そして相変わらず扱いやすいとはいえジャンヌ・オルタばかりですいません。
―――何か気分が怠い。
昨日は特にこれといって普段と異なる日常を過ごしたわけでもないのに、今身体に感じているこの微妙な気怠さというか違和感は……?
察しが良いマスターは直ぐに思い至り意識を覚醒させた。
「!」
「…………」
ベッドの上で起き上がり下を向いた視線の先には男にはあり得ない柔らかそうな胸の谷間があった。
「…………はぁ」
Tシャツの胸元からそれを確認したマスターは憂鬱さを感じさせる疲労めいた溜息を朝から吐くと、軽くかぶりを振って何かを諦めたような表情で起床した。
食堂で朝食を摂る為に部屋から出た時に偶然ジャンヌ・オルタと顔を合わせた。
いや、偶然というのは不適切のように思えた。
壁により掛かるようにして真っ直ぐ自分の部屋の扉と向かい合うような態勢を取っていたような感じから察するにどうやらマスターの事を意図的に待っていたようだ。
だがそんな誰でも察せられそうな状況でも彼女らしい持ち前の頑固さで否定し、そしてその件から話を逸らす為に何時もの高圧的な物言いで会話の主導権を握ろうとしてくるだろう。
そう予想していたマスターだが意外にもその時のオルタは彼(彼女)の予想とは異なる反応を見せていた。
「……」
恐らく当初はマスターの予想通り彼に絡もうとしたのだろう。
しかしそうしようとする前にこの時のマスターが朝感じた事と同じように、予期せぬもう一つのマスターの姿との出会いに対する驚きに眼を丸くして言葉も出せずにただ自分をじっと見ていたのだった。
「あぁ……そういえばオルタはこの姿見るの初めてだったっけ?」
「え? あ、あぁ、そう……ね? あ、ちが、いや……うん、知ってはいたのよね。それを今ようやく実感したわ」
「はは……驚いたでしょ? 私……俺も未だに変化が起こる度に驚いてるよ」
「背も縮むのねぇ……」
「え?」
オルタに言われてマスターは気が付いた。
背が縮む事実は認識していたが、男の時はオルタより背が高く、大体少し下の視線の先に感じていた彼女の存在を今は上に感じていた。
「あぁ、元々大きい人を見る時はあまり気付かなかったけど、言われてみればオルタを見上げる感覚は新鮮だな。そうか、マシュの時にこの違和感を感じなかったのは背が同じくらいだったからかも?」
「へぇ……何か良いわねアンタが私より小さいって。うん……そうね。まぁ、元々力関係は私の方が上ですけど? その事実がより確定的になったというか?」
「はぁ、左様ですか」
「まぁ、女の姿というのが少し残念だけどね」
「え?」
「戯言よ。女であろうが男であろうがアンタは私のモノなんだから」
「うわっ、朝から俺を所有物扱いですか。ホント勘弁して下さい」
「五月蝿いわね。朝食に行くんでしょ? 偶然だけど私も丁度そのつもりだったのよ。仕方ないから一緒に行ってあげるわ」
「えー……」
「ちょっとせっかく同行を許してやってるてのに失礼な態度ね。ほら行くわよ」
「あぁ、はいはい」
この時オルタは無意識にマスターの手を引いて歩いている自分に密かに心の中で驚いていた。
(あれ、私……。姿が女だったから自然にやっちゃってたのかな? それにしても小さな手。あ、私とそう変わらないから普段のアイツと比べてるのか。ふーん……やっぱりこういうのも偶には良いかもね。なんかペットみたい)
「…………」
(何か俺を見るオルタの視線に不安を感じる)
面白い玩具を見つけたとでもいうような楽しげな視線に早速その日の自分の先行きに暗雲を見た気分になりつつあるマスターだった。
「あー、欲を言えばここから更に子供になってくれていればもっと弄べそうだったのになぁ」
「本人の目の前でそんな不穏なこと言うなよ……。気が抜けないだろ」
「あら、気を抜くと何をされると思ってたの?」
「え……さぁ?」
「自分から振っておいてそれ?!」
「まぁオルタの振る舞いに警戒心は持ったのは事実だと思ってくれればいいよ」
「ふぅん……それじゃ、せいぜい気を抜かないことね」
「……善処します」
「あ、それ貰うから」
「え?」
気付く暇もない素早い動作で自分が齧ったハンバーグの欠片を早速オルタにかっ攫われるマスター。
(え? 気を抜くなってそういう事?)
予想外の行動ではあったが早速相手にしてやれてしまった事実には変わりはない。
何より欠片とはいえ自分の物を奪われししまったことに僅かな悔しさをマスターは感じた。
(今度はそうはさせないぞ)
「……」
(なにコレちょっと可愛いかも)
意識してはないようだったが、自然と自分の腕で皿を囲うようにして半目で警戒の視線を自分に送るマスターの態度にオルタは不覚にも愛らしさを覚えた。
「分かった、分かったわ。奪ってしまった謝罪として私からも同じ条件で食料を差し出しましょう」
そう言ってオルタが自分の皿に乗せてきた物を見てマスターは渋い顔をした。
「……ねぇコレほうれん草と人参なんだけど? しかもどれも口を付けた形跡が……」
「そうよ? 食べ物には変わりないでしょ?」
「俺が穫られたのはハンバーグだったんだけど」
「あぁ、ごめんね。ハンバーグは先に食べちゃったの」
「これじゃ穫られた物に対して等価じゃないんじゃない?」
「何言ってんの。そっちはハンバーグ一種類だけでしょ? 私はそれに対してほうれん草と人参の2種類を差し出したわけ。栄養価もこっちの方が高いし、謝罪としての役割は十分に果たしているはずだわ」
「ぐっ、そう来たか……」
オルタの詭弁に悔しそうな顔(見た目は愛らしいふくれっ面だが)をして握ったフォークを握りしめるマスター。
まだここから巻き返せる可能性も見出していたのだが、彼はそこである妙案を思い付き違う攻め方を試みることにした。
「分かったよ。じゃあせめてこのオルタが口を付けた所は切り離して返すね。なんか悪いし」
姿が女性になっていた所為か、または精神年齢も実は若干童に戻っていたのか、マスターはまるで自分がオルタが口を付けた物を食べる事に不快感を感じているような低レベルな嫌がらせをしてきた。
「食べなさい」
「アッハイ」
しかしそれはナイフで処理をしようとしたところで有無を言わさぬ威圧感が込められたオルタの言葉で却下されたのだった。
ご無沙汰してます。
すっかり投稿が不定期ですが、ネタの源泉であるFGOは変わらず遊んでます。
新キャラも増えてますね。
増え過ぎて把握が……次は紫式部とか……あ、持ってないや。