「姫路の転校か・・・」
そう呟くのは頭の上にトリプルアイスクリーム(タンコブ)を作った雄二
「そうなんだよ。なんとかしないと・・・」
雄二の言葉に明久が返す
なぜ雄二がたんこぶできているのか・・・答えは簡単。霧島さんにお仕置きされたのだ・・・
「そうなると、喫茶店だけでは厳しいな」
雄二はボロイ教室を見ていったのだ
「厳しい?なんで?」
「姫路の父親が転校進めた理由は3つだ」
雄二の説明はこうだ。
①学校設備が悪く、学業に専念できない。
②教育環境が悪く、体調を悪くする恐れがあること。
③レベルの低いクラスメイトのせいで姫路さんの成長を促せない。
「1つ目はさっき西村先生が言ったように学園祭で得たお金で設備を買うことが出来、3つ目は召喚大会で優勝かできなくてもよい成績で勝ち残れたら学年トップにも 渡り合える生徒がFクラスにいるってことになるため解決はできるね」
僕がそう説明すると雄二は頷いていた
「あぁ、そこまではいいが、2つ目に関しては生徒だけの力ではどうすることもできないからな。そのため、俺と明久で学園長に環境の改善を直訴しに行くぞ」
「なら、ついでに僕もいくよ?嫌な予感もするし」
明久が何で?って顔してるから教えるか
「明久は、馬鹿だから目上の人に対してとんでもないことを言うでしょう?」
「そ・・・そんなわけないでしょ・・?」
目をそらさずこっちを見て?明久
時間もないから急いで校長室に向かった僕ら
明久side
『賞品の・・として隠し・・・』
『・・こそ・・勝手に・・如月ハイランドに・・・』
新校舎の一角にある学園長室の前までくると、扉の向こうから誰かが言い争ってる声が聞こえて来た
賞品?如月ハイランド?何の話をしているのだろう
「どうした、明久」
「いや、中で何か話しているみたいなんだけど」
「そうか。つまり中には学園長がいるというわけなんだな。無駄足にならなくて何よりだ。さっさと中に入るぞ」
「っちょ!?明久に雄二!ノックして返事待ってから・・・」
取り込み中かどうかは向こうが判断するってことか。雄二の言うことももっともだ。ひとまずは折角来たんだし、用件だけは伝えてみようか
「失礼しまーす!」
学園長室の立派なドアをノックして、僕と雄二はずんずんと入っていった。のび太は頭抱えていたけど何かあったかな?
「本当に失礼なガキどもだねぇ。普通は返事を待つもんだよ」
その室内で僕らを迎えたのは、長い白髪が特徴の藤堂カヲル学園長だ。試験召喚システム開発の中心人物でもある。研究をしていた人間だからか、ずいぶん規格外なところが多い人らしい
第一声でガキども、とか言ってるし
「やれやれ。取り込み中だというのに、とんだ来客ですね。これでは話を続けることも出来ません。・・・まさか、貴方の差し金ですか?」
眼鏡を弄りながら学園町を睨み付けたのは教頭の竹原先生だ。鋭い目つきとクールな態度で一部の女子生徒には人気が高い。僕個人としてはあまり好きになれない先生だけど珍しく、のび太もなんか嫌そうな顔していた
「馬鹿を言わないでおくれ。どうしてこのアタシがそんなセコい手を使わなきゃいけないのさ。負い目があるというわけでもないのに」
「それはどうだか。学園長は隠し事がお得意のようですから」
僕らにはよくわからないやり取りが行われている。学園長と教頭の話し合いということは学園の経営についてだろうか。それなら僕らがいる前で話を続けることはできない。出直した方が良いのかな?
「さっきから言ってるように隠し事なんて無いね。アンタの見当違いだよ」
「そうですか。そこまで否定されるならこの場はそういうことにしておきましょう」
そう告げると、竹原先生は部屋の隅に一瞬視線を送り、
「それでは、この場は失礼させていただきます」
踵を返して学園長室を出て行った。さっき何かを確認していたように見えたけど、なんだろう?この部屋に何かあるのかな?
「んで、ガキども。あんたらは何の用だい?」
と竹原先生との会話を中断されたことを気にする様子も無く、僕らに話を振る学園長
「今日は学園長にお話があってきました」
学園長の前に立ち、雄二が話を切り出す。意外だ。敬語を知っていたのか
「私は今それどころじゃないんでね。学園の経営に関することなら、教頭の竹原にいいな。それとまずは名前を名乗るのが社会の礼儀ってもんだ。覚えておきな」
こんな横柄な婆さんに礼儀を説かれるなんて、世も末だ
「失礼しました。俺は二年F組代表の坂本雄二。それでこっちが――」
雄二が僕を示し、紹介する
「――二年生を代表するバカです」
どうしてコイツは普通に名前を言えないのだろう
「ほぅ……。そうかい。あんた達がFクラスの坂本と吉井かい。そして、その横が野比かい?」
「ちょっとまって学園長!僕はまだ名前を言ってませんよね!?」
さっきの紹介で名前を連想されたという事実に涙がでそうだ
「気が変わったよ。話を聞いてやろうじゃないか」
悪役のように口の端を吊り上げる学園長。これで人を教育しようというのだから不思議だ
「ありがとうございます」
「礼なんかいう暇があったらさっさと話しな、ウスノロ」
「わかりました」
それにしても驚かされる。こんなにも口汚く罵倒されているのに、雄二の態度や言動は落ち着いたままだなんて。コイツがここまで大人なヤツだとは思わなかった
「この有様では学園長のように縦穴式住居で生活を送ってるような原始的な老いぼれならともかく、現代の一般的な生徒が体調を崩す恐れがあります」
僕にはここまで相手を罵倒するスキルは無いよ流石は雄二だ!
「要するに、体調を崩す生徒が出てくるからとっとと教室を直せクソババア・・という訳です」
しっかしよっぽど怒ってたんだな。その気になれば普通に敬語で通せただろうに・・・まぁ、あの言葉遣いじゃ無理も無いか
「・・・なるほど、言いたい事は良く分かった」
「それじゃあ、教室を改修してくれるんですね?」
「却下さね!」
「雄二、このババアコンクリに詰めて東京湾に捨てよう」
「落ち着け明久。環境汚染になるだろう」
はっ!つい本音が!?
僕がそう思ってるとのび太が前出て聞いてきた
「理由をお聞かせ願えますでしょうか?学園長」
「理由も何も、設備に差を付けるのはうちのルールさ。今更ガタガタ抜かすんじゃ無いよ!」
ぐっ!さっきから言いたいこといって!!!
「……と、本来なら言ってる所なんだがね」
「?」
「可愛い生徒の頼みだ。こっちの頼みも聞いてくれるなら、教室くらい改修しても良いさね」
え?どういうこと?
のび太side
「条件はなんですか?」
明久が黙っている雄二の代わりに聞いてきたのだ
「清涼祭で行われる召喚大会は知ってるかい?」
えっと、確か~、うん!思い出した!
「確か・・学校から贈られる正賞には、賞状とトロフィーと『白金の腕輪』、副賞には『如月ハイランド プレオープンプレミアムペアチケット』が用意してあるのですよね?」
「おや?よく知ってるじゃないか?そうさ、条件ってのは、この副賞のペアチケットなんだけど、ちょっと良からぬ噂を聞いてね。できれば回収したいのさ」
「回収?それなら、賞品に出さなければいいじゃないですか」
明久の意見は最もだ。何故こうなったのか?
「そうできるならしているさ。けどね、この話は教頭が進めた話とはいえ、文月学園として如月グループと行った正式な契約だ。今更覆すわけには行かないんだよ」
そういえば前に噂で『学園長は召喚システムの開発に手一杯で、経営に関しては教頭に一任している』なんて聞いたことがある。どうやらあれは本当のことみたいだ
「契約する前に気付いて下さいよ。学園長なんだから」
「うるさいガキだねぇ。白銀の腕輪の開発で手一杯だったんだよ。それに、悪い噂を聞いたのはつい最近だしね」
明久の言葉に学園長が眉をしかめる。口調とは裏腹に、若干責任を感じているみたいだ
「それで、悪い噂ってのは何ですか?」
つまらない内容なんだけどね。と前置きして学園長は口を開いた
「如月グループは如月ハイランドに一つのジンクスを作ろうとしているのさ。『ここを訪れたカップルは幸せになれる』って言うジンクスをね」
「?それのどこが悪い噂なんです?良い話じゃないですか」
「そのジンクスを作る為に、プレミアムチケットを使ってやって来たカップルを結婚までコーディネートするつもりらしい。企業として、多少強引な手段を用いてもね」
「な、なんだと!?」
明久と学園長都のやり取りの最中に突然雄二が大声を上げた。ビックリしたぁ~
「どうしたのさ雄二。そんなに慌てて・・」
「慌てるに決まっているだろう!今ババアが言ったことは『プレオープンプレミアムペアチケットでやってきたカップルを如月グループの力で強引に結婚させる』ってことだぞ!?それにうちの学園は何故か美女揃いだし・・絶対にアイツは参加して、優勝を狙ってくる・・行けば結婚、行かなくても『約束を破ったから』と結婚・・・俺の、将来は・・!」
…大方霧島さん関係で何かあったね?ここまで慌てている雄二は斬新だけど、明久に任して話続けよう
「無論優勝者から強奪はダメさ。やるなら学力で結果示しな」
すると、明久が口挟んできたのだ
「僕たちが優勝したら、教室の改修と設備の向上を約束してくれるんですね?」
「何を言ってるんだい。やってやるのは教室の改修だけ。設備についてはうちの教育方針だ。変える気はないよ。ただし、清涼祭で得た利益でなんとかしようっていうなら話は別だよ。特別に今回だけは勝手に設備を変更することに目を瞑ってやってもいい」
すると復活した雄二が学園長に提案したのだ
「召喚大会は2対2の召喚獣バトル、トーナメント形式だと聞いている。その科目は一回戦が数学、二回戦が英語・・というように毎回変わると聞いているが対戦表ができたらその科目の指定を俺にやらせてくれないか?」
「ふむ、点数の水増しとかなら一蹴してたが、そのくらいなら構わないよ」
「ありがとうございます」
「ここまで協力するんだ。当然大会で優勝出来るんだろうね?」
学園長が念を押してくる。そこまで如月グループの計画を阻止したいのだろうか?今は余計なこと考えないでおこう
「無論だ。俺達を誰だと思っている?」
雄二の不適な笑み・・これは試召戦争の時にも見た、やる気全開の表情だ
「絶対に優勝します。そっちこそ約束を忘れないように!」
もちろん僕だってやる気は全開だ。問題解決の手段がはっきりしたんだ。あとはやるべきことをやるだけなんだから
「それじゃ、ボウズども。任せたよ」
「「「おう!」」」
こうして、文月学園最低コンビが誕生することになった・・・
ここまで読んでいただいてありがとうございます!次回もよろしくお願いします!