摂氏0℃   作:四月朔日澪

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岐阜市長・柴橋正直の講演を聞きに行ってました。元は民主党の衆院議員でしたが、保守派で典型的な「民主→維新」議員タイプの方ですね。(氏は民主→無所属ですが政治理念は維新飛び込み組と似てる)市政について話していましたが、よく勉強されてるなと..

それでは大学時代に戻りまして2006年へ...


微熱

沙羅双樹女子大学の女子学生は清楚なイメージがあり、市ヶ谷や四谷といった学園都市の中でも最もネームバリューのあるお嬢様学校だ。故、財界では自分の娘を沙羅双樹女子大学に入れようと躍起になっている。大学も大事なご令嬢を預かることから学則は厳しい。麻知は息の詰まるような学生生活を送っていた。そして...

 

「別にいいじゃん。ほらチップあげるからさ」

 

「そういう話じゃなくてお兄さん、ここ駐車禁止だから早くどいて」

 

「はー?安月給の警備員が誰に向かって言ってんの?俺は--」

 

「ごめんなさい!この人私の知り合いで..早く車動かしなさい」

 

許嫁(バカ)に翻弄されている。講義が終わり帰ろうと正門を出ると前で警備員とバカが喧嘩をしていた。見て見ぬふりをしようとも思ったが、このバカすぐに麻知の名前を出す。止めても止めなくても恥ずかしい思いをするなら止めたほうがましだ。こんなやり取りはほぼ毎日起きている。正直やめて欲しい。金髪にピアスの下品な奴には全く似合わない黒の外車セダンに乗り込む。

 

~~

「ほんと細かいよなぁちょっとくらい停めてたっていいだろってね。」

 

「馬鹿じゃないの...あと、別に頼んでない」

 

「冷たいなぁ麻知ちゃんは。ツンデレってやつ?」

 

「とにかく、もう来ないで」

 

「考えときまーす」

 

間抜けた声で返事をする。昨日もそう答えて今日である。本当に分かっているのかとため息をつく。特に話題もなくタイヤがアスファルトをこする音とウィンカーの音だけが静かに鳴る。すると、脇に車を突然止めた。まだ家までは距離がある。

 

「.......キスしよう」

 

「な、何言ってんの!?」

 

「え?俺は本気だよ。だって麻知ちゃんのこと好きだし、麻知ちゃんは俺のこと好きじゃない?」

 

「....」

 

「正直に言ってよ。俺嘘とか嫌いだし」

 

「別に好きじゃない。ただ許嫁だから付き合っているだけ...私、もうここでいいから。それじゃ」

 

軽くお辞儀をして、車を下りる。下りたのはいいが駅までは遠く帰るころには18時を過ぎていた。

 

「遅れてしまってごめんなさい」

 

「おかえりなさい。お疲れね」

 

「ちょっと色々あって...」

 

自分のことなのでこれまで文加に話すらしていなかったが、許嫁が迎えに来てくれることキスを迫られたことなどを話した。しかし、文加は「面白いフィアンセね」と笑っていた。文加なら何かアドバイスをくれると思ったのにがっかりだ。考えに気づいたのか、

 

「ま、麻知ちゃんが中学生とか高校生なら何か言ったけど。もうレディーなんだから自分でお考えなさい。」

と冷たくあしらわれた。

 

**************

 

「麻知さんちょっと」

 

講義を終え、いつものように帰ろうとした時1人の女学生に声を掛けられた。

秋津帆花、通産副大臣・秋津日出男の娘だ。秋津副大臣は保守本流の高山派の4期目のベテラン議員で麻知の父が所属する保守傍流の可児派とは折り合いが悪い。時に、秋津帆花は麻知の事をライバル視している。麻知も面倒ごとに関わりたくないのと父に迷惑をかけたくないのでつれない態度をとっているが、帆花からすれば余計に癪にさわるようで今回の件は恰好のチャンスだった。

 

「いつも正門にいる金髪の男性は麻知さんのフィアンセでして?」

 

「ええ。」

 

麻知は帆花の顔を見ることなく正門に向け歩く。嘘を吐いても良かったが、隠すほどのことでもないので正直に答えた。帆花はくすりと笑う

 

「ふっ麻知さんのお父さまも見る目がないのですね。まぁ車はいいものをお召しですけど乗っている人間があれではねぇ…」

 

「なにが言いたいんですか?」

 

「いえ、別に麻知さんのことを貶すつもりはありませんのよ。ただあんな方とお付き合いされてるなんて麻知さんのお父さまの人脈の程度も知れたものだと」

 

「……」

 

聞き流して歩く麻知であったが、はらわたが煮えくり返っていた。自分のことや許嫁のことをどう言われようが構わないが父のことを言われることだけは許せなかった。麻知にとって父のことは滉一のことと同じようなものである。その見えぬ怒りははかりしれない。正門の前にはいつもの車がいない。流石に昨日あれだけ言えば来る訳もないが…

 

「あ、麻知ちゃーん 駐車場に停めてきた。ちょっと歩くけど」

 

しかし、その期待はすぐに打ち壊される。間抜けた声、黒混じりの遊びのある金髪、全く似合っていないピアス…許嫁が嬉しそうに歩いてきた。

 

「ん?お話中だった?麻知ちゃんのお友達?」

 

「あなたが知る必要なんてないわ…秋津さん、ご忠告ありがとうございます。でも、私のことなので…それではごきげんよう…………早く案内して」

 

「ごきげんようなんて本当に使うんだー」

 

「うっさい。早く行くよ」

〜〜

 

「………面白くありませんね」

 

帆花はつまらないものを見るように呟いた。

 

*************

 

車に乗り込み、いつもの静寂が訪れる。

 

「あんた、私のこと好きって言ってたわよね?」

 

「好きだよー」

 

「じゃあ、今度からその髪黒髪に戻してその似合ってないピアス外して迎えに来て。」

 

「えーでもこれは俺なりのファッションっていうか俺らしさっていうか…」

 

「もししてきたらキスくらいはしてあげるから」

 

「わかった。してくる!」

 

麻知は思った。男って単純でバカだと。




閲覧ありがとうございました。

ファザコンじゃないけど麻知ちゃんは親思いのいい子!いい子?
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