何?この妙な雰囲気は・・・?教室の中は今までにないくらい静まり返っている。いつもの騒がしいFクラスが嘘のようだ。そして、一言も無駄口を叩かないクラスメイト達なのだが、クラス中から殺気を感じる・・・
原因は間違いなく・・・
「・・・・ん?」
「・・・!」
あの二人だ。明久と目が合い、慌てて赤い顔を伏せる島田と同じように顔を赤くする明久。見ていて初々しいけど・・・・このクラスはFクラスだ・・・ただですむと思えない
『では須川君、この場合3molのアンモニアを得る為に必要な薬品はなんですか?』
『塩酸を吉井の目に流し込みます!』
『違います、それでは、朝倉君』
『塩酸を吉井の鼻に流します!』
『流し込む場所が違うという意味ではありません、それでは有働君!』
『濃硫酸を吉井の目と鼻に流し込みます』
『『『それだ!!』』』
『それだ、ではありません。それと答えるときは吉井君の方ではなく先生の方を見るように』
高橋先生、大変だね・・・・
そんないつもと違う空気の中、一時間目の終了を告げるチャイムが鳴り響く。
「・・・・今日の授業はここまでにします」
高橋先生少しいじけて、溜め息をついて教室から出ていった。申し訳ない・・・・・
そして、休み時間になり・・・・
殺意の籠められた視線が飛び交う中、島田が明久のところに行き、明久の隣に座って二人で話し出す。今日は授業にならないし・・・よし!久しぶりに寝よう!
「お姉さまっ!何をしているんですか!?そんな豚野郎に密着して!?」
薄れていく意識の中、美春の声が響く。関係ない・・・・関係ない・・・zzz
「──だって、ウチはアキと付き合っているんだから」
「うそ!?!!!」
薄れていた意識が一気に覚醒したのだ。それと同時に・・
「畳返しっ!!」
シュカカカカッ
「「「──チッ」」」
後ろからは衝撃的な告白と同時に大量のカッターが畳に刺さる音、そして教室中からの舌打ちが聞こえた
思わず衝撃で目が覚めた・・・
ガラッ
そんな騒動のなかに入ってきたのは・・・・
「さぁ、授業を始めるぞ、今日は遠藤先生が別件で外しているので俺がビシビシ──ん?・・・また清水か?授業が始まるから自分の教室に戻るように」
西村先生が入ってきたのだ。ってか清水さん来ていたんだ
「きょ、今日は先週までとは違って特に大事な用なんです!西村先生、今だけは美春を見逃して下さい!」
「特に大事な用?それはどんな用だ?まさか先週みたいに『邪魔者のいない教室でお姉さまと一緒に授業を受けたいんです』とかじゃないだろうな?」
あー、僕らが西村先生の元での補習の時にそういうのあったとかないとか聞いていたが・・・・
「いいえっ!今日は『この教室の男子全員を殲滅する』という大事な──」
「今後この教室への立ち入りを禁じる」
ピシャン
『お、お姉さまっ!まだお話が!せめてその豚野郎から席を離して貞操を──』
ドンドンドンと教室の扉を叩く清水さん。休み時間なら留めないけど・・・
「清水さん、今は引いた方がいいと思うよ?じゃないと西村先生の生徒指導受けないとダメになるよ?」
僕がそう言うと、扉を叩く音がパタリと止んだ。
『くぅ・・・お兄様に免じて、今は引きます・・・!ですが!豚野郎!!覚えておきなさい!!そして、お姉様がその気なら私も考えがあります・・・!』
覗き窓越しに明久を睨みつけながら不穏当な言葉を残すと、それ以上は抗うこともなく、清水さんは僕らの教室を後にした。
「行ったか・・・さっ、授業を始める!今日は教科書のP86から始めるぞ?」
授業が始まり西村先生が説明しながら黒板に文法と説明を書いていく。しかし、誰も黒板を向いていない
「"I wish I were a bird"これは仮定法過去という特殊な過去形で──」
皆の視線の先には明久と島田の姿があり、二人は互いの髪を弄りあっていた。
『『『・・・』』』
あれ?なんだか嫌な予感が・・・・
殺気が徐々に強まり・・・
そして・・・
『『『もう我慢ならねぇ!!!』』』
やっぱり爆発した―!!
『さっきから見てりゃあ、これ見よがしにイチャイチャしやがって!』
『殺す。マジ殺す。絶対的に殺す。魂まで殺す』
『・・・お姉さまの髪に触るなんて・・・八つ裂きにしても尚、赦されません・・・・!』
『入口を固めろ!ここで確実にしとめるぞ!』
全員が一斉に投擲モーションに入る。・・ん?清水さん?!何でいるの!?
そんな動揺をよそに清水さんは指示だしていた
「お姉さま!早くこちらに避難してください!そんな豚野郎と一緒にいると危険です!」
「清水さんいつの間に!?しかも皆どうして清水さんの言うことを聞いてちゃぶ台まで構えてるの!?クラスメイトを大事にしようよ!」
明久?普段の君の行いに大事にしてるのか疑問だけど・・・?
「美春、まだウチのことを諦めてくれないの?こんなことを続けても、お互い辛いだけなのに・・」
「お姉さまはそこの豚野郎に騙されているだけなんです!お姉さまのことを本当に想っているのはこの美春以外──」
あっちはあっちで重たい話しているし・・・収束つかないそ?このままでは・・
すると・・・
「うるさいぞ!貴様ら!」
西村先生の一喝で全員が静まったのだ。さすがだ・・・
「清水。授業はどうした?」
「そ、それどころじゃありません・・・・!お姉さまが」
「清水」
低い声で西村先生が静かに名前を呼ぶと、清水さんはそれだけで押し黙った
「二度目の警告だ。おとなしく自分の教室に戻れ。それと、もう一度言うがこの教室への出入りを禁止する。わかったな?」
「・・・・・わかりました」
不承不承といった体で美春が教室から出て行く。その時、明久を親の敵のように睨みつけていった
「お前らも授業中に遊ぶんじゃない。そういう事は休み時間にやれ」
こうして、この場は鉄人のおかげで収まった──かのように思えた。清水さん・・・まさかと思うけど・・・・
「ジャイアン・・・」
「ん?今考えること多分同じかもな」
うん・・・
「「絶対に嫌な予感しかない・・・・はぁ・・」」
僕らのため息とはよそに授業は進められたのだ・・・
ここまで読んでいただきありがとうございます!次回もよろしくお願いします