1:これはオリジナル特異点の物語です
2:本特異点にはオリジナルサーヴァントが登場します
3:2に伴い、独自解釈が混ざります
4:本特異点は、極小特異点です
5:本特異点は、歴史へ影響を及ぼしうるものではありません
「というわけで、特異点だ」
「どういうわけだってばよ」
円卓の騎士、女神ロンゴミニアド、人間ベディヴィエール、神の化身ファラオ達、暗殺者の語源たる異端者たち。そんな存在達が彩っていた特異点を突破したのはつい先日のことであり、そこで得られた情報から最後の特異点を特定しようとしているのではなかったか。
「もしかして、もう第七特異点が特定できたのですか?」
「いや、そっちの特定はまだなんだ。紀元前、神代へシバの焦点を合わせる作業は思ったより難航していてね」
と、マシュの質問へロマンが答えた。すなわち今回特定された特異点は魔術王ソロモンによって作られた人類史の根幹たる7つの特異点ではなく、何かの折に発生してしまった特異点か、こちらの妨害を目的として作成された特異点か、あるいは……
「ハロウィンとかのあのバカ騒ぎだったら、私は今すぐ逃げるよ」
「さて、特異点の詳細説明に移ろうか」
「オイ、こっちの目を見て答えろよロマン」
「先輩、その口調は女性としてどうかと思いますので……」
マシュに止められてしまっては仕方ない。問いただすことはあきらめ、話の続きを聞く方針へ変更する。
「とまあ濁してはみたけれど、正直あんな感じのバカ騒ぎではないと思うよ。何せ今回観測された特異点は、時代としては神代のものだ」
「神代……ってことはやっぱり、第七特異点?」
「しかしそうと思える要素が何一つない」
と、ダヴィンチちゃんはモニターの前で肩をすくめる。
「時代背景としては紀元前800年ごろ、場所は日本の淡島周辺と来ている。日本における神代真っただ中ではあるけれど、だからといって人理に対して影響を及ぼすだけのことが起こっているはずもない」
「バカ騒ぎだと考えられないのは?」
「この時代に対して介入してのけるだけの人物だよ?バカ騒ぎのつもりでやっていたとしてもバカ騒ぎなんて呼べるはずがない」
なるほど、道理だ。本人がどんなつもりであったのだとしても、それがこっちにとって冗談にならないのであれば大事、普通に特異点として処理するしかない。
「というわけで迷惑をかけてしまうけれど、異常事態だ。特異点の規模は最小クラスであり、今は第七特異点のことがある。こちらが損傷を受けてる可能性があるから無視してしまおうかとも思ったんだけど……」
「いやいやいや、それは駄目でございますよー」
と、足元から声が。
「いいですか、皆さん。船ってものは、小さな穴一つで沈没する……それどころか、小さな違和感一つでも放置すれば確実に沈没するまで行くもんです。大仕事の前だからこそ、とっとと払拭してしまうべきでしょう」
「とまあ、生前の経験に基づいたのであろう大変含蓄あるお言葉をいただいたわけなんだけど……」
そして、ダヴィンチちゃんが私の足元へ視線をやる。それでようやく視認していいものだと判断したのか、この場にいる全員の視線が私の足元に。仕方がないので私も、嫌々ながら足元へ視線を送る。
両手足を拘束して、簀巻きにして、目隠しをして、腰の部分にロープを付けてここまで引きずってきた黒髭の姿が、そこにあった。
「えっと、どうしても気になるから聞いてもいいかな?」
「はいどうぞ、ロマン」
「たしか君たち、昨日の夜仲良くアニメマラソンなんぞしてたよね?」
「はい、時に共に涙を流し、時に激しく議論を行い、時にキャラクターの言葉にできない心情を憂い。この世全ての創作、その未来に幸あれと……そう願う時間を過ごしていました」
「うん、まさかそこまで深く濃厚な時間を過ごしていたとは想定外だった」
この黒髭、世の創作に対する思いがものすごく強い。そんな塊と肩を並べ、作品を視る……そう過ごしている間に、私にも移ってしまっていた。
「で、まあ、うん。じゃあなんでそうなってるの?」
「や、なんか幼い顔つきの女性スタッフをストーキングしてたから、犯罪者を野放しにしちゃいけないと思って」
「よくやった」
当然の結果として、褒められた。とはいえ特異点へ向かうのであればサーヴァントをこのままにしておくわけにはいかない。目隠しを外し、手枷足枷を外す。簀巻きに使ったものは使い捨てのものなので、もうそのまま引きちぎってもらった。
「あー、ちょいキツメ美少女であるマスターにこうして扱われるのも、中々……」
「ねえ黒髭、せめてもう少しでいいから、海賊黒髭としてカッコいいところを残してくれないかな?そろそろ黒髭の持つ英霊としての価値を完全否定しなきゃいけなくなるんだけど」
「そこはほら、拙者、親しみやすい海賊をモットーにしておりますからなぁww」
「最凶最悪の海賊が何を言ってるんだ……」
親しみやすさ、なんてものはこの黒髭に存在しない。今でこそお互いに肩を組んでバカ騒ぎできるようになったし、先ほどのように扱っても冗談としてお互い笑い飛ばせる関係になったものの、笑顔で部下を殺せるような海賊だ。これが親しみやすいのであれば世の反英霊は99%誰もが笑顔になる英霊である。
「はぁ……まあいいや。黒髭、いける?」
「どーせ行けないって言っても行くって言うのがマスターでしょう?ほら拙者サーヴァントですから、マスターの命令には従うしかないですし―」
「黒髭がそんな愁傷な心掛けを持ってくれていたのなら、私たちはあんなに特異点で苦労してないと思うんだけどなー」
もちろん戦闘面での苦労ではなく、日常的な面での苦労である。この黒髭、とことん女性ウケが悪い。男性ウケも悪い。この見た目にこの口調だから仕方ないとは思うし一切同情しないのだけど、そのせいでこっちに苦労が回ってくるのだけはどうにかしてくれないだろうか。
それでも海賊黒髭、エドワード・ティーチの名前を出せば向うの対応も変わってくれるのでまだマシなのかもしれない。アーラシュやカルナのように名前を出す前から普通に接してくれる人もいるけど、それは稀な例なので期待しない。してはいけない。
「まぁ、いいんだけどね……今回は黒髭、活躍できそうだし」
「そうでございますなー。なにせここ、どう見ても海ですし」
海を移動する以上、その手段は黒髭の宝具であるアン女王の復讐号になるだろう。特異点に召喚される英雄がどれだけ詳しいかにも左右されるけれど、知っているのなら旗を見て真名を察してくれるだろうしそうじゃなくともあれだけの規模の宝具だ。味方になってくれる英雄も黒髭のキモさを許容してくれるはず。してくれるといいな。してほしいなぁ。
伝承だけは一人前なのに、なんでこんなに本人がこれなんだろう。そのせいで無駄な苦労が増えてる気がするのだけども。
「まあいいや。頼りにしてるよ、黒髭」
「お任せください、マスター。この黒髭、高ぶって参りましたぞー!wwwwwww」
とりあえず、あれだな。特異点の状況がつかめるまでの間はいつも通り、黒髭が女性サーヴァントにセクハラするのを防ぐのが、マスターとしての私の仕事だろう。
=○=
「おー、いいねぇ。海は広く、風は気持ちいい。良きかな良きかな」
「拙者としても、久しぶりに船を出せたのは助かりますなー。ここしばらくは砲台だけばかりでござったし」
と、マスター・藤丸立香とサーヴァントライダー・黒髭は水平線を眺め呟く。無限に広がる大海原と言うのは、それだけで心躍る光景だ。
「今回は」
と、そんな二人の下へマシュが口を挟む。
「黒髭さんがいてくれて助かりましたね。まさかレイシフト先に陸地が見られず、海の真上に落とされるとは」
「あれは本当にひどい。ドクター、どうなってるの?」
『いやぁ、本当に申し訳ないとは思ってるんだよ?』
などと、説得力の欠片もない声。
『ただこう、レイシフト前はよく掴めず、日本であることしかわかってなかったんだ。海があるだろうと予想はしていたけれど、それがまさか、』
「目で見える限り、点々と島があるだけとはなぁ」
『日本の歴史に照らし合わせると』
と、次はダヴィンチちゃんが口を挟む。
『日本と言う国がまだできていない、イザナミとイザナギの時代ではないかと疑いたくなる状態だね』
「そこまでの神代にしては、それらしいものもない。いたって普通の海でございますよ?」
『うん、まさにその通り』
海の蛮族黒髭の言葉だけでも十分ではあったけど。
『レイシフト先が紀元前であることは間違いない。しかし、その世界からは神代の要素は観測されていない。故に、これは仮定の話になるのだけど』
魔術的観測結果は、その事実を補強してくれる。
『まあいつもの通り。これは聖杯によるものじゃないかな、と』
「そもそも特異点だし、聖杯はあるよね」
『うん。そして、この特異点からは常に薄くではあるが魔力が観測されている。種類としては、冬木のアーチャー。彼の宝具が一番近いかな』
「あー……固有結界、だっけ」
自らの心象風景を現実に上書きするとか、本来は悪魔が持っていたものだとか、まあ色々と習った記憶はある。理解はしていないが。
『何にせよ、だ。聖杯の力でもって、この世界を上書き……いや、上塗りし続けている、という可能性があるわけだ』
「こーんな海だらけの世界を、となると。拙者の同業者ですかな?」
「その可能性はあるかもね。というか、海が心の風景って時点で他を考えづらいかも」
「海賊、商人、漁師、開拓者……いずれにせよ、海を渡り続けた人物である、と」
『んー、それも考えづらいかもよ?』
と、再びの忠言。
『それこそほら、黒髭くん』
「はいはい、なんでございましょう?」
『君が英霊となり、宝具を獲得するとして、だ。その船以外の選択肢はあるのかな?』
「まあ確実にありませんな」
即答である。
「そこまでなんだ?」
「まあ、はい。自分に置き換えてみると、船以外はありえませんなぁ。しっかしそうなると、海を描くのは誰になるのやら」
「……それこそ、これが心象風景なら。この風景から持ち主を特定することもできるのでは?」
とは、マシュの意見。なるほど、言われてみればその通りだ。
『うーん、発想はいいんだけど、難しいかもしれない』
しかし、万能の天才はやんわりと否定する。
「それはまたどうして?」
『それがこの世界、おそらく無理矢理に上書きしたからだろうね。現実と心象が混ざりあっているようなんだ』
ロマンの言葉に、この世界のいびつさを感じる。何とも中途半端な世界だなぁ。
「……まぁ、でも」
なんて結論を出して。マスターとして、方針を口にする。大丈夫、間違っていればカルデアの人達が指摘してくれるし、海特有の見落としも黒髭がいる。百点満点の答えはこの後、皆と協力して出せばいい。今いるのは、マスターとしての意見だけ。
「とりあえず、大した陸地が無い以上、このままアン女王の復讐号で船旅。協力してくれるサーヴァントを乗せつつ、原因を探る」
協力してくれる現地のサーヴァント探しは、必須だ。思い出すのはキャメロットでのこと。令呪二画分の魔力を渡し、その上で大分無茶をして魔力供給を続け空を駆けたアン女王の復讐号。甲板には私たちの他にもハサン達をはじめとするサーヴァントを乗せて攻め込んだあの時……百貌の性質もあって、この船は円卓の騎士が放つ宝具すら耐えきるだけの城攻めを成してくれた。
おかげさまで特異点修復後しばらく私は倒れていたわけなんだけど……今回は空を走るわけでもないし、大丈夫だろう。
「で、食料は魚か、チマチマある島を調査しつつ調達する……って感じで、どうかな?」
『うん、いいんじゃないかな。食料に関してはカルデアから送ることもできるし、気にしなくても大丈夫』
「それではそれではー!」
と、方針の決定と共に黒髭がハイテンションになった。いやな予感しかない。
「黒髭海賊団の新メンバー探しに出発ですぞー!デュフフフフwwwwwwww。美少女幼女サーヴァントはどこですかなー!!」
蹴り落とした。
一切の躊躇いなく、船から海へ、全力で蹴り落とした。大丈夫、これくらいは本当に許される仲になっている。
「あ、マスター。あちらに小島が」
「ナイスマシュ。ほら黒髭、早く上がって来い。行くよ」
「えー、何この拙者に厳しい世界」
自業自得だろう。
待たせたな!
多分また待たせる!!(オイ)
はい、と言うわけで最近ボイスチェンジャーで遊ぶことにハマった作者でした。
あれ凄いね。無料のソフトでもむっちゃ声かわるし、声以外の音を通しても面白い。