摂氏0℃   作:四月朔日澪

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ハーメルンデビュー作ですが、皆さん閲覧感謝です!手慰み程度のものしか書けませんが、お付き合いいただければと思います。それではどうぞ。


休日

 日曜のニュース番組というのは平日時間のない中見るものより面白い。一週間という猶予を与えられた上で政治部が思慮を深めた答えを明示しているからだ。これは私の考えだが、平日の朝のニュースは淡々とあった出来事を報告するためにあって、お昼のワイドショーや日曜の報道番組は深く掘り下げて言論で社会に切り込むためにあるのだろう。

 

「...邪魔」

 

テレビの前で寝そべりながらそんなことを考えていると、洗濯かごを持った私の妻・麻知が後ろにいた。起き上がるとやれやれといった感じで外へ洗濯物を干しに行った。まぁ、世の私と同じ夫婦なら休日に邪魔者扱いされるのは詮無いことである。野口も今頃奥さんに似た扱いを受けていることだろう。

 

「もういい。終わった」

 

どうやら干し終わったようで、私はまた横になった。すると麻知がそばに座ってきた。

 

「膝枕..」

 

「え?別にゆっくりしてくれれば」

 

「...膝枕」

 

「じゃ、じゃあお願いするよ。」

 

二回目に拒否をしてこれまでよかった試しがないので麻知の膝に頭をのせる。この歳にもなって膝枕とは恥ずかしいものだ。この状態で無言というのは拷問に近いので少し話をかけてみた。

 

「な、なぁ見たい番組があれば他のに変えてもいいぞ。」

 

「いい。」

 

「...そう」

 

話がつながらない。これが冷めた夫婦への罰というものか..思えば言葉のキャッチボールなんてここ数年してなかったからな...

 

「ふ、普段どういうのを見るんだ?ミヤギ屋とか?」

 

「テレビはつけない.......あなたの行動を把握しないといけないから..」

 

最後の方に何か言っていたが、さしずめ家事やご近所付き合いに忙しいところなんだろう。そんなこんなでお昼になり、飯も早々に食べ終え書斎で本を読むことにした。今や電子書籍というものもあるが、やはり紙の本に慣れ親しんだ世代なので抵抗がある。本棚にマンガ以外の本が沢山入っていた父の書斎がこどもの頃かっこよく感じた。父の記憶はあまり無いが。

 

「とはいえ、肥やしになってもいるな...」

 

本が増えすぎてそろそろ処分しなければ、と思ってはいるが今日のような余暇があってもそのままにしている。汗牛充棟といえば聞こえはいいが、もはや不用品の山で書庫会社に頼むしかないかと思っているところだ。

 

カチャッ...

コトッ

バタン

 

麻知はコーヒーを机に置くとそのまま下へ下りていった。ありがたいと思いつつ、日曜日くらいゆっくりしていればいいのにと感じた。

 

「散歩でもするか。」

 

私がいると麻知がゆっくりできないだろうと、少し近くをぶらぶらしようかと思う。ジャージに着替え、タオルを持ち階段を下りた。そういえば、前に買ったランニングシューズはどこへ行っただろうか。一度朝ランニングをやっていたこともあったが、続かなかったのを思い出す。心なしか麻知の機嫌もあの頃少し悪かった気がする。

 いざ出かけようとしたとき、ジャージの裾を引っ張られた。

 

「どこへ行くの...?」

 

「近くの公園まで散歩に..」

 

「...私も行く。」

これでは本末転倒だ、と少し感じた。

 

「あ、いや....」

 

「不都合でもある?」

 

「...ないけど。」

 

「...鳥籠から逃げる鳥は追いかけなきゃ...」

 

「え?」

 

「..準備する。待ってて」

 

最後に何か言っていた気がするが、なんだったのだろうか。しばらくして準備を終えた麻知がやってきた。

 

「...歩くの早い」

 

「あ、ごめん」

 

旅行もしないので久しぶりに麻知と歩くが、彼女のペースをすっかり忘れていた。基本男は女性より歩くのが速いので仲のいいカップルや熟年夫婦でない限り距離が出てしまうのはよくあることだろう。少し麻知が追いつくのを待って同じペースで歩くことにした。

 

「...手...繋ごう?」

 

「あ、あぁ」

 

なんか今日の麻知は珍しく積極的だなぁ...

 

「あなた...」

 

「ん?」

 

「あなたが手繋いでくれるならこれからも散歩して...いい」

 

「え、まぁ体を動かすことも少ないしいいかもな」

 

散歩は麻知への気遣いだったのだが、麻知がそれで気分転換になるのならそれでいいか...




閲覧ありがとうございました。
私も書斎が欲しいです。父は本を読まない人間なので実家にはないのですが..憧れがあります。特に好きなシーンは会話もなくコーヒーを置くシーンです。時に言葉は軽薄。言葉がないからこそ麻知の底知れぬ愛が伝わったかと思います。
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