摂氏0℃   作:四月朔日澪

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昨日どこかで家の鍵をなくしてしまった四月朔日澪です。ヤンデレ娘が盗んだなら許しますが世の中そんなことはないですからね...
では高校編どうぞ!


麻知ちゃんが掌握したようです

朝の連絡事項、そして午前の授業が流れるように進んでいった。よく恋愛小説みたいなあの手のものではボケーっと窓の外を見るなんてシーンをよく見るが、そんなことはなく普通に授業に取り組めるものなんだとその身に置かれて実感した..いや、俺がひと思いにふけることを拒絶しているだけかもしれない。

 

「...こうして、徳川慶喜は二条城で大政奉還を諸大名に号令したわけだ。今日はここまで。」

 

『起立。ありがとうございました。』

 

日本史の授業が終わり、やっと昼休みに入る。学校の昼休みというのは普段の生活よりも少し遅いものだ。大抵正午を余裕で過ぎたあとで集中力など続くわけがないと思うのだが..今の時間きっと悠々と飯を食べている.霞が関の官僚共にもぜひこの正午過ぎに昼休みをとっていただきたいものだ。どれだけ辛いものか。

 バッグの中を開け、弁当箱を取り出そうとした。しかし、そこには弁当箱はなかった。そういえば今日母さんから受け取らなかったな。さて、どうしようか....購買でパンでも買うか。

 

「どうしたの?山城」

 

困っていると笹島が声をかけてきた。

 

「いや、どうも弁当を忘れてきたみたいで」

 

「そう..なんだ。それじゃあさ、私の少し食べる?」

 

笹島は弁当箱を開けスッと差し出してきた。色とりどりのきれいなお弁当だった。

 

「え?いや、購買で何か買うよ...」

 

「その必要はないよ。コウくん」

 

「!麻知」

 

笹島と話していると、麻知が教室にいた。何故か俺の弁当箱を持っていた。

 

「ごめんね渡しそびれちゃって。おばさまと相談して今日から私がコウくんのお弁当を作ることにしたんだ。」

 

「そうだったのか。安請け合いはいいけど断らないと何でもさせるぞ。母さんは」

 

「ううん、私が頼んでやってもらった事なんだから。笹島さんごめんね迷惑かけて。ほらコウくん行こ♪」

 

「ごめんな笹島。そういうことらしいから。」

 

「....いいよ別に。よかったね山城」

 

何か間を感じたが、そのまま麻知にされるまま昼食を食べに行く。

 

「..チッあの糞女本当に邪魔..ただの幼馴染のくせに」

 

笹島は爪を噛みながら麻知の後ろ姿を睨みつけていた。

 

************

 

校舎間の渡り廊下を抜け、麻知に連れて来られた場所は「情報処理室」と書かれた部屋であった。

 

「ここは?」

 

「情報処理部の部室だよ。私幽霊部員だけど部長で鍵を持ってるんだ。ここなら誰にも邪魔…茶化されずに済むでしょ?」

 

「確かに茶化されるのは間違いないな…明日からは家で受け取ればこんな事しなくて済むだろうけどな」

 

「ふ〜んそんな事言うんだ。可愛い女の子とご飯食べられるのにぃ〜明日から作ってあげないぞ?」

 

「か、可愛いって自分で言うか?」

 

「へへっ冗談だよ。でも…もしコウくんが迷惑じゃないなら…これからも、その…一緒に食べ…ない?」

 

「べ、別にいいけど」

 

そう答えると、麻知はパァっと目を輝かせ

 

「じゃあ、また明日もここで食べよっ。とりあえず入って入って」

 

背中を押されて部屋に入る。部屋はコンピュータと机、椅子、そして専門書が入った本棚くらいしかない。やはり幽霊というだけあって埃かぶっていた。しかし、なぜか机とコンピュータだけは綺麗であった。先に掃除していたのだろうか。

パイプ椅子に向かい合って座り昼食をとる。弁当箱を開けると中は茶色いパラダイスであった。こうも女子というものは彩りやらバランスなどというものを気にしがちであるが、男子からすればゴミも同然の概念である。思春期の男など飯と唐揚げがあれば生きていける生物である。そう考えると麻知の作ったお弁当は素晴らしい出来であった。唐揚げのほか、コロッケやハンバーグなど男子が好きなおかずが盛りだくさんであった。また、無駄にご飯に味なり、ちょっと可愛く海苔やそぼろを入れてしまいおかずがあるのに蛇足になってしまうご飯も見事に白飯と男子の胃袋を把握しているかのような仕上がりに山城は驚いた。

 

「すごいおいしそうじゃん…」

 

「喜んでもらってよかった。おばさまに少し教えてもらったんだ。」

 

あぁだからか。と山城は思った。茶色い弁当というのは母親の弁当に多いものである。しかしながらそれは試行錯誤を積んだ結果行き着く境地で麻知が1人でこれを作ったようには思えなかったが、謎が解けた。唐揚げを一口食べ、すかさず白飯をかきこむ。これがいかに幸せか…

 

「美味しい…?」

 

「すっごく美味しい!」

 

「そう…よかった!自信作だったんだ。」

 

「美味しいよ。毎日でも食べたいよ。」

 

「コウくんが望むなら休みでも作るよ。」

 

「いや、そこまでは…」

 

「それはお嫁さんになってからだねっ」

 

「いい旦那さんに出会えるといいな」

 

「コウくん以外のお嫁さんになるつもりなんてない…」

 

「ムグ?何か言ったか?」

 

「ううん。なんでもないよっ!」

 

*********

 

休日である。テレビを見るしかない休日だがあの頃とひとつ違うものがある。

 

「…ご飯」

 

「ん」

 

コトッ…

休日くらいゆっくりすればいいのに。またしっかりとしたものを作ったようだ。麻知が隣に座る今やもう普通の事だ。

 

「…美味しいよ」

 

「…!きゅ、急にどうしたの…褒めても何も出ない…」

 

「いや、ただなんというか…そう言いたい気分でな」

 

「…そう」

 

俯く麻知はなぜか嬉しそうだった。




閲覧ありがとうございました。
さて、飯にしようかな…
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