―マンション 付近
sideキュゥべえ
『うぅぅ………昨晩は
「ごめんなさい、ついテンションが上がっちゃって……」
「まだ言ってるのかい?」
あの悪夢から一夜明け、翌日、放課後。
途中でマミの暴走によって強制終了してしまった話し合いを続けるべく、学校の通学路をマミの肩に乗ったままついていく。 ちなみにクトは、行きは一緒に居たけど、学校が始まってからは、『試しておきたいことがある』とかで別行動。
……キミの能力、精神干渉というより神経干渉じゃないかい? 目の前にいた筈の人物が瞬きする間に消えるって、中々に心臓に悪いよ。
何か考えがあるらしくて、マミはいつも通り学校に通うことになったけれど……
「……それで? 一体何を企んでいるんだい?」
『知ってるだろうけど、私は今、あの場にいた魔法少女には魔女だと思われてるワケじゃん。 でもって、幻影術で投影したお菓子の魔女とかの効果でマミも死んだと思われてるじゃん』
「結論を3行で頼むよ」
『その認識をぶち壊す。
インキュベーターの信用暴落。
そこでマミが介入。
これで、私の、私たちの勝ちだっ!』
「最後の一文いるかい? なんでわざわざ4行にしたのか、わけがわからないよ。 そして思ったより作戦が浅いね」
『手は幾つか思いつくんだけど、繋げるのがなぁ……』
つまり、
「………聞くだけ聞こうか。 他にはどんな手が?」
『ソウルジェムの穢れ、物は試しで重曹で擦ったら時間は掛かるが取れたぞ』
「「…………………はぁぁぁ!?!?!?」」
『今漂白剤でも実験中ー。 いやー、ほっといても即濁るソウルジェムってこういう時に便利だなww』
「ちょ、キミ、自分の本体を洗剤で洗ってるのかい?!?!」
そもそもソウルジェムの濁りを洗剤で取ろうっていう発想そのものが間違ってるよ!? 取れることも驚きだけど!?!?
「……私、今までなにやってたのかしら………」
「ほ、ほら、きっとクトだけっていう可能性も
『
クトォォォ!?!? どうしてキミは平然とトドメを刺すんだい!?!?」
「う、ふふふ………」
ガックリとorzしたまま笑い始めるマミ。 どうするのさコレ?!
『さて、さて。
――あ、ヤベ、漂白剤だとソウルジェムがっ! ソウルジェムそのものがががががががが』
「ちょ、クト、こんな状態のマミをどうすればいいのさ!?」
………………………
に、逃げたぁぁぁぁああ!?!?
帰ったら無限ティロ・フィナーレの刑にしよう(マミが)。 そうでもしなきゃこの激情は収まらn―
「………え?? 巴………マミ……???」
「――ほむらちゃん、待って………
……………え? マミ、さん??」
ギクッ!
この声は、……………
暁美、ほむら………?! それに鹿目まどか!?
声が聞こえてきた方向を見ると、まるで幽霊でも見たような表情の2人がいた。
………あれ? そう言えばマミの反応が無い気が―
「………うふふ………重曹………
魔法少女に………NaHCO3……」
まだショック受けてるぅぅぅぅぅぅう!?!?
しょうがない、これは使いたくなかったけれど………!
『マミ、この場面を乗り切ったらクトの秘密をおs』
ガバァッッ!!
………人間の知識欲を舐めていたようだね。
それとクト、すまない。 またマミの玩具になっておくれ。
『……ねぇキュゥべえ? この状況、軽く詰んでないかしら?』
『……言えてるね。 どうするんだい? ちなみにクトは音信不通になったよ』
勝利(?)条件は、
・穏便に撤退。
或いは、
・彼らをこちら側に引き込む(ただし明らかに信用されてない)。
敗北条件
魔法少女の脱落。 それを避けたとしても、話し合いの機会が皆無になることが確定するのもまずい。
うん、普通に難しいね。
『………これはもう、アレね』
あっ、とってもやな予感。
『――あはは☆ なるようにな〜れっ♪』
『頼むから正気に戻っておくれ?!?!』
ああ!? なぜか瞳が渦巻いてるし!?
『もうっ! なにも怖くないっっ!!』
『それ死亡フラグだからぁぁぁぁぁあ!?!?』
あぁぁ……い、胃がぁ………
「………なんで、あなたは、死んだはず、―」
向こうもショックから立ち直ったのか、つっかえながらも言葉を紡ぐ。
これに対するマミ(暴走中)の返答はっ?!
「――うふふ。 暁美さん?」
あ、終わった(ボクの胃が)。
これはマミ(暴走中)じゃない、マミサン(暴遭中)だ。
「―一晩で随分鹿目さんと仲良くなったみたいね。 妬けちゃうわ」
「っマミさん……」
「ダメよまどか、様子がおかしい!」
ごもっとも。 現在発狂中だよ。
「状況的に考えて……
その化けの皮を剥がしなさい。 人の死をなんだと思っているのっ!?」
……あー、これは、
『マミ、どうやらクトがなんらかの方法でキミに化けたと思ってるみたいだ。 どうするんだい?』
『大丈夫よ、私にはティロ・フィナーレ(魔法)があるっ!』
『もうやだこのバーサーカー会話が成立しない。
あの大砲擬きでどうするっていうのさ?!! あと(魔法)ってなにさ?!?』
『クトがティロ・フィナーレ(物理)打てるからよ!』
『ただの右ストレートの間違いだろう!?!』
あぁ……せめてツッコミがもう1人欲しい………ボケは2人もいらないし片方はいろんな意味で規格外だし………
ところで、なにか忘れてるような?
「………聞いているのかしら、あなたたち………っ!?!」
あ、そうだそうだ。 暁美ほむらと鹿目まどかだ。
「勿論、聞こえているわ」
「……なら、さっさと元の姿に戻りなさい」
「元の姿ねぇ……
勘違いしているようだけど、私は巴マミ本人よ?」
「……………………」
ほむらも、マミが本物だとは思っていたみたいだね。
ただ、彼らの視点でそうだと仮定すると――
「―じ、じゃあ、マミさんは無事で、ちゃんと生きてるってことですよね!?」
「ええ。 ちょっと危なかったけどね」
……よかった。 思ったよりマトモに会話が進んでいる。
このままいけば、もしかすると――
「―ウソね。 あの状況であなたが生還できる可能性は、0よ」
………キミはどっちの味方だい、暁美ほむら!?!
「……ほむら、ちゃん?」
「巴マミ。 あなたのことはもう調べてあるわ。 当然、戦い方も。
――
たったこれだけで、あの状況を、
「………じゃあ、今ここにいる私は何なのかしら? 足ならあるわよ?」
「………どうせ聞いているのでしょう、クト。 さっさと現れないと―」
一瞬で魔法少女に変身するほむら。
あ、とってもやな予感(本日二度目)。
「――巴マミが死ぬわよ?」
次の瞬間――
ボクらは、発射済みの対戦車榴弾に囲まれていた。
「――ほむらちゃん!?!?」
「クっ――」
暁美ほむらが変身した時点でマミも変身し始めていたけど、間に合わない。
あこれ、少なくともボクは死んだなー。
「――私、これでも『
まあその塊な奴が言っても説得力無いのは分かってんだけどさ」
ドゴガガガガガガガガガガガガ――――――――ッッッ!!!
滑り込んできた影が、その背中から生える二対の翼で、的確に榴弾を撃墜していく。
一対は、布がはためく様な動きで斬り刻み、
一対は、その骨翼の先端が指の様に蠢き、弾き、貫き、叩き潰し、
打ち漏らした弾は、その側面を掴んで他の弾に投げつけ、誘爆させる。
こんなふざけた芸当が出来るのは、ボクが知る限り、たった1人だけ。
「………やっと現れたわね――
――クト!」
「脅しといてやっともポッドもないだろ。 悪りぃけど、この後ちょっち予定あるんだ。 やるなら私も相手するぜい?」
割と伸縮自在な骨翼を大きく広げ、身構えるクト。
「……一応警告しておくぞ。 幾らブッ飛んだ能力持っていようが、火力は手持ちの兵器に依存しているアンタじゃ私にマトモなダメージを通すことは出来ないし、それでなくても2対1、オマケにそっちは
「………敵の言葉を素直に信じるとでも?」
クトの背後に瞬間移動したほむらが、両手に持った大型拳銃を頭部に突きつける。
『『クト!?』』
『大丈夫だから、声かけたら直ぐに移動出来るように変身解いといて。
さて、さて、――』
「……デザートイーグル.50AE、か。
「あなたに褒められてもなにも嬉しくないわ」
「まそりゃそうか。
で? 撃たないのか?」
「――どうやって巴マミを生き返らせたのか、説明しなさい」
「わざわざ最強のマグナムオートを出しといてそれk」
ゴリッという音が、クトの後頭部から響く。
「……分かったから、銃口を降ろせ。 地味に痛い」
「…断るわ」
「あ、そ。
っつてもねぇ……生き返らせたって、そもそも死んでない人に使う言葉じゃないと思うがな」
「……………続きを喋りなさい」
「いちいち頭を小突くでない。
……私は魔女じゃなくて魔法少女だって言ってるのに、話聞かなかっただろ? それで1人ずつゆっくり言い聞かせようと思って、まず近くにいたマミを拉致った。 それだけだ」
「…………………あなたが仮に魔法少女だとして。 なぜソウルジェムが濁りきった状態で放置しているのかしら?」
「これでももう今日だけで3回くらい汚れを落としたんだけどな? コレについては寧ろ私が聞きたい」
「………信用出来ないわね」
「ごもっとも。
取り敢えず、一旦引いてくれないか? 私としても、無駄な戦闘は避けたい」
「…………………………………………………チッ。
さっさと行きなさい」
「どーも」
拳銃を下ろしたほむらをそのままに、クトがこちらに歩み寄ってくる。
「――マミさん!」
「? 鹿目さん?」
移動を始める直前、縋るような目をした鹿目まどかが、マミに声をかけてきた。
「また………また、魔法少女体験コースに、連れて行って、くれますか………?」
「!
――えぇ、もちろん!」
「……………マミ、
冷や汗を垂らしているクトの視線を辿れば………
視線で人を殺せるなら、殺人ビームがバンバン出まくってそうな目つきの暁美ほむらがいた。
「……怖っ?!」
「……右に同じく。 マミ、行くよ」
「分かったわよ」
〜少女移動中〜
「――それで、どこへ向かってるんだい?」
「特にどこへも」
「? さっきは予定があるって、」
「あれほむほむから逃げる為のウソな。 ――っ!? なんか寒気が……?
ま、まあいいや。 実験結果についても話したいし、どっか適当な所でお茶しない?」
実験………あぁ、ソウルジェムの穢れが洗剤で落とせた件か。
「それなら、この近くにス○バがあるわよ」
「……金、足りるか?」
「大丈夫よ」
「……最近の中学生パネェ」
〜さらに少女移動中〜
―某コーヒーチェーン店
「そいじゃ、取り敢えず結果だけ言っていくぞー。
まずソウルジェムの穢れ。 石鹸程度だと効果無かったし、逆に漂白剤みたいな強酸性の洗剤だと、穢れこそ落ちるけど身体の方にまで悪影響が出る。 ま、コスパ面から見ても重曹一択だったな」(家庭用漂白剤は、塩素系はアルカリ性、酵素系は中性だったはず。酸性はトイレのサンポール)
「……因みに、その悪影響って?」
「魂が物理的に真っ白になります。
多分普通のソウルジェムでやってたら頭がパーになるな、あれは」
若干引きつった笑みを浮かべながら、コーヒー(一番安い奴)のコップを傾けるクト。
「……それで、他には? まずは、なんて前置きしたなら、他にもあるんでしょう?」
「あぁ、私が回収したグリーフシード、どうにかしてソウルジェムに戻せないか試してたんだ」
そう言ってから取り出したのは、お菓子の魔女のグリーフシード。
「結論から言うぞ。
……多分、成功する」
「「…………………はぁぁぁ!?!?」」
もうやる事なす事無茶苦茶だよキミ?!
「………えっと、どうやってやったんだい?」
「んー……
こう、きゅっとしてどかーん的な?
適当に弄ってたら浄化され始めたから慌てて止めたんだよ。 浄化しきったとしても
「わけがわからないよ!?!?」
思わず絶叫。 幾らなんでも規格外過ぎる!?
「………そんなことよりキュゥべえ。 カウンセリングって出来るか?」
「え? ある程度なら出来ると思うけど?」
「じゃあマミのことよろしく。 私にゃ無理だ」
「へ?」
振り向いて、マミの方を見ると―
「……私……今まで、街の平和を守る為って、人を………」
――俯いて、肩を震わせているマミがいた。
「……あ、そっか。 グリーフシード=
「昨日の夜は、多分自己防衛かなにかで、無意識の内に考えないようにしてたんだろうな。 それを改めて突きつけられて…………か」
席を立ったクトが、マミのソウルジェムから、クトのソウルジェムに穢れを移し続ける。
「………取り敢えず、思いっきり泣け。
周りの目と耳は誤魔化しておく」
効果を分かりやすくする為か、ドーム状の透明な膜が、席ごとボクらを覆う。
膜が床に到達する頃には、ハンカチを目元にあて、涙を流しながら、何かを呟いていた。
「………クト、」
「分かってる。 心を覗ける私が、傷心の1つも分からないとでも?」
「違うよ。
――絶対に、インキュベーターを止めよう。 ボクらが、決着をつけるんだ」
クトは、少し驚いた顔をしていた。
「………どうにかするアテはあるのか? インキュベーターの駆逐は現実的じゃない。 1人救済する間に、新しい魔法少女が増える。 イタチごっこになるぞ」
「………キミに、頼みがある」
クトも『その考え』に辿り着いたのか、眉を潜める。
「………鹿目まどかを使う気なら、私は反対だ」
「違う。 キミだ。 キミの魔法少女としての才能――絡んでいる因果は、鹿目まどかすら上回る」
「……………………キープした願い、か。
だが、『絶望』はどうする? その願いだと、元魔法少女は全滅、とか起こりうるぞ」
「それも含めて願えばいい。
ただし、どう足掻いてもキミには特大の絶望が襲いかかる。
魔女の強さは、元となった魔法少女の強さに比例する。
………キミが絶望に負ければ、確実にワルプルギスの夜よりも強大な魔女になる」
「……………………………………………………」
無表情のまま、硬直するクト。
やがて、マミとクトのソウルジェムをテーブルに置き、離れていく。
「!? クト、ソウルジェムは――」
「外の空気を吸ってくるだけだ。
……………その話、少し、考えさせてくれ」
そう言って、膜を通り抜けると、そのまま店の外へ出て行ってしまう。
―結局、ボクらがクトに合流したのは、マミの元にまどかからの電話がかかってきた後だった。
その内容は、――
―魔女の口づけがついた大勢の人がいる。―