とある少女の救済神話 【完結】   作:カリーシュ

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表ルート:第7話

 

sideほむら

 

 

狂人たちの襲撃も無く、無事に部屋に辿り着く。

クトが件のキュゥべえを回収しているかもしれなかったけれど、杞憂だったようね。

………もっとも、いつかのような幻影の可能性もあるけれど。

 

 

「それで、ビルの方はどうだったんだい?」

 

「中には入れなかったけれど、狂人だった1人には会えたわ」

 

「襲われたのかい?!」

 

「その人は正気を取り戻していたから大丈夫よ」

 

「巴マミ、雑談もいいけれど、そろそろ……」

 

「……そうね。

キュゥべえ、クトと1番長い間行動を共にしているのは、あなたよね?」

 

「彼女が降って来たその時から一緒にいたけれど、それがどうかしたかい?」

 

「……なら、『クトゥルフ』という単語に聞き覚えは?」

 

「あるよ」

 

サラリと、問題の言葉を聞き覚えがあると言う。

 

「!? 誰から聞いたの?!」

 

「クトからだよ。 あの時は……」

 

 

――詳しく聞いてみれば、今朝インキュベーターから聞いた、『お菓子の魔女』の結界内での戦闘の直前の宣言と、もう1つ。

 

その結界内での戦闘の後、巴マミを攫った手段のネタバラし(やはりというか、幻影能力がタネだった)の際に聞いたらしい。

 

問題は、その内容。

 

 

「――クト以外の『クトゥルフ』は、この世界に存在するか否かすらハッキリしない地球外生命体。 仮に存在するとしても、太古の昔に海底に封印され、今でも眠っている。

種族的能力として、精神に干渉することが出来る。

これが、ボクが彼女から聞いた『クトゥルフ』についてだ」

 

「……マミ、」

 

「原典の『クトゥルフ』とほぼ全て一致するわね」

 

本棚から取り出してきた、鈍器としても充分な分厚さのある本(クトゥルフ神話TRPG)のとある1頁を睨んでいるマミが、その説明を補足する。

 

「クトゥルフは、ゾスから眷属を引き連れて来た異星人だし、海底の封印も、ルルイエに封印されているという設定と一致するわ。 精神への干渉も、何らかの事情でルルイエが浮上したときに、感受性の高い子供や芸術家が狂死するという描写から分かるわ」

 

また情報が一致した。

 

内容が内容なだけに、『過去に同じ本を読んだイタイ魔法少女の厨二設定』と言ってしまえばそれまでだけど……

 

 

 

あの異常な身体能力。

 

奇跡を先送りにした契約による無色の魔法少女にも関わらず存在する、幻影術。

 

突如として現れた狂人、そして彼等が口にしていた、狂気の賛美歌。

 

 

 

 

 

…………認めたくは無いけれど、

 

「彼女は、『本物』かもしれないわね」

 

 

……そもそも、小説に描写された邪神と、魔法少女。

何も知らない一般人からしてみれば、どっちも同じように『存在しない筈のモノ』だ。

私達(魔法少女)が存在する以上、『邪神』が存在しない理由はない。

 

 

 

 

 

………とすると、私達がすべき行動は、

 

「佐倉杏子とキュゥべえ。 あなた達は鹿目まどか達と合流してほしい」

 

「そいつは構わねぇけど……アンタたちはどうするんだ?」

 

「巴マミと、クトについてもう少し探ってみるわ」

 

狂人を相手にする以上、本来なら非情になれる杏子の方が適任だけれど、本当に件の邪神絡みだった場合、私たちでは予備知識が足りない。

 

「―分かったわ。 それじゃあキュゥべえ、クトのことをお願いね」

 

「まずは探す事から始めないといけないけどね」

 

 

「佐倉杏子。 間違っても余計な戦闘は避ける様に」

 

「分かってるよ。 アレの面倒くささは知ってるからな」

 

 

 

 

 

〜少女移動中〜

 

 

 

 

 

―さて。

 

こうやって行動を起こしたはいいけれど、どう行動するのが正しいか、分からないわね。

 

マミの知識や本の内容は、あくまで参考。 アテにし過ぎれば、足元を掬われる可能性だってある。

 

どうすれば――

 

「……暁美さん? 顔が怖いわよ?」

 

「…………巴マミ。 あなたはさっきの話、どう感じたかしら?」

 

……じっとしていてもどうしようもない。 まどかたちに危険が及ぶ以上、例え罠だと分かっていても進むだけ。

 

「…私個人としては、クト=クトゥルフって考えるのは無理があると思うわ。 あの子には、他人を思いやれる『心』がある。 他者を破滅に追い込んで歓ぶような存在じゃないわ」

 

「………だと良いけれど」

 

問題はクトだけじゃない。

インキュベーター、それにワルプルギスの夜だっている。

 

さやかにソウルジェムの秘密が知られれば、魔女化は避けられない。

 

 

――ちらりと左手首を見る。

 

時を巻き戻すことの出来なくなった盾のつく、左手を。

 

 

 

 

 

――もはや、やり直しは出来ない。

 

 

邪魔をするなら―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―例のビルを中心に人通りの少ない道を敢えて通る。

 

まだ明るい時間帯なのもあるのか、未だ狂人は見かけない。

地道に探し続けるけれど………やり方を変えるべきかしら。 マミには高所からの捜索をを頼んであるとはいえ、ここまで手掛かりすら無いなんて……

 

 

 

 

 

――ジャララララ………

 

 

 

 

 

………………? 何かしら、今の?

鎖の音?

 

「……佐倉杏子?」

 

音のした方へ歩いても、其処には、誰もいない。

 

「……気のせい、かしら?」

 

空耳だったと判断して、その場を離れ――

 

 

ドゴッッ!!

 

 

「!? がっ!?!」

 

背中に重い衝撃がぶつかり、壁に叩きつけられる。

 

「くっ――」

 

相手の姿は見えないけれど、狂人の可能性を考えて時間を止める。

 

次の瞬間には見慣れた灰色の世界に変わる。

 

「…さてと、今度は一体何処の誰よ?」

 

テイザー銃(撃てるスタンガンのような物)を構えて、後ろを――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャラジャラジャラ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?! な、なんで?!?」

 

私しか動けない筈の世界に、今度はハッキリと鎖の音が、いや、それだけじゃない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【――HAAAAAaaaaaaaaa………】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――その息遣いを聞いただけで、まるで身体が彫刻になってしまったかのように動けなくなる。

 

一体なんで?! どうして?! どうやって?!?

 

 

パニックになっている間に足首に鎖が巻きつき、そのまま凄まじい力で振り回される。

 

裏路地なんていう狭い空間で人間大の物体を振り回せば、当然、其処らじゅうに叩きつけられる。

 

 

「がっ! ぐっ! あっ! 痛っ! や、やめっ! 助けっ!」

 

『暁美さん?! 何があったの? 暁美さん!?』

 

頭の中にマミの声が響く。

 

「マミ、こっちにっ! 来てはっ! いけな――あああああああっっ!!!」

 

振り回すだけに飽きたのか、『ソレ』は、私を鎖で容赦無く引き摺る。

 

細かい凹凸のあるアスファルトで削られ、全身打撲でボロボロの身体から血が滲み、その部位を庇おうとすれば他の部位に裂傷ができる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がっ! ああああああああああっっ!! くぅ……」

 

最早何も感じなくなった頃、また何処かに叩きつけられた様な衝撃が身体を貫く。

 

 

 

 

 

 

 

「――おい、転校生! 何があった?」

 

「……だから、私は、ほむら………」

 

さやかの声が聞こえてきた様な気がして、思わずそう呟いてしまう。

 

この怪我だと………流石に…………

 

 

……………? 痛みが、少し、楽に――

 

目を開けると、心配そうな表情のまどかとさやかが目に入る。

 

まどかのそんな表情も可愛い

――って違う!

 

あの不可視の怪物、ソウルジェムの魔力探知に一切引っかからなかった。 おそらく、アレが話に聞く『神話生物』という存在なのでしょうね。

 

だとすると、クトは、本当に――

 

「ぐっ………さやか、まどか……?

――クトはっ?!」

 

「えっと、なんかよく分かんないけど、なんかを追いかけてった!」

 

あの怪物を追ったのかしら? それなら好都合。

 

「? それより、ここは危険よ! 早く逃げないと」

 

変身を解除して、足を引きずりながらも歩き始める。

 

「ほむらちゃん、まだ、」

 

「今は逃げるのが先よ。 急いで――」

 

 

 

 

ドッゴォォォォンン!!!

 

 

 

 

「きゃぁっ!?」

 

少し離れた所に、何かが墜落したような爆音が響く。

 

クレーターが出来るほどの衝撃だったらしく、ぽっかりと空いた凹みだけが地面に――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【――GYAGOAAAAAAaaaaaaaaAAAAaaaaaaaaAAAAAAAAA!!!

 

「ひっ!?」

 

「まずい…っ!!」

 

虚空から、『ソレ』の咆哮が轟く。

 

 

「――逃がすかゴルァ!! 『スティンガー』!」

 

真上から『ソレ』に対してクトが槍の穂先を突き出すも外れたらしく、根元まで刺さる。

 

……? クトはあの怪物と敵対しているということ?

 

「!?!! くっ、お前ら、逃げ――」

 

 

ドンッ!

 

「!? う―」

 

何を言っているのか聞こえる前に『ナニカ』に突き飛ばされて、

 

 

 

 

 

 

 

―ソウルジェムを、奪われる。

 

「あ――」

 

意識が遠のき、視界が暗くなって―

 

助けて、まど――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――え。 起きてよ。 ねえってば!」

 

「ほむっ?!?」

 

急に肩を揺さぶられ、意識が戻る。

 

「いや、ほむってなに? まだ寝ぼけてるの?」

 

「そーなのかー」

 

「いやその返しはおかしい」

 

眠気を頭軽く振ることで払って、手の甲でツッコミを入れてきた■■■に目のピントを合わせる。

 

「……? 私の顔に何かついてる?」

 

「……いや。 なんか、永い夢を見ていたような気がしてな」

 

「??」

 

コテンと首を傾げる■■■。 カワイイなあもうっ♪

 

「っと、ご飯の支度ができたから呼んできてってお兄ちゃんに言われてたんだった! それに今日は折角パパたちも帰ってきてるんだから!!」

 

「ダニィ!? イソガネバー」

 

「ちょ?! もー! 家の中ではしるなー!」

 

小走りだったからか、廊下への扉を開けた時にはもう追いつかれてた。

ま、ワザとだけどね!

 

「■■■! どっちが先にリビングに着くか競争じゃー!」

 

「オッケー! じゃあおっ先ー」

 

「手のひらクルックルッ?!」

 

そして即抜かされる。 ふぬおおおおお! 年長者として負けられん! 外見年齢は大差無いケド!

え、大人気ない? 知らんな!!

 

「ぶるあぁぁぁぁぁ!!」

 

「おおお!? って、床ミシミシ言ってるぅぅぅぅ!?!」

 

ボケとツッコミの応酬をしながら廊下を翔ける。

 

ああ――

 

「楽しいな――」

 

「ん? いきなりどうしたnいっちばーーん!!」

 

「ばぁぁぁぁぁかぁぁぁぁぁぬぁぁぁぁぁぁ!!」

 

余計な事を考えまくっていた所為か、タッチの差で負けた。

ウギィ〜!

 

「あっはっは! これで■■のデザートは私の物よ!」

 

「ふぁっ?! は、初耳なんスけど?!?」

 

「だって今決めたもん」

 

「あぁぁぁぁんまぁぁぁりだぁぁぁぁぁぁ!

せ、せめて半分で! お慈悲を! お慈悲〜」

 

「しょうがないなー■■ちゃんは」

 

クスクスと笑う■■■。 こ、小悪魔や! 小悪魔がいる!

 

 

 

 

 

「―――そういえば、さっき『楽しいな』とか言ってたけど、本当にどうしたの?」

 

「ん? ああ。 今こうして、■■■たちとこうやって笑って過ごせるってことかな。 私は、まぁ自分で言うなって話だけど、この間までロクな人生じゃなかったからね」

 

「イキナリ話がディープに?! シリアスとか似合わないよ?!?」

 

(・ω・)(ショボンヌ)

 

「…………それにしても、『楽しいな』、か」

 

立ち止まる■■■。振り返って見ると、何故か目元に影が出来ている。

 

「■■■? どうした?」

 

「………ねぇ。 楽しいって言うならさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ドウシテ、ワタシタチヲ、コロシタノ??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――目が醒めると、まどかとさやか、それにマミが私の顔を覗き込んでいた。

 

手の中には、紫色の卵型の宝石。

 

……状況から見て、ソウルジェムの秘密は知られてしまったようね。

 

「………

……………迷惑を、かけたわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――それにしても、さっきの光景は、いったい…………………??

 

 

 

 

 

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