この物語は、とあるクトゥルフtrpgセッションで生まれたキャラクターの過去を書いたという、主の突発企画で生まれたものです。
クトゥルフ要素は全くないので、オリジナルのキャラクターの物語という感じで見てください。

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さて、今回の話はほんの少し前に作ったクトゥルフtrpgのキャラクターが思った以上に気に入った主による。ただの自己満企画です。こんなん作る暇あったら本編書けよと怒られそうになりながらも書いてしまいます(というかこれ書いたのほぼ半日なんですよねうわなにをするやめ(((((


高野教授が煙草を吸わない理由 前編

『私は…私は、人間なんだ。人間なんだよ!』

『ならその証拠でも見せたらどうだ?何処にも、誰にもお前が人間である証拠なんt

 

 

「…違うな。」そんな独り言をつまらなそうに漏らして、目の前のディスプレイの文を消した。

別に面白くなかったから止めたわけじゃない。

ハッキリ言えば、ありきたりすぎてなんだか虚しくなる。うーん、これはこれでも良いんだけど何か違うんだな。こういうのでも悪くないんだけど…『面白くない』からなぁ……あれ、矛盾してる?

 

オリジナルの短編作品を作ると言って早くも3週間、一向に進まず根本から作り直して37回目を迎えた。良い時は78文字、酷い時は5万文字も到達した時点で嘆く。

因みにさっきのは560文字。うん、まだマシだな。

 

 

「…ハァ……」まともに書けない日々に嫌気が指しそうになる。別に書くのが嫌な訳じゃない。だが、こうも好いのがないのは辛いもんだ。自分にとっての最高の作品を書こうとすると、どうしても何処か一つ抜けてしまうから上手くいかない。きっとアレだな、書ける奴人間じゃないわ。

 

あ、そういや今日の昼飯どうするや。コンビニ飯&コンビニスイーツに一喜一憂してたが流石にコンプして味気なくなったんだよなぁ…でもコンビニの食べ物は別段不味いわけじゃないから頼れる。

しかし待ってほしい。ここでコンビニに行くのは何か駄目だ。今日は青空、即ち青空だ。それなのに安く済ませて良いのか俺?あえてここで格好よく外食に頼るのこそアリではないか?ここでおいしいうどん屋とか蕎麦屋を見つけるのも正解かもしれないな…。

 

あ、ダメだわ。クレジットカードも手持ちにない、この安い財布にはそんなことしてウハウハ出来る金ないわ。勿論ないわけではないんだけど、夕飯の分を考慮したら雀の涙なんて優しいくらいの金しかない。その上今日は日用品も買わなければいけない。これは早くも駄目みたいですねぇ…どうしようかな。

 

 

 

トントン。と、ドアから音が鳴る。「何の御用ー?」

ガチャリ、其処から出るのは現代では在り得ないような大男。元力士なんじゃないかってくらいのサイズ。なのに手には小さな弁当を入れるカバンが二つ、まったく不釣合いだ。

「お、今日は珍しくまだ自室にいるのか」

「やかましいわ。普段より10分残ってる位で珍しいってなんだこの野郎」

「だろうな。恐らくコンビニの食事に飽きて飯を探してる、がしかし癖で肝心の金がほとんど非ず、わざわざ苦労を掛けて金を下すのは何だか癪に障る様な気分だからどうしよう…と言ったところだろう。」

そう言ってカバンから、自分で調理したであろう料理がそこそこ綺麗な弁当箱2つに詰められてる。綺麗に彩られていやがる。

「…やかましいわ。」

 

 

 

この大男、名前は魚富 深木(うおとみ ふかき)はこの大学…嗚呼咬(ああかむ)文学専門大学で、主に宗教、民俗学に籍を置いている人だ。知識も広く、力持ち良い上にユーモアのあるという万能な教授である。

…まぁ問題があるとすれば、顔がモロ魚の顔してるのと、ダゴン?秘密教団?とか言うほんとに訳の分からん所の人らしい。まぁ本人曰く

「我が教団は危害を加える的な、迷惑行為をしなければ就職斡旋から新鮮魚類の販売、観光案内なんでもござれだぞ」

とか言うから大丈夫なんだろう、きっと慈善団体だと信じてる、信じてる。

 

 

あ、俺は高野 龍(たかの りゅう)。この大学で心理学、人文学に広く浅くとも籍を置いていて、基本は一年生を相手にしてる。元は東京大学をほぼ高い(8位)席で卒業、初めはフリーのライターでもやろうかと思ったけど、細川 芳次大学長から直々に此処の大学院への移籍と、教授の枠を渡すという話を貰い今に至る。

年齢は現在32 現在まで独身で、趣味は小説を読むこと。音楽も好きだな、ジャンル多すぎて一番ないけど。

ついでに、この前自分の出した本が全く売れずに家に積まれて軽く泣いたり、短編作品を書こうとしてスランプして地獄を見ている。

そんなとんでもないダメ人間、それが高野教授である。

 

 

「…にしても、お前さんも不思議なもんだな。」

「どういう意味だよ。」

「大学にわざわざ好んで来るなんて、って事さ。そりゃあ我のような者を含め、大学に籍を置くのは本当に物好きしかいない。それなのに高野、お前は来るなり縮こまるように部屋にこもってばかり。かと思えば売れない本とスランプ小説を生み出す。知の権化たる大学でまともにその特権を使わない上に惰性の日々、大学長もさぞかし後悔したのだろうな…」

「だいたい分かってるからそういうこと言うんじゃねえよ…それに、大学長は異例の措置使ってるんだから少なくとも何かしら思惑があるんだろ。」(つかこの魚上手い)

「それもそうか…しかし、何故お前は承諾したんだ?」

「これからの生活が安定するのと、文学を学ぶ傍らライターの仕事が出来るって踏んだ感じ。」

「なんと…東京大学を出れた程の秀才が知を求めずそんな安い考えで良いのか?」

「良いも何も、これが俺だからなぁ…。」

魚富の持ってきた料理を食べながら、淡々と答える。まぁ別に理由はちゃんとあるが…答えるほどの良い内容じゃない。

そんな風にいつもの緩い昼飯を食べて、午後になった。魚富はこれから民俗学での講義があると言って向かう準備をしていた。

「今日は飯ありがとな、美味かったぜ。」

「勿論さ、我がダゴン秘密教団が誇る最高品質の魚を使っている料理だからな。今度お前も日本支部で見てみないか?」

「ハハハ、悪くないかもな。時間があったら案内してくれ。」

「任せておきたまえ友よ。…ところで」「うん?」

 

 

 

「その煙草はいつ使うんだ?ここに来てから4年、まだ使ってないようだが…?」

 

 

「……魚富、こいつは高い煙草なんだ。高すぎて、吸っても何も良いことはないんだよ。」

「…そうか。すまない、変なことを聞いた。」魚富は時計を見ながら急ぎ足で出ていった………

 

 

 

 

 

「使えるかっての…もう6年も経ってたら吸う気にもなれないし、吸ってもいみないっての…」

 

 

 

 

俺は別にヘビースモーカーでも、禁煙家でもない。だから吸うかもしれないし、吸わないかもしれない。少なくとも吸わない方が有り得る。

そう思いながらその煙草を見る。ぶっちゃけあんな事言っておきながら、この煙草は高くない。もっと言えば人気が薄い故に大した名品でもない。味は良い葉っぱを使ってるのか、それとも俺が変なのか、心地の良い香りではあった。吸ったのは1回だけだが。

箱を開けて、1つ手に取る。なんて変哲のないただの煙草。もう6年も経ってるからか少し表面が安っぽい色になっていた。それでも、煙草特有の、なんとも言えない色合いと美しさは変わらない。

でも俺は、それを箱に戻してバッグに入れた。2分も見てればもう十分だった。3分とくれば流石に疲れてくる。

何もかも壊してしまいそうな、くだらない嫌気を捨てながら、あの2分の余韻を捨てないように顔を叩く。顔が痛くなるが、こんくらいが最適だった。

 

 

 

 

 

俺が生まれたのは、丁度前の年がジョージ・オーウェルの小説、1984と同年で、それより昔の人に申し訳ないような、要はオーウェルの描くディストピア感は全くない普通の世界だった。

ソビエト連邦は無くなるまで時間の問題で、段々とそれよりも根本的な生まれ…民族やら宗教が世間を牛耳っていた。

 

俺の生まれはかなりというか、とてつもなく凄いところだった。父は祖父とそろって国内では芥川賞を超える大人気、国外では前例のない文学界の権威だった。祖母は女流作家として、女性ながら広く受けいられてた。母というと、所謂メイド…召使い?まぁそんな所だったが父と恋に落ち…結果として俺が生まれた。

別段英才教育受けてたとか、2世とかそういう風潮の波に居ながら、俺はそんなこと全くなくて独力で成績を高めて、ほぼ常に学年トップの成績を出し続けた。運動にも長けて、短距離走で学年5位以内にはいた。何より理系科目においては他の追随を超えて、父からは感心され、共にその学びを深め合う…まるで友のような不思議な関係にいた。

しかし、文系に少し疎い故か父のように文才にはなれなかった。テストの度に、忙しい父や、存命してた祖母に頼み込んで教えてもらった。

 

何故こんなにも勉学に心血注いでたか、正直自分でも不思議だった。母からはそこまで無理にやらなくても良い、とは言われていたがそれでも止めなかった。何より…代を持つ家系の男としてのプライドも理由だったかもしれない。

 

 

中学になると、その熱は一気に加速した。将来の夢…とまでは行かないが、医者を志すようになった。

というのは、年齢を重ね、祖父の執筆した作品を読む中で「派遣医」という、国や身分を捨ててでも人を助ける変わり者の医者が素敵だと思った。それを見て、父からその為にこんな所行ってはどうか。と勧められた。そのどれもがトップクラスの進学校であり、最終的には東京大学、しかも医学部という挑戦を切り出された。

 

「金はある。道はある。後はお前が何処まで高みへ昇り、掴み取れるか…私を楽しませてくれ」という挑戦状を切り出された。今にして思えばかなり無茶苦茶な話だったのだが、当時の俺はあまりにも嬉しすぎて一週間は枕を濡らし続けた。(母には呆れられたが)

 

 

その後は…まぁわかりきっている事だが、学年トップまで行かなくとも好成績は続き、見事に東京大学医学部を卒業したのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

今日の仕事が終わり、自室で荷物を片付けながら最初の22年間を思い出していた。

そう考えると、細川 芳次大学長がこれ知ってたら異例の措置を取ってまでここに入れた理由が分かってきた…が、やっぱり俺がおかしかったんだろうな。

そんな事を思いながら、自室の鍵を閉めて帰路に着くことにした。

「はぁー疲れた」「これからどこ行くー?」「今日はサークルの同窓会として飯食べようぜ!」

なんて、通り過ぎる学生や、会社員の雑踏にまみれながら…

 

「……夕飯、考えてなかった。」

見事に独身男性の痛い現実と向き合うことになった。ふと思えば、恋愛に縁のない俺にとっては魚富の食事や、コンビニ、外食が基本で、自分で作ることは殆ど無い。

作ることは出来るが、その気にならないと美味しいのはできない。いやまぁね、自分で作る分にはまぁまぁでよいかと。

時間は午後の6時直前、早く決めないと不味いな…

そんな事を思いながら、大学から家まで歩いていた。銀座や渋谷、東京は本当に近未来を行くが如く、色々な物に囲まれていて、実家からは想像もしなかったことだ。お陰で多くのものを知れて良い体験になる。

「おっ」ちらっと見えたスーパーの広告欄に、物の見事な鮭があった。途端に腹の底からくる欲求が溢れ出る。それはもう途端に、変な方向に向かうが如く。

「そういや鮭は最近食べてないなぁ…!」魚富の魚が拍車をかけたのだろう。俺の中での魚ブームは、唐突にもやって来てしまった。

まぁ、あんまり下手なの作るよりはということで定番の鮭の塩焼きと、味噌汁や小松菜のおひたしにして食材を買う。ついでに雑貨や日用品をストック用に買って、既に腹一杯に満たされた気分で家へと向かう。

 

都会の喧騒が静まり、自宅から5分ともなると夜に近くなって行く時の、水色と青色、藍色が混ざった景色に空は浸されていた。

暮らすのなら正直、楽なのは大学の自室を住処にすることだった。一応許可されていて、魚富なんかはその代表だ。俺がそうしなかったのはこの景色を見るためなのが理由だった。

実の所、この生活故に金は結構厳しかったりする。本の売れ行きが酷かったのがさらに響いて、本来ならこんなに晴れやかな気分は有り得なかった。昼飯を2日に1回、魚富の自慢料理によって金の消費を抑えられたのは幸運だった。

兎も角、そんな暮れゆく街を見ながら帰るのは至福で、今の所の楽しみはこれと飯くらいになった。まぁ人間そんなもんだろうと息を吐き、家に着いた。

 

 

「いただきますし、いただかれます!」

割と恥ずかしい。自分でもなんでこんな言い方してるのか頭を抱えるが、少なくともいただきます。と言ってるから大丈夫な筈だ。

ふっくらとした白米、豆腐入りの質素な味噌汁、固めに焼いた鮭の塩焼き、醤油と鰹節を添えた小松菜のおひたし。ついでに納豆と厚揚げと豆腐を用意した…シンプルにシンプルを重ねた夕飯である。

一人暮らしとは思えない家庭的な食事には感動すら覚えるが、他にレパートリーが無いことが何より致命的である。

「…なお、犯人は容疑を否認しており、警察は事件の全容把握を進めています」テレビではよくある事件を取り上げて、代わり映えしないことに少し寂しさを覚える。

「次のニュースです。台湾の大手企業が昨夜、買収されたことを台湾政府が会見で発表しました」えーと…これはよくあるの?これはよくあるのかな?

「同会見で、政府労働省は『私達も二日前に知らされたばかりで、原因究明と共に買収先の捜索に当たっています』と発表しています。ニュースは以上です。」

…まぁ、普通は買収自体はいつものことだけど、それをした買収先が不明なのは流石に怖いな…どこの企業?というか足がつかない規模だと個人?いや個人だと普通できない…よな?

 

風呂も入り、寝る用意ができた。明日の講義、暇潰しの本。他は…まぁ筆記用具とか財布とか諸々。明日は午前休みだった筈だし、書店でで電子書籍用の端末を見てこようかな?でも高いんだろうなぁ…

そんなことを思いながら明日の準備をしてる時に、ふと本棚に目をやる。棚には沢山の作家の本、学生から教えてもらったライトノベル、エッセイや哲学について書かれた本、画集や論文が並んでる。どれも読み込んでいながら、また読みたくなる本ばかりだ、選ぶのに苦労する…。俺が翌日の準備で一番苦労するのは、この本選びだ。何を持ってくのか、その吟味で1時間潰している。

本というのは浪漫の塊だ。電子書籍が増えてきたこのご時世、本は形としても読むのとしても何にしてもそれ自体が浪漫を帯びている。これ俺の座右の銘だな。

 

そんなこんなで楽しんで見てると、幸か不幸か…「派遣医」という名前の本が目に飛び込んだ。その下には医学部に在籍していた時の本が規則正しく並べられていた。

「………。」ため息にもならない吐息が部屋の音を満たしていたが、それが俺にとっては何よりも苦痛だった。

 

 

 

まるで、かつての夢を見ていた自分自身がそこに映し出される…それどころか、「自分」がそこにいた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の人生が、才能によるものかと言われたら…俺は否定するだろう。そもそもその才能という言葉が、どうして存在するのか分からなかった。

父や祖父、祖母が今の地位を築いて来れたのは人気もあったかもしれない。というか普通はそうなんだろう。

でもそれだけではなかった、俺はそれを肌身で感じ、その歴史を聞いてきた。

祖母は、女流作家という特異的な地位にいたが…それは時代の中での女性という性別の壁に挑まなければいけなかった。

祖父は、今でこそその名は世界に知れ渡ったが…晩年の日まで、彼自身がその名を誇れる日は来なかった。数年後に、とある評論家から広まった偶然と、その誇りを持っていた一族の努力の賜物だった。

父は……何よりも、自分の親の名前が足枷になり、数年ほど食事が喉を通らない日が続いていた。自分自身の名が知れ渡るその日まで、およそ五年近く続いたという。

 

その姿を見せられて、自分も同じように…努力によってこそ、心血注いでいくからこその境地があること。何より自分がその境地に辿り着きたいと願っていた。

 

 

医学部を卒業した俺は、すぐには医者になろうとは思わなかった。「派遣医」のような、世界を掛けてその能力を振るう医者になるにはどうすれば良いかを、非営利団体を渡りながら学んでいた。そこでのコネクションを活用しながら、自分にとって何処が一番適しているのかを探し求めていた。

 

でも、その実…迷っていたんだろうと思う。確かに「派遣医」の主人公のような世界を相手に、何にも縛られない医者になりたかった。それがきっと最善なんだろうと……

 

それから2年ほど、多くの団体を彷徨っていた俺に電話があった。

「高野良行…いや、『錦野 龍也(にしきの たつや)』だったか。元気にしていたか?」父からだった。

俺の一家は祖父の更に祖父の代から成人して文人以外の道を歩む場合、性と名を改め、新たな高みへ昇るための足がかりにする…という家訓がある。

俺は、好きだった話があった。『鯉は登竜門という場所を登り、龍になる』なんてことのない、唯のおとぎ話でしかない。

だが、そんな鯉を錦鯉として錦を取り

『野に放たれた錦鯉が行き着く先、龍也(なり)』そんな意味を込めて名乗っていた。

「何か用件でも?」

「ああ…お前のことはよく耳にしているよ。色々な組織を渡って、多くの人を助けているそうじゃないか。医学部を高い成績で抜けた才のある者だからこその知恵は、正しく父上の物語にいた医者の様だな。」

「過分な評価であります。まだまだあの様な姿にはなれませんよ。」

「フッ、その構えこそがその通りだろう。多くを救うには、国や身分、多くのことを捨ててでも行かなければならない…まだお前にはその過程でしかないからな。」

「左様です。ところで、用件とは?」

 

「…お前には、少し酷な話になるのかもしれない。それでも良いか?」

「勿論です。名は違えど、父の話であればどんなに酷でも聞きます。」

「そうか…それなら良い。」

 

 

「お前には、私の跡を継ぎ…高野の名を継いでもらいたい。」

俺は答えられなかった。というより、どうして。なぜ?そんな言葉しか出せなかった。

 

理由は分かっていた。実は、長男の俺が生まれてから数年後に…母は子宮がんを、癌を患っていたんだ。他に転移する前に、医者は子宮摘出をするべきだと父に説いていたそうだった。父は、何より母がこれから子供を持てなくなること…それがどうしても許せず、何日も抵抗してたそうだ。やっとの事で落ち着いた上で子宮摘出に合意して…母は…

俺はその頃、もう小学生だった。中学年、まだ母の危篤がどれだけなのか分からず…もっと言えば、俺はその頃から学びに没頭してしまっていた。子供としての遊びや感情、そういった当たり前を捨ててでも学び続けたいと思っていた。料理もこの頃学んでいた、少なくとも母が家にいないことは父から聞いていて、料理が出来ない父の代わりに…。

 

そんな経緯があったせいで、俺が医者を志すことで高野家の跡取りは居なくなった。父はやはりというか、耐えられなかったのだろう。自分達が築き上げてきた、不朽の歴史を閉じることは…俺だって、事実を知っても何でもない顔をしていたが、その事で心を痛める父を見た時の…

あの父の…紅く染まった様な涙を見たから…

俺はその事全てが憎かったわけではなかった…何より俺が勉学を愛して生きれたのは高野家に生まれたからこそだった。だからこそ、逃げたくなかった。強迫観念の様に勉学に生きて、子供の幸せを棒に振るとしても…

 

父のように立派な人間でありたかったから…

 

 

 

 

「…分かった。旨は分かった。だけどさ…

少し、もう少し…あと一年、俺に…その名を背負う力を見極める時間をくれないか…!」

俺は、今にも喉が裂かれそうな声で…それでも、力強く、立派にその意志を示した。

父は何も言わなかった。いや、聞こえてないだけなのだろう。心の底から伝えたかった…父の魂が、携帯機を伝って来る。「すまない。」なのか「ありがとう。」なのか、それとも両方なのか、違うのか。そんなことはきっと重要じゃない。何よりも父が語り伝えられて、そして今、俺自身に語り伝えてることがはっきりと分かる。

 

「…ごめん。これから行くところがあるから…さ。」

俺は電話を切った。父はどんな状態だろうか、俺には計り知れないことだった。

「…さーて?やる事は決まったし、これから本当に忙しいくなりそう…かな。」

不思議とさっきまでの剣幕が嘘みたいに緩くなる。よくあることだけど、あんなに気合を込めた後に来るこの感覚は相変わらず馴染めないことだった。実際そんな経験少ないからね。

 

そんなことを考えながら、月日は流れていった……

 




今回の主人公、高野 龍起教授は結構自分の経験を元に作ったキャラなので変に人間臭かったり、その真逆もあるので右往左往しやすいという…これで良いのか製作者。
さて、中編も後編も高野教授に色々ヤバい過去が出てきます。八割型現在の人生を決めた出来事が起きます。
この後書きの時点で八割頭の中で出来てるから既にヤバいルート直行という…元気に生きるのだ高野教授…!!

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