明久side
「雄二・・・一緒に勉強できて嬉しい」
「待て、翔子。当然のよう俺の隣で座って勉強するな。クラスの連中が靴を脱いで俺を狙っている」
っち!運のいいやつめ!・・・あぁ説明しないと
強化合宿二日目。今日の予定はAクラスとの合同学習となってる。学習内容は基本的に自由。質問があれば周囲や教師に聞いてもOK。要するに自習。その為、机の並びも生徒同士が向かい合うような形になっている。
「でも、何故自習なんだろう?授業はやらないのかな?」
「授業?そんなもんやるわけないだろ」
明久の会話を聞き付けて、雄二が霧島さんを置いて僕の隣にやって来た
「やらない?どうして?」
「明久、お前はAクラスと同じ授業を受けて内容が理解できるのか?」
「失礼な。雄二にはそうかもしれないけど、僕にとってはFクラスもAクラスも大差はないよ」
「それはどちらも理解してないじゃないか?」
うっ・・・それを言われると・・・
「・・・合宿の趣旨は、モチベーションの向上だから」
雄二を追って、霧島さんもやってきた。ポジションはきっちり雄二君の隣だ。
モチベーションの向上?
「翔子、それだけじゃコイツにはわからんだろ。つまり、AクラスはFクラスを見て『ああはなるまい』と、FクラスはAクラスを見て『ああなりたい』と考える。そういったメンタル面の強化を目的だから、授業はさして問題ではないということだ」
霧島さんの言葉の続きを雄二が説明してくれる。やっぱり息も会ってるし、この二人はお似合いだと思う・・・。僕がそんなことを考えていると・・・
「代表?私もここで勉強して良い?」
「あれ?確か・・・工藤さんだって?」
前のクラスでの戦争やプールでも会ったけど、そんなに話していなかったな
「そうだよ。キミは吉井君だったよね?久しぶり」
ニッと歯を見せて笑う工藤さん。ボーイッシュな雰囲気と相まって、その仕草はとても爽やかに見える。
「それじゃ、改めて自己紹介させてもらうね。Aクラスの工藤愛子です。趣味は水泳と音楽鑑賞で、スリーサイズは上から78・56・79、特技はパンチラで好きな食べ物はシュークリームだよー」
え、特技聞いてドキドキして止まらないぃぃ!
「あれ?どうしたのかな?」
「いや、別に工藤さんの特技を疑ってるわけじゃないんだ。ただ、その……」
「あっ、さては疑ってるね?なら、ここで披露してあげようか?」
本当に!?
近くでは雄二が霧島さんに目隠しされていた。あれ?何時もだったらもっと違う方法でやっていたのに?
「・・・明久。工藤愛子に騙されないように」
「あれ?ムッツリーニ、随分と冷静だね。僕ですらこんなにドキドキしているんだから、てっきり鼻血の海に沈んでいると思ったのに」
「・・・・やつはスパッツ穿いている・・・・!!」
え!?
「えぇ!?そんな!?工藤さん、僕を騙したね!?」
「あはは。バレちゃった。さすがはムッツリーニ君だね。まぁ、特技ってわけじゃないけど、最近凝っているのはコレかな?」
笑いながら工藤さんが取り出したのは小さな機械だった。なにこれ?
「・・・・小型録音機」
「うん。コレ、凄く面白いんだ。例えば──」
すると、工藤さんがなにか操作していた。何するんだろう?
――ピッ《工藤さん》《僕》《こんなにドキドキしているんだ》《やらない?》
「うわぁぁぁぁ!僕はこんなこと言ってないよ!?変なものを再生しないでよ!」
「ねっ?面白いでしょ?」
「ええ。最っっ高に面白いわ」
「・・・本当に、面白い台詞ですね」
「瑞希。ちょっとアレを取りに行くの手伝ってもらえる?」
「わかりました。アレですね?喜んでお手伝いします」
二人が学習室に出ていこうとすると・・・
「おーい、島田と姫路」
「「?」」
ジャイアンが二人を呼び止めたのだ。どうしたのだろう?
「(録音機でいちいち腹立てるな。あいつがまたキレたら昨日よりも怖いぞ?)」
「「!」」
「(お前らは小学生じゃないんだから落ち着け。だけど、あいつが流石にとんでもない発言したら止めないけど・・・今は抑えろ)」
「そ・・・そうね!瑞希、勉強しましょう!」
「そ、そうですね!美波ちゃん!剛田君、教えていただいてありがとうございます!」
「おう!」
二人はジャイアンに何か言われて席に戻ったのだ
あれ?そういえば、ジャイアンが昨日無理矢理外に追い出したの忘れてるのかな?でも、何か焦った声で動いていたけど・・・?
「おい、工藤。それは合成できるやつなのか?」
「うん。そうだよ!」
「(雄二、どうしたの?)」
「(今の手際を見ただろう。もしかすると、工藤が例の犯人かもしれないと思ってな)」
そうか、雄二はプロポーズを録音されていたんだっけ。さっきの行動を見る限り、彼女はこういったことに慣れているようだ。有力な犯人候補と言えるだろう
「(よし。明久、ヤツが犯人か確かめてくれ)」
「(うん。了解)」
工藤さんを正面に見据えて、
「工藤さん。君が……」
と、途中まで口にしてふと思う。『君が脅迫状を出した犯人なの?』と聞いてバカ正直に答えてくれる人はいるだろうか?。もしも工藤さんが犯人だとしたら、逆に警戒されてしまうだけだろう。それでは何の意味もない。
危ない危ない。これは質問の仕方を変えないと!
なら・・・
のび太side
僕とジャイアンは今皆と距離とって勉強している・・・何せ、昨日女子に怒ったから、昨日の今日で謝るのは何か嫌だなって思って距離とってる
ん?明久が工藤さんと何か話してるな?どうしたんだろ?
「ん?なに、吉井君?」
「あ~、え~と、その、君が──」
何を聞こうとしてるのだろう?ジャイアンも不思議そうに見ていた
「ボクが?」
「キミが──僕にお尻を見せてくれると嬉しいっ!」
変態だ!!!僕の友人が変態にになってしまった!!
「・・・・ぷっ。あははっ。吉井君はお尻が好きなの?それともボクの胸が小さいから気をつかってお尻にしてくれたのかな?」
明久のセクハラ発言を笑って流すなんて、器が大きい
「ご、誤解だよ!別に僕はお尻が好きってわけじゃなくて!」
「流石だな明久。録音機を目の前にそこまで言うとは」
「へ?」
すると工藤さんが謝りながら、録音機を操作した。
ピ、と電子音を上げて再生される明久の声
《僕にお尻を見せてくれると嬉しいっ!》
・・・・フォローできない・・・
「吉井君って、からかい甲斐があって面白いなぁ。ついつい苛めたくなっちゃうよ」
あれ?何かSスイッチみたいなのが入ったのかな?
明久が何か謝ってるが、片隅で姫路と島田がノロノロと動こうとしていたので、やりすぎのお仕置きは目をつぶらないが・・・
「ジャイアン、これを渡して?姫路と島田に」
「ハリゾン?」
「ハリセンだよ。これを二人に渡してあげて?ただし、一撃だけ許可ってね」
「いいのか?止めなくって」
「さっきのはフォローできないよ?」
「・・・・それもそうだな」
ジャイアンは納得して、ハリセンを持っていってくれた・・・悪いけど、僕から女子に頭下げにいくことは今はない・・・
だけど、三上さんには言い過ぎたかもしれない・・・彼女に謝りたいけど・・・ダメダメ!とにかく勉強しないと!
明久side
今僕は生命の危機です・・・石畳が目の前にあることに恐怖です・・・。あのあと、ムッリーニーがフォローしてくれると思ったらとんでもない事になった・・・
「アキ……。そんなに坂本のお尻がいいの……?ウチじゃダメなの……?」
「前からわかってたことですけど、そうはっきり言われるとショックです……」
「2人ともどうしてすぐに僕を同性愛者扱いするの!?僕にそんな趣味は──」
言い切る前に学習室のドアが開き、見覚えのある女の子がつかつかと教室の中に入ってきた。そしてを険しい目付きで睥睨して、声高に告げる
「同性愛者をバカにしないで下さいっ!」
あ、思い出した。清水さんだ
「み、美春?なんでここに?」
「お姉さまっ!美春はお姉さまに逢いたくて、Dクラスをこっそり抜け出してきちゃいましたった」
ドリルのようにロールした髪を左右に垂らしている清水さんは美波の姿を見るなり勢いよく飛びつく。熱烈抱擁の構えだ
「須川バリアー!!」
「け、汚らわしいです!腐った豚にも劣る抱き心地ですっ!」
盾にされた挙句口汚く罵倒された須川君は涙を堪えて上を向いていた
「お姉さまは酷いです……。美春はこんなにもお姉さまを愛しているというのに、こんな豚野郎をませるなんてあんまりです・・・」
端から見たら凄い告白だ・・・
すると・・・
「おい、うるさいぞ?」
あれ?ジャイアン?どうしたの?
「少しうるさいからな。俺らはいいけど、周りは勉強しているからな?」
「あっ、そうだった・・・ん?ジャイアン、その手元にもってるのはハリセン?」
「ん?あぁ、島田と姫路に、一撃だけ明久に頭叩くの見逃すってさ。それ以降は静かに勉強しょうだってさ」
誰がいったのか察したよ・・・
「君たち、少し静かにしてくれないかな?」
凛とした声が響き渡った。眼鏡を押し上げるクールな声の主は学年次席である久保利光のものだった
「あっ、ごめん」
「吉井君か。Fクラスは危険人物が多くて困る。それと、同性愛者を馬鹿にする発言はどうかと思う。彼らは別に異常者ではなく、個人的思考が世間一般と少し食い違っているだけの普通の人たちなのだから」
「え?あ、うん。そうだね」
「ほら美春。くだらないことで騒いでないで自分の学習室に戻りなさい」
「くだらなくなんかありません!美春はお姉さまを愛しているんです!性別なんて関係ありません!お姉さま、美春はお姉さまのことが本当に──」
「はいはい。ウチにその趣味はないからね?」
美波が追い出そうとすると、清水さんが抵抗していたのだ。すると、清水さんの足に美波の筆箱が直撃して飛んだのだ。
すると・・・・
ゴッ
あっ・・・・
当たったのはのび太だ。しかも後頭部に辺り机にひれ伏していた・・・
すると、ゆっくりと立ち上がったのだ
「・・・」
何故だろう・・・ゆっくりと歩いているだけなのに・・・のび太が怖く見えるのは何故だろう?美波と姫路さんが抱き合いながら震えていたし、霧島さんも若干震えていた。あっ、これ怒ってるパターンだ
「ねぇ?」
「「「「「「(ビクッ!)」」」」」」
「この筆箱・・・頭に当たったけど・・・誰がやったのかな?」
すると、僕らは清水さんに指差したのだ。紛れもなく、清水さんが暴れたから・・・
「そっか・・・清水さん?少し外出ようか?」
「何故で私が豚の言うこと聞かないといけないのですか!?」
「外・・・出ようか?」
今ののび太は笑っているけど・・・目が笑ってない・・・!?
「は・・・はい」
ようやく、清水さんものび太が怒ってるの気づいたが・・・もう遅い。引きずられながら、外につれていれて・・・
『イヤァァァァァァァ!!』
「「「「「「「(ガタガタ)」」」」」」」
清水さんの悲鳴を聞き、昨日怒られていた女子全員が震えていた・・・・あの清水さんが・・・悲鳴をあげた?!
「ふぅ・・・さっ?勉強しょうか?」
「「「「「は・・・はい」」」」」
この場にいた全員が改めて再確認したのだ。穏やかなのび太を怒らせるなっと・・・・
ここまで読んでいただいてありがとうございます!次回もよろしくお願いします!