「山城くん...」
それは突然だった
「パパがダメだって...だから、その別れて欲しいの。」
俺は頷いた。いや、頷くしかできなかっただろう。どんな虚勢を張ろうが、都合のいい言葉を並べても大人の前では無力である。彼女は涙を流していた。しかしそれ以外は普段の彼女だった。
「これで会うのも最後だね、、」
「うん...」
「でも最後に言わせて
ダイスキだよ。」
彼女は白いワンピースをなびかせながら、散桜の蝶のように去った
...ズルいじゃないか。こっちは切り替えようとしているのに、そんなことを言われたら次のスタートを切れないじゃないか...
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「ぅ...ふはぁ...」
夢か。なんで今更こんな夢を見るのだろうか。時間は大人の自分に戻る。あの頃のように向かう場所も学校から会社になり、それに隣にいるのは...
「...」
「おわっ」
いつの間にか麻知が立っていた。時計を見ればいつも起きる時間を過ぎていた。私が起きたのが分かると言葉もなく階下へ降りた。
ガチャッ バタッ コトッ
ごはんをよそう音、みそ汁を椀に移す音、魚の焼ける音...こんな環境音が二人だけでは広すぎる空間に響くだけである。
ずずっ
これ程経てば無言もなんら気にならない。昔は会社のことや今日の予定などを話していたがいつの間にかしなくなった。朝食を食べ終え、新聞に目を通す。いつもより寝すぎたが、時間には余裕がある。これを読み終えたら出るとしようか...
「ねぇ...」
台所から声がした。食器を洗っていた麻知が急に話しかけてきた。
「なんだい?」
「.....なんでもない。」
?...麻知にしては珍しい。そんな仕様のないことをする性質でもないし、彼女が必要のないことを話すのは久しぶりな気がした。
「行ってくる」
「はい。」
普通の朝、いつもの朝。だが、何か支配する空気が普段と違った気がした...
「...」
麻知は山城を見送ると、彼の寝室に向かった。
『.......#@?』
「....あのメス犬夢にまで出てきて..滉一はわたしのモノ...」
聞いていたのだ。山城が寝言であの女の名前を口ずさんでいたのを...麻知は彼の女性というメモリーの中に他の女を入れることを許せなかった。しかし、記憶した山城よりも頭の片隅に己のデータを入れた女のほうがよっぽど憎かった。
「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで...」
彼女は自分が彼の心に満たされているものだと思っていたが、それは慢心だったのだ。そんな自分の愚かしさと未だ疫病神のように邪魔をしてくるあの女にただならぬ思いを心に宿していた。麻知は山城の布団に入り込みそんなことを考えた。
「滉一はわたしのモノ...誰にも渡さない。滉一の女は私で終わり、次の番なんてない...
#@?...絶対にアナタだけはユルサナイ。」
閲覧ありがとうございました。
独特な表現がありましたので補足を
散桜の蝶...桜が散るころとなるとこれまで飛んでいたモンシロチョウとかは急にいなくなりますよね。スッと去るというような例えで用いました。