とある少女の救済神話 【完結】   作:カリーシュ

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(グロ注意)











表ルート:第10話

sideほむら

 

「――フンッ!!」

 

ドゥンッッ!!!

 

片手で持ち上げられたランスの先端で爆発が起こり、熱と衝撃による砲撃が、背後にあった支柱を容易く吹き飛ばす。

 

「相変わらず無茶苦茶ね!?!」

 

「まだ手を隠してたのかよ?!」

 

 

「え?! クトの武器ってガンランスなの?! え? え?!」とパニクってるマミを放置して、化物に飛び掛る。

 

「らあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「……無駄だ」

 

先に杏子の槍が襲うけれど、あっさりとランスに絡め取られる。

即座に多節棍に切り替え、逆にランスに巻きつくことで動きを制限しようとするも、

 

「……小細工が」

 

軽々と杏子ごとランスを振り上げ、

 

「っ!? うわっ!!」

 

地面に叩きつける。

杏子はギリギリで手を離して離脱には成功するも、多節棍は潰され、魔力の粒になって消滅してしまう。

 

 

 

「これでも喰らいなさい!!」

 

射線上にクトだけを捉えた瞬間に時間を止め、後のことは考えない様にして対物ライフルの引き金を引きまくる。

 

さらに怪物の背後にC4を設置し、ボタン一つで起爆できる様にする。

 

「停止、解除!」

 

何発もの鉛の塊が容赦なく牙を剥き、ソレの身から肉を剥ぎ取る。

額を穿ち、頬の肉を吹き飛ばし、心臓を貫き、細い四肢に風穴を開ける。

 

トドメに爆風が背中を打ち付け、うつ伏せに倒れる。

 

「暁美さん!? やりすぎよ!!」

 

「巴マミ、相手はゾンビなんて目じゃ無いような化物なのよ」

 

確かに普通の魔法少女なら、さやかのような回復特化でもなければ死んでいるか、あとはトドメを刺すだけだろう。

 

 

 

 

 

――そう、普通(・・)なら。

 

 

 

 

 

「――く、は。

く、ククククク、クゥハケケケケケケケケァハハハハハハハ!!!」

 

爛れた皮や脳漿をボロボロと零しながらも、立ち上がる。

 

「フゥー、フゥー…………ああ、そうだ。 それでいい……」

 

傷ついた部分を軽く揺らすと、既に再生済みの身体が内側にあるかの様に肉が浮き出て、一瞬で傷が治る。

 

 

「……さあ、リスタートだッ!!」

 

ドゴン、と鈍い音をたてて地面に亀裂が走る。

 

見れば、両足がめり込んで――っ!?!

 

 

直勘にしたがって咄嗟に屈むと、すぐ真上で小さな手が空を掴んでいた。

背筋を冷たい汗が流れる。

あの勢いで掴まれていれば、そのまま握りつぶされてもおかしくなかった。

 

「……避けたか。 流石だ」

 

「それは、どうもっ!!」

 

超至近距離まで接近していた怪物の顎の下から撃ち抜くようにDEを発砲するが、上体を素早く起こすことであっさりと躱される。

 

「――うるぁっ!!」

 

「! っと」

 

追撃で槍が振り下ろされるが、倒立の要領で上がった足で蹴り弾かれ、防がれる。

 

着地した怪物は、ランスを剣のように振りかぶりながら未だ躊躇うマミへと突進する。

身の危険を感じたマミがランスにリボンを巻きつけて引き千切るまでの時間差によって生まれた隙を使い、連撃を最低限の動きで躱していく。

 

「!? クト! どうしてこんなことを、」

 

「言ったハズだ。 私はクトゥルフ。

決して人と相入れることなど出来ないっ!!」

 

大振りな武器では埒が明かないと思ったのか、リボンに引っ張られるままにランスを手放し、私にやるように片手で掴みかかる。

 

「くっ!」

 

首を傾けてその一撃を紙一重で躱すと、怪物の身体の小柄さが幸いしたのか、その勢いのままでマミの背後へ突っ込んでいき、休憩室を崩壊させる。

 

「……クト…………っ!?」

 

「!?!」

 

「うおっ!!」

 

私たちの顔面を狙ってコンクリの塊が飛んでくる。

マミは半歩ズレて軌道上から逃げ、私は手に持っていた銃を盾に防ぎ、杏子は槍で弾く。

 

「……まだだ。 この程度では神話生物は終わらん!!」

 

自販機の商品取り出し口を掴み再度突進する怪物の身体を私がサブマシンガンで押し留め、マミが自販機を撃ち壊す。

 

「チッ! フンッッ!!」

 

武器を失った怪物は地面を踏み締め、低高度でタックルを杏子にしかける。

 

「杏子! そのままクトを抑えてなさい!!」

 

「うぇえ!? おい、無茶言うな――うお!?!」

 

ジャンプで一撃を躱した杏子に一時的に相手を任せる。

 

「巴マミ。 手を貸しなさい」

 

「……どういう意味かしら?」

 

ハッキリとした確証は無いけれど……

 

「――おそらく、アレは弱っている(・・・・・)

さっきの掴みかかりは、これまではあんな風に踏みしめるようなタメは無かったし、こちらの攻撃だって、受けてもほぼ無傷だったわ。 なのに、今は9ミリ弾ですらダメージを与えられる」

 

特に攻撃の予備動作については、ついさっき出来ていたことが出来なくなっている。

 

「……油断を誘っている可能性は?」

 

「時間が無いと言ったのはアレよ。 それに、真向から蹂躙出来る筈の相手が油断するのを待つ理由が無いわ」

 

それでもあの馬鹿力は健在なのか、拳を振り抜いた衝撃波で体制が崩れた杏子に迫る蹴りを、腱を撃ち抜くことで援護する。

……やっぱり、防御力が落ちてる。

 

 

今なら、殺せる。

 

 

「杏子が抑えている隙に、十字に撃つわよ」

 

「でも―――」

 

未だ怪物を信じているらしいマミが、躊躇う様子で―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――いあ いあ くとぅるー ふたぐん!』

 

『――いあ いあ くとぅるー ふたぐん!』

 

 

 

「「「「――っ!?!?」」」」

 

 

すぐ近くから、狂人の呪文が聞こえる。

 

……私たちに残された時間も無いようね。

 

――仕方ない。

 

「巴マミ。 あのままアレを放置すれば、あんな犠牲者を出すことになるわ」

 

「!? で、でも、クトがやったと決まったわけじゃ――」

 

 

 

 

 

 

 

「―――誰が、この場に来いと言った、案山子(カカシ)どもがァッッ!!!」

 

いつの間にか拾っていたらしいランスを振り下ろし、衝撃波と、それによって飛ばされた礫でホームに入りかけていた狂人を吹き飛ばす。

 

 

……決定的、ね。

やっぱり、狂人とクトは繋がっている!

 

「巴マミ!」

 

「――ああもう! 分かったわよ!!」

 

周囲にマスケット銃が生成されるのを見て、私も移動する。

 

時間を止めず、マグナムで援護射撃を加えることで、満身創痍一歩手前の杏子が離脱する隙を作る。

 

 

「くっ、マミ! 回復頼む!」

 

「させるか――ヌゥッ?!」

 

杏子が下がるやいなや、ショットガンに持ち替えて容赦なく散弾を浴びせる。

 

「――ルウゥああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」

 

銃撃から逃れるように跳ね、天井の骨である細い支柱を掴むと、強引に引っ張り、盾にする。

 

リロードの為にも銃撃を止めると、すぐさま跳ね降りて看板を掴んで武器にしてしまう。

 

オマケに着地した瞬間に足元にあったコンクリ塊を杏子の方に蹴り飛ばした。

 

「っぶね!」

 

グシャァッ!

 

幸い、狙いが甘かったのか、少しズレたところで粉微塵になる。

 

怪物がそちらに気を取られた僅かな隙に杏子が槍を携えて突っ込み、私とマミで銃撃を加える。

 

「っ!」

 

銃弾を鬱陶しく思ったのか、看板をマミに向かって投げとばす。

 

即座に迎撃され、僅かに生じた隙を狙って槍が突き出されるのを頭部で受け血が吹き出し、仰け反った隙に散弾銃の連射でランスを持っていた右腕を吹き飛ばす。

 

『杏子! ソレの防御力は下がってるわ! 今ならソウルジェムを砕けるかもしれない!!』

 

『っ! 分かった!』

 

「――ぅるぁぁぁぁぁ!!」

 

杏子のソウルジェムが入ったポーチを狙った追撃を、コンクリートの地面を踏み抜いて蹴り上げ、強引に盾代わりにして防ぐ化物。 まだそんな力があるの?!?

 

こちらの視線が途切れた瞬間に浮かび、右腕を一瞬で再生して、両手で天井の軸を掴むと引きちぎり、双槍にする。

 

「なんつー回復力だよおい!?」

 

「削りきるまでよ。 魔力そのものは少ないわ!」

 

「―ッ!」

 

魔力で編まれた槍とただの鉄骨ではまともな勝負にならず、さっきの自販機同様あっさりと破壊される。

 

宙を舞う二本のうち、一本は杏子に、もう一本は狂人の昇ってくる階段の天井部に蹴り出される。

 

天井に向かった方は突き刺さるけど、杏子への方は私が弾き、多節棍を使った立体的な軌道で矛がクトの首を狙う。

素早い側転で一閃を躱し、近くに落ちていたランスの柄を踏みつけて跳ね上げることでマミの銃弾を防ぐと、骨翼が私を襲う。

 

「その攻撃は、もう何度も見たわ!」

 

その先端が届く前に時間を止め、避けるついでにピンを抜いた手榴弾をお見舞いする。

 

―停止、解除。

 

 

 

爆発。 閃光。

 

直前に咄嗟で手榴弾を掴んでいたらしく、左手は骨が露出するほどズタズタになる。

 

「……痛いな」

 

「!?」

 

ブチィ、と己の腕を肩から引き抜き、指先から二の腕の部分を喰らうと、そのまま引き抜く。

持ち手の部分にのみ肉が残り、赤く、白い骨が現れる。

 

「な?!?」

 

「た、食べちゃった……っ?!」

 

余りにもグロテスクな光景に怯んでいる隙に、骨を投げ捨てると、右手でランスを掴み取り、再度一瞬で再生させた左手を突き出して再度掴みに来る。

 

「っ、それも、見たわ!」

 

紙一重で躱し、超近距離で顔面に散弾を叩き込む。

血が飛び散り、硝煙を吐きながら後ろに吹っ飛び――

 

「――足らん。 足らんなぁ………!!」

 

狂人とも違う、異様な空気が場を支配する。

 

 

『ソレ』の片目は潰れ、蒼白くも端整な顔立ちは見る影も無くなり、口は耳まで裂ける。

 

「っ――いい加減、止まりなさい!?!」

 

その悍ましさに思わずグレネードランチャーを使ってしまい、血に混じってピンク色のナニカがぶちまけられ、再び倒れる。

 

「まだ、まだまだ――」

 

「暁美さん、もうやめて! やり過ぎよ!!」

 

「うっ……」

 

さらに叩き込もうとに弾を込め直していると、マミが止めてくる。

邪魔しないで!! アレは、私が、殺して、殺シテ、コロシテ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――は、クハハハハハッ! ママナラネェナ!! クギャハハバハハハハ!!!」

 

 

ぞっとする、パンドラの箱の蝶番が軋むようなワライゴエが響く。

 

そちらを見れば、頭部の半分以上を失い、極彩色の液体を断面から垂れ流す、人のカタチをした、ナニカが、立っていた。

その口が、足が動くたびに杯状の頭蓋骨から脳漿や髄液が溢れ、片方残った眼球がギョロリと蠢めく。

 

 

「!?!?!」

 

「」

 

「あ、ああぁぁぁぁぁああああ!!!」

 

発射された榴弾は、見当違いの方向に飛び、建造物の一部を吹き飛ばす。

 

「……ド処ヲ撃ッテイる? 私は此コダぞ? クハハハ――」

 

ブォンとランスが振り回され、その風圧で体制が崩される。

 

『―いあ いあ くとぅ――』

ズガンッ!!

 

「……煩イ」

 

こびりついた血で滑ったのか、階段の天井のランスが突き刺さり、今度こそ崩落する。

鉄筋コンクリートの雪崩がホームに入り込んでいた狂人すらを巻き込み、完全に遮断する。

 

「……? 煩ワしいナ」

 

そう呟くと、自分で崩壊した頭部を千切り、落ちたソレを踏み潰す。

 

それが合図だったかのように、首の断面から、グチュグジュと傷一つ無い頭部が生えてくる(・・・・・)

 

 

 

 

 

「ば、化け物――」

 

「何を今更。 最初からそう言っているだろう?」

 

全身を己の血と脳漿で染めた紅のドレスの邪神が、歪んだ笑みを浮かべる。

 

「――あぁ、それだ。

『恐怖』。 『狂気』。

いい、イイゾ!!

さア――

 

 

 

 

 

私を、殺してみせろ!!!!」

 

 

骨翼が空を割いて一気に距離を詰め、銃口を掴む。

 

「!? こ、来ないで!!」

 

「クハ、逃げてどうする? 最初の威勢はどうした? フハハハハ!!」

 

心臓部に銃口をめり込ませると、血や体液でぬめった手が私の手を抑え、強引に引き金を引かせる。

 

バコンッとくぐもった音がなり、背中側から肉片が飛び散る。

 

「ごふっ!

……グブ、どうだ? 恐怖はこうやって払え。 でなければ何度でも蘇るぞ?」

 

「あ――」

 

その濁った深海のような瞳が、恐怖に引き攣る私の顔を写し―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――らちゃん! ほむらちゃんっ!?」

 

「――――はっ!?!」

 

目が覚める。

 

「や、やっと目が覚めたんだね!」

 

「……まど、か?」

 

目の前には、涙目の少女。

一体、なんで『こんな所』に――っ!!!

 

「まどか! 怪我は無い?! 変な人に追いかけられなかった?!」

 

「へ?! う、うん。 私は大丈夫だよ。

それより、ここで何があったの?!」

 

問われて、節々が痛む身体で辺りを見渡すと、そこら中に血や肉片が飛び散り、地面には穴や亀裂、陥没した跡が残され、支柱が無くなった所為か天井は一部崩落していた。

 

 

あの怪物や狂人は、影も形も無い。

 

 

「……色々、あったのよ。 それより、佐倉杏子と巴マミは?」

 

「呼んだかしら?」

 

振り向くと、回復し終えたのか、綺麗な格好のマミがいた。

 

「佐倉さんはまだ寝てるわ。 特に大きな怪我をしていなくて良かったわ」

 

「そう……」

 

直ぐに使えるようポケットに入れていたグリーフシードを探ると、空っぽだった。

 

「……巴マミ、」

 

「私のも取られてたわ。 佐倉さんのも」

 

「くっ………!」

 

つまり、あの怪物は私たちに『ワルプルギスで詰め』、とでも言ってるのかしら!

 

幸い、盾に入れておいた分は無事だった。 3人分をフルで賄うのは無理でも、取り敢えずの補給はなんとかなりそうね。

 

 

 

「佐倉杏子が目を覚ましたら移動するわよ。 じきに人が来るわ」

 

「え? さやかちゃんは!?」

 

「「…………え?」」

 

「だって私、さやかちゃんがいるって、クトちゃんに聞いてここに来たんだよ?!」

 

「なっ……!!」

 

あの、悪魔!! なんて置き土産を―――

 

「………鹿目さん、落ち着いて聞いて。 美樹さんは、」

 

「巴マミっ!! やめなさいっ!!!」

 

「だって、どうすればいいのよ!?! この子は美樹さんの友達なのよ? 知る権利があるわ!!」

 

「それでも、よ。 知ればまどかは確実に契約してしまうわ!」

 

「でも、――」

 

駄目だ、埒があかない。

武器こそ出て来ないけど、マミの精神は今とても不安定だわ。

 

このままじゃ―――

 

「ほむらちゃんもマミさんも落ち着いてよ! なにがどうなっているのか、全然分かんないよ!?」

 

「いやー、ホントに。 あたしもなにがなにやら」

 

「「鹿目さんと美樹さんは黙ってて!! ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………え???」」

 

まどかの隣を見る。

 

何故か涙目のキュゥべえを肩に乗せ、呑気な顔で突っ立ってる美樹さやか(・・・・・)が見える。

 

「……どうやら魔法に失敗したようね。 ちょっと待ってもらってもいいかしら」

 

視力を補助している魔法を解除して、再度魔法をかけ直す。

 

ポカーンと目が点になってるマミを見て、「よかった、よかった!」と涙ぐんでるまどかに抱き着かれて照れてるさやか(・・・)を見る。

羨ましい。 パルパル。 間違えた、ホムホム。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!?!?

 

「うわ、うるさ!? 転校生、急に大声出してどうしたのさ?」

 

「『どうしたのさ』じゃないわよ!! なにサクッと復活してるのよ?! 私があれこれ考えてたのあっさり無駄にしないでよ!! 無駄になった方がいいけど!! 覚悟とか色々あったのに!! ていうか復活するなら最初からそうしなさいよだったらこんな、こんな、こんな………」

 

「あー、ほむら?」

 

「なによ!?!」

 

照れ臭そうに頬をポリポリと掻くさやか。

 

「………その、ありがとうね」

 

「……………………は??」

 

「いや、ほむらってさ、今までは何もかも諦めた目をして、空っぽの言葉を喋ってたけど、

今はちゃんと、ここにいる」

 

「っ!!

………そう、ね」

 

ループの中で真っ先に失われた、さやかの、私への純粋な笑みが、

そこに、あった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ところでさ、クトは何処なの?」

 

感慨に浸っていると、アレの存在が話題になる。

 

「……………何故かしら?」

 

「なぜって、ここにいないの、あとクトだけじゃん。 あいつにも酷いこと言っちゃったし、謝りたいなって、」

 

「……クトは、」

 

言うべきか、言わざるべきか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――彼女なら、君の魂と引き換えに魔女になったよ」

 

「「「!?!?」」」

 

瓦礫の上から、感情を感じさせない声が聞こえる。

 

「なっ――どういう事だよ!?」

 

「そのままの意味だよ。

そこの二人は隠し通しておきたかったみたいだけど、魔法少女の最期は、死だけじゃない」

 

「っ黙りなさい!!」

 

拳銃でインキュベーターを撃っても、すぐさま次のインキュベーターが現れる。

 

 

 

そして、最悪の形で、

 

魔法少女の最後の真実が、明らかになる。

 

 

「――ソウルジェムが濁りきる時、

魔法少女は魔女となり、君たちが奇跡をもたらした分、呪いをばら撒くんだ。 キチンとバランスのとれた良いシステムだろう?」

 

「……………うそ、」

 

「じゃあ、記憶の無い間、あたしは、」

 

まどかとさやかが、信じられないと言った表情をする。

 

「そう言う意味では、クトが魔女化したのは君たちにとっては大きな痛手だろうね。

だってそうだろう? 彼女は大きな絶望を消し去る代わりに、怒りや憎悪、狂気でもってバランスをとり続けたんだ。 まあ、どちらにせよ、限界は近かったようだけどね」

 

「!? 怒りや憎悪って、まさか、」

 

「そのまさかさ。 彼女の本心としては、君たちに刃を向けるのはとても心苦しかっただろうね」

 

 

つ、つまり、

 

 

 

 

 

わざと嫌われる為に何度も襲った(・・・・・・・・・・・・・・・)!?

 

 

「そもそも彼女の魂は、契約した時点で99%濁っていたんだ。 それを強引に、君たちの魔法とは別の『魔術』で押し留め、蓋していたんだ。

魔法少女や魔女の相手をするだけなら、彼女の素の身体能力故に魔力消費は非常に少なかっただろうけど、そこの個体に精神疾患を引き起こしたのを始めに、何度も魔術を行使して『蓋』にヒビが入り、さやかの魂を元に戻すために魔術を行使したのが切っ掛けで、ソウルジェムが濁りきったんだ」

 

「う、うそだ。 そんな、」

 

さやかが青白い顔をして、膝をつく。

 

「……待ちなさい、インキュベーター。 あなたの言っている事が事実だという証拠は無いわ」

 

「確かに物的証拠は無いね。

僕らが彼女の感情エネルギーを回収した時、その膨大な量故に混ざった彼女の記憶の内容を言っているだけだし」

 

「なら、なんで今それを言ったのさ?!」

 

さやかの肩に乗っていたキュゥべえが、声を張り上げる。

 

「クトは最後まで『悪』でいるつもりだった! さやかを戻した事だって、ボクは口止めされた!!

キミがクトの記憶を見たのなら、なぜ黙っていなかった?!」

 

「それは簡単な事だよ」

 

 

一切の感情を込めず、淡々と、

 

 

「――僕らは、そんな『願い』を聞いていないからね」

 

「っ!!!」

 

「それじゃ僕は失礼するよ」

 

それだけ言い残すと、白い尻尾が瓦礫の向こう側へと消え去る。

 

 

 

 

 

「………」

 

重い空気が流れるなか、さやかがふらりと立ち上がる。

 

「……何処に行くの?」

 

「………クトを、助けに行く」

 

「ムダよ! 魔女を戻す事は出来ない!」

 

「じゃああたしはどうなのさ!!」

 

涙を浮かべたさやかが、叫ぶ。

 

「……クトは、あたしを助けてくれた。 あんたがたった今、無理だって言った事を実現してみせた!!」

 

「それは、クトだったから出来たのよ」

 

確かに、実例はある。

 

問題は、その方法だけれど。

 

 

「……キュゥべえ。 クトの使っていた『魔術』は、私たちにも使えるのかしら」

 

邪神の白い使い魔は、首を横に振る。

 

「っ、でも可能性は、」

 

「断言出来るけど、無理だよ。

トドメを刺す事が、ボクらに出来ることだ」

 

「そ、そんな――」

 

さやかが、悔しそうに唇を噛む。

 

 

「……キュゥべえ、私が契約すれば、」

 

「ダメだ。 彼女の思いを踏み躙る事になる。

仮に出来たとしても、クトは魔法少女の秘密を全て知っていた上で契約したんだ。 恐らく、契約しなかったらしなかったで大きな問題があったんだと思う」

 

まどかがとんでもない事を提案するけれど、キュゥべえによって却下される。

 

 

 

 

 

「……取り敢えず、魔女の様子を見に行きましょう。 もしクトの意識があれば、希望があるわ」

 

「「!!」」

 

「!? マミ! そんなこと言って、」

 

「あり得ない話じゃないわ。 あの子の正体だって、最初は半信半疑どころか全く信じていなかったでしょ?」

 

「それは、――」

 

何も言い返せず、黙ってしまう。

 

………そう考えたら、本当に魔女化した状態で自我を保ってる様な気がしてきたわ。

 

 

「……クトの正体って、変な翼は生えてたけど、私たちと同じじゃ」

 

「いえ。 実はあの子はね、

クトゥルフだったのよ!」

 

「ファッ!? クトゥルフって、あのtrpgの!?」

 

少し調子の戻ってきた様子のさやかが、マミの言葉にオーバーに反応する。

 

 

 

………あれ、そういえば、

 

「杏子はどうしたのかしら?」

 

「……………忘れてたわ!!」

 

マミの絶叫に慌ててソウルジェムを確認すると、

下の階に、魔法少女の魔力反応があった。

 

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