とある少女の救済神話 【完結】   作:カリーシュ

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表ルート:第9話

sideほむら

 

 

「……早く、見つけないと」

 

まどかの美樹さやかを心配する言葉を躱し、放課後になって直ぐに美樹さやかを探し始める。

 

杏子とマミも協力してくれているけど………

何としても、一番に見つけたいわね。

『処理』する時の手間も、後の言い訳も楽だから。

だからこそ、まどかには検討違いのエリアを探してみるようにそれとなく言ってある。

 

 

時間を小刻みに止め、過去に何度も美樹さやかが魔女化した駅を中心に路地裏を周る。

 

 

 

 

 

「………ここにもいない」

 

それなりに離れた場所を確認して、頭の中にある地図にバツ印を付ける。

 

時を止め――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ゾクッ!!

 

 

「っ――!?!」

 

ワルプルギス並みの殺気が辺りを包み込む。

 

「まさか、もう魔女に?!」

 

慌てて時を止め、殺気を感じた方向へと駆ける。

 

 

 

 

 

灰色の世界を走りまわっていると、妙な物が視界に映る。

 

近付いてみると――

 

 

「……何やってるのよ」

 

多節棍の鎖で巨大な球体を造っている杏子がいた。

 

…………いやほんとに何やってるのよ? しかもガッツポーズしてるし。

 

 

 

 

 

時間停止を解除する。

 

 

「……佐倉杏子。 その団子状の塊は何かしら?」

 

昨日の時点で私の魔法(時間停止)について言ってあるからか、特に驚いた様子も無く、安堵した表情で振り向く。

 

「あのチビだ。 さやかの奴を襲おうとしてたからな! 不意打ちで全身グルグルにしてやったぜ!」

 

「……なにやってるのよ、あなた」

 

でも、あの化物の行動を制限出来たのは大きいわね。

先にこっちから片付けましょうか。 アレが相手なら杏子も邪魔しないし、丁度いいわ。

 

「……内側にダメージを与える方法は?」

 

「無い―けど、このまま固定して海に捨てちまえばいいだろ。 コイツ、元々海底にいたんだろ?」

 

「………発想が危ない人のそれよn」

 

 

 

――ギチィッッッ!!!

 

 

 

鎖の封印が揺れ、軋んだ音が響く。

 

「!!」

 

「ウソだろ?! 指一本動かせないハズ――」

 

杏子は新しく生成した槍を構え、私は両手に持ったマグナムで狙う。

 

 

僅かに間が空き、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ゴグシャァァァァァッッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついに、封印が破られる。

 

鎖の破片を散乱させながら、翼の生えた緑髪の少女が浮かぶ。

 

【………………】

 

俯いたその顔が僅かに上げられ――

ドゴンッッ!!!

 

「!? がっ――」

 

杏子が壁に叩きつけられる。

そちらを見れば、めり込んでいる訳でもないのに、壁に張り付いたまま動けなくなっている杏子がいた。

 

「また不可視――うっ!?」

 

一瞬で距離が詰められ、咄嗟に盾を操作しようにも一瞬で首を掴まれる。

 

【AAAaaaaaaaaaaaa――――】

 

「ぐ――あ――」

 

力が込められる。

杏子は何かで抑えられ、助けは期待出来ない。

 

 

「ぐ、く、とぉ……」

 

で、デパートの時は、手、加減、してたのね、この、馬鹿力……

 

い、意識、が――

 

【――aaaaaaaaぁaaぁぁぁぁ、あ、あああ、ぁ、あ?」

 

「――かはっ!! げほっ ごほっ!!」

 

前触れなく急に手の力が抜け、解放される。

 

それがきっかけだったかのように杏子を押さえつけていたナニカも消える。

 

 

「……………っ、――――」

 

そして、また、逃げられる。

狂気の邪神が、放たれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――あの後、なんとか回復した私たちは、マミから美樹さやかの魔力反応を見つけたことを伝えられる。

 

ただ、クトが完全に敵となったことを伝えた時は、少し取り乱していた。

 

 

あの殺気はさやかの事を殺しにかかっていたものらしいし、さっきの戦いとも言えない様な蹂躙も、魔法少女相手にしては今までと比べて、加減が無かった。

 

 

 

……でも、最後に感じた、

妙な違和感の様なものは、一体……………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――連絡のあった方へ向かっていると、しばらくして、再度念話が届く。

 

『暁美さん! 佐倉さん! 美樹さんを見つけたわ!』

 

『場所は!?』

 

『○○駅よ!』

 

『そこなら5分とかからず行けるわ。 そこから動かないで』

 

『分かっているわ』

 

……面倒な事になったわね。 美樹さやかを始末すると、確実に疑われてしまう。 ワルプルギス前にそれはマズイわ。

 

だからと言って放置すれば、確実に魔女化する。

マミはあの怪物から聞いていたらしく、心を整理する時間があった訳だから、今回は大丈夫そうだけど、杏子がどんな反応をするのか。

 

それにまどかだって、美樹さやかの蘇生を願って契約してしまうかもしれない。

 

 

 

 

 

………何にしても、まずは合流しないと。

 

「佐倉杏子、私の手を取りなさい。 時間を止めて行くわ」

 

「お! 昨日言ってたあれか」

 

しっかりと手を繋いだのを確認してから、盾を操作し、世界を灰色に染める。

 

「さ、行くわよ」

 

「お、おう。

……なんか、寂しい世界だな

 

うるさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もはやトラウマになるほど見た場所に着き、時間停止を解除する。

 

「ここに、さやかが……」

 

「そうね。 さっさと行きましょう―――ッ?!!」

 

途轍もない負のエネルギーが吹き荒れる。

 

……間に合わなかったようね。

 

 

「お、おい! 何なんだよ、今の?!?」

 

「今のは、―――っ?!?」

 

「? 何で黙って――ひっ!!」

 

 

不自然に人のいない駅前の通り。

 

 

ぽっかりと空いた、魔女の結界とも違う異様の空間に、『呪文』が、響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――いあ いあ くとぅるー ふたぐん!』

 

『――いあ いあ くとぅるー ふたぐん!』

 

 

 

 

 

「狂人――逃げるわよ!」

 

立ち止まったままの杏子の手を引いて、急いで魔力反応を辿る。

 

焼け石に水でしょうけど、道中閉められる扉は全て閉め、時間を稼ぐ。

 

 

 

 

 

ホームに駆け込むと、――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―お願い、やめて! 美樹さん! 目を覚まして!!」

 

人魚の魔女の攻撃を防ぎ続けるマミ。

 

「!? おいマミ! さやかの奴はどうなってるんだ!!!」

 

「!! 佐倉さん、」

 

「!? マミ、前を――」

 

マミが杏子の方を向いた隙をついて、剣が振り下ろされ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――やっぱり、間に合わなかったか」

 

ドゥンッッ!!!

 

榴弾が爆発した様な音がすると、振りかぶられた大剣が弾かれる。

 

この、声は――

 

 

 

 

 

「「「――クトっ!?!」」」

 

「……………」

 

先端から煙を吹くランスを肩に担ぎ、少女の皮を被った化物が再び姿を表す。

 

 

「………DOMINATE(支配)

 

そう一言呟くと、魔女が一瞬震え、大人しくその場を後にする。

 

「!?!? い、今のは?!?」

 

「ッ――どうだっていいだろう。 それより、時間が無いから、端的に言う。

 

 

 

 

 

 

 

――お前らの持ってるグリーフシードを、一つ残らず寄越せ」

 

「!?」

 

「そう言われて、はいそうですかと渡すと思うのかしら?」

 

時間が無い――ワルプルギスが来るまでの時間かしら? 露骨に戦力を削りに来たわね。

 

「……思っちゃいないさ。 なに、大ポカやらかした私の所為さ」

 

? 何を言って――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――私はクトゥルフ。

邪神にして旧支配者。

狂気を司りし邪教の司祭」

 

 

ボソボソと何かを唱え始める。

 

少女の陰がゾワリと蠢き、実体を持つ。

 

 

「――私が求めるは、絶対の『力』。

叡智を潰し、希望を除け、

絶望の扉を抉じ開ける『力』」

 

 

 

その触手が怪物を覆い、膨大な瘴気が辺りに漏れ出る。

 

 

 

「――故、この身は破滅を招く物。

破壊でしか己の願いを叶えられぬ物」

 

 

触手が消し飛ぶと、以前魔女の結界の内側で見た、魔法少女の格好の少女が。

 

踝まで届くほど長い裾のワンピースは縮み、ミニスカートになり。

 

靴はスニーカーから、寂れた港町を連想させる色のローファーに。

 

腰には、ベルトのように、髪と同じ深緑色のリボンが巻き付き。

 

肩からは、足首まで届く、ドス黒いロングコートを羽織り。

 

首元には、水の様なマフラーが巻かれ、その長い両端は鞭の様にしなやかに浮かぶ。

 

 

 

 

 

 

 

「―――さあ。

覚悟はいいか? 魔法少女(探索者)よ」

 

 

 

 

 

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