とある少女の救済神話 【完結】   作:カリーシュ

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世界は、とても醜く、残酷で


だからこそ、『(ヒーロー)』は、強く、美しく、輝く




――そして、邪神のチカラを持った『少女』は歩み出す







共通ルート:第6話

sideさやか

 

 

使い魔に槍を突きつけられた状態のまま、硬直するマミさん。

ライフルを撃つどころか、作り出してすらいない。

 

「ちょ、ちょっと待ってよマミさん!

だってクトは魔女になってて、こいつは使い魔で、」

 

「根拠ならあるわ。

――武装、能力、そして、声。

これらは、魔女の一部分と使い魔を代償に現れた、強化版の使い魔と私たちに共通する特徴よ。

そして彼らは、『記録』に描かれていたわ。 あなたを除いて、ね。

最初はただの偶然だと思った。 けど、その前提で周りを見渡した瞬間、それは確信に変わったわ。

 

 

――墓の様に突き立つ武器。

――首だけとなって、銀杯に乗せられた邪神。

…………この場所(結界)は、『記録』にある者たちの墓場にして、あなたが自身を罰する、処刑場。

だとすれば、墓の主でも、罪人でもない人物がいる事は有り得ない」

 

《……………くだらん》

 

槍がわずかに揺れ、タメるように魔力が篭る。

 

 

「……くだらない?」

 

《そうだ、くだらん。

例え私が違ったとしても、そうだとしても、

お前たちが私を斃さねばならない事に変わりは》

「否定はしないのね」

 

《……だから、どうしたというのだ。 私が何であれ、》

 

ハァと、マミさんが困ったようにため息を吐く。

 

 

「何で私たちがクトを斃さなきゃいけないのよ」

 

《……何を言っているの? あなたの目の前にいるのが何か、分かっていないの?》

 

「何って、決まっているでしょ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――とっても強くて、思いやりがあって、

そのクセ不器用な、私の相棒よ」

 

――エネルギーの収束が止まる。

分かりやすいくらいポカンとして、見えてる口もマヌケっぽく開いている。

 

 

《……何を、言って、だって、私は、》

 

「確かにあなたは、わざとではないとはいえ、大勢の人を死なせてしまった。 私たちも怖い目に会ったし、疑いもしたわ。 純粋に破壊と狂気を振りまく、魔女より恐ろしいナニカだと」

 

《そうだ。 私は、人では無い!》

 

「あら、そんなこと言ったら私たちだって魔法少女(ゾンビ)よ」

 

《違う!!》

 

槍の柄を握り潰しながらの叫びは、どこか偉そうな雰囲気を纏った声は掠れて、もっと子供っぽくなってた。

 

 

《魔法少女は人外なんかじゃない!!

魂は、形が、質量がありながら、形の無いモノ。 ソウルジェムを砕かれれば死ぬなんて、そんなもの、脳や心臓を抉ったら死ぬのと同じ。 体の再生だって、一般人相手にだって効果がある。

だから、だから、》

 

言葉を探しながら、必死に否定する。

もう誰かのマネをする余裕なんてなくて、その言葉が本心からでたものだって分かる。

 

 

「……クト、帰りましょう?

あなたなら、自力で魔女から戻れるでしょう」

 

《………》

 

コクンと、頷く。

 

よかった。 これで、またみんなで一緒に―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【――でも私は、そっちにはいけない】

 

「「?!!!」」

 

な、なんで!?!

 

「クト、なんで来れないの?!」

 

【……ここは、私の処刑場。

私の罪を償う場所。

そして、嘗て私を受け入れてくれた連中(正義)が眠る場所でもある。

例え私が私を赦しても、連中が私を赦さない】

 

クトの意識を示すかのように、離れたところにいて、ただ攻撃を受けているだけだった魔女の触手が殺到して、クトを吞み込む。

 

本来の魂の持ち主を取り込んだからなのか、蛸に見えていた魔女の姿形が大きく変化し始める。

 

 

 

 

 

何処となく緑がかっていた触手は、タールで無理矢理スライムを作ったみたいな質感になって、

 

人でいう顎の部分からしか生えていなかった触手が、顔のパーツのある前面をのぞいて、覆い尽くす。

 

顔も、巨大な1つの眼球に埋まる。

 

 

 

 

 

【―――VOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!

 

 

 

 

 

………なんで。

 

「なんで、あんたは、そこまでして死にたがるの!!

なんでそんな風になっちゃったんだよ?!」

 

 

あたしの問いかけには、

 

誰も、答えてくれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideほむら

 

 

……厄介な事になったわね。

 

 

変化を遂げた魔女の触手に銃弾を浴びせる。

さっきまでは使い魔の群れが相手だったのに、マミたちが説得に失敗してからは、積極的に攻撃してくるようになった。

相変わらず時間停止は意味をなさないし、ホンット厄介ね。

 

「まったく、なにが『私に全部任せなさい』よ。 よけい悪化してるじゃない」

 

「……いや、なんとなく分かるよ。

アイツは、探してるんだよ」

 

「は?」

 

まどかを挟んだ隣で使い魔を薙ぎ払った杏子が、焦げた布の様な物を握り締めながら続ける。

 

「自分を救ってくれる、誰かを。

ヘタに力を持って、誰かが伸ばしてくれた腕を払っちまったもんだから、半分くらいヤケになってんだろ。

こんなことしでかしたんだから、私はこんなヤツなんだって、自分で自分を信じてないんだ」

 

「……………だから、処刑場」

 

 

念話の応用でマミたちの会話を聞いていたから、その単語が浮かぶ。

 

 

「……そんなの、おかしいよ。

だって、クトちゃんのせいじゃないのに、自分を責めるなんて……」

 

「……」

 

自己犠牲の精神の恐ろしさと美しさは、とてもよく分かる。

それでも、何度も救おうとした友達すら助けられてないのに、初回での挑戦なんて、無理だったんじゃ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――たく、魔女を真っ二つにしたら中からソウルジェムが出てきて復活! とか、そういう愛と勇気が勝つストーリーにならないもんかな。

アイツだって、そういうのに憧れてただろうに」

 

 

 

 

 

 

 

 

……愛と勇気が勝つストーリー、ね。

 

…………悪く、ないわね。

 

 

 

 

 

彼女が絶望する理由は、自身の能力や力で他者を殺してしまったことが原因だったはず。

かなり暴論だけど、逆に言えば、

彼女を斃せば(・・・・・・)正気に戻せる(・・・・・・)かもしれない。

 

自らを悪者と名乗ったその望みは、自らの敗北。

 

制御不能な絶対的強者ゆえに、己を抑えてくれる誰か(敗北)を求める。

 

 

そうであるなら―――

 

 

 

 

 

「――予定を変えるわ。

あの魔女は、斃しましょう」

 

「でもそれだとクトちゃんが、」

 

「大丈夫よ。 きっと助けられるわ。

……賭けになるけど」

 

『どういう事かしら?』

 

「彼女の願いを半分叶えるのよ。

そんなに罰せられたければ、心行くまで叩くまでよ。

――ただし、死ぬことだけは、許さない」

 

「そんなことが出来るのかい?!

相手はあのクトだよ!?」

 

「……なら、もっといい案があるかしら?」

 

「………」

 

力無く、首を左右に振る。

 

 

 

 

 

「……ほむらちゃん。 無茶だけは、しないでね。

ちゃんと、帰ってきてね!」

 

「……大丈夫よ、まどか」

 

フゥワサと、髪を払う。

 

 

 

「――私は、私たちは、そんなに弱くないわ。

だって私たちは、」

 

不安げな表情のまどかから目を離して、コワレタ少女に向き直る。

 

永く忘れていた、最初の羨望を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――私たちは、正義の味方(魔法少女)だもの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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