摂氏0℃   作:四月朔日澪

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お久しぶりです。近所の道端に鍵が落ちてました...大家さんには平謝りしました。
それではどうぞ。


初対決

 えへへ...コウくんが私のお弁当を美味しいって食べてくれた...うれしいな。毎日でも作りたい気分だけどそういうわけにもいかないもんね。

 午後から麻知はそんなことを考えっぱなしであった。放課後になっても感傷に浸っていたのであった。カバンを整理して一緒に山城と帰ろうと考えていたが、

 

「北方さん」

「なんですか?」

クラスメイトの女子が話しかけてきた。一度も会話を交わしたことのない子であった。

 

「ちょっと付き合って欲しいんだけど」

 

「忙しいので明日にしてもらっていいですか?」

 

「いいから来て」

 

私の意思は無視か。まぁいいか...一体だれが私に用があるのだろうか。コウくんと一緒に帰る機会を邪魔したくらいには意味のある要件であればいいが...ついていくと人気のないピロティに連れてこられた。どうも明るい相談事ではなさそうだ。いや、そもそもそんなものは期待もしていなかったのだが。

 

「みのり、連れてきたよ。」

 

「ありがとう」

 

あの時の女か...朝私の許可なくコウくんと話していたあの女...お昼に勝手に餌付けしようとしていた泥棒猫..私に何の用だろうか?くだらない理由だったらただではおかない...なぜなら放課後の貴重な時間すら邪魔をした時点でこの女を既に嫌っているからだ。

 

「それで何?私、忙しいんだけど」

不機嫌であることを示すため不遜な態度で接した。しかし、笹島は意に介さず続けた。

 

「あのさ北方さん、山城のこと好き?」

 

「だったら何?」

 

「いいから。答えなよ」

 

「好きだよ。誰よりも好き」

 

「...やっぱりそうなんだ。.....私も好きなの..」

 

は?何を言ってるんだこの女...コウくんのことが好き...?ふざけるな!たかが高校で数年いたくらいでコウくんの何が分かるのよ...コウくんを愛していいのは私だけ...私だけなのに...あの女も今目の前にいるこの女も本当×したくなる...

 

「だからさ、諦めてくれるかな?山城と付き合うのは私だから」

 

「何を言ってるの?諦めるわけないでしょ?」

 

「あんまり手荒なことはしたくないんだけどな...どうなっても知らないよ?」

 

この女、思った通り汚いドブネズミね。私が諦めなければ、力で脅そうってわけか...私がそんなもので屈すると思われてるなんてなめられたものね...

 ここでいう力とは学校特有の絶対権力のことを指す。女の世界というのは怖いもので力あるものが恋を制すといっても過言ではない。もしそれを脅かすものがいればたとえ蟻程度の存在でもいじめや暴力によって潰しにかかるわけである。その体制に異を唱えるものも排除されるため、こうした女性社会は未だに跋扈しているわけである。

 

「ご勝手にすれば?それにコウくんはもう付き合ってるよ」

強がる訳ではないが、脅しには屈しないことを伝えた。

 

「幼馴染なのに知らないの?山城は彼女と別れたんだって。..ずっと待ってた。次は私だってずっと思ってた..だから北方さんは私の邪魔をしないでほしいの」

 

「そんなのあなたよりずっと前から知ってる...だから、私がその後コウくんの彼女になったの。デートだってした。」

 

「え?でも山城は自分のこと一人身だって...」

この女、コウくんのこと何もわかってないんだな。ま、コウくんのことを一番知ってるのは私なんだけどね。

 

「あれはコウくんが思い込んでるだけ..コウくんは既に私のものなの..あの女がコウくんの彼女である前から私のもの...あの雌犬が勝手にすり寄ってきて私からコウくんを奪っただけ..だから取り戻した。それだけ」

 

「何をいってんのあんた...山城は別にあんたのものじゃ...」

 

「うるさい!高校からコウくんのことが好きになった分際で何がわかるっていうの...コウくんと付き合いが一番長い私がコウくんのこと一番好きに決まってるでしょ。お前みたいな汚い手を使う奴にコウくんは渡さない...もう誰にもコウくんは渡さないんだから...っふふふあはははははは大丈夫だよ。コウくん...コウくんは私が一生愛してあげるからね」

 

「く、狂ってる..北方さんあなた狂ってるよ」

 

「恋する乙女はみんな狂うものなんだよ?笹島さん?そういうことだから。ね?私とコウくんの邪魔をしたら次はただじゃおかないからね?」

 

私はピロティを後にした。この女と付き合ってるのが時間の無駄だからだ。コウくんもう家着いちゃったかな..ごめんね明日は一緒に帰ろうね..

 

「....ちっあのゴミ...いいわ。私に歯向かったらどうなるか思い知らせてあげる...流石にあの女も諦めるしかないよね」

 

笹島は黒い微笑を浮かべた。

 

**************

 

「...遅いな麻知」

 

正門前で私は麻知を待っていた。お弁当をご馳走になったので礼に喫茶店にでも誘おうと思ったのだが、なかなか来ない。教室にも行ったのだが女子とどこかに行ったきり帰ってきていないということらしい。先に帰ってしまったのだろうか..いや、これまでずっと帰り道を歩いてきた仲である。麻知が本当に用事がある時は必ず連絡をするはずである...少し待ってみよう。

 

「あ、あれ?コウくん!?まだいたの?!」

「まだいたって...待っていたのにその言い草はないだろ」

校舎から麻知が出てきて第一声は驚嘆であった。

 

「え?待っててくれたの...えへへごめんね」

 

「麻知にしては珍しい。いつもはメールなりで遅れるとかいうのにさ」

 

「んーちょっとね。少し用事があってさ...それよりぃ待ってたってことは私と帰りたかったんだぁへぇ私がいないと寂しいのかなぁ?」

 

「そ、そうだよ」

 

「....!!」

いつもからかわれている仕返しに正直に答えると麻知はびっくりした様子であった。

 

「麻知がいないとさぁ...やっぱ帰るとき物寂しいってーか..何か足りねーというか..」

 

「そ、そう。それはごめんね。連絡しなくて」

俺の真意が分かると急にしゅんとなり、謝ってきた。それはそれで扱いづらい。

 

「いいよ。今日はお弁当を作ってもらったお礼にパフェでもおごるよ」

 

「え?いいの!じゃあ...『純』のパフェ食べに行きたい!」

喫茶純のパフェはうちの高校では有名なスイーツである。フルーツをふんだんに使っており、女子に人気だそうだ。

 

「ああいいぞ。行こうか」

 

「うんっ」

 

その時、麻知は最高潮にうれしかった。明日からの仕打ちも知らずに...




閲覧ありがとうございました。
女性社会は怖いですよぉ...まぁ私の知ってる限りの実話...ですが。信じるか信じないかはあなた次第!

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