とある少女の救済神話 【完結】   作:カリーシュ

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裏ルート:第3話

sideキュゥべえ

 

「では、今日は部屋の内装を決めたいと思う」

 

「如何したんだい藪から棒に」

 

部屋に放置されていたボロテーブルに両肘を突き組んだ手で口元を隠した格好(ゲンドウポーズ)のクトが、そう切り出してきた。

 

「そうだ、デパートに行こう」

 

「頼むからマトモな言語を喋ってもらえないかな」

 

「大丈夫だ、問題無い」

 

「もう嫌だこのヒトぉぉぉぉ!!!」

 

同行を拒否したら強制連行された。 解せぬ。

 

 

 

 

 

〜少女(?)移動中〜

 

 

 

 

 

―ミタキハラデパート

 

「さて、さて。

……ぶっちゃけノープランで来たんだけど、なんか欲しいモンある?」

 

「濁りきったキミのソウルジェム、或いはグリーフシード」

 

「どストレートだなオイ」

 

相変わらずの電気ネズミスタイルでデパートを散策する。

ボクらは普通の人には見えないから、独り言を呟いている様に見えるクトに怪訝な眼が向けられる事はあれど、実際なら衛生上の理由で確実に呼び止められるだろう生鮮食品コーナーにも平気で入れる。

 

……最も、スーパーで買ったのは全て冷凍食品だったけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねえクト、ここには家具を買いに来たんだよね?」

 

「正確に言えば、その中でも小物類とついでにメシ、オマケでレンジだね。 流石にソファーやら布団やらは手持ちの金じゃ買えん」

 

「それはいいんだ。

ボクが気になっているのは―」

 

ビシッと、周りの商品を指差す。

 

「―ならなんでペットショップコーナーに来たのかって事だよ?!」

 

非効率的、非効果的、非衛生的と無駄の多いガラスケースでの生体販売所に、各種動物用のフードやら玩具やらが陳列されている空間。

 

そこが、買い物袋(冷食純度100%)を下げたクトが訪れた所だった。

 

「え? ペットには適切な運動、食事、躾が必要だろ?」

 

「キミはボクの事を一体なんだと思っているんだい?!」

 

「そーいや、『インキュベーター』なんてジャンルのペット無いもんなぁ。

…………外見からしてネコ用でイケるか?」

 

「シャァァァラァァァァプッッッ!!! ネコ?! ナンデネコ!?!? ボクらは地球外生命体だから!! 食事は取り込んだグリーフシードから漏れ出るエネルギーだけで充分だし、躾だって思考レベルとしてはそこらの一般人以上にはあるから!!」

 

「ま、そん位なきゃ詐欺なんて出来ないからな。 じゃあとりまトイレ砂だけ買っといてやるよ」

 

「なんにも分かってないぃぃぃぃ!?!?」

 

トイレ砂だけでなく、何故かマタタビの袋まで手に取ってレジに向かい始める少女。

 

これはマズイ、何とかしてクトを止めないと、数時間後にはマタタビまみれになる未来しか――

 

 

 

「…………………………キュゥべえ、行くよ」

 

「ま、待ってくれ、マタタビは――

―え?」

 

……クトが袋を元の棚に戻した後、早歩きで店を出る。

 

「ちょ、ちょ、ちょっと!?

一体何が―」

 

話しかけて、顔を見て、

 

後悔した。

 

 

 

 

 

――何故ならそこにいたのは、夢と希望を振りまく少女などでは無く、

 

 

 

 

 

 

 

歪みきった嘲笑の表情の、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ミィィィィツゥーーケタァァァァ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クト(悪魔)だったのだから。

 

 

 

 

 

―っっドゥンっっっ!!!

 

 

 

「キュっっ!?!?!?」

 

少女の皮を被った『ナニカ』が、地面を踏みつける。

それだけの動作で、周りの景色が線に見える程のスピードに到達する。

 

「み、みつ、見つけたって、何を!?」

 

逆風が口腔を蹂躙して非常に喋りにくいというのに、平然と答えが返ってくる。

 

「何をって、魔女以外あんのかねぇ! オマケにすぐ近くに人の気配まである! 数は4!」

 

「!? ど、どうやって―」

 

見ていた限り、デパートに到着してから、クトは一度たりともソウルジェムを見ていない。

なのに一体、どうやって、それも周りにいる人数まで把握したんだ!?

 

咄嗟に、付近にいる同族と同調する。

 

 

 

 

――見つけた。 って、

 

「クト、人間の方は大丈夫! こっちで魔女を確認したら、他の魔法少女と会敵する直前だよ!」

 

その魔法少女は巴マミか(・・・・・・・・・・・)?!」

 

「なんでそれを気にするんだい?! ちなみに答えはイエス――きゅぶいぃぃぃぃぃぃ!?!?」

 

ボクの返事を聞くと同時に、さらに加速……?!

あれでまだトップスピードじゃ無かったのかい!?

 

 

 

『立ち入り禁止』の張り紙がされたドアをスピードを落とさないよう跳び膝蹴りで破壊して侵入、そのまま薄暗い空間を数瞬の間突き進み、突然急上昇して天井付近の鉄骨に着地する。

 

「お、おえぇぇ……」

 

「おいおい大丈夫けー?」

 

急発進、急加速、急上昇、急停止という、平衡感に全く優しく無い4点セットを受けて気持ち悪くなったボクを労わるクト―

 

 

………キミは平気そうだね。 考えてみれば、自分の出せるスピードに自分が重大な影響を受ける筈が無いか。

 

吐き気が少し楽になった所で聞く。

 

「……どうして、魔女の結界にとび込まなかったんだい? 入り口が分からないわけでは無いだろう?」

 

「ん? あー、えっと………

キュゥべえ、あんさん逃げといた方がいいかも」

 

「?」

 

これまでの彼女じゃ考えられないほど、肩に乗ったボクをゆっくりと降ろす、と―

 

 

バツっっっっ!!

 

 

冷食の袋を1つ、音速すら超える速度であらぬ方向に投げ飛ばす。

当然ビニールパッケージは剥がれ、こぼれ出た食品が散弾のように鉄骨を打ち据える。

 

「……………」

 

「クト? 一体何を―」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―チャキッ

 

僅かな金属音が、背後で鳴る。

 

「動かないで」

 

「………銃口突きつけられちゃ、動きたくても動けんがな」

 

ノロノロと両手を挙げたクトの両足の隙間から見ると、1人の少女が拳銃を押し付けていた。

 

―キミは、確か、

 

「暁美ほむら? こんな所で何をしているんだい?」

 

「―あぁ、あなたもいたわね」

 

空いていた片手に銃器が現れ、ボクに狙いをつけ―

 

「ナイスじゃんキュゥべえ!」

 

「!? くっ」

 

集中が逸れた瞬間、クトが足払いでほむらの体勢を崩す。

無理矢理向けられた2つの銃口に対し、首を絞める様に正面から腕を伸ばすも、バックステップで回避される。

 

「チッ、引っ込んでなさい、この素人――っ?!」

 

「ハッ! どっちがトーシロジャン!!」

 

再度銃口が向けられるも、銃弾が発射されることは無い。

 

「―な、何で、」

 

PvC(魔女狩り)ばっかしていてPvP(対人戦)は能力頼みのゴリ押しってか?! ンなんじゃ勝てるモンも勝てないわなぁ!!」

 

一瞬で距離を詰め、左手を素早く振り抜いて拳銃を弾き飛ばすと、そのまま右手で首を掴み、拘束する。

 

この間、約5秒。

 

 

「!! グッ―」

 

「おおっと危ない」

 

悪あがきの蹴りが放たれるも、少し姿勢を変える―具体的に言えば、ほむらの首から下が、足場の鉄骨よりも下にくる様、首を掴んだまま座り込んだ。

 

「あんま抵抗しない方がいいぞ。 この高さからただ落ちただけなら兎も角、無理に逃げようとすれば叩き落とす。

ま、その前に、このまま握力全開にすりゃそれで片がつくな」

 

「……なにが、目的よ」

 

首を、特に気管を掴まれている影響からか、苦しそうに問う。

 

「なーに。 ただ質問に答えてくれりゃいいのさ。 別に嘘ついても構わんから何かしら反応プリーズ」

 

「……さっさと、聞けば」

 

「おぉーうツンツンしてますなー。

んじゃ質問。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―今、何回目(・・・)?」

 

 

 

 

 

 

 

「―――っっ?!?!?! 一体、何のこt」

 

「あ、おkおk察した。 じゃ、色々事情がメンドいモン同士、お茶でもいかが?

―向こうも手遅れ(・・・)っぽいし」

 

クトがチラリと見た先では――

 

 

 

結界の内側の対象を撃破した金髪の魔法少女が連れた生物が、2人の少女に、こう言った所だった。

 

 

 

「あのね、僕と契約して―

魔法少女になってほしいんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―………チッ」

 

引っ張り上げられたほむらが、小さく舌打ちをする。

 

「客観的に見て、どーよキュゥべえ?」

 

「…………あれで即決する子もいるんだよねぇ」

 

「ま、良くも悪くも中二っつーこったな。

で、デートの誘いの返事は? 暁美ほむらちゃん?」

 

「…………………分かったわよ」

 

 

 

 

 

 

 

〜少女移動中〜

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、同デパートのファストフードコーナー。

 

ほむらがよくあるセットを注文したのに対して、クトはフライドポテトばかり大量に注文して一気飲みしていた。

 

「―ポテトはのどごしっ!!」

 

「普通に食べなさい、意地汚いわよ」

 

ふぇひふぅ(出来ぬぅ)!!」

 

「………はぁ」

 

お互い自己紹介すらしていないのに、もう溜息が出ていた。

 

「……それで。 貴女一体何者よ? 私がこれまでやり直してきた時間軸に、貴女は影も形も無かったわ。 だと言うのに、貴女は私を知っている」

 

「神です」

「馬鹿にしてるのかしら?」

 

クトのボケにノータイムで切り返すほむら。

 

「ボクとしても、真面目に答えて欲しいな。 キミは余りにも異質過ぎる」

 

「異質?」

 

首を傾げるほむらに、彼女の異常性を伝える。

 

 

 

宇宙から物理法則を無視して落下してきたこと。

 

失った記憶にあるらしい絶望を祓うために、奇跡を『先送り』にした、最弱の魔法少女であること。

 

完全に人間の域を超えた身体能力に、出処が不明の情報を持っていること。

 

 

 

「……さっぱり分からない、ということが分かったわ」

 

「それで、キミは一体何者なんだい?」

 

じっと、ポテト飲料化計画を進行させるクトを見つめる。

 

「…………私が何者か、ねぇ。

――ンなもん、私の方が知りたい」

 

「「は?」」

 

予想外の答えに、目が点になる。

 

「いや、答えだけなら幾らでも用意出来るさ。

人間、神、出来損ないの魔法少女、宇宙人、タマ置いてけ、旧支配者―

ま、敢えて自己評価するなら、」

 

1泊空けて、紡ぎ出された答えは、

 

 

 

 

 

「―私は『クト』だ。 それ以上でもそれ以下でもない」

 

 

 

「………結局、答えになってないじゃない」

 

「なら話を超シンプルにしようか、『時間遡行者』(暁美ほむら)

 

ほむらの身体が一瞬震える。

時間遡行者………成る程、彼女の情報元は過去の時間軸なのか。

 

「…………貴女、何処まで、」

 

「メンドいから答えん。 先ずは目的をスッキリさせよぉか。

あんたは『鹿目まどかを助けたい』。

私は『記憶を取り戻したい』。

ここまではおk? おkなら思考パートに入るけど」

 

「…………続けて」

 

「現状、やり方が分かってんのは『鹿目まどかを助ける』方法だ。 連中につきまとうインキュベーターと魔女を皆殺しにすりゃいいんだからよ」

 

「ボクの目の前でそれを言うかい?」

 

「アンタは殺さねぇよ。 どうせグリーフシード回収の為の個体は残しておかないとだからな」

 

「そのやり方には問題があるわ。 インキュベーターは無限に湧くし、魔女だって『ワルプルギスの夜』がいる」

 

一瞬、クトが考え込むような仕草をする。

 

「………ほむら。 命大事にで、巴マミと佐倉杏子、場合によっては美樹さやかも込みで、悪プリンのヨーグルト相手にどれ位保つ?」

 

「悪プリンのヨーグルトじゃなくて『ワルプルギスの夜』よ。

………そうね、ひたすら防御と回避に徹すれば――1時間弱は保つわね」

 

「上々。 それだけありゃ充分だ。

……あと、ダメ元で聞いておく。 ソウルジェムの方は?」

 

「……これまでの経験から言って、最後まで保った事は一度も無いわ」

 

「………………………、か」ボソッ

 

「? 何か言ったかい?」

 

き……だの…う…り――

ダメだ、聴き取れなかった。

 

「なんでも無い。 じゃあ次に考えるのは、味方の脱落防止だな。 魔女の出現ポイントって抑えてんの?」

 

「……いいえ。 絞り込む事は出来ても、具体的な場所までは」

 

「じゃあ『お菓子の魔女』を先制で潰すのは無理か………

まあそっちは、まどかに交代で張り付くなりなんなりするとして、問題は美樹さやかと佐倉杏子だな」

 

「……佐倉杏子は巴マミが死なないと、この町を訪れる意味が無くなる。 美樹さやかは、」

 

「何処ぞのヘタレ相手に奇跡を―

……あ、ええこと考えた」

 

ニヤァと、クトが歪んだ笑みを浮かべる。

 

「………嫌な予感がするのだけれど?」

 

「嫌な事思いついたからね。フフフ…………

―『鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス』」

 

「………?!?! ま、まさか貴女―」

 

ほむらの顔が驚愕に染まるが、クトは、止まらない。

 

「佐倉杏子は巴マミが死なないと表れない。

美樹さやかはヘタレの怪我を治す為に奇跡を使う。

だったらよぉーぉー――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――2人ともブッ殺しちまえばよくね? マミとそのヘタレ」

 

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