とある少女の救済神話 【完結】   作:カリーシュ

9 / 40
裏ルート:第9話

―見滝原市 上空

 

 

sideキュゥべえ

 

――やあ! みんな大好きキュゥべえだよ!

 

 

……え? なんでこんなハイテンションなのかって?

それはねえ………

 

 

 

 

 

「――クト! あそこ! あの廃工場よ!」

 

「オゥケェイ! ハッハァアテンションプリーズ只今から当機は堕ちるぜちゃんと掴まれよ振り落とされっぜはい3、2、急降下ぁぁぁぁぁあああ!!」

 

「キャアアアアアアアアアア!!」

 

「もうヤダこの人たちぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいい!!!!」

 

高度数百メートルからのレール無しジェットコースターを味わってるからだよ!! テンション上げないとやってられないよ!!

命綱はマミのリボンだけだしっ!!

当の本人は超ハイテンションだしっ!!

おかげで魔法に集中してないせいか、イマイチ安定してないしっっ!!!

 

そもそもクト!! なんでわざわざこんなところまで上昇するかな?!

というかキミはマトモに数を数えられないのかいこの脳きn

「ハイちょっちアクロバット入りまーす!!」

 

「キュギャァァァァァァァァァァアアア!?!?!? も、もう高いところヤダぁぁぁぁぁあああ!!!!」

 

 

〜少女絶叫中〜

 

 

 

 

 

―廃工場

 

 

「―ほい到着!」

 

「……生きてる………はは、生きてる………はは、ははは! 生きてる! 無事生還出来た! あぁ、生きてるって素晴らしい! この世の全てに感謝を! 奇跡万歳! 魔法万歳!!」

 

「照れるぜ褒めるでない」

 

「キミには言ってないよ邪神っっ!!!」

 

「大袈裟ねぇ」

 

「キミは一度高度200メートル弱からのバンジージャンプを体験すべきだよ!! その範囲なら中点にソウルジェムを置けば意識保てるから!!!」

 

ゼェハァ荒れる息を整えながらツッコむ。

なんでキミたちケロリとしてるんだい?! というかマミは高山病とか大丈夫なのかい!?

 

「キュゥべえ、世の中にはな、

奇跡も魔法もあるんだよ!」

 

「そうだったぁぁぁああ!!」

 

 

 

 

 

「――さて、そんなことは銀河の彼方へギガンティックスローし(ブン投げ)ておいて。

まどかが助けてを求めてるんだろ!

速攻で片付けるよ!」

 

「……キミの場合、本当にワンパンで十分だからシャレにならないんだよね」

 

壁を壊して侵入するつもりか、クトが拳を押し当てて――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………マミ?」

 

「―っ、ご、ごめんなさい……

私、戦えない………」

 

……さっきまでのテンションがウソのように、震えて、座り込んでいた。

 

「……………ごめんなさい。 でももう私、人を傷つけることなんて――」

「マミ」

 

クトが、振り返らずに話しかける。

 

「………このままだと、まどかは死ぬぞ?」

 

「……」

 

「…まどかだけじゃない。 この中には、魔女に操られている人が大勢いる。

このまま放っておけば、全員、死ぬ」

 

「……なら、魔女はそのままに、その人たちだけ助ければ、」

 

「……マミ。

……………少し前のことを思い出そうか。

 

私はあの晩、『ダークヒーローになってよ』って言った。

……なんでダークヒーローって言ったか、分かるか?」

 

「………?」

 

「――『ヒーロー』は、見ず知らずの人も含めて、みんなを助けなきゃならない。

確かにカッコいいし、誰にだって出来ることじゃない」

 

クトは、だがな、と続け、

 

「――私に言わせりゃ、んな責任なんぞクソくらえ(・・・・・)だ。

絶対的な正義は無い。

100%の正しさなんてのも無い。

正義っつうのはな、常に勝った者が決めることだ。

負ければ、それまで。

ただ死ぬだけならまだマシ。

死してなお、嘲られ、利用され、後ろ指を指され、汚され……………」

 

「……………」

 

クト……? キミは、一体………

 

「………己の正義を貫き通すには、どんな形でもいい。 勝て。

でもって、自分の望みを叶えて、幸せになってから死ね。

万人に受け入れられる必要は無い。

自分の守りたいものだけ守れるようになれ」

 

「…………………」

 

クト、キミは、どんな過去を――

 

 

フラリと、マミが立ち上がる。

 

「……クト。 私は、みんなの平和を守る魔法少女になるって決めたのよ。

なら、私は、それを貫き通す。

人も救う。 魔女だって救ってみせる!

――力を貸して、クト!!」

 

……彼女は、振り向かない。

 

「……それが、マミの答えか?」

 

けれど、骨翼が、その鋭い先端を見せつける。

 

 

だけど、マミの答えは、

 

 

 

 

「――――ええ!!」

 

 

 

 

 

力強いものだった。

 

 

 

 

 

 

「……そうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――上等だ! 後でへこたれんなよ!!」

 

クトは、獰猛な笑みを浮かべて振り向き、

 

「――『ツェペシュ(串刺せ)』っっ!!!」

 

鋭利な骨が、壁ごと内側の魔女と使い魔に突き刺さり、貫通し、縫い止める。

 

「グリーフシードさえ残っていれば、後はどうにでも出来る! やっちまえ、マミ!!」

 

「任せなさい! 『ティロ・――」

 

一瞬で変身したマミが、必殺技を、決める。

 

 

「――フィナーレ』っっ!!!」

 

 

ズッッドォォオンッッッ!!!

 

 

 

魔砲の一撃が直撃した魔女は一瞬で崩壊し、そこにはボロボロに粉砕された壁だった残骸とグリーフシード、呆然としている鹿目まどかが残った。

 

 

「――鹿目さん! 無事!?」

 

「え? あっ、はい!!」

 

マミがまどかを保護して、奥にいる被害者の様子を見に行っている間、グリーフシードをポーチに入れるクト。

 

「…………頼むから、自分を疎かにする正義にはなるなよ、マミ」

 

「……随分と彼女に肩入れするね」

 

「………昔、憧れてた奴に、何処となく似てるのさ。

……さてと。 こりゃ私もいっぺんソウルジェムピカピカにするかな? 広範囲探知するのに、自前の能力だけじゃちとツライからな」

 

「……道理でソウルジェムを使わずに魔女の居場所が正確に分かるワケだよ」

 

「ふはは。

じゃ、取り敢えず、―」

 

ギチィィィッッ! と、手に力が込められ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――開幕ブッパするには相手が悪かったなぁ、美樹さやか(・・・・・)ぁ!!」

 

ゴキィィィィィンッ!!!

 

「――っ!? くっ!!」

 

拳と剣がぶつかり合い、異常な音が響く。

 

「オイオイ、最近の中学生はいきなり切り掛かるのか! 随分とアグレッシブだな!」

 

「初戦闘の相手がアンタだとしても! マミさんの後を継いだあたしは、負けられないんだよ!!」

 

返す刃を骨翼で受け流し、掌を下腹部に押し当て――

 

「――『発勁』!」

 

ズドンッッ!!

 

「!? ぐ、あっ!?」

 

轟音をたてて、美樹さやかの身体が数メートル吹き飛ぶ。

 

「マミの後を継ぐねぇ! 本人が聞いたら勝手に殺すなって言われっぞ!」

 

「うるさい! 魔女のアンタになにが分かる!?」

 

「よしあの孵卵器野郎共マジで〆るっ!!」

 

剣と拳、骨翼が、かなりのペースでぶつかり合う。

美樹さやかは本気で殺しにかかってるけど、………クトは遊んでるね。

 

まあ、技術、能力、手数、経験、全てに於いて圧倒的優位に立つクトからしてみれば、新米魔法少女を下すことなんて、朝飯前だろうね。

 

 

ガギィンッッ!!

 

「あっ!?」

 

そうこうしている内に、クトのアッパーがさやかの剣を弾き飛ばす。

 

「――私の勝ちjy

「なにやってるのよこのバカっ!?」

ぁんきるしゅたいんっ!?」

 

ドゴォッ!!

 

……と思えば、マミの容赦ない飛び蹴りが炸裂、近くの花壇に頭から突っ込んでいた。

 

「うぇ!? マミさん!? ナンデ!? えっ、ホンモノ!? 生きてる!?」

 

「えぇ。 心配させちゃったわね。 でも、大丈夫よ!」

 

「マミざん"〜!!」

 

「さやかちゃん、魔法少女になったの?!」

 

「おう! どう? 似合う?」

 

 

 

 

 

……女子中学生3人は置いといて、花壇の反対側に周る。

 

「……気分はどうだい?」

 

「…………アレだな。 首だけの剥製って感じだ」

 

ズルズルと、葉っぱと小枝に塗れながら、上半身を引き出す。

 

 

 

「――っ! まどか、下がって!

マミさん、一緒にあの魔女を斃そう!」

 

「え? えっと、」

 

「………まぁいいや。 軽く揉んでやっから、2人でかかって来い」

 

殺気立つさやかと戸惑うマミを、汚れを払いながらクトが見据える。

 

「えっ!?」

 

「……随分ナメた口きくじゃん?」

 

「ハッ!

――3分だ」

 

黒い魔法少女に変身すると同時に、ゴキ……ベキ……という謎の異音が、クトの全身から、響く。

 

「な……何が、3分なんだよっ!?」

 

「3分――

それだけあれば、あんたら2人をブっ飛ばすには、手加減してても充分だ」

 

2人を――特に、美樹さやかを睨みながら、宣言する。

 

「………な……

なめんじゃないわよ……っ!」

 

さやかが一気に距離をつめる――

 

が、

 

 

―ズドンッッ!

 

「!? う、わ、」

 

クトがその場で地面を踏みつけることで発生した揺れに足を取られた隙に、クトが一瞬で背後に周る。

 

「基本スペックがダンチだから、ある程度はしょうがないにしても、あんたには足りないものが多過ぎる。

まずはスピード」

 

さやかが剣を横に振るのを上体を仰け反らせて避け、戻る動きで頭突く。

 

「!? つぁ―」

 

「次にガード」

 

怯んだ隙に襟を掴み、そのままバックドロップを決める。

 

「!?!? グッ――らぁっ!!」

 

「パワーも足りんな」

 

密着した状態での肘打ちがクトの眉間に突き刺さるも、微動だにしない。

 

「あとマミにも言えることだけど、全く連携出来ていない」

 

「?! ぐぁっっ!!」

 

「!? 美樹さん!?」

 

マミの銃撃も、さやかを武器の様に振り回すことで弾丸を防ぎ、更には展開されていた大量のマスケット銃も薙ぎはらって、次の一手を遮る。

 

「このっ、離せっ!!

―あぐっ!?」

 

「技術も無い。 素人が慣れない武器持つとか、自殺行為だぞ?」

 

なんとか両手で剣を振るうも、裏拳でアッサリ弾かれ、そのまま足元に叩きつけられる。

 

「やっぱり貴女、強いわね!

でも、これならどうよ!!」

 

「――!」

 

地面から伸びたマミのリボンが、クトに巻き付く。

が―

 

「―フンッ」

 

ブチィ!!

 

「!?!? うそっ!?」

 

それすら一瞬で引きちぎり、展開しかけていた砲門を容赦無く蹴り上げる。

 

とっさにバックステップで距離を取ったマミに追撃しようと、クトが距離を詰め――

 

「―はあああああああっっ!!」

 

「おらよっ!」

 

背後からさやかが斬りかかるのを、後ろ蹴りで弾き返し、マミには肘打ちが刺さり――

 

「な、めるなぁぁぁぁあっっ!!!」

 

「!?」

 

――しかしさやかは蹴りを受け止め、そのまま剣を振り下ろした。

 

「――ッ!!」

 

クトはバク転で回避、そのままサマーソルトで蹴り上げるも、それをさやかが上体を反らせて避け、さらにその動きに合わせて切り上げる。

 

「とった!!」

 

「思い上がるな、人間!!」

 

……けれど、邪神(クト)はそんなに甘くない。

 

切り上げを骨翼で受けながすと、着地と同時に地面スレスレの回し蹴りでうつ伏せに倒れ込ませ、それに合わせて膝蹴りを顔面にブチ込み、仰向けに勢いよくひっくり返す。

 

ゴツッッ!!

 

「ガ……ッ!?」

 

「――トドメだ」

 

ドゴンッッッッ!!

 

踵落としが鳩尾にめり込む。

 

「ぐっ…………ぅ………」

 

「美樹さん?!

『ティロ・―」

 

「ソレは一発逆転にはチャージが長過ぎる」

 

トン―

 

クトが、マミの首筋に軽く手刀を当てる。

――本気なら、首を引き千切れるぞ、という意味を込めて。

 

 

 

 

 

 

 

「………分かったわ、降参よ。

もうちょっと手加減しなさいよ。 結構痛かったわよ?」

 

「悪い悪い」

 

「あと、美樹さんにはちゃんと謝っておくこと!」

 

「えー、向こうから突っかかってk

「クト?」

…………あい」

 

端から見れば、仲のいい姉妹に見える漫才をスルーして、気絶しかけのさやかの方を見る。

 

 

「さやかちゃん……? さやかちゃん!?」

 

「ぅ………まどか、私、いきなり負けちゃったよ……」

 

「……あー、さやか?」

 

気まずそうに、クトが歩み寄る。

それを見て、まどかがさやかを庇うような素振りを見せる。

 

「……………私、そんなに魔女に見えるか?」

 

「……魔女っていうより、悪魔に見える」

 

「Σ(゚д゚)?!?!」

 

ガックリと項垂れるクト。

………うん、まあ、自業自得だね。

 

「…………と、取り敢えず、美樹さやか。

その…………………悪かったな」

 

「………次は、絶対、勝つ」

 

「ん、楽しみにしてる。

―あ、そうそう。

足りないだらけだったけど、光るモンもあったから、伝えておく。

――成長速度と、反応速度」

 

「……?」

 

「私のマトリックス避け――あれ、実践してみるとバランス取るのがスゲェムズイんだよな。 アレをアッサリ吸収するし。 あと、最後の斬り上げ。 正直、あの蹴りで決まると思ってたからな。

それと、途中、私の一撃を耐えたガッツも良かった。

………頑張れよ。 あんたなら、私を斃せる」

 

そこまで言うと、クトは、さやかたちから離れた。

 

 

 

 

 

 

「……………クト、あの励まし、何処までが本気だい?」

 

大分無理矢理感があったようn

「全部」

 

「はぁ!?」

 

顔を覗き込めば―

 

時折見る、嘲笑するような自虐的な笑みではなく、

――心の底から楽しそうな笑みが、あった。

 

「特に反応速度。 あれは磨けば一級品になるな」

 

「……………クト、彼女の願いは、」

 

「分かってる。 反応速度(それ)とは相性の悪い、癒しの願いだ。

……ま、終わった事を言っても仕方がない。 帰るかぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでクト、私の良かったところは?」

 

「1番は火力だな。 そもそもマミは結構強いから、私からダメ出しする点は無いな。

……単騎での戦闘力は、だけど」

 

「…………それって、」

 

「やっぱり連携が下手。 マミの特徴は超火力の一撃必殺なんだから、集団戦だと諸刃の剣だぞ、それ」

 

「………貴女、前にティロ・フィナーレを喰らって無傷じゃなかった?」

 

「…………………………グハッ?! あの時のダメージがっ?!」

 

「それは大変ね、包帯代わりにコレを使うといいわ」

 

「………あの、マミさん? このリボンはなんでせうか??」

 

「縛り方の実験台の確保よ」

 

「顔が何処ぞの新撰組一番隊長ソックリなんですがそれはっっ!?!?」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。