「おメデとうございマス。ウェディング体験が当たるなんテ、ラッキーでスね」
「・・・・・・凄く嬉しい。」
レストランを出ると例の似非野郎が翔子のカバンを持って近づいてきた。まったく、何がラッキーだ。ハナから計画に入っていたくせに
「そういえば翔子。お前の持ってきた鞄は何が入っているんだ?随分と大きいが。」
「・・・・・・別に、なんでも・・・・・」
翔子が少し困ったように答える。何かあるのだろうか?普段実印を持ち歩いているんだ。何持っていても不思議じゃないが。
「翔子サン、ウェディング体験の準備があるノデ、このスタッフについていってもらえマスか?」
いきなり似非野郎の後ろから女性のスタッフが歩み出て頭を下げる。いかにも業界人といった風貌の人だ
「初めまして。貴方のドレスのコーディネートを担当させて頂きます。一生の思い出になるようなイベントにする為、お手伝いをさせてください」
そう言ってスタッフは翔子に笑顔を向けた。おいおい、随分と本格的だな。となると、如月ハイランドの狙いはアトラクションじゃなくて最初から このウェディング体験だったってことか。どうやら今からの時間を目一杯使って結婚式の擬似体験をさせてくるようだ。
「ってことは、俺は長い時間待たされるのか?」
ドレスを着てメイクをするってことは数時間もかかるような大作業になるだろう。その間俺は何していればいいんだ?
「ご安心下サイ。メイクはちゃんと得意な方に頼んであります。メイク等にアマリ時間は掛かりませーン。それに・・・・・」
得意ってこういった計画ならプロぐらい雇ってんだろ?
しかしなんだ!?嫌な予感がする。
「坂本雄二サンは逃亡を考えるだろうカラ、コレで気絶させてカラ、着替えさせるようにとある方らの指示デース」
そういって野郎が取り出したのは、スタンガン
「お・・・己ぇ!!!明久ぁぁぁぁ!!」
「少しガマンして下サーイ」
首の後ろでバチンッと大きな音が響き、俺は意識を失った
のび太side
さて、僕は今明久達に頼まれて、近くの席で座っていたのだ・・・面倒事防ぐためだ。因みに三上さんは僕のそばにいてる。ジャイアンは・・・姫路と先程楽しそうに手料理していたのを見ていたが・・・見た目は大丈夫だったが味は・・・未知数だろう?
「あら?坂本くんじゃないかしら?」
「あっ、本当だ」
雄二がステージに上がってきた。アイツのことだ、途中で大げさ仮病でも使えば、式を断念せざるを得ない。とか考えてるハズだけど・・・まぁ大丈夫かな?多分だけどね?
《それでは新郎のプロフィールの紹介を――――――》
ん?考え事しているうちに、雄二のプロフィール紹介かー。まるで本物の結婚式みたいだな。目的のシーン以外の部分もきちんとしているようだ。さっきのクイズもそうだが、きっと明久にでも聞いて細かく下調べを――――
《―――――省略します》
していなかった・・・・手を抜きすぎ!!
『ま、紹介なんていらねぇよな』
『興味ナシ~』
『ここがオレたちの結婚式に使えるかどうかが問題だからな』
『だよね~』
うるさいな・・・・そんなにおしゃべりしたいなら外に言って喋ってよ・・・
《・・・・・他のお客様のご迷惑になりますので、大声での私語はご遠慮頂けるようお願い致します》
『コレ、アタシらのこと言ってんの~?』
『違ぇだろ。オレらはなんたってオキャクサマだぜ?』
『うんうん!リョータ、イイコト言うね!』
調子に乗って下卑た笑い声が一層大きく響きわたる。・・・・あのチンピラカップルは常識無さすぎる・・・人に迷惑かけている時点でお客様じゃないでしょ?
「ねぇ?私あの人達に注意していっていいかしら?」
「それはダメだよ?我慢しょうか?三上さん」
「のび太君が言うなら・・・」
三上さんは本当に優しい・・・だけどね、こんなやつらのために三上さんが怒って欲しくない・・・
《――――それでは、いよいよ新婦のご登場です!》
心なしか音量が上がったBGMとアナウンスが流れ、同時に会場の電気が全て消えた。スモークが足元に立ちこめ、否応なしに雰囲気が盛り上がる
《本イベントの主役、霧島翔子さんです!》
アナウンスと同時に更に幾筋ものスポットライトが壇上の一点のみを照らし出す
そこに佇んでいたのは純白のドレスをきた霧島さんだ。
雄二は唖然としている・・・あの顔は予想してなかった顔だね・・・
静まり返った会場から洩れ出た、誰のものともわからない台詞。
僕も今の霧島さんは綺麗だな・・・と思う
「・・・・雄二・・・・・」
「翔子、か・・・・・・?」
「・・・・・うん。・・・どう・・・・・?私、お嫁さんに見える?」
「ああ、大丈夫だ。少なくとも婿には見えない」
雄二らしい台詞だなー。でもそれだけ見惚れているみたいだ
「・・・・・雄二・・・・・」
「お、おい。翔子・・・・・・?」
「・・・・・嬉しい・・・・・」
目の前で少女が俯き、ブーケに顔を伏せる。
そして、それ以上は言葉を発することなく静かに震え出した
《ど、どうしたのでしょうか?花嫁が泣いているように見えますが・・・・・・?》
司会者も仕事を思い出して慌てて問いかけたのだ
「お、おい。どうした・・・・・?」
会場から静寂が消え、観客の間に少しずつざわめきが生まれ出す。 そんな中、彼女は小さな、だがはっきりと聞き取れる声で呟いた。
「・・・・・・ずっと夢だったから。」
涙混じりのかすれた声。
《夢、ですか?》
「・・・小さな頃からずっと・・・・・・夢だったから・・・・。私と雄二、2人で結婚式を挙げること・・・・・私が雄二のお嫁さんになること・・・・私1人だけじゃ、絶対に叶わない、小さな頃からの私の夢・・・・」
そんな夢が・・・
「・・・・・だから・・・・・本当に嬉しい・・・・・。他の誰でもなく、雄二と一緒にこうしていられることが・・・・」
会場のどこかでも鼻をすする音が聞こえる。観客のもらい泣きだろう・・・こんな一途な人はなかなか巡り会わないよ・・・ねぇ?雄二?
《どうやら嬉し泣きのようですね。花嫁は相当に一途な方のようです。さて、花婿はこの告白にどう応えるのでしょうか?》
「翔子。俺は―――――」
『あーあ、つまんなーい!』
雄二がなにか言おうとしたら常識の無い声が聞こえたのだ・・・
『マジつまんないこのイベントぉ~。人のノロケなんてどうでもいいからぁ、早く演出とか見せてくれな~い?』
『だよな~。お前らのことなんてどうでもいいっての』
・・・・は?今なんて言った?
会場が静まり返っていたおかげで発言者がはっきりとわかる。
『ってか、お嫁さんが夢ですって。オマエいくつだよ?なに?キャラ作り?ここのスタッフの脚本?バカみてぇ。ぶっちゃけキモいんだよ!』
『純愛ごっこでもやってんの?そんなもん観るために貴重な時間割いてるんじゃないんだケドぉ~。あのオンナ、マジでアタマおかしいんじゃない?ギャグにしか思えないんだケドぉ』
『そっか!コレってコントじゃねぇ?あんなキモい夢、ずっと持ってるヤツなんていねぇもんな!』
『え~っ!?コレってコントなのぉ?だとしたら、超ウケるんだケドぉ~!』
ガタッ!!
「おいっ!てめぇら!もういっぺん行ってみやがれ!!」
「あ、明久君!落ちついてっ!ステージが台無しになっちゃいます!」
明久もチンピラの発言に腹を立てていたようだ。
「人の夢を何だと思ってるの・・・・!!」
「落ち着いて、三上さん」
「でも・・・!」
隣の三上さんがキレていたのだ・・・宥めていると・・・
《は、花嫁さん?代表はどこに行ったの?》
チンピラどもと明久達が暴れている席から翔子の方に目を向ける。だが、この短い時間の間に霧島さんは壇上から姿を消していた
《霧島さん?霧島翔子さーんっ!皆さん、花嫁を捜して下さい!》
スタッフがドタバタと駆け出す。どうやらこのイベントは中止のようだ
雄二はスタッフに何か話していたが直ぐに動いて消えた・・・あれはキレているね・・・
さてと・・・
「三上さん・・・少し悪いけど席はずしていいかな?」
「何処にいくの?」
「少し・・・お話してくる」
この言葉で三上さんは何か分かったみたいだ・・・
「そう?なら・・・お話終わったら連絡お願いね?いってらしゃい」
「うん・・・いってくるね」
僕は三上さんとそうやり取りして外に出ていき・・・
「ムッツリーニ」
「・・・・・(スタッ)」
「例のものを・・・」
「・・・・ここにある(スッ)」
ゆっくりとケースを僕の方に向けて出すと、僕はそれを掴んだのだ
「もうひとつのものは・・・?」
「これを・・・・」
ムッツリーニは少し震えながら渡してくれた・・・ごめんね?だけど用意頼んでよかった・・・
「ムッツリーニ・・・ジャイアンに伝えといて?少しお話してくるから三上さんを頼むって」
「・・・・承知」
そういうとムッツリーニは忍者のように消えていったのだ・・・
さてと・・・少し・・・・
お話しないとね・・・・?
ここまで読んでいただいてありがとうございます!次回も宜しくお願いします