生けるモノよ、思い出せ
嘗ての旧き『支配者』を
神よ、畏れよ
オノレが生み出した『邪悪』を
sideマミ
「……啖呵を切ったはいいけど、やっぱりちょっと不利ね」
魔女が喚び出した強化版の使い魔の銃撃を半歩横にズレて躱す。
耳元を銃弾が通り過ぎ、反撃にマスケット銃の銃口を向けるも、その頃には短銃が私を狙っていてそちらの対処を優先せざるおえない。
――手加減されているとはいえ、さっきまでは互角だったのに、追いつけなくなっている。
短銃の銃身をこちらのバレルで弾き、お返しにリボンを飛ばす。
バク転での回避。 それに合わせて距離を開ける。
《■■、■■。 ■■■■■■■■■■■■◾︎》
ゴポゴポと口が開き、言葉になっていない言葉が紡がれる。
その間に修復魔法で傷を塞ぐ。
完治させる程の隙は、無い。
泥を徐々に落としながら、銃による応酬が続く。
古式銃とマスケット銃が入り乱れ、何度も弾丸が掠る。
く、このままじゃジリ貧ね。
決定打が、無い………
ティロ・フィナーレは溜めが長過ぎるし、レガーレもスピード不足。
だからといって、応援が来るまで粘るのは無し。 私のプライドが許さないっていうのもあるけど、私の予想が正しければ、彼女相手に数の暴力は効果が薄い。
なら、一か八か―――
1発の弾丸を頭部に撃ち、銃はいつも通り背後に投げ捨てる。
銃撃は屈んで回避され、長銃が向けられるの。
よし、かかったわね!!
「――レガーレっ!!」
《■■◾︎!?》
突き出された古式銃の銃身に自ら踏み出して距離を詰めてリボンを巻きつける。
すぐに手を離し、古式銃が宙を舞う。
《■■■■■■■■■■■■◾︎。 ■◾︎、■◾︎。 ■■■■■■■■――■◾︎?!!》
そして、その銃身を空中で固定する。
「その反応。 やっぱり落ちたのを回収するつもりだったのかしら。
―――あの
《■◾︎◾︎!!!》
焦ったように長銃を縛るリボンを短銃で撃ち抜こうとするのを、銃弾で弾く。
彼女がリロードしている隙に再度距離を詰める。
マスケット銃の生成は、ない。
《■■■■■?!》
「ふっ!!」
ハイキックで盾にした腕ごと胴体を蹴り抜く。
大きく吹っ飛んだことで、今までの比じゃない程の泥が剥がれ、
「………一ファンとしては、サインをねだるべきかしら?」
《――キ■。 ■れはわ■■しの■■フでもあり■■■■◾︎》
それがキッカケだったように、泥がボロボロと崩れる。
《■たくしと■まし■■、折■彼女の■■■■アから■放され■と思っ■らこんな状■で■■■◾︎。
いっ■のこと、■っても■っ■方があ■■たいですわねェ。
――勿論、全力で抵抗は■せて■らい■■が》
短銃が垂直に挙げられ、影が吸い込まれる。
《――
そして、自分を撃ち抜く。
ダメージは無く、パッと見では何をしたのか分からないでしょうね。
その間に完全に傷の修復を済ませ、ワンアクションでマスケット銃を生成出来るように魔力塊として周りに浮かばせる。
《――さ、■りま■ょう》
「……やっぱりもったいないわね」
ゴウッと加速された動きで距離が詰められる。
短銃の銃身をマスケット銃の銃身で抑え、もう片方の銃口を槍のようにつきだす。
当たり前のように避けられるのを、手の中でグリップをクルリと回し、銃口で直接打つ。
《中■の発想■すわ。 でェ、もォ。
そ■だけで■、わた■しの■■は、》
ダァンッ!!
《!? な◾︎!?》
「貴女の銃と違って、私のは魔力から直接創り出しているのよ。 多少の融通は利くわ」
《■き過ぎ■ゃあ■ません■と!?》
屈んでからのバックステップで距離を取ろうとしてるけど、いくらスピードがあっても、動きが分かっているなら狙うのは難しく無いわ!
待機させてたマスケット銃を全て展開、
「――これで、私の勝ちよ!!」
――一斉射撃!!
《ッ!!
大地からボロボロの時計盤が現れ、その魔弾の大半を受け切る。
けれど、元々の劣化にトドメを刺されて崩壊し、貫通した弾が運悪く短銃を持つ右腕を貫く。
《……や■り、勝■■とは■■ませ■■■■》
自身の武装を失い、あっさり降伏する。
その表情はどこか、最初から諦めているようで――
「………ね。 今度会う機会があれば、ネコカフェに行きません?」
《……………■い?》
ポカンとした表情。
少しして、クスクスと笑いだす。
《……そう■■わね。 今■、■会があれば。
――■■■頼みますわ。 彼女も、■たくしと同じ■■、騙され■い■の■■か■》
「約束するわ。
さようなら――――■■■■」
手向けになるかわ分からないけど、
私の全力のティロ・フィナーレで、彼女を消し飛ばした。
side杏子
《■◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎!!!》
「単調すぎるな!!」
メイスというか、ハンマーと言った方が正確だろう武器を振り下ろすのを防ぐ。
弾き返し、槍の穂先で一閃――
――出来なかった。
「!?! チッ! 重すぎんだろ……!!」
身体のデカイ魔女の体当たりを無理に防いだ時みたいに、弾けない。
しっかり受け止めたもんだから、受け流そうにも、バランスを傾けた瞬間潰されかねない。
「さーて、どうするかな、っと?」
《■◾︎◾︎◾︎◾︎――》
圧倒的有利な状態だった筈なのに、急に押す力が弱まる。
様子を見れば、再度メイスを叩きつけようと、思いっきり振りかぶって――
「うわぁぁぁ!?!」
《■■■■■■◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎!!!》
――ドッグォンッッ!!
地面が陥没し、クレーターになる。
「………パワー強過ぎだろ、おい……」
タラリと垂れる冷や汗を拭い、槍を構え直す。
幸い、動きそのものはトロい。 威力こそ高いけれど、隙は大きい。
――ほら来た!
《■◾︎……》
「遅い!!」
横に振りぬいた所で垂直にジャンプして、槍を巨大化させて落下エネルギーに質量が加えられて、オマケで十字になっている部分に足をかけて、穂先を蹴り出す。
アタシが今出せる全力の攻撃。 これは簡単に片がつく――
ドスッと身体に突き刺さり――
《――■■■◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎!!!》
ズルリと、槍が引き抜かれる。
「?!?! き、効いて、無い………っ?!」
頭に生えてる角で突くつもりなのか、頭突いてくるのをなんとか受け流し、奴がこっちに振り向くまでの間に槍を創り直す。
「……傷そのものは出来てるんだ。 完全に効いてないわけじゃ無い。
斃せるまで連発するか? いや、あんな大技、いくら何でも対処されるか。 ん?
………………おい、おいおい、おいおいおい?!? どうなってんだよソレ?!?」
いつの間にかメイスを握り直していた奴が、さっきと同じようにその武器を大きく振り被る。
違うのは―――その武器が、紫電を纏っていること。
《――『■■■―――■■』◾︎◾︎◾︎◾︎!!》
「ヤベッ!!?!」
直勘にしたがって全力で逃げる。
奴は、柄の先を地面に突き刺し――
――バチバチバチバチバチバチッッッ!!!!
まるで大木の様に電撃が降り注ぎ、拡散する。
「ぐぁっ………!!」
距離で威力が変わるのか、そこまでデカイダメージは受けてない。
でも、何発も喰らったら分からない。
至近距離なんて論外。
「だったらっ!!」
槍の柄を分解、多節棍に切り替える。
掬い上げる様に穂先を飛ばし、メイスを振り回して弾こうとするのを魔力を通して操り、上手い具合に躱させる。
さらにアタシもアイツの周りを駆けて、穂先だけじゃなく、棍でも打つ。
《――■■■■◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎!!》
攻撃が当たらず、殆ど効いてないとはいえチマチマと攻撃され、イライラするのか段々動きがメチャクチャになる。
そして――
――ジャリッッ!!
《■■◾︎??!》
メイスが周りに漂う鎖に絡まり、動きを阻害する。
強引に焼き切ろうとしたのか、鬱陶しい穂先ごと吹き飛ばそうとしたのか、メイスに再度電気が流れ――
バチバチバチバチッッッ!!!
《!?!? ■■■◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎!!!》
「……色々と残念過ぎんだろ。 アダ名はバーサーカーで決まりだな。 パワーあるし」
巻きついた鎖に通電、メイスから流れた電撃が奴を襲う。
効くかどうかは賭けだったけど、上手くいったな!
水分を含んだ泥が電気で弾け、ポロポロと崩れ落ちる。
《■■◾︎◾︎◾︎………
■■■■■■■■■■◾︎!!!!》
バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチッッッッッ!!!!
「……おい? 何やってる?」
ダメージを受けるのは分かっている筈なのに、更に電圧が上がる。
泥の表面が泡立ち、小爆発が連続で起こる。
《ウ■■オォォ◾︎◾︎◾︎◾︎ォ◾︎◾︎ォ◾︎◾︎◾︎!!!》
「ひ、人?! いや、違う……?」
一際大きな爆発で泥が大きく剥がれ、赤い髪の女性が見える。
ただ、額には金色の角、耳がある所にはガラスビーカーに似た何か。
その薄い青の瞳と一瞬目が合う。
《■ァ?
――!! ヴォ◾︎ォ◾︎◾︎ォ◾︎◾︎◾︎!!!》
「なっ!?」
泥が蠢き、内部が露出している部分を覆おうとする。
「っさせるか!!」
《!??》
それを防ごうと、表面を削るよう槍を振る。
「ったく! 何やってんだよ、アタシはよぉ!?!」
ただ、何となく。
何となく、泥に覆われてるコイツが、他人じゃないような気がして。
まるで自分自身が悲鳴をあげているようで、放っておけなかった。
穂先の返しで引っ掛け、引き剥がす。
「よしっ! これで、――
《!! ■メッ!!》
――?!」
辺りに撒き散らされた泥がいつの間にか集まって、意思があるかの様に襲いかかる。
「このっ、」
多節棍で打ち払おうにも、スライム状の敵にはあまり効果がなく、アタシに覆いかぶさろうと広がってくる。
「っやろ、く、来るな――うぉ?!」
《――ニゲ■◾︎!!》
バーサーカーがアタシを掴んで遠くに投げる。
「――あでっ!! テメ、どんな馬鹿力でブン投げ、て――」
文句でも言ってやろうとしたら、素人目に見ても異常な閃光が輝く。
中心には、アイツの持ってたメイス。
不思議と、アイツの考えが頭に浮かんで――
「……おい、何考えてるんだ?! よせ、やめろ!!」
でも、アタシの叫びは虚しく響いて、
《――わ■■と、■◾︎しょ■、こい。………『
さっきの一撃の比じゃない程の雷が堕ち、掻き消される。
飛び散った泥を正確に焼き焦がし、身に纏っていた泥すら蒸発した。
―――そんなのを撃って、使用者が無事なワケがない。
「………なんの、冗談だよ」
爆心地としか言いようのない場所の真ん中にポツンと立つ、先の膨らんだハンマーのようなメイスが、唯一の応えだった。