黒髭物語   作:biwanosin

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やっちゃったゼ☆


神造禁忌御子 淡島 ②

「ええいクソ、なんだこれは!特異点へ召喚されたと思ったらマスターも聖杯もない野良サーヴァントだと!?この私をもてなす姿勢も見せないとはどういうことだ!」

「よし黒髭、怪しいサーヴァントだ。今すぐ処理するぞ」

 

 なんか見覚えのある金髪がいたので、即座にサーヴァントへ指示を出す。真名しかわかっていない相手だが、伝承から考えても戦闘能力があるとは思いづらいし、有ったとしてもそれは海の上だろう。マシュもいるし、うん。いけるいける。

 

「あの、マスター……」

 

 と、そんな判断で命令を下しているとマシュからの一言。

 

「確かに彼は怪しく疑わずにはいられませんが……先ほどの発言から察するに」

「特異点へのカウンターでしょうなぁ」

 

 続ける形で黒髭からも。なんてこった、そっち側なのか。

 

『まぁ、確かに』

 

 そして、さらなる発言が管制室から。

 

『海と言う場において、彼がカウンターに選ばれることは極めて有効な手だ。本人の性格はともかく、ね』

 

 うーむ、ここまで言われてしまってはもう、認めるしかないのか……

 

「あ、お前たち!」

 

 と、何とか現実逃避できないかと考えているとお声がかかってしまった。これはもう、逃げようがないな。

 

「いつまでこの私を、イアソンを待たせる!特異点だぞ!?とっとと来ないか!」

 

 やっぱサメの餌にしようぜ、コイツ。

 

 

 

 =○=

 

 

 

 私が変わるきっかけとなった特異点、オケアノス。そこでの最後の戦いは、それはそれは苛烈なものだった。海上を駆る三隻の船。内2つ、海賊の物が砲撃を続けつつ接近し、乗り込んだ。黒髭は躊躇うことなくタックルをかまし、前蹴りに鉤爪にとケンカ殺法。最後には至近距離で砲台を召喚しヘクトールを撃つ等、まあ優雅さの欠片もない野蛮な戦いであったわけだが。そんな攻め方をされた敵方のリーダーが、彼。ギリシア神話における金羊の皮を巡る物語で有名なアルゴー号の船長・イアソンである。

 ……まぁ、残念なことに「ヘラクレスは最強!」、「メディアに肉柱にされた」という二つの印象が強すぎるのだけど。

 

 

 

 =○=

 

 

 

「全く、何故私がこんな野蛮な船に……」

「あのねぇ」

 

 アン女王の復讐号に乗り、そうぼやくイアソンに対し。つい耐え切れず口を出す。そうでなくとも仮契約を交わす身、コミュニケーションは大切だ。

 

「確かに髭ほったらかしだったりする連中の船だけどさ。気さくでいいやつらだし、何より船は結構なものだよ?」

「あぁ、そこは認める。この船は性能面でも功績面でもかなりのものだろうさ」

 

 おや、素直ですこと。

 

「だが、私が乗るに足るだけの品性があるとは到底思えないね。アルゴー号を出した方がよっぽどいい」

「魔力消費半端ないでしょ、戦闘時以外は却下です」

 

 神代の船とか……あの王女メディアが動力源になって動かしていたような船とか、どんな消費魔力なのか考えたくもない。ふざけるな。

 

「ふん、まあいい。それで、今回の目的はこの特異点の修復だったな?」

「うん、そんなところ。そこまで大きな特異点でもないから、放置って手もあったんだけど」

「打てる手を打つに越したことはない。小さな問題を放置してどれだけの影響を及ぼすか、考えたくもないね」

 

 この辺りは、黒髭と同じ意見。正反対なようで二人とも海に生きた男である、ということなのだろう。いやはや、どうしたものか。

 

「あー、クソ」

 

 と、一人問答をしているとイアソンの方がめんどくさそうに頭をかきむしり。

 

「聞きたいことがあるんだろ?とっとと聞きなよ」

「……隠せてなかった?」

「バレバレだっての」

 

 いやー、うん。さすがは英霊、こっちの考えなんて御見通しか。

 

「じゃあ、単刀直入に。私たちは貴方を信頼してもいいの?変なこととか、考えてない?」

「少なくとも、しっかり協力してやるつもりだよ」

 

 信頼するかは勝手に決めれば、と。そんな感じで即答されてしまった。

 

「オケアノスでのことだろ、どうせ」

「まあ、うん」

「だったらあの場であったことも、それなりに覚えてるんだろ?」

 

 それなりにどころか……あの特異点での出来事は、ほんの小さなものまで含めてすべて覚えている。

 

「つまりは、そういうことだよ。あのメディアが、私の望みをあの手段で叶えようとしたんだ。それはつまり、それしか選択肢が無いか……少なくとも、聖杯を使う中では一番可能性があったんだろ」

「だから、もう聖杯に期待はしてない?」

「私の収める国が無い中で王になったって意味がない。だったら、人類史のことを考えもするさ。癪だけどね」

 

 ほー、へー、ふーん。

 

「メディアのこと、むっちゃ信頼してません?」

「信用だ、信頼じゃない」

 

 苦虫を噛み潰したような表情で、そう告げる。

 

「あの魔女の恐ろしさは身をもって知ってるし、それ以上に能力の高さも知ってる。それだけのことだ」

「……だから、やっても無駄だって分かってるし、協力してくれる、と?」

「あぁ、人類史に選ばれた英雄として、精々協力してやるさ」

 

 だから嫌なところをついてくるな、と言われてしまった。でも、彼は協力の意志を見せてくれている。今だって勝手に船を出すこともできるのに、文句を言いながらアン女王の復讐号に乗っている。トドメに、英雄として、なんて言葉だ。

 ……彼に習って、信用くらいはしてもいいかもしれない。

 

「そういうことなら、よろしくね」

「あーはいはい、よろしくよろしく」

 

 生返事をして、再び海を眺めるイアソン。大丈夫そうだと理解してマシュ達のところへ戻ろうとして、途中で振り返る。

 

 中でくつろぐのではなく、外で海を眺める。そんな背中になるほどなぁ、と納得して。私は皆のところへ戻った。

 




はい、と言うわけで。出しました。他に適役思いつかなかったんで


彼に関して、注意事項を


1:情報が少なすぎるので、彼の言葉とか諸々は私の解釈で行っています
2:宝具周りは私の独自解釈で出します

以上

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