とある少女の救済神話 【完結】   作:カリーシュ

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裏ルート:第17話

sideキュゥべえ

 

 

 

――クトが、吐血して、倒れた。

 

 

 

………へ? なんで??

 

 

「ごふ、ごほっ! ったく、ホントに儘ならないなぁ。 死にたい時に死ねず、生きたい時に限ってこのザマたぁ……」

 

倒れ伏したまま血を吐き出し、そうボヤく。

その姿は、さっきまであった殺気や恐ろしさは霧散し、今にも消えそうな、弱々しい少女でしかなかった。

 

 

「……と、ここまでやったんだ。 やる事は、きっちり、やりますか」

 

ゆっくりと立ち上がり、気絶した3人のポケットを探る。

 

 

取ったのは、グリーフシード。

 

 

そのままヨロヨロと歩き、瓦礫からランスを回収すると、その場を後にする。

 

 

 

 

 

………もしかして、ボクがいる事に気が付いてない?

 

 

 

 

 

そのまま側溝を伝って、クトを追う。

ドアを幾つか通ると、すぐに魔女の結界に到達した。

 

この魔力反応は………さやかの、だね。

 

 

何のためらいもなく侵入していった彼女に、物陰に隠れながらついて行く。

 

「……さやか。 今回はチャラにしてやるが、神をコキ使った代償は、本来高いんだぞ? ったく」

 

そして、人魚の魔女の部屋に着くと、

 

 

ほむらたちから奪った分と、クトが元々持っていたらしいグリーフシードの限界を超える量の穢れが、

 

 

 

 

 

クトのソウルジェムから、移される。

 

 

 

パキパキと魔女が孵化し、広い部屋を圧迫する程の数が現れる。

物陰から伺えるだけでも、軽く15は超えてる。

 

「………借りるぞ、■■■。

さやか、お前こういうの好きだろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――身体は腐肉で形作られる(I am bone of the dark.)

 

 

 

 

 

ゆっくりと、垂直に挙げられたランス。

 

左手に握られたソウルジェムからは、美しい白い閃光が発生する。

 

 

 

 

 

血潮は憎悪、心は狂気(Hate is my body, and mad is my blood.)

 

 

 

幾多の世界を超えて不滅(I have made over thousands death.)

 

 

 

 

 

言葉が紡がれるたび、ランスに膨大な量の魔力が込められる。

 

 

 

 

 

ただの一度も希望は無く(Unknown to desire.)

 

 

 

ただの一度の救いも無い(Nor aware of salvation.)

 

 

 

咎人は常に独り、屍の前で嘆き続ける(Have withstood pain to moan unlimited corpses.)

 

 

 

 

 

超過したエネルギーがオーバーフローを起こし始め、ランスを囲うような渦を発生させる。

 

 

 

 

 

 

 

「────けれど(yet)

 

 

 

その願いは未だ潰えず(The wish never end.)

 

 

 

その身体は、(Her whole body was)

 

 

 

それでも、(still )

 

 

 

 

 

悪趣味な装飾が消え去り、純白に金のラインが疾る、素直に美しいと言える刀身が露わになる。

 

 

 

 

 

そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――"終わりなき幻想"("Forever Fantasy")を求める!!!!

 

 

 

 

 

 

 

――ランスが振り下ろされ、魔力の奔流が魔女を一体残らず、呑み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………閃光が収まったのを確認すると、クトのいた所を見る。

 

まず目にはいったのは、蹲り、血反吐を吐くクト。

 

次は、散乱する大量のグリーフシード。

 

 

そして――

 

 

 

 

 

 

「……やっと、ゴホっ、やっとだ。 ゲホ、ゴフッ、やっと、追いついたぞ…………」

 

 

 

 

 

魔力が結界の外にまで影響を及ぼしたのか、破壊された扉、

 

その部屋の内側に横たえられている、

 

 

 

 

 

――美樹さやかの、遺体。

 

 

 

 

 

「……余計な、手間、かけさせやがって」

 

グリーフシードの1つ――元、さやかのソウルジェムだったそれを拾い、胸に抱く。

 

 

 

 

 

「……頼むから、上手くいけよ。

――MINTDTRANSFER(精神転移)!!」

 

 

グリーフシードが、青い光を放つ。

少しづつだが、確かに浄化され、

 

 

 

それと比例するかの様に、クトのソウルジェムが凄まじい勢いで濁っていく。

 

「――っぐぁ………!

やっぱり、それ用の呪文じゃねえ分、負担、ヤッベぇ……ゴフッ!!」

 

口からドス黒い血が溢れる。

 

ソウルジェムは限界ギリギリまで濁るが、グリーフシードは未だ浄化しきらない。

 

 

「さやかぁ――戻ってこい!!!

テメェの居場所は、ンな暗い場所じゃねぇ!!!

私は、もう、――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――友達(・・)を死なせたくないんだよっ!!!

MINTDTRANSFER(精神転移)ィッッ!!!」

 

 

ダメ押しの魔法で、

 

 

 

 

 

ついに、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―グリーフシードが、青く透き通る、卵状の宝石に、

 

 

 

 

 

ソウルジェム(・・・・・・)に、戻る。

 

 

 

 

 

「……はは。 はっははははは!!

見たかバブルスライムモドキィ!!

だぁれが鏖殺兵器だ!! 私はやったぞ!! 私hゲフゴホゴフっ!?」

 

血を噴水の様に吹きながらも、穢れ1つないソウルジェムを掲げて笑う。

 

「ケフ、ゲフっ。 し、シメだ」

 

這いずりながらも、さやかの手に穢れのないソウルジェムを握らせる。

 

「………………ぅ………」

 

僅かにだが、胸が上下する――呼吸が、確認出来る。

 

ほ、本当にグリーフシードを浄化したのかい?!?」

 

「?!?! きゅ、キュゥべえ?!」

 

「あ」

 

どうやら、驚きのあまり声が漏れたようだ。

 

「こ、これは、あの、そゲフォの、い、何時から見て、ゴホッ」

 

何故かアタフタし始めるクト。 その表情は、本気で焦っている。

 

「クト? キミこそ、今のは一体――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―いあ いあ くとぅるー ふたぐん!』

 

『―いあ いあ くとぅるー ふたぐん!』

 

「「!?」」

 

狂人たちの声が、すぐそこから聞こえる。

 

「チッ! ガチでウゼェ!!」

 

「あれはキミの信者だろう?!」

 

「勝手に発狂し始めんだから私の意志じゃねえよ!! つかほっとくと脳ミソやら心臓やらキ○タ○まで捧げてくる連中が信者とか、寧ろこっちの方が超迷惑だ!!」

 

「ファッ!?」

 

壁に手をついて立ち上がると、部屋の外に向かって歩き出す。

 

「キュゥべえ! もう直ぐほむらたちが目を覚ます! 迎えに来てもらえ!」

 

「あの狂人たちはどうするのさ?!」

 

「私が引きつける。

それと、キュゥべえがここで見たことは、秘密にしておいてくれないか?」

 

パキ、パキと割れ始めた黒いソウルジェムを握り、そう言い放つ。

 

「!? まずはソウルジェムを浄化しないと! グリーフシードはこんなに――」

「キュゥべえ」

 

見上げれば、振り返ったクトが、こちらを力強い目で見ていた。

 

「……私は、クトゥルフだ。 邪神だ。

悪は、人の手によって打ち取られなければならない」

 

「……クト? 何を言って――」

 

「キュゥべえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――今まで、ありがとう。

 

そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――さよならだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side■■

 

「――クト! 待ってくれ!! クト!!」

 

背後から、小さな相棒の呼ぶ声が聞こえる。

 

でも、もう、後戻りは出来ない。

 

 

 

私のソウルジェムは、いつ魔女を生んでもおかしくない。

今は、その決定的タイムリミットを騙し騙し延ばしているだけだ。

 

ただ、奴等を引きつけて離れるのに必要な分以外の魔力供給を切る。

 

 

視界はボヤけ、

 

いあいあ(おお主よ)としかほざけない連中の声はシャットアウト、

 

ランスとソウルジェムを握る感触すらあやふや。

 

 

『――― いあ ―とぅ―――』

 

【っ! この私を放って何処へ行く気だ!!】

 

視界の端でほむらたちの方へ行こうとする一団を、神威を織り交ぜた一声で繋ぎ止める。

 

 

――パキ、ピキキ……

 

 

………やっぱり、こっち関連の力は消耗が激しいな。

 

 

 

 

 

足に力が入らなくなる。

 

杖代わりの槍で何とか立ってられるけど、もう、一歩も歩けない。

 

 

「……はっ! 私みたいなクソッタレには、お似合いの場所だな、おい」

 

もう耳こそ聞こえないが、大方いあいあくとぅるー(おお主よ!ようやく我らの願いを)なんちゃらかんちゃら騒いでんだろ。 さっきっからちょくちょく水っぽいなんかがかかってんだよ。 なんだこれ? 血か? 涎か? ピー液か? 普通に全部ヤダなぁ。

 

 

 

 

 

―自分の身体すら支えきれなくなり、倒れる。

手からソウルジェムが零れ落ち、転がる。

 

トロトロした動きで狂信者どもが助け起こそうとするが、ハッキリ言わせて貰えば、『さわんな』だな。 ぶっちゃけ無意味だし。

 

 

 

 

 

――パキィッッ!!

 

 

 

 

 

ソウルジェムがグリーフシードへと変異し、魔女が羽化する。

 

 

………死んだのに意識あるって、すげーデジャビュ。 前にも似たようなこと無かったか?

そしてこんな状況下でこんなコメントが出るあたり、私のバーサーク(思考鈍化)っぷりも中々だな。

 

 

 

 

 

 

 

魔女()の触手が、僅かに意識の残る私の抜け殻を絡め、その身に取り込む。

 

 

 

それと同時に、ずっと、ずっと待ち望んでいた感覚が、(魔女)の身を貫く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、剣/刀だった。

 

それは、矢/槍だった。

 

それは、拳/蹴だった。

 

それは、盾/鎚だった。

 

それは、弾/砲だった。

 

 

幾重もの武器が刺し、斬り、打ち、穿ち、貫き、撃ち。

 

私の命を絶とうと、この身を削る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………それで、いい。

 

 

 

我は『cthulthu』。

 

存在そのものが悪である物。

 

この身は、光の元に討ち取られる。

 

ここは、英雄の墓場にして、私の処刑台。

 

 

ここが、私の、最期の場所。

 

 

 

 

 

…………………それで、いい。

 

 

助けは、要らない。

 

ただ、眠るだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――だというのに、見滝原に来てからの記憶が駆け巡る。

 

 

 

 

 

……私は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………私は、―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【■■■◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎!!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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