ではどうぞ。
「滉一ぃ起きなさーい!」
まぁどうせ麻知が来たのだろう。起こされるまで寝ているとしよう。
「ほら起きなさい!」
部屋にまで上がってきた。あの面倒くさがりな母が...
「珍しいな。母さんがおこしに来るなんて。」
「外で麻知ちゃんじゃない女の子が待ってるわよ」
「えっ!?」
いったい誰だ?急いで玄関に向かうと、なんと笹島みのりであった。
「おはよう!山城」
「どうした笹島?うちまで来て..ってかなんでうち知ってるんだ?」
「実は北方さんに代わりに行って欲しいって頼まれて一緒に来たの」
「麻知が...?」
まぁでもうちを知っているのは麻知くらいだからわかるが、俺は麻知に心配されるほどの寝坊助ということなのだろうか...とても恥ずかしい。しかし、麻知と笹島って仲が良かったんだな。意外な組み合わせである。
「わざわざありがとう。すぐ支度するから一緒に行こうか」
「うん!待ってるね」
「麻知ちゃんを差し置いて女の子連れ込むなんてあんたも意外とやるわね~」
母はうりうり〜と肘を当ててくる。うざい...
「茶化すなよ。ただ麻知が来れないから代わりに来たって言ってるじゃないか」
「......あぁそうだったわね。朝ごはん出来てるから早く食べてしまいなさい」
そういうと母は笹島と何か話していた。早々に支度を済ませ笹島と一緒に登校した。クラスで話すような他愛のない会話をしていると正門で女子と歩く麻知を見かけた。俺に気づいたようだが近づいても来ない。普段なら会話の最中でも俺のところにくるのだが...なんかナルシシストみたいなこと考えてしまった。
まぁ挨拶くらいはするか。
「麻知、おはよう」
「おはよう。コウくん」
「急に笹島が来て驚いたよ。先に言ってくれれば良かったのに」
「.......」
「麻知?」
麻知はなんだか難しい顔をしていたが、しばらくすると笑顔に戻った。
「ううん。ちょっとサプライズしたくてねっコウくんも『たまには』他の女の子と登校できてうれしかったでしょ」
「まぁ新鮮だったな」
なんか間があったように思えた。あと、なんで「たまには」を強調したのか...今日いけなかったのを申し訳なく思ってるのだろうか。別に気にしてないが
「行こう、北方さん」
「じゃあ、またねコウくん」
麻知は一緒にいた女子に引かれ、学校へと先に向かっていた。
「あぁ」
「.....あのさ、山城」
「なんだ?」
笹島は聞きづらくしていた。
「北方さんが来るのと私が来るのどっちがうれしい?」
「唐突だな...どっちがなんてものはないよ。わざわざ家まで来てもらうのはいつも申し訳なく思ってるしな麻知には毎度起こしてもらってるし」
「へぇ..じゃあさ...これからも山城の家に迎えに来ていいかな..?」
「別に構わないけど」
「やった!明日も待ってるね」
「笹島が来るなら早起きしないとなぁ..」
教室に入る時に神原や男子にだいぶ茶化された。一緒に入ってきたのだから仕方ないのだが..笹島は心なしかまんざらでもないというように見えた。
そういえば、弁当はどうすればいいのか..母はもちろん作るわけはなくまた麻知と受け取りに行かないといけないのか...まぁどうせ一緒に食べるからいいか。授業を受けていればあっという間にお昼になり、弁当を麻知に会うため隣のクラスへ行く。
「麻知」
「あ、コウくん」
呼びかけると麻知はこちらに気づき側にやってきた。
「行こうか」
「ごめん...コウくん、お弁当作るの忘れちゃって」
「え?どうしよっかなぁ」
「本当にごめんね!」
「いや、麻知には頼りっきりのところがあったんだ。たまにはこういうことがあってもいいよ。購買でも行くか」
「うん...そうしようか。」
麻知を見ていると凄く気の毒に思えた。麻知だって人間である。そういう失敗があっても仕方ない。そもそも弁当を人の娘に作らせている母に問題があるのだ。帰ったら説教だな...
購買に向かおうとすると笹島がこっちにやってきた。
「どこに行くの?山城」
「購買にな」
「珍しいね。お弁当じゃなかったっけ」
「たまにはこんなこともあるさ」
「じゃあさ、私の弁当食べない?実は作って来たんだよね...山城に食べて貰いたくて...」
そう言うと、可愛らしい巾着袋を差し出してきた。
「そうなのか?」
「一緒に食べよっ山城」
「その前に麻知と購買まで付き合うよ」
「...あ、コウくんそういえば私部室でプログラミングの続きをしないといけないんだった。ごめんね。笹島さんのところに行ってあげて」
「そうか。じゃあ、また放課後な」
「あ、放課後もちょっと難しいかも。ごめんねコウくん」
情報処理部は幽霊部員とか言っていたはずだが、たとえ大したことをしていない部でも活動をある程度しないと部として認められないのだろうか...帰宅部には縁遠い話である。
教室に戻り、笹島が作った弁当を頬張る。麻知のにも負けず劣らず美味しい。
「おいしい?」
「あぁおいしいよ」
「それはよかった。明日も一緒に食べよ?」
「え?いや、麻知といつも食べていて今日は珍しく作るのを忘れたらしいんだけどいつもは俺の分も作ってきてくれるんだ。」
「でも、北方さんとても忙しそうだし明日もこんな感じになるんじゃない?だから私が迎えを頼まれたんだし」
「そうなのか」
ずっとなんで?と思っていたがそういうことか。なら麻知もそういえばいいのにと思ったがそれも言えないくらい切羽詰まっているのかもしれない。朝一緒に歩いていた女子は情報処理部の子たちだったんだろうな...
「じゃあ、頼むよ」
「うん♪明日も楽しみにしてよね!」
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「.....っふっははははははははせいぜいコウくんとの短い時間を楽しんで..その後じっくり壊してアゲル...」
人気のない部室棟には麻知の笑い声だけが響いた。
ありがとうございました。麻知ちゃんは何を考えてるのでしょうね...