ITパスポート所得者だけど、情弱だからなぁ...まぁいいか。本命じゃないし。
今回は少しお休みしてね(いつも休み定期)、ヤンデレになる前の文加さんのお話を。
70年代に突入すると、右派作家の自決、あさま山荘事件によって安保闘争や新左翼運動に対する国民の目は冷ややかとなった。60年代は彼らも一致団結して日米安保を止めようとしていたはずなのに、市民というものはいつの世も怖ろしいものである。そして世は大阪万博や高度経済成長期の真っ只中。戦後焼け野原となった日本はわずか25年程で世界も羨む経済大国となったのである。
「.....」
そして、大学から異端児とされ、学生からも厄介がられていた少女・木崎文加(あやか)も大学を卒業し数年が経っていた。いや、もう彼女は木崎ではない...山城健一、麻知の旦那である山城滉一の父と結婚をして今は山城文加である。
「お仕事なんだもんね..仕方ないよね..仕方...」
**************
健一は文加にとって大学時代の学友であった。マルクス主義に毒された人間と相容れない文加としては初めは健一も十把一絡げに考え、つれない態度をとっていたが話していくうちに彼もこの理想ばかりを語る学内に不満を持っているようで自分の意見にも耳を傾けてくれる姿勢から少しずつ健一に心を開いていった。そして、大学の卒業式-文加は首席で卒業をする。そして彼女は壇上での答辞で...
「この大学は馬鹿ばかり...もっと現実を見なさい。この世の中は勝つものと負けるものが存在する。平等な社会なんて千年経っても訪れない。そして有史いつの世も訪れたことはない。ならば...ならばあなたたちは勝つ人間になるしかない...!どんな手を使っても。後輩諸君、赤旗を振る暇があるなら、勉学に勤しみなさい!...以上」
この答辞の後、怒号が会場を包んだ。それはそうだ、彼らは自分達が本気で共産主義革命を起こせばユートピアを作り上げることができると思っていたのだから。それを文加は全否定をした、そして文加はこれから共産主義社会など日本ではできないこと、そしてそんな考えはいつか破綻することなど今後の世の中の動きを大学の誰よりも予見知していた。
「木崎さん、いいスピーチだったよ。」
「山城...嫌味?」
「君らしい言葉だったよ。彼らには響かなかっただろうけど」
「一生分からないだろうね。馬鹿だから」
「俺もかい?」
「...あなたは違う。あなたは特別だから」
「首席の木崎さんにそう言ってもらえるのは光栄だな」
「文加」
「え?」
「文加って呼んで...私も健一...って呼ぶから」
「....?木崎さん?」
「バカっ二回も言わせんな。だからその....私のダ...ダダ..」
「ダ?」
「ダーリンになりなさい!!」
健一はポカンとした。あのクールで世の中のすべてを軽く見ているような文加の口から思いもよらない言葉「ダーリン」。幼稚園児が政治談話をするような違和感である。しかもすごくつまらなそうな面をしている文加があんなに赤面をしているなど出会ってから一度も見たことがない。
「ふっアハハハハハハハ」
「なっ」
「ダーリンって文加。アハハハハハハハおなかが痛い...」
「....そ、そんなに笑わなくてもいいじゃない!」
文加は泣きそうな顔をして健一に迫った。
「健一のことが好きなの!大好き!私のことを分かってくれるのはあなただけ...だから付き合ってくださいっ...」
「...笑ったりしてごめん。こんな俺でいいなら。」
そして山城健一と木崎文加はアベックとなった。卒業後、健一は小さな出版社、文加は大蔵省に入省する。大蔵省の政界に対する力は強力であった。国の財布を担っているわけなので大臣さえ丸め込めば思い通りに動かすことはできる。大蔵官僚は給与の他に「施し」や多額の退職金など庶民には味わえない贅沢や将来が約束されている。....しかし、文加は大蔵省を一年も経たずに辞めてしまう。何故なら一年の交際の末、山城と同棲生活をすることになったからだ。山城は「もったいないことをする」と言ったが、文加は「奥さんは家で旦那様の帰りを待つものでしょ?」と答えた。
「気が早いよ」
「否定はしないんだ..じゃあ結婚してくれる?私は準備できてるよ...//」
「今すぐって訳にはいかないよ」
「じゃあ私が白無垢を着る日はいつなの...?」
「いつってなぁ男にも準備っていうものがあるんだよ。」
「じゃあずっと待ってるね。」
文加はそれから山城のアパートで料理を作って山城の帰りを待っていた。料理は得意ではなくなかなか上手くできなかったが、山城はおいしいと言って食べてくれた。文加は一生懸命料理を勉強した。そして炒り卵しかできなかった朝ごはんも黄金色に光る玉子焼きに代わるなどその成果は出ていた。山城も残業で帰りが遅いことはしばしばあった。しかし、文加は山城が帰ってくるまで待っていた。雨が降れば駅まで傘を持って駅へ迎えに行った。同棲をしていると喧嘩もあったが、仲直りをする頃にはこれまで以上に仲は深まっていった。
そして、年月は過ぎ交際6年目の秋だった。
「文加さん、結婚してください。」
文加は言葉も出せずただ涙を流していた。アパートで山城は結婚指輪を出し、結婚しようと言ってきた。どれだけその言葉を待っていたか...文加はこれまでの人生の中で幸せの絶頂期にいた。
「はい...」
山城は文加の薬指に指輪をはめた。
「....遅い。バカっ...」
文加は健一の頭をポカポカと殴る。
「ごめん。でもその分文加を幸せにするから。」
山城は泣く文加を抱きしめた。
そして、その後文加の両親に挨拶をした。思ったより簡単に結婚を了承してくれた。結婚は着々と進み、文加が白無垢を着る日がやってきた。文加の容貌は息をのむほどの美しさであった。
「...!」
「どうですか...?」
「ああ...似合ってるよ」
「ようやく私たち結ばれるんですね...」
「今思えば、誰にも興味がなさそうだった文加と縁を結ぶことになるなんて予想もしてなかっただろうな」
「今が大事なんだよ...あなたが幸せなら私はうれしい」
「大学の頃の君なら自分が幸せならそれでいいと言っていたはずだよ。君は変わった。そして、そんな君に惚れた。」
「私の気持ちはあれから変わらないよ。あなたのことが好き。大好き。」
式を終え、2人は初めての夜を過ごした。
閲覧ありがとうございました。
どちらかというとクーデレ!?ヤンデレの片鱗はいつからなのか。後編をお楽しみに。