で再生し、両手で天井の軸を掴むと引きちぎり、双槍にする。

 

「なんつー回復力だよおい!?」

 

「削りきるまでよ。 魔力そのものは少ないわ!」

 

「―ッ!」

 

魔力で編まれた槍とただの鉄骨ではまともな勝負にならず、あっさりと双槍が二つに切り裂かれる。

 

宙を舞う二本のうち、一本は杏子に、もう一本は狂人の昇ってくる階段の天井部に蹴り出される。

 

天井に向かった方は突き刺さるけど、杏子への方は銃声とともに弾かれ、多節棍を使った立体的な軌道で矛がクトの首を狙う。

素早い側転で一閃を躱し、近くに落ちていたランスの柄を踏みつけて跳ね上げることでマミの銃弾を防ぐと、骨翼でほむらを襲う。

 

「その攻撃は、もう何度も見たわ!」

 

届く前に姿が掻き消え、眼と鼻の先に手榴弾が現れる。

 

爆発。 閃光。

 

直前に咄嗟で手榴弾を掴んでいたらしく、左手は骨が露出するほどズタズタになる。

 

「……痛いな」

 

「!?」

 

ブチィ、と己の腕を肩から引き抜き、指先から二の腕の部分を喰らうと、そのまま引き抜く。

持ち手の部分にのみ肉が残り、赤く、白い骨が現れる。

 

「な?!?」

 

「た、食べちゃった……っ?!」

 

余りにもグロテスクな光景に怯んでいる隙に、骨を投げ捨てると、右手でランスを掴み取り、再度一瞬で再生させた左手を突き出して掴みに行く。

 

「っ、それも、見たわ!」

 

ほむらが紙一重で躱し、超近距離で顔面に散弾を叩き込む。

血が飛び散り、硝煙を吐きながら後ろに吹っ飛び――

 

「――足らん。 足らんなぁ………!!」

 

異様な空気が場を支配する。

 

片目は潰れ、蒼白くも端整な顔立ちは見る影も無くなり、口は耳まで裂ける。

 

「っ――いい加減、止まりなさい!?!」

 

榴弾が炸裂し、血に混じってピンク色のナニカがぶちまけられ、再び倒れる。

 

「まだ、まだまだ――」

 

「暁美さん、もうやめて! やり過ぎよ!!」

 

「うっ……」

 

瞳孔が開ききった眼で榴弾砲(グレネードランチャー)に弾を込め直すほむらをマミが止め、杏子は気分が悪そうに口を押さえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――は、クハハハハハッ! ママナラネェナ!! クギャハハバハハハハ!!!」

 

 

ぞっとする、パンドラの箱の蝶番が軋むようなワライゴエが響く。

 

そちらを見れば、頭部の半分以上を失い、極彩色の液体を断面から垂れ流す、人のカタチをした、ナニカが、立っていた。

その口が、足が動くたびに杯状の頭蓋骨から脳漿や髄液が溢れ、片方残った眼球がギョロリと蠢めく。

 

 

「!?!?!」

 

「」

 

「あ、ああぁぁぁぁぁああああ!!!」

 

震える指で引き金を引かれた榴弾は、見当違いの方向に飛び、建造物の一部を吹き飛ばす。

 

「……ド処ヲ撃ッテイる? 私は此コダぞ? クハハハ――」

 

ブォンとランスが振り回され、その風圧で3人とも体勢が崩される。

 

『―いあ いあ くとぅ――』

ズガンッ!!

 

「……煩イ」

 

こびりついた血で滑ったのか、階段の天井のランスが突き刺さり、今度こそ崩落する。

鉄筋コンクリートの雪崩がホームに入り込んでいた狂人すらを巻き込み、完全に遮断する。

 

「……? 煩ワしいナ」

 

そう呟くと、自分で崩壊した頭部を千切り、落ちたソレを踏み潰す。

 

それが合図だったかのように、首の断面から、グチュグジュと傷一つ無い頭部が生えてくる(・・・・・)

 

 

 

 

 

「ば、化け物――」

 

「何を今更。 最初からそう言っているだろう?」

 

全身を己の血と脳漿で染めた紅のドレスの少女が、歪んだ笑みを浮かべる。

 

「――あぁ、それだ。

『恐怖』。 『狂気』。

いい、イイゾ!!

さア――

 

 

 

 

 

私を、殺してみせろ!!!!」

 

 

骨翼が空を割いて一気に距離を詰め、その銃口を掴む。

 

「!? こ、来ないで!!」

 

「クハ、逃げてどうする? 最初の威勢はどうした? フハハハハ!!」

 

心臓部に銃口をめり込ませると、震えるその手を押さえ付け、強引に引き金を引かせる。

 

バコンッとくぐもった音がなり、背中側から肉片が飛び散る。

 

「ごふっ!

……グブ、どうだ? 恐怖はこうやって払え。 でなければ何度でも蘇るぞ?」

 

「あ――」

 

今度こそ限界だったのか、ほむらが気絶する。

 

 

 

 

 

 

 

「クク……………あ"ー?」

 

まるで映画で描かれるようなベタなサイコパスのように首をカクっとしながら、周りを見渡す。

 

その視線は、頭蓋が吹き飛んだ状態で動いた時点で気絶したマミを通り過ぎ――

 

 

 

 

 

 

 

「――其処か」

 

「ひぃっ!?!?」

 

完全に腰が抜けて、槍に縋り付くことしか出来ていない杏子を捉える。

 

 

ジャリ、ザリ、と、色々な意味で鉄分塗れの床を踏み、一歩一歩近付く。

 

……うん。 かなり、いや今すぐボクも気絶したいくらい怖いね。

今ボクが隠れてる場所が、丁度杏子が座り込んでる所のすぐ側なもんだから、自分の方に来ている様に見える。

 

 

「く、来るにゃぁっ!!!」

 

後退りするも、ここは地ごk……間違えた、狭い駅のホーム。

すぐに退路が無くなり、背中が壁にぶつかる。

 

「クハ、噛んでるぞ? 何時もの気丈さは何処へ行った?」

 

数歩で追いついた怪物が、その肩を掴む。

 

「!?! やめ、離せぇっ!!」

 

少しでも距離を置こうと、両手を突き出し、その手は空をきる。

 

「へ…………………?!?!」

 

前を見るな、と叫べたらどれだけよかったか。

 

その手は、ポッカリと開いた胸部の穴を通り、反対側から出ていた。

 

「う、うわ―――」

 

「おや? そういや塞ぎ忘れていたなァ」

 

急いで引き戻すも、まるで狙ったかの様に再生した部位に飲まれる。

 

「?!? いや、離せ、離して!!!」

 

両手を必死に引き抜こうと藻がき、案外すぐにズボっと抜け、て――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………お?」

 

――その手には、管が繋がり、脈動する、心臓が、

 

「――う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ?!?!」

 

咄嗟に投げ捨てようとするも、筋肉が強張っているのか、離すことができず、

 

 

 

グチュッ

 

 

 

「ひぅ――」

 

ソレを握り潰してしまい、そのショックでか気絶した。

 

 

……つまり、これで、全滅した。

 

 

 

 

 

まるで肉食獣が獲物を品定めするかの様に辺りを見渡す、と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ごふっ」

 

吐血して、倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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