最早『ソレ』を縛るモノは何も無い
封印は既に意味を成さず、星辰が揃う夜
『狂気』が
『絶望』が
『苦痛』が
『厄災』が
『混沌』が
『嘆き』が
『懺悔』が
『憎悪』が
『憤怒』が
『悲哀』が
『怨嗟』が
『恐怖』が
『終焉』が
世に溢れる
そこで『邪神』は、独り、静かに、
sideほむら
バラララララララララッ!!
狙いをロクに付けずに発砲。 セレクターは当然フルオート。
《■■■■■■■■■■■》
身を屈めて、超低空バックステップで距離を離されるのを、トリガーを引ききったまま追う。
まずは、まどかを巻き込まない様に場所を変えないと――
弾が切れた瞬間、手早くリロードしながら反撃に備えて相手を注意深く観察する。
目に見える武器は、左手のサブマシンガンらしき銃。 種類は不明。
《……■■■■■■■。 ■■■■■■、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■…………》
なぜか撃たずに更に距離を開ける使い魔。
近距離戦闘は苦手なのかしら?
一気に踏み込み、銃口を突きつけ―
キンッ
「……そういう訳でもないようね」
《……■■■》
いつの間にか右手に握られていたナイフで、銃口を逸らされる。
力の向きに逆らわず、その力も利用して横に跳ぶ。
ここで初めて、相手の銃が動く。
一瞬で上がった銃口から弾が連続で吐き出される。
時間停止――は、ダメ。
「くっ!!」
今まで相手の攻撃を避けるのに能力を多用していた所為か、咄嗟に判断出来ず盾で受け止める。
叩き込まれる衝撃を堪え、何とか相手を視界に入れる。
反動で暴れる銃からは泥が剥がれて、その銃身が露わになる。
銃の後上部に円柱―おそらくマガジン―がついている、珍しい形の銃。
……見たことない形ね。 少なくとも自衛隊・米軍が使っている種類ではないし、安さに特化した
スコーピオンのバレルの先端を盾の下に押し当て、引き金を引く。
こちらの反撃に素早く反応しサイドステップで躱されるのが、銃そのものを投げつける。
《!?》
グリップの底を打つける事で防いでる間に盾に手を入れ、新しくスコーピオンを引き抜く。
《! ■■■■■■■■?!》
ナイフを腰周りに収刀した右手が、まるで困惑しているかのように漂う。
その隙に投げ飛ばしたスコーピオンに飛びつき、ついでに
《……? ■■? ■■■■■■■■■■■■、■■■■■■?
――『■■』■◾︎!》
今更慌てた様子の使い魔に、一気に全弾を叩き込むつもりで撃つ。
回避動作も出来ていない。
よし、もらった――
《――
「?!? なっ――
まさか、こいつも時間系の能力を?!?!」
使い魔が、急にこれまでの
あっと言う間に射線からは逃げられ、
『――止めるんだ、ほむら!!』
「!?! キュゥべえ?! いきなり何よ?」
『あの銃は絶対に撃たせちゃ駄目だ!! 抜いた瞬間、異常なエネルギーの流動を感知した!! あの銃撃が着弾した想定の影響をざっくりと演算したけど、掠ってもキミが死にかねない!! 外しても、結界に与えるダメージが未知数だ!!』
「!? あのバカ!! 使い魔になんて武器持たせてんのよ?!?」
幸い、抜銃そのものが使い魔にとって思わずといったものだったからか、何故か元々入っていた弾を別のものに再装填していた。
『……あ、あれ? 異常流動が、収まった……?』
「危険なのは弾丸みたいね。
……どちらにせよ、喰らいたくはないけど」
弾丸の再装填の時、弾倉を変えるのではなく、銃身の根元で折って、そこから弾を1発入れていた。
大型ハンドガン並の大きさで、中折れ式の装填、尚且つ装填数は1。
私の知っている限り、該当するのは、一部のソードオフショットガン、グレネードランチャー、それと、
――
競技用拳銃だとしたら、警戒するのは構造の単純さ故の高精度の精密射撃と、高い耐久性。
銃の種類によっては、それこそ大口径ライフル弾が飛び出してきてもおかしくない。
そんな銃の顎が、こちらを見据える。
「っ!!」
慌てて両手のサブマシンガンを投げつけ、伏せる。
――ッダァンッッ!!!
金属塊を2つ貫いて、死神の鎌が頭上を通り過ぎる。
……か、貫通したってことは、散弾とか、スラッグじゃないわね。
間違いなく、競技用拳銃。
弱点は、再装填に時間がかかること。
一気に勝負を付けようと、AT4を出し――
ガガガガガガガガガガガガガガッッ!!
「キャッ!!」
さ、サブマシンガンを忘れてたわ……
今の掃射でロケランは破損。 撃ったら暴発するわね。
今の隙に相手はリロードを済ませているでしょうね。
分かっているだけで敵の武器は、競技用拳銃一丁、サブマシンガン一丁、ナイフ、後は正体不明の加速術。 おそらく、時間系魔法。 相手の実力を考えれば、まだ手札を隠してる。
どの手を打つ?
サブマシンガン――繰り返しは時間だけで十分よ。
マグナム――サブマシンガン相手に撃ち負ける。
ショットガン――倍速回避→コッキング中に拳銃でズドン、で負けるわね。
マシンガン――加速持ちにはショットガン以上に避けやすいでしょうね。
グレネードランチャー――論外。 ショットガンと同じ運命を辿るわ。
ナイフか警棒での近接戦――練度からして、一瞬で負ける。
……そうだわ!! この手なら――
油断なくこちらに拳銃の銃口を向けたまま躙り寄る敵。
私の足元には、使用不可能のロケラン。
そして、
私の手には、手榴弾。
閃光でも煙幕でもなく、破片を撒き散らすマークⅡグレネード。
親指でピンを弾き、ポイッと、足元に捨てる。
《――?!? ■◾︎、■■■◾︎!!
敵が再度加速する。
逃げるのを確認する前に、急いでその場に伏せる。
マークⅡはその特性上、爆発より外殻が飛び散ることによる殺傷能力が優れている。
近距離での回避は実質不可能。
だけど、私の足元には、金属製の盾が転がっている。
いざとなれば、一瞬だけ時間を止めて破片の軌道の隙間に潜り込めばいい―――へ??
《■■■■――■■■■◾︎!》
な、なんで、
――自分からこっちに来てるのよ?!?! しかもさっきより倍は早いし?!?!
コツン、と手榴弾が地面に当たる音がするのと、使い魔が金属塊を踏み越えるのは同時だった。
――ドッドッガァァァンッッ!!!
……い、今の爆発は、一体………?
手榴弾は何度も使ったことがあるけど、あんな強い爆発は起きないはず。
焦げ臭い匂いに顔を顰めつつ、思わず瞑っていた目を開けると、視界は真っ黒。
重い物がのしかかっている感じがしたから、退ける、と、――
「…………………え? えっ、え???」
そこにいたのは、血を流す、
魔法少女姿のクトが着ていたような、黒のロングコートは爆風の影響で見るに堪えないほどボロボロ。
所々、見覚えのある『泥』がスーツに付き、蠢いている。
「……この泥、使い魔の中身は人ってこと?
それに…………………」
――この人とは何故か、初対面じゃない気がする。
ふと振り返ると、細かい金属ゴミと化した、AT4。
「……うっかりしていたわ。 まだ中身のあるランチャーを捨てるなんて」
視線を落とす。
「……なんで、私を助けたのかしら? 私は魔法少女。 爆風で死ぬ可能性は少ないわ。 結界から追い出すことを目的とするなら、貴方は逃げるべきだったはず」
《―――》
――男の人は、応えず。
ただ疲れ切った顔の遺体が、転がるだけだった。