2020年にまたテレビで千夜ちゃん(千夜推し)が見られる...さて、摂氏0℃全く先の展開考えていないなんて言えない...偶然の一致か、ごちうさのイベントも八王子だったのです。いい取材になった
朝起きると味噌汁の匂いがしていた。早く起きないと麻知に叩き起こされるな。麻知も部屋に引きこもっていたけどやっと出てきたのか、どういう顔でして会えばいいんだろうか。ふと別れの言葉を思い出す
『ふざけんなよ!.....悲しいよ、麻知が俺に隠し事をしてたことが。
ごめん。これが別れの言葉だ。気の利いたこと言えなくて...』
つい感情に任せてきついことを言ってしまった....ん?俺はだいぶ前に家を出たような。....そうだ!昨日の夜岸先輩の家にお邪魔して...起き上がると散乱した絵の具やパレットが目の前にあった。キッチンをふと見ると岸先輩が面倒くさそうに朝ごはんを作っていた。
「あ、起きた?」
「すいません。岸先輩、部屋にあげてもらっただけじゃなく眠っちゃって」
「いいよいいよ。そうだ!朝ごはん食べてく?一人増えても変わらないし」
「じゃあお言葉に甘えて..」
「よろしい」
昨日と同じように壁に立てかけてある折りたたみテーブルを出し、その後先輩に何か手伝うことはないか聞いたら電気ケトルのスイッチを入れて欲しいと言われ、水を入れ沸騰させる。
朝食はごはん、味噌汁、漬物だった。朝食はこれくらい質素だとそれはそれで清々しい。中途半端に量があると朝は重いものだ。電気ケトルのお湯が沸き、先輩は棚からインスタントコーヒーを持ってきた。
「山城くんはコーヒー嫌いじゃない?」
「あ、大丈夫です。でも砂糖は欲しいです」
「砂糖ね。了解」
まっさらな白のマグカップを受け取る。先輩は何も入れずそのままコーヒーに口を付けていた。ブラックコーヒーを飲める人は大人というかかっこよく見える。俺も砂糖をティスプーン二杯半に抑えるというよく分からない拘りを持っているが足元にも及ばないことを痛感させられる。ただ、ご飯を頂くだけでは申し訳なかったので食べ終えた食器を先輩の分も洗い帰ることにした。今日は食材の買い出しにでも行こう。
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私は今、ドレスレンタルに来ている。例の許嫁に会うためだ。正直ドレスなんて何だっていい。コウくんのために着る服ならおしゃれをする甲斐があるがそれ以外の奴に見せる服なんてジャージでも構わないくらいだけど...お父さまのためだもの、大人にならないといけないよね。適当に選んだドレスを着て、試着室を出る。
「似合っているよ。麻知」
「本当!コウくんにも....あっ....なんでもありません../」
「ごめんな。麻知..」
「気にしないでください!そもそも叶わない恋でしたから..」
だってこっちが最初から決まっていたことなんだから。勝手にコウくんを好きになって、付き合って、嫉妬して、別れたのは私だもん..お父さまに対してもコウくんに対しても最低な女だな私って
「じゃあ、行こうか」
「はい」
店の前でタクシーに乗り、ホテルニューオークラに向かった。都心の中心地、紀尾井町-江戸時代紀州・尾張徳川家、井伊家屋敷があったことからその名がつけられた。ホテルが多く立地しており、国会議員が会合や会食に使うこともしばしばである。
「社長、遅れてしまい申し訳ありません」
「お、北方先生、お久しぶりです。」
「こんにちは」
「この可愛らしいお嬢さんは?」
「私の娘です」「北方麻知です。どうぞお見知りおきの程」
「こちらも名乗っていなかったですね、柳原です。」
お父さまが「社長」と言っていた柳原という初老の男性が名刺を差し出してきた。受け取った名刺を見ると大手ゼネコンの成正建設の社長と書いてあった。
「麻知さんのおじいさまの頃からお世話になってましてね。」
「そうなのですね」
「私も昔、建設省に勤めていて社長とは長い付き合いでね」
「建設省?」「今で言うと....国土交通省か」
「先生もいずれは狙っている...」
「ご冗談を。私みたいな新米が夢見るものではありませんよ。『ははは』」
麻知の祖父は国会議員で父はいわゆる二世議員だ。建設省に入省したのは山城の母・文加と同じ年で同じくキャリア官僚として働いていた。祖父の死後、政治家を目指し麻知が3歳の頃市会議員選で初当選、3期市会議員を経て去年郵政解散に乗っかり衆院選で国会議員となった。麻知の父の派閥は志文会-テレビでは可児派と言われるニューディール政策色の強い派閥である。建設大臣や国交大臣を多く輩出しているので麻知の父も他人事ではない。
「それで社長のご子息は」
「そうでしたね。隆俊、来なさい」
「るせーなオヤジ。あ、どーもチッス」
「隆俊!お前という者は....すいません。バカ息子の隆俊です」
社長の後ろからでてきた彼はスーツを着ているが金髪で耳にピアスをしていて俗に言うギャル男のような奴だった。挨拶の時に携帯をいじっていて常識もなさそうな男だった。
「オヤジ」「なんだ」「この可愛い子誰?」「お前の許嫁の麻知さんだ」
「麻知ちゃん?っていうんだっけ。よろぴく~」
「はじめまして...」
「そんな堅くならないでよ。俺こう見えても女の子には優しいやつだからさ」
自分でいうだろうか。本当に優しいならその馴れ馴れしい態度を改めて欲しい。口には出さないけど。
戸惑っている私を見かねてか、社長が彼に拳骨を見舞った。
「このバカ者!恥ずかしくないのか!いい年して」
「ってーな!殴ることねぇだろ」
「本当にお恥ずかしい限りで、こんな息子ですが麻知さんよろしくお願いします。」
「は、はぁ...」
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数時間だけの食事だったがどっと疲れた気がする。料理の味すら記憶にない。食べたあの男、見た目はあれだったが気遣いはできるようでただのチャラチャラした男ではないようだった。あの男と結婚するのか....
....コウくんはあの時みたいに私のことを思い続けているのだろうか。早川すみれの時のように。あの女のことは私が忘れさせてあげた。同じようにコウくんの頭から私のことを忘れさせようとする存在が現れるのかと思うと怖くなる。
コウくんはこれから
新しい生活が始まって、新しい友達が出来て、遊んだり、サークル活動に励んだり、アルバイトに勤しんだり、学生生活を過ごしながら新しい出会いがあって..一緒にご飯を食べたり、一緒に帰ったり、デートしたり、家にお邪魔したり、キスをしたり、ご飯を作ってもらったり、一緒に暮らし始めたり.....したり、したり、したり、したり.....
......さない、.....さない、....るさない、...るさない、..るさない....許さない..!他の女がコウくんに近づくなんて許さないんだから。コウくんは私のモノなんだから。
「ここで下ります...少し用事があるので」
「そうか。じゃあ、気を付けて帰りなさい」
「ありがとう。お父さま」
麻知は新宿駅で降り、京王線に乗った。
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