摂氏0℃   作:四月朔日澪

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高校編最終回です。

今回はサボっていたの少し長めに...あと病みます。


もうダメだよ?

 フィールドオブビューの「突然」を聞いていた。

 

『突然君からの手紙あの日から途切れた君の声...』

 

Vo.の浅岡さんの澄んだ声とともに読み上げられる歌詞。今の俺を現わしているようだった。今日の夕方差し出されていた手紙で人生初めての失恋を経験した。男の失恋というのは笹島みたいな女子のように涙は流れなかった。また深い悲しみに追われるというものでもなかった。ただただ喪失感に見舞われるだけだ。そう思うと、これまでの別れというのは失恋でも何でもなかったのだなと思う。すみれもまた離れていても俺のことを想っていたのにそれを裏切るように見える行動をした俺が悪いのだ仕方がない。「突然」では失恋をしても彼女を想い続けるという詩であるが、俺にすみれを想い続ける資格などない。

 

「寝よ」

 

寝れば忘れられるだろうという楽観的思考を胸に俺は寝床についた

 

***********

 

「滉一!麻知ちゃんを迎えに行くんでしょ!早く起きなさい」

 

母は呆れ気味に山城を起こす。

 

「...そうだ。麻知を迎えに行かないと」

 

「はぁ..もしかして忘れてたの?」

 

「いや、ちょっと昨日色々あってな。」

 

「そう。まぁ糞でもないことだろうけど」

 

「糞でもないって...」

 

「ほら、行った行った麻知ちゃんが待ってるわよ」

 

母はシッシッと手をヒラヒラさせた。

 俺は飯は?と聞いたが、母は「麻知ちゃんに用意してもらえばいいでしょ」と何を聞いているんだ、といいたげに答えた。ご近所の娘さんに家事をやらせて、この母は恥ずかしくないのだろうか。制服に着替え、ニューバランスのシューズを履く。

 

「じゃあ、行ってくるから」

「いってらっしゃい.....

 

バタンッ

 

...あの子、麻知ちゃんに好かれてるのわかってないのかしら?本当親子同士鈍感ね....ね、あなた」

 

母は玄関にある写真立てを見つめ言った。

滉一は麻知の家に向かった。麻知の家に着くと、既に麻知は制服に着替え、準備万端といった感じで家の前で待っていた。

 

「ごめん。麻知寝坊しちゃって」

 

「いいよ。コウくんが来てくれるなんて初めてだね」

 

「いつも麻知に起こしてもらってたからな」

 

「ふーんじゃあ、私が来れなかったときはどうしてたの..?」

 

「そのときはなんとか..頑張って起きて...麻知だったら安心して寝ていられるから寝坊できるけど笹島相手じゃ出来なくてさ....いや、そのこれからはちゃんと起きるよ」

 

山城は慌てて弁明するが麻知は気にする素振りすらしなかった。

 

「ううん。嬉しい…もっと私に頼っていいんだよコウくん?コウくんが寝坊できるのは私のこと信頼してくれてるからなんだよね...えへへ、明日からまた起こしに行くね。」

 

「えっと、その...お願いします?」

 

「はい♪お願いされました♪朝ごはん食べてないよね?作ってあるから食べて」

 

「母さんがごめんな。全く...」

 

「気にしてないよ。それにおばさまは私のこと考えてくださっているし..」

 

「麻知がいいならいいけど....でもまぁ、麻知ならいいお嫁さんになれるよ。俺が保証する。」

 

「...//そ、そんなお嫁さんにしたいなんて...コウくん大胆だよ...//」

 

麻知は顔を赤くしながら何かもごもご言っていたが俺への朝食作りとか弁当作りが苦でないならいいか。

山城と麻知は朝食を済ませ、学校へと向かった。麻知はしばらく学校へ来ていなかったのでクラスでだいぶ心配されていた。昨日のことでけがについて問われるのではないかと不安であったが、幸いにも顔には傷一つついてなく、腕や足のあざも麻知がうまく隠していたことから特に騒がれることはなかった。ちなみに両親にも笹島にされた仕打ちのことは伝えていないようだ。麻知のお父さんは市議さんなので何かしら対処してくれるはずだろうに。まぁ麻知の家は両親が家にいることは少ないからまず打ち明ける機会もなかったのだろう。

そんな俺は笹島とは口を聞いていない。昨日振ったのもあるが、やはり麻知にしたことは許せない。笹島は俺が麻知にそのことを聞いたのを知っているのかは知らないがいつものように近づいてくることはなかった。

 

「山城ぉ?今日は笹島が絡んでこないなー」

 

神原が俺の机の前でうな垂れながら聞いてくる

 

「知らねぇよ」

 

「なんだよ冷てぇな。そういや昨日笹島に放課後呼ばれてたよな?もしかしてそれと関係あるのか?もしかして告白か?おお?」

 

「お前の考えてるようなことはなんもねーよ」

 

まぁ実際告白するためのプロセスとして笹島が麻知に対して危害を加えたのだから関係がないというのは嘘になるのだが。

 

「それにしても正妻ルートに軌道修正したか。山城よ」

 

「正妻って誰だよ..お前の見解を聞きたいところだ」

 

「誰って北方麻知様に決まってるだろ!学年でも1,2を争う美貌で家庭的な美少女に何から何までお世話されてるなんてうらやまけしからん!」

 

神原は上半身を起こし、滉一に抗議した。これは神原だけの意見ではなく同級生の男子の総意だろう。麻知の知らない間にファンクラブが存在しているほど麻知は男子に人気であった。

 

「別に麻知が好きでしてるわけじゃなくて、麻知とは幼馴染で母親が花嫁修業とか言って料理とかなんでもやらせてるんだよ。麻知はお人好しだからやってくれているけど。」

 

「そうかなぁ。俺には麻知ちゃんが好きでやっているように思えるけどな」

神原は首を傾げていた。俺は呆れながら引き出しから教科書を取り出した。次は加藤の数学だからか神原も準備をする俺を見て焦って席に戻った。

 なんというかいつも通りの日常が戻ってきたような気がする。麻知と登校して、昼食を一緒に食べ、一緒に帰る。そんな日常が...日常だったんだろうか?あれ?いつから麻知と過ごすことが当たり前になったんだっけ?

**********

 

「コウくん」

 

放課後になり、麻知が俺の教室の前で待っていた。笹島ともすれ違ったが麻知は動じていなかった。夕暮れ前の道を麻知と帰る。足音だけが響くなか、ふと麻知が口を開いた。

 

「コウくんとこうしてちゃんと帰るのは久しぶりだね。」

 

「そうだな。」

 

「私はずっと前からこうしてコウくんと帰りたかったんだ..

 

でも、コウくんがあのお嬢様と一緒にいるようになってコウくんといる時間が減って....ずっと私の..私だけの時間だったのに。コウくんを独り占めする時間。でも、またこうしてコウくんの家にいってコウくんを起こして、一緒に登校して..二人だけでお昼ごはんを食べて..下校するっていう生活に戻れてうれしいな。もう二度と離さないからね。だから...

 

 

 

もう浮気しちゃダメだよ?」

 

「浮......気...?」

 

俺は麻知の言っていることが分からなかった。

 

「うん。だって彼女の私をほっといてよその女と下校中に寄り道したり、休日にデートしたり...これって間違いなく浮気......ダヨネ?」

 

夕暮れであったが、麻知の瞳は既に夜を迎えたように闇が支配していた。

 

「麻知とはもう彼女じゃないし、すみれとは認められてはいなかったけど付き合っていたから別に浮気じゃ...」

「浮気だよ!!どれだけ私の心が傷ついたかコウくん知ってる?コウくんがあの女の話をしてるだけであの女のこと..したくなった。コウくんがあの女のこと話してヘラヘラしてるのが耐えられなかったんだよ?それに私たちずぅっと付き合ってるよね?中学校の頃から...私覚えてるよ...//コウくんが私のこと「好き」って。私もコウくんのことずっと好きだったからうれしかった。ファーストキスだってコウくんからだったよね...」

 

「中学の時ってそれは...その別れたじゃないか..一時の感情というか。今はただの幼馴染にしか見れないというか...」

確かに俺は中学生の頃、麻知に告白をし付き合っていた。しかし、今はただの幼馴染として麻知と付き合っている。原宿へ出かけた時に麻知の好意を感じたが、気づかないふりをしていた。すみれのこともあるが、もうあの頃のような恋愛を麻知と出来る自信がなかった。

 

「え?何言ってるの?コウくんがどう思ってるかは知らないけど私はあの言葉受け入れてないよ?だって、コウくんは私のモノなんだから別れるなんて選択肢はないんだよ?でも、コウくんが私のこと異性として見れないなら....」

 

麻知は山城の前に近づく。麻知の顔が山城の鼻にくっつきそうな距離だ。

そして麻知は静かに唇と唇を重ねた。

 

「もう一度私のこと好きにさせるね....だから今は答えは聞かないね。時期が来たら私のことが好きかまた聞くね...絶対に私のモノにするんだから❤️」

 

麻知は怪しげに笑った。




閲覧ありがとうございました。

高校編はとりあえず、とりあえずですよ!終わりです。次章では再び冷めた?山城夫婦を描いていきたいと思います。
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