とある少女の救済神話 【完結】   作:カリーシュ

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――その身は『憎悪』で造られている

――その魂は『狂気』で染まっている




――――ならば受入れよう




世界が命を奪うなら、少女が奪う

世界が心を弄ぶなら、少女が弄ぶ



『邪神』が全てを破壊する

『邪神』が全てを蹂躙する

『邪神』が全てを陵辱する







共通ルート:第7話

sideほむら

 

 

『正義の味方、ね。 いい響きだわ』

 

『それで、あたしたちはどうすればいいのさ?』

 

「正気に返るまでショックを与え続ける。 それだけよ」

 

「ハッ! アタシ好みのシンプルな答えだ。 ゴチャゴチャ考えるのは後回しってか?」

 

「ええ。 あれだけの頑固者、説得するにはコレ(・・)が、手っ取り早くわ」

 

ノッてきたのか、周囲の使い魔を薙ぐテンポが上がり、サクッと殲滅し終える。

マミとさやかとも合流して、こちらの準備は完了。

 

 

「―――行くわよっ!!」

 

時間を止める。

魔女の時がしっかりと止まっていることを確認して、周囲に榴弾砲を展開。 それらを片っ端から魔女に向けて撃ち放つ。

 

――停止、解除!

 

 

 

着弾と共に轟音・爆発が起こる。

ワルプルギスの夜ですら衝撃で吹き飛ぶそれが、魔女の体表を焼き、触手を千切る。

 

 

「これも喰らいなさい!!」

 

爆煙が晴れるのを待たず、壁のように大量に顕現したマスケット銃から放たれた魔力弾が、その肉に食らいつく。

 

 

 

 

 

【――NAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaa!!!】

 

ジタバタと、本体から離れた触手が畝る。 絡まり、溶け落ち、形が崩壊していって――

 

 

「――!? 暁美さん、危ない!」

「ッ?!」

 

咄嗟に跳び退ると、目と鼻の先を紙一重で剣が振り下ろされる。

 

《■■■、■■■■。 ■■、■■■◾︎■■■■■■■■!》

 

 

また使い魔!?

マミの推測が正しければ、私たちの誰かとの共通点があるらしいけど、今度は誰よ?! 剣繋がりでさやかかしら!?

 

汚れた黒曜石の様な、くすんだ紫色の直剣の、魔法少女でもそう簡単には出せないような速度の切り上げが襲い掛かる。

避けるには時間が足りず、盾で受け流すも、想像以上に重い一撃で後方に吹き飛ばされる。

 

あんな細腕の何処にそんな力が――

……そういえば、似たような奴がいたわね。

 

 

 

《■■■■■■■■■、■■、■■■■■■! ■■■■■■■■■■!》

 

刀身に青白い光を纏わせて突っ込んでくる。

そのスピードはかなり早い、けど、どっかの自称悪に比べれば遅い。

 

 

時間、停止!

 

 

「――今度は、上手くいったわね」

 

今回の使い魔は時間停止の影響を無効化することなく、完全に止まる。

巨大化させた槍を魔女に蹴り込む杏子を横目で確認しつつ、マグナム弾を雨霰と使い魔に撃ち込む。

 

 

――停止、解除。

 

 

《?! ■■◾︎◾︎!!》

 

 

驚いたのか、僅かに揺れるも、すぐさま剣を振り、銃弾を防ぐ。 って、どんな反応速度よ?!!

それでも流石に全弾は防ぎきれなかったようで、所々泥が抉れ、中身が見える。

 

 

 

――紫の服で身を包んだ、肌が。

 

 

 

 

 

やっぱり、中身は人間(?)なのね。

 

突きを再度受け流しながら、盾に入れた覚えのある武器の中から有効そうなものを探す。

 

「――ほむら! 今助けに、」

 

「私は大丈夫よ。 それよりさやか、前っ!!」

 

「うわ危なっ?!」

 

言われて気がついたのか、これもまたボロボロな一対の中華剣で切り掛かる小柄な使い魔の斬撃を、双剣でかろうじて防いでいた。

ああもう、私もそんなに余裕が無いのに!

 

時間を止めて、こっちの使い魔には手榴弾の土産を置いて、さやかと鍔迫り合いをしている使い魔を処理――

 

 

 

《■■◾︎■、■■■……?!》

 

「もう、またなの?!!」

 

動きは鈍いけど、動いてる!!

 

慌てて停止を解除。

背後の爆発は一旦傍に置いて、目の前の使い魔(小)の側頭部に50.A.Eを叩き込む。

 

《◾︎!? ■◾︎■■■!!》

 

今度は当たり、使い魔の体勢が崩れる。 よし、このままなら

「ほむらっ!!」

 

「ッ?!」

 

さやかの剣の鋒から同じ形の刀身が連なって伸びて、鞭のようにしなりながら、私の背後に迫っていた使い魔を切りつける。

 

「へへ、後ろに注意!ってね」

 

「……助かったわ。 ありがとう」

 

背中を預けながら、目前に自然体で佇む使い魔(小)にマグナムの銃口を向ける。

ダメージは無かったのか、泥が剥がれた跡は、無い。

 

「……」

 

チラリと見れば、杏子とマミも使い魔との激しい戦闘の真っ最中だった。 援護は期待出来そうに無いわね。

 

 

「……なんか、こうやってほむらと共闘するのって、微妙に違和感あるなぁ」

 

「悪かったわね。 私とで」

 

「いやいや、そうじゃなくて!

新鮮っていうか……懐かしいっていうか? そんな感じがするんだよね」

 

「………そう」

 

背中どうしを密着させて、それぞれの敵を睨む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………私もよ。 とっても、懐かしい」

 

「? なんか言った?」

 

「なんでも無いわ」

 

 

《■◾︎■……■■■■■■◾︎■■◾︎■■■■■■■■?》

 

何故か、何処か苦笑しているような気配を使い魔(小)が発したと同時に、

 

 

「行くわよ」

 

「オッケー! うりゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

《■■◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎!!!》

 

《『■■(■■■■)■■(■■)』!!》

 

私たちは、ぶつかりあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideキュゥべえ

 

 

 

――ドゴォッッ!!

 

 

 

「ひっ!?」

 

……ボクらは、激化していく戦いを、ただ眺めていることしか出来ない。

丁度よく、岩からそのまま削り出したような斧のような大剣の陰に身を隠すことには成功したけど、例に漏れずボロボロで、魔法や銃弾が当たるごとに大きな音を立て、今にも壊れそうだ。

 

 

 

「……ねえキュゥべえ。 ほむらちゃんたち、大丈夫だよね?」

 

「……多分、命は無事だろうね」

 

音を探って、安全を確認してから外を覗く。

すぐ側で使い魔2人の斬撃をさやかが受け止め、ほむらが弾を撃つ。 でも使い魔の方が技術が上なのか、さやかを相手取って尚銃撃を弾く余裕があるみたいだ。

少し離れた所でも、マスケット銃と古式銃(火縄銃)が入り乱れ、鋭い爪を振り回す大量の使い魔を槍が薙ぐ。

 

その最奥に、血涙を流しながら、静かに戦闘を眺めている魔女が。

その醜悪な巨体を形造っている魔力量だけでもおそらくワルプルギスの夜に匹敵しているのに、更には未知の『魔術』があわさり、最早どれだけ強力な魔女になっているのか、検討もつかない。

意図してなのか偶然なのか、特に動く様子はない様子なのがせめてもの救いか。

 

 

「……でも、状況が悪い上に不利な事に間違いは無い。 ここは一度引くべきだろうね」

 

「…………」

 

俯いてしまったまどかを放置して、周囲を警戒する。

通常のも強化版の使い魔もこっちを見ていないのを確認する。 よし、誰もいないな。

さて、出口を探さないと――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ねえキュゥべえ。 私なら、どんな願いでも叶えられるんだよね」

 

 

 

………は、い??

まさか、

 

「ダメだよまどか! それじゃあ根本的な解決にはならない! 魔女化を戻しても、すぐに逆戻りだ!」

 

「だったら、クトちゃんが死なせちゃったひとたち、みんなを蘇らせるって願いなら?!」

 

「それは――」

 

案としては、悪くは無い。

結果がどうであれ、本人たちの言葉であれば、クトを説得出来るかもしれない。

………その故人が、唯の人間であるなら、だけど。

 

ただでさえ対象となる数が多いうえに、平行世界どころの話ではない、異界の住人ときた。

ハッキリ言えば、まどかの因果線の数でも叶え切れるかどうか怪しい。

仮に叶ったとしても、余りにも条理に反した願いだ。 皺寄せ(絶望)がどれ程のものになるか、想像出来ない。

 

 

「……それは、ダメだ。 不安要素が多過ぎるし、なにより、」

 

 

 

 

 

――ボクはもう、魔法少女を増やしたく無い。

 

 

 

 

 

 

 

「……でも、それじゃあ私はどうしたらいいの?

みんなが傷付いて、苦しんでるのに、私だけ隠れてるなんてできない!!」

 

「そんなのボクだって同じだよ!」

 

弾かれた弾や撥ねた泥が岩剣に当たる音をBGMに言い争う。

 

……まさか、ボク(インキュベーター)が契約を断る側にまわるとはね、なんて事を頭の片隅で考えていると、視界の下の方で、何かが蠢いた気がした。

 

 

 

 

 

……いや、『気がした』じゃない。

ボクらが影だと思ってたこれって、『泥』じゃないか!?!

 

「まどか! 急いでここから離れるんだっ!! 早くっ!!」

 

「へ? それってどういう……

――きゃぁっ?!?」

 

さっきまで確かに地面があったのに、急に足元が底無し沼になったかの様に足が沈んでいく。

助けを求めようにも、あの激戦じゃあ寧ろ彼女たちがやられる。

ど、どうすれば?!?

 

「お、おちおお落ち着くんだ!! 圧力を分散すれば沈むスピードを抑えられる――キュッ?!?」

 

スボッと泥から引き抜かれる。

ほむらたちが間に合った、なんて訳ではなく、当然のように引き抜いたのはまどかだ。

 

「い、一体何を考えて、」

 

「――キュゥべえだけでも、逃げて!!」

 

「キュッぷいっ?!?」

 

そのまま、泥の外側まで投げ飛ばされる。

コントロールに失敗したのか、引金を引いたら確実に暴発しそうなほど劣化した対戦車ライフルの肩当てに激突する。

 

「〜〜っ! まどか!?」

 

「――間に合って、良かった……」

 

沼ではあり得ないスピードで沈み、もう肩まで呑まれている。

 

 

そして、彼女は、

 

 

 

 

 

「お願い、みんなを――」

 

「まどか!? まどかぁぁぁぁぁああ!!!」

 

 

 

 

 

――完全に、沈んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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