「(明久は、やるときは本当にやるやつなんだ・・・・。きっとこの勝負も勝つ!)」
そう思っているとステージの方で坂本の召喚獣が動き出した。装備が軽いから動きが速い
『夏川!こっちは俺が引き受ける!』
モヒカン先輩が慌てて雄二の正面に立つが動きが鈍い
「おそらく明久達の点数に驚いたから動きが鈍いんだろう」
「2人を見下し過ぎたからそうなったのかもしれないね」
三上さんの言う通りだ。人は基本的に予想外の事態に陥ると動きが鈍くなる。ましてやあれだけ見下していた人間が予想外の展開を生み出したら・・・ね。
雄二の召喚獣はモヒカンの召喚獣に対してかなりの接近を許している。どうやらタッグマッチというより、明久と坊主先輩。雄二とモヒカン先輩のタイマンを2試合って試合になるだろう
『それじゃ、僕の相手は先輩ですね』
『上等じゃねぇか!多少ヤマが当たったくらいでいい気になるなよ!』
坊主先輩の召喚獣が剣を構えて明久の召喚獣に突進する。動きは早いが……
『先輩、取り乱し過ぎですよ?ただの突撃じゃ避けてくれと言ってるようなもんです』
明久の召喚獣は半身を右にずらし、小さな動きで相手の身体を避けていた
あんな真っ直ぐな攻撃ならそこまで召喚獣の扱いに慣れてない僕や三上さんでも回避出来る。観察処分者として召喚獣を使いまくり操作能力に長けている明久なら言うまでもないだろう。
冷静さを欠けてバカみたいな突撃をする。どうやらあの坊主先輩は成績以外は性格そのものみたいだね
『っと、この……!』
坊主の召喚獣が後ろに振り向きざまに明久の召喚獣に横薙ぎの一撃をやったが・・・
『ふっ!』
明久の召喚獣はその一撃を小さく屈んでかわし、一呼吸の間に三度木刀を振るった。回避してからすぐに三度の反撃、やはり明久の操作能力は桁違いに高い
「あの子・・・いくらなんでも操作上手すぎます」
「確かに・・・素人から見てもすげぇ」
「私も彼の召喚獣見るのははじめてだけど・・・凄い」
三人とも明久の操作がここまでうまいの驚いていた。彼は伊達に観察処分じゃないさ!
『くうっ・・・』
Aクラス 夏川俊平
日本史 197点→193点→190点→186点
僅かに点数が削られる。いつもと違って今の明久の召喚獣はかなりの攻撃力を持っている為か剣で防いでも若干のダメージを受けている
明久の召喚獣からの攻撃を剣で防御した後は、坊主の召喚獣仕切りなおすように大きく一歩下がった。
『テメェ、試召戦争じゃ60点程度だったくせに・・・!』
坊主先輩は語気を荒くしながら明久を睨んでいる。台詞から察するに、ある程度は明久達の情報を集めていたようだ。しかし甘く見すぎだ!
『今でもそんなもんですよ。この教科以外は、ね?』
『野郎!最初からこの勝負だけに絞ってやがったな・・・!』
『その通り。よくわかりましたね、先輩』
雄二は初めから優勝する気で日本史を選択したのだろう
一方・・・・
『どうした?顔色が悪いぜ?』
『お前等、Fクラスのくせに!!』
雄二の方もモヒカン相手に優勢だ。身軽な雄二の召喚獣は素早く動き回る事で互角に渡り合っている。このまま行けば明久が坊主を倒せる。雄二は勝てるかわからないが吉井が加われば問題ないだろう
すると・・・
『仕方ねぇ。二年相手に大人げないが、経験の差ってやつを教えてやるよ!』
坊主がそう告げると坊主の召喚獣は大きく跳び退る。しかも明久だけじゃなく坊主本人からも距離を取った
坊主がそう告げると坊主の召喚獣は大きく跳び退る。しかも吉井だけじゃなく坊主本人からも距離を取った
「おのお方・・・何をする気ですか?」
小暮先輩は訝しげな表情を浮かべるが同感だ。召喚獣を使役する本人から距離を取って一体何をするつもりだ?操作能力に長けている吉井相手にそんな事をするのは愚行とした思えない
『お前の知らない戦い方があるんだよ』
坊主の言葉と同時に、坊主の召喚獣は剣を腰だめに構え、まるで力を溜めているような感じだ
「何だ?まさかとは思うが能力とやらを?」
「それはないでしょ?点数が足りてないし」
僕はジャイアンの言葉を否定したのだ。普通に考えればあり得ない・・・
「どういうことだ?のび太」
「400点以上点数を取ってると召喚獣は特殊能力を使えるんだよ?」
「なるほど。つまり、その可能性は低いんだな?」
「ええ、能力を使える腕輪もないと思うけど・・・何かたくらんでるみたい」
三上さんのいう通り、油断は出来ない。あんな風にわざわざ戦い難くする以上、相応の切札があるのだろう。現に明久も目を鋭くして警戒しているし
『おおおぉぉっ!』
考えている最中に坊主が更に力を込めるように声をあげる。腕輪はないし……
すると、ジャイアンが小さい声で指示だしたのだ
「のび太!あの先輩の懐に砂があるぞ!?」
「え!?」
ポケットから何かを取り出して吉井に投げつけようとしていた。
それを認識した瞬間……
『行け!』
「間に合え!」
隠していた音が鳴らない銃で撃ち抜いたのだ
『『え?!』』
「「えぇ?!」」
坊主と明久の驚きの声が耳に入る。そして明久は唐突に髪を弄り始め……
『これは……砂利?!』
そんな声が聞こえてくる。やはり坊主が投げたのは砂利だったか。
「どういうこと?のび太君」
「今あなたがあれを撃ち落としたのですか?」
三上さんと小暮先輩が驚いたように言ってきたのだ。ジャイアンが気づいてくれなったら、危なかった・・・
「あんの先輩やろう!!ふざけた真似しやがって!!」
「ジャイアン落ち着こう?簡単な話です。明久に目潰ししょうとしていたのです」
その言葉を聞き小暮先輩はため息ついていた
「あの方々は真剣にやっている後輩に卑怯な手を使うなんて・・・貴方達に申し訳ありませんわ」
「小暮先輩が謝ることないですよ!それに目論見が失敗したからこの勝負・・・・僕らの仲間が勝ちます。思う存分暴れろ!明久!」
僕は小暮先輩の謝罪に謝る必要はないと言い、僕らが勝つと言ったら三人ともキョトンとしていたのだが、構わず僕は明久にそう言ったのだ
「ありがと!のび太!今なら・・・・!!」
明久は言うなり自身の召喚獣を雄二と戦っているモヒカンの方に向かわせる
『し、しまった!』
坊主先輩は焦った表情を浮かべながら、明久の召喚獣の元に向かわせる。しかし、坊主の召喚獣は砂利を投げる為に吉井の召喚獣から遠ざけていたので・・・
『はあっ!』
吉井の召喚獣がモヒカン先輩の召喚獣を攻撃する方が早い。坂本の攻撃を凌いでいたモヒカンに吉井の一撃を対処する方法などなく・・・
『ぐっ・・・・!』
Fクラス 坂本雄二&吉井明久
日本史 172点&166点
VS
Aクラス 常村勇作
日本史 168点→86点
明久の一撃を頭にモロに食らったモヒカン先輩の召喚獣は大量に点が削れる。そしてそんな隙を雄二が逃す筈もなく・・・
「吹き飛べやぁあっ!」
メリケンサックがモヒカン先輩の鳩尾に叩き込まれる。雄二の雄叫びと会場の歓声が重なる
Fクラス 坂本雄二&吉井明久
日本史 172点&166点
VS
Aクラス 常村勇作
日本史 86点→DEAD
ディスプレイにそう表示される。同時にモヒカンの召喚獣は点数を失い消える。これで残りは坊主先輩1人だ
『後はお前だけだぜ。サル山の坊主大将。何だか卑怯な手を明久に使ったみたいだが、見事に失敗したな』
雄二はニヤニヤした笑みを坊主に向ける。あの顔は勝ちを確信した笑みだ。まあ当然だろうね。現在の状況は・・・
Fクラス 坂本雄二&吉井明久
日本史 172点&166点
VS
Aクラス 夏川俊平
日本史 186点
圧倒的な差なのだから。加えて目潰しは失敗したので今後吉井は坊主本人の動きにも注意するだろう。そうなれば他の小細工に引っかかる事もないだろう
これなら2人が居眠りしない限り負けはないだろうけどね
『クソッ!!お前ら屑に俺達が・・・・っ!』
盗聴器の受信機からは坊主のそんな声が聞こえてくるが・・・
「卑怯な手を使っている方がそれをいっても説得力ないですわ」
「小暮先輩のいう通りです。あの人達は説得力ないです」
「「うんうん!」」
小暮先輩と三上さんの言葉に僕らは頷いたのだ。だってさ、営業妨害、汚い手など様々な事をしている人達がそんなこと言っても説得力ない!
呆れながらステージを見ると坊主は悔しそうに歯軋りしながら召喚獣を操る。狙いは明久にだ。明久の召喚獣目掛けて袈裟斬りを放つも・・・
『甘い!』
袈裟斬りを紙一重で回避してから木刀を坊主の召喚獣の手に叩きつけて、得物を手から引き離した
そして・・・・
『これで最後だぁ!』
徒手空拳の坊主の召喚獣の顔面にメリケンサックの一撃が叩き込まれる。170点近い雄二の一撃を顔面に食らったんだ。当然・・・
『クソがぁぁぁぁぁっ!』
Fクラス 坂本雄二&吉井明久
日本史 172点&166点
VS
Aクラス 夏川俊平
日本史 186点→DEAD
坊主先輩の怒号と共に召喚獣が消える。同時に……
『坂本・吉井ペアの勝利です!』
そんなアナウンスが流れて観客席からは爆発的な歓声が沸き上がる。勝者を褒め称える歓声がステージにいる2年屈指のバカ2人に送られる
「あの御方達はとても凄いですわ」
「そうですね。そういえばのび太君はどうやって気づいたの?」
小暮先輩が笑顔で拍手して、三上さんも拍手しながらどうやって気づいたのか?って聞くと・・・
「ジャイアンのお陰ですよ。ジャイアンが気づいてくれたから撃ち抜いたのです」
「嫌々、お前が対策してくれたじゃねぇか?寧ろお前のお手柄だろ?」
過程はともかく最下位クラスの2人が優勝したのは紛れもない偉業だしね
「まあこれで目的は果たしたんだからっと、坊主の醜態でも写真に撮って新聞部に売ってやるか」
そう言いながらジャイアンはステージで呆然としている常夏コンビの写真を撮る。今回の砂利を投げた事については新聞部に売ってやる。
「容赦ないですわね・・・まぁ、私も止めませんが」
「心の友達に迷惑かけたのだからこれぐらいいいじゃないですか」
ジャイアンがそういうと小暮先輩はそれもそうですわね。っと言い僕らは会場をあとにしたのだ。小暮先輩は先に失礼しますと言い、去ったのだ
「お兄ちゃん!すっっっごい格好よかったよ!」
「ぐふっ!は、葉月ちゃん……今日も来てくれたんだ。どうもありがとう」
表彰式と簡単なデモンストレーションを終えて、教室に戻る途中凄い勢いで葉月ちゃんが飛び付いて来た
わざわざ迎えに来てくれたみたいだ。身長差で頭がみぞおちに直撃したけど、ココはお兄さんのプライドでぐっと我慢だって顔だね
「二人とも、お疲れ様。凄かったわね」
「あはは。そうでもないよ」
「お兄ちゃん、凄いです~っ!」
「葉月ってば、アキが困ってるわよ?」
島田さんが明久にグリグリと頭を押し付けている葉月ちゃんを見て苦笑をしている。これ以上鳩尾を圧迫されると致命傷になりかねないので、やんわりと彼女の身体を遠ざける。葉月ちゃんは不満げな表情を浮かべながらも大人しく従ってくれた
「あの、吉井君」
「あ、姫路さん。僕の活躍見てくれた?」
「はいっ!とっても素敵でした。今度土屋君にビデオをコピーしてもらおうと思うくらい!」
目がキラキラと輝いている。こんなに嬉しい反応をしてくれるなんて頑張ったかいがあると言うもんだろうね
「ビデオねぇ・・・。ムッツリーニ、撮影なんかしていたの?」
「はい。ずっと熱心に撮っていましたよ。ね?」
「・・・(プイッ)」
目を逸らすムッツリーニ。この男、さては試合そっちのけでミニスカートの観客とかを撮影していたね?
「ってか、僕らも店のお手伝いするよ」
「おう!俺様も外部だけど手伝うぞ」
僕とジャイアンがそういうと、皆もお店モードに切り替わったのだ
「三上さんも手伝ってくれるってさ」
「それは俺らには助かるが・・・Eクラスはいいのか?」
「平気。午前中だけだったし、表に出るのは不味いから厨房で手伝うわね」
「ありがとう!」
雄二が珍妙な顔で聞くと三上さんは笑顔で答えたのだ。僕は感謝の言葉をいうと、三上さんがどういたしましてと言った
さぁ!お祭りラストスパート!!しっかりやるよ!
ここまで読んでいただいて感謝します!これからもよろしくお願いします